つまらない報告タイム(違いますわ! 私のアピールの場であり、私が称賛されるための報告タイムです!)
タイトルもサブタイトルも長文スタイル!
※今回だけです
『宵蛇』の隊長であるホムラは両腕を組んだ。
「それでは順を追って聞きたいのだが……紅蓮蜥蜴の討伐に関してだ。
紅蓮蜥蜴は青い炎を吐いたそうだな?」
「そうですわ!」
ロゼはハキハキと答えた。
インベントとしてはロゼが対応してくれると楽でいいなと思っている。
報告なんてどうでもよいことなのだ。
ホムラはパラパラと報告書をめくりつつ。
「うむ。炎を受けると……死亡か」
「【灯】で間違いないでしょうね。隊長」
『宵蛇』副隊長のロメロが言う。
「そうだな。まあ一撃で死亡させるほどの【灯】か。恐ろしいものだ。
それも射程は100メートル以上だったらしいな」
視線はバンカースに向けられた。
「そ、そうですね。射程は100メートル以上で、なんらかの探知能力がありました」
「ふ~む……かなり手ごわいな。
で――その囮にインベント君を採用したということだな?」
「は、はい」
ホムラは顔を顰めた。
「しかしまあ、新人にそれほどの大役を任せたというわけか……」
「はっはっは、インベント君は非常に落ち着いている。新人特有の舞い上がった故のヘマなんてしないだろう。
それに……空を飛べるんだろ? 俺は早くそっちを聞きたいな」
ロメロが楽しそうにしている。
逆にロゼはインベントに注目が集まるのが面白くない様子だ。
「……まあいいだろう。インベント君」
「はい」
「君は……空を飛べるそうだな?」
「まあそうですね。飛ぶというよりは跳ねているだけなんですけど」
ロメロが「おおお!」と声を上げる。そして――
「い、インベント君! どれぐらいの高さまで飛べるんだい!?」
ホムラは「おい、ロメロ」と窘めるが、「少しぐらいいいじゃないか」と食い下がる。
「そうですね……高さは測ったことありませんけど、どこまででも上がれるとは思います」
「ほほー! それは凄いな! 『星天狗』の再来じゃないか! なあ!?」
「ロメロ。少し黙っていなさい」
「はい、隊長!」
満面の笑みで話を止めるロメロ。
一人テンションが上がっているロメロを窘め、ホムラは話を進めた。
「空を飛べるのはわかった。だが一撃で死に至る炎だ。
囮役をやるのは怖くなかったのか?」
インベントは首を傾げた。
「怖くないですよ。別に」
「ふむ……何故だ?」
「何故……って言われてもなあ。当たらなければどうということはないですから」
インベントはそう言いつつ――
(『当たらなければどうということはない』ってモンブレでもよく使われてるセリフだな~)
そんなことを思い出し少し嬉しくなった。
ロメロは笑う。
「面白いことを言うな~。インベント君。
絶対に当たらない自信があったのか?」
「当たりませんよ。炎はそれほど速くなかったし、インターバルもあったし」
「インターバル?」
「ええ。炎の発射間隔は10秒。まあ追い込めば9.5秒ぐらいでしたし」
「――ほお。随分と詳しいね」
「まあ、何度も見せてもらいましたし」
ロメロはさっきまでの笑みを止め、インベントの瞳を見ている。
インベントとしては何かおかしなことを言ったのか少し不安になった。
「話を戻すぞ。ロメロ」と言いホムラは報告書をペラペラと捲った。
「新人に囮役を任せるのはどうかと思うが……そのあとがもっとよくわからん。
『計画通り30名の隊員が対象に接近し、近接戦を展開するも、近接向けの広範囲の炎を吐かれ膠着状態に』。
そのあとの報告は口頭では説明を受けたが、この件に関してはインベント君が一番状況を把握していると聞いたのだが」
「ああ~」
インベントは紅蓮蜥蜴戦を思い出す。
「上空から見ていたんですけど、明らかに紅蓮蜥蜴のモーションが変わったんです。
そして広範囲型の炎を吐き出したんですよね。接近しようにもノルドさんぐらい速くないとヒットアンドアウェイできなくなったんです」
「ふむ、続けてくれ」
「俺はずっと観察していたんですが、口の開け方で炎をコントロールしていたんですよね。
だから恐らく、口を閉じてしまえば炎は封じられるんじゃないかな~とは思っていたんです。
それにインターバルは変わらず10秒でしたし。
ああ~そういえば、こう炎を吐き出す際に首をすこ~し上に上げるモーションがあったんですよ!
それに広範囲型の炎は密着してしまえば喰らわないようにも見えたんですよね~。
あれ? なんの話だっけ?
あ~! 炎を封じる話だった! ノルドさんが合図を出してくれたんで上から思い切り丸太で攻撃したんです」
いきなり饒舌に話し出すインベントに多少困惑するホムラ。
モンスターのことになるとテンションが上がるモンスター大好きインベント少年。
「つまり口を塞いでしまえば、炎が封じられると思ったのか?」
「そうですね。やってみた結果一応……防げたは防げました。
だけど、俺の攻撃では炎を封じ続けるのは無理と思って、ロゼを呼んだんです」
「うふふ」
やっと出番が来たと思い、ロゼは笑う。
それと同時にレイシンガーは口角を釣り上げた。ロゼは気付かない。
「なるほど……だから大物狩りに新人が二人も参加したというわけか……」
ホムラが溜息を吐いた。
紅蓮蜥蜴の討伐に関して言えば、最大の功労者はインベントである。
だが森林警備隊として考えれば、独断専行だったとも言える。
バンカースはインベントに感謝しているため言えないが、ホムラはその点を責めてみることにした。
「正直……インベント君の行動は褒められたものではないな」
「え!?」
驚いて声を上げたのはインベントではなくロゼだった。
「聞いた感じだと、総隊長の許可をとらずに攻撃参加と人員の補充を行なったわけだろう?」
インベントは少し考え「そうですね」と答えた。
「指揮命令系統を無視し、独断専行は褒められた行為ではない」
ホムラの発言に、真っ先に反応したのはロゼだ。
今回の行動が評価されなければアピールにならない。
(ば、馬鹿おっしゃい! インベントと私の行動は称賛されるに値するものだったはずよ!?
独断専行ですって? 勝てば官軍よ! 褒められて当然! おかしいわよ!
そうでしょう!? ねえ! インベント!)
ロゼはインベントが反論するように念じた。
だが――
「う~ん……確かに……そうですね」
(な、納得しちゃったわ!? 馬鹿なの!? この子!!)
「モンスターを倒すことにテンション上がっちゃって、勝手な行動してしまいました。すみません」
「ふむ」
ロゼは愕然とした。
まさか、アピールポイントが反省ポイントになってしまったからだ。
だが、思わぬところから援軍が。
「でもよお、ホムラ隊長」
レイシンガーは真面目な顔で手を挙げ発言する。
「ん? なんだレイシンガー」
「ま、現場にいたわけじゃないからなんとも言えませんが……。
独断専行って言いますけどね、一刻を争う事態だったんじゃないですか?
緊急時に考えて行動するってのは優秀な人間である証拠じゃないでしょうかねえ」
「ふむ」
「炎を吐くなんて聞いたことも無いモンスターに対し、インベント君は最善策をとった。
アイレド森林警備隊の総隊長さんがインベント君を糾弾しない以上、彼は正しい行いをしたってことじゃないっすか?」
一呼吸、間が空いた。何かを確認するための間。
ホムラの視線はレイシンガーのその先――ある人物を見ている。
そして――
「なるほどな……一理ある」
「だったらもう少し二人の話を聞いてみましょうよ。
実際に現場で何があったか、ははは、詳しく知りたいなあ」
「わかった」
レイシンガーの話で潮目が変わる。
ロゼはこれは好機と考えた。
レイシンガーはにこやかな顔をしながら目が笑っていないことを、ロゼは未だ気付いていない。
報告タイムはもう少しだけ続きます。
も、もうすぐ戦います! この小説はバトルアクション小説です!