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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第十六章 愛_恋のライバル編

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策士

 インベントはモンスターを相手にするとき、しっかりと観察をする。

 癖を調べ、行動パターンを読み、感情さえ読み取ろうとする。

 それは『モンスターブレイカー』の狩人たちのように、モンスターと戦いたいからだ。


 インベントはこれまでに培った高い観察力がある。

 ただ、人間と戦うことに興味が無いインベントは、対人戦では高い観察力を活かせてこれなかった。

 しかし――


 インベントはうきうきしているライラを見た。


(ライラは色んな意味で得体が知れない。身体能力は恐ろしく高いし、おそらく【太陽ソエイル】のルーンを使える。まともに戦ったら勝てるかどうかわからない。ぶっつけ本番は危険すぎる)


 インベントはライラに勝たねばならない。『星堕(ほしおとし)』のアジトに行って、ラーエフに会いたいからだ。だからこそ、最善手を選んだ。


「ねえ、ライラ」

「なにかしら?」

「戦いのルールを決めたいんだけど」


 ライラの視線が一瞬泳いだ。しかしすぐに視線を戻して頷いた。


「けちょんけちょんってどうすればいいのかな? ライラには案内をしてもらわないといけないから、怪我とかさせたくないんだけど」


 ライラは艶めかしく上唇を舐めた。


「怪我ァ、させて欲しいわァ。できるなら――フフ、できるわよね。『運命の人』だもの」

「ハア。怪我をさせればいいの? う~ん……ルールとしてはわかりにくいな」

「ウフフ、かすり傷でもいいわよ。できるものなら――アアン。できるはずよ、『運命の人』なんだから」


 『運命の人』はすべてを解決する。そんな論調に辟易するインベント。


「わかった。怪我させればいいんだね。あと、戦う日なんだけど」

「日ィ? 今からじゃないの?」


 インベントは咳払いした


「ちょっと体調を崩していてね。五日後でもいいかな?」

「ウフ、いいわよ。五日ぐらい待てる。ぜーんぜん待てちゃう」

「じゃ五日後で。それと」


 インベントは手を握ったり開いたりしてから――


「調子を取り戻したくってさ。訓練に付き合ってくれない?」

「訓練?」

「そ。誰か相手がいたほうが都合がいいしね。それに――」


 インベントは壁に立てかけてあるライラの巨大な曲刀に目をやった。


「ライラがどんな剣技を使うのか、気になってね」


 ライラはすぐに席から立ち上がり、剣を手に取った。


「もちろんいいわよ! 行きましょう!」

「はは、それじゃあ行こうか」


 ライラは意気揚々と部屋から出ていき、インベントはゆっくりと立ち上がり、部屋から出ようとした。

 予想外の展開にアイナは、インベントに駆け寄った。


「お、おい、インベント」

「うん、大丈夫。心配しないで」


 素っ気なく返事をして、インベントは扉の前へ。


「あ」


 インベントは何かを思い出して振り返った。


「悪いんだけど、この部屋を五日間予約しておいて」

「わ、わかった」


 そしてインベントは部屋から出ていき、アイナとクリエが残された。


「ど、どうなってるんすかね?」

「戦うのは五日後みたいじゃのう」

「それはわかってるんですけど」

「なんとも回りくどい、というかインベントらしくないようには思えた。が、恐ろしく冷静。どちらかといえば冷徹な風を感じるのう」


 インベントはライラと戦うことに全く興奮していない。

 しかし、目的のために、確実にライラをけちょんけちょんにすると決めてた。

 そんなインベントを、クリエは冷徹と表現したのだった。


**


 インベントはライラを連れて町の外へ。

 モンスターの気配がしない森を、モンスターを追い払った元凶の女を連れて歩く。

 インベントは、不満や苛立ちを覚えつつも、町から離れた場所まで歩いた。


「この辺でいいか」


 ふたりは町から十分離れ、森林警備隊が巡回しない地点までやってきた。


「ここで訓練するの?」

「そうだね」


 インベントはおもむろに収納空間から木剣を手に取った。


 右手で木剣を振り下ろし、収納空間に入れる。

 今度は左手で収納空間から木剣を手に取り、振り下ろして、また収納空間に入れる。

 そんな動きを左右で数回繰り返し、最後に剣を手に取らず落とした。


 ライラには、木剣がインベントの手の中をワープしているかのように見えた。ライラは思わず手を叩いた。


「あら~! すごいすごい!」


 インベントは心無い笑みを浮かべ、落とした木剣を指差した。


「でも本調子じゃないから、落としちゃったよ。ライラと戦うまでに調子を戻さなくっちゃね。まあ俺は、ライラみたいな重い剣は使わないけどさ」

「フフ、そんなに重くないわよ」

「いやいや、どう見ても重いでしょ」


 ライラは背負っていた曲刀を外し、軽々とインベントに手渡した。

 インベントは受け取った際に、あまりの重さに落としそうになった。


「アハハ、大袈裟ねえ」


 ライラはやはり軽々と剣を受け取って、鞘から剣を引き抜いた。


「この剣は私の…………えっと、家に代々伝わる剣。名を『夜祓いの曲刀』、別名――『カイムーン』」

「カイ、ムーン」

「フフ、町の名前と似てるのよね。びっくりしちゃったわ」

「ああ、確かに。カイムーンとカイルーンか」


 ライラは円を描くように剣を動かした。

 インベントには剣の軌跡がくっきりと見えた。

 決して速くない動きだったが、舞のように美しく、見とれてしまう。


 インベントはだらしなく開いてしまいそうな口を、咳払いで誤魔化した。


(剣の腕は確かなんだろうね。多分。それに、身体能力が高いのはわかっていたけど、腕力も常人じゃない)


 インベントはライラを見た。

 女性にしては身長は高いが、決して筋骨隆々ではない。


 インベントはライラのルーンが何なのか、おおよその見当をつけた。


(【猛牛ウルズ】とかの身体強化系のルーンなのは間違いない。

 それに以前、剣に幽力を纏わせていたし【太陽ソエイル】のルーンも持っている。

 ハハッ、戦闘向きなルーンで羨ましいねえ)


 インベントはにやりと笑った。

 自らの情報は最低限に、ライラからはしっかりと情報を引き出そうと策を巡らせているのだ。

 五日後の本番に向けて、ライラを徹底的に分析し、対策を講じて、けちょんけちょんにしてやろうと考えているのだ。



 だがしかし、インベントはライラのことをまったく理解できていなかった。

 ライラは本物の規格外なのだ。

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