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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第十六章 愛_恋のライバル編

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発端

 ライラをインベントから遠ざけるために、アイナが動く。

 否、動こうとした。動こうとしたのだが……


「ライラはどこに行っちまったんだ……」


 ライラがなかなか見つからない。

 インベントが家に来るなと言ってからは、家には来ていない。

 ここ数日は家の周囲にも来ていないようだ。ご近所さんにそれとなく聞いてみたが目撃情報が無い。

 ライラは目立つ存在のため、来たら誰かが気づくはずである。


「そういえば、モンスターをインベントにプレゼントするとか言ってたな。まさか……ずっとモンスター探し?」


 嫌な予感を覚えつつも、とりあえずカイルーンの町周辺を探すことにした。

 インベントはライラと会いたがらないため、ひとりで。

 森林警備隊の知人と遭遇することもあり、なんとなしに状況を聞いてみるが、特に異常は無いとのこと。幸運にもモンスターには遭遇していないと。

 しかし同じ回答が数人続いたため、モンスターが蔓延るはずのイング王国で、平和という異常事態だとアイナも気づくことになる。


**


 二日間探し回ったが、収穫はゼロ。

 しかし力強い助っ人が現れた。


「あ~! クリエさん!」


 あてもなく、彷徨うように森の中を探索していたアイナは、来ることが当然のように川沿いの岩に座り待っていたクリエと遭遇した。


「何か進展はあったかえ?」

「聞いてくださいよお~」


 アイナはクリエに泣きつき、事の次第を話した。

 クリエは無言で話を聞き、アイナが話し終わると――


「あいわかった」


 そう言ってクリエは立ち上がった。


「え?」

「まずはライラに会えばいいんじゃろ? 説得とやらに加勢はできぬが、探すだけならなんとかなるじゃろうて」

「でも……クリエさんの能力でもライラは探せないんでしょ?」


 クリエはせせら笑った。


「無風を強制する女など、慣れてしまえば発見は容易い。まあ任せておけ」

「た、助かるぅ!」


**


 クリエはずんずんと森の中に入っていく。

 アイナはただついていく。危険区域を突き進んでいるため、周囲を警戒しつつも、クリエがいるため安心感はある。だがそれ以上に――


(森が……なんか静かっていうか……空気が綺麗な気がする)


 アイナは勘が鋭いわけではないが、いつもならモンスターがいるのではないかと疑心暗鬼になる気持ちが不思議と働かない。ゆっくりと世界が変わっていることを体感しつつも、怖くなった。

 まるで土地を浄化し、モンスター祓う、まるで神の御業を、ライラひとりでやってのけているのであれば、人知を超えた存在。ライラが本当に何者なのかわからなくなってくる。


 しかし――――


(どうも、あの露出狂の姉ちゃんがスゲえ人には思えねえんだよなあ)


 森の中を騒がしく走り回るライラを妄想し、アイナは溜息を吐いた。


**


 一時間以上歩き、アイナのモンスターに対して警戒心が無くなってきた頃、クリエが急に止まった。


「近くに――おるな」

「おっと」


 アイナはきょろきょろと周囲を見渡したが、なにも発見できない。

 クリエが「あっちじゃな」と指差したので、アイナはじっと見つめた。すると――


「もおー! なんでモンスターがいないのよぉ!」


 ライラが凄まじい速さで駆け抜けていく。

 アイナは、おーいと手を振った。しかし、ライラはアイナたちに気付くことなく走り去ってしまった。


「……あ」


 アイナは思わずクリエを見た。しかしクリエは首を振った。


「ふりだしじゃのう。もう一度、探すとしよう」

「わかりました」


**


 それから一時間後。二度目のチャンスが訪れた。

 クリエの合図を受けてすぐ、アイナは周囲の警戒と、走り出す準備を整えた。そして――


「いた!」


 またもや走り去ろうとするライラを発見し、アイナは全速力で走った。


「おおーい!」


 気づいてもらうために、剣を振り回して最大限アピールした。

 ライラは誰かがいることに気づいたのか、走るのをやめた。そしてその誰かがアイナであると気づき、なぜか怒りながら近づいてきた。しかしアイナはライラが怒る理由がわからない。


「もおー!」

「な、なんだよ?」


 ライラは地団駄を踏んだ。


「モンスターなんていないじゃない!」

「は?」

「あなたがモンスターを捕まえればいいって言うから、探してみたけど、ぜーんぜんいない! どこにもいない! もう嫌!」


 駄々をこねる少女のようなライラに、アイナは呆れた。なにせモンスターがいないのは高確率でライラ自身のせいだからだ。しかしライラは自覚していない。


「ちょっと待って」


 アイナはライラを待たせ、クリエのもとへ。


「もう全部話しちゃって大丈夫ですよね?」

「わからぬ」

「え?」

「【フェオ】が通じない相手に、なにを聞いていいのかわからぬ。アイナのやりたいようにやればええ」

「あ~……そっすか」


 アイナは天を仰いだ。


(正直、ライラが敵か味方か、というか何者なのか、さ~っぱりわかんね。もういいや、アタシの好きにやらせてもらうとしましょうかね)


 アイナは髪を掻きながら、かったり~、と呟きながらライラのもとへ。


「ちょっと話そうや、ライラ」

「話なんてしてる場合じゃ――」


 アイナは両手でバツをつくった。


「アタシとなんか話してもしゃーねえと思うのはわかる。だけど、アンタよりはインベントのこと――『運命の人』のことを理解してるつもりだ。もしもアタシと話さずにモンスター探して駆け回ったらどうなると思う?」

「……わからないわ」

「インベントはどこか遠くに行くだろうな。もう二度と会えないかもしれない」


 ライラは眉間に皺を寄せ、神妙な顔で「なんで」と問うた。


「アンタは理解していないだろうけど……というかアタシもよくわかんねえ。だけどアンタはモンスターを遠ざける体質みたいだ」

「ハア?」

「アンタ、森の中で野宿してたんだろ? カイルーンの人間は誰も森の中で野宿なんてしない。森の中にはモンスターがいるから危険ってのは、子どもでも知っている常識だ。それなのにアンタは野宿してもモンスターに襲われない」


 ライラは森の中にモンスターがいないからだと反論しようとするが、アイナは遮った。


「森にはモンスター。それはこの国の常識なんだよ。まずはそこは理解しろっての。それとも――――この国の人間じゃ無いから理解できないってか?」


 ライラは口を噤んだ。


「ま、それはいいよ。シシシ、ライラはどうにも秘密が多いみたいだからな。とにかく、アンタにはモンスターを遠ざける体質ってのが備わっている。そこは理解したか?」


 ライラは渋々頷いた。


「で、だ。モンスターを遠ざける体質ってのは、モンスターが大好きなインベントとは相性最悪ってことだ。アンタがカイルーン周辺に居座るなら、インベントはどこかに行っちまう」

「それは困る!」


 アイナは髪を掻いた。


「アタシとしても、カイルーンから離れたくないんだよな~。だから正直言うと、アンタがどっかにいってくれると助かる。だけど、それはできないんだろ? なにせ『運命の人』だから」


 ライラは大きく頷いた。


「ハア……、だからどうにかしたいんだけど、アンタはな~んにも話さない。協力したくてもできねえよ。そもそも論、『運命の人』ってのが意味が分かんね。運命ってのはさ、なんかこ~……危ないところを偶然助けてくれたとか、子どもの頃に結婚の約束をしてたとか……そういう相手を言うんだろ?」


 ライラは首を捻った。アイナは夢見る少女のような発言だったなと思い、小恥ずかしくなった。


「とにかく! なんかこー、色々あって運命になるわけだろ! なのにアンタとインベントは出会ったことも無い。インベントが忘れてるんだと思ったけど、本当にこれまで出会ったことが無いんだろ? それなのに運命運命って、さっぱり意味がわかんねえよ!」


 ライラは腕組みし考え込む。小刻みに左右に揺れているのは、気持ちが揺れているように思えた。

 アイナはここぞとばかりに畳みかける。


「秘密主義なのはわかっけどさ、話してみてもいいんじゃねえの?」


 ライラは片頬を膨らませた。


「アタシは口が堅いから、だ~れにも言わない。もしかしたら協力できるかもしれねえし」


 ライラは観念したのか、組んでいた腕を解き、溜息を吐いた。


「わかったわよ。全部は……言えないけど、どうしてインベント君が運命の人なのかは教える」

「お、大きな一歩だな!」


 ライラは重い口をゆっくりと開いた。


「インベント君が運命の人なのは……ある人に言われたから」

「ある人?」

「それは――――()()()


 突如登場したロメロの名に、アイナはもちろん、クリエも目を丸くした。



 そう――――

 この一連の騒動は、すべて『陽剣のロメロ』が発端である。


 アイナは、またロメロのせいで平穏な日々が搔き乱されたのだと思い、辟易するのだった。

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