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人は見た目が九割

 アイナがロイドに対し、インベントとの関係説明に四苦八苦している頃――


 あるはずのメインイベントを求め、猪が造った道を南下していく。

 すると、すぐに輸送団を発見した。


「全滅したわけではないみたいだね」


 最悪の事態も想定していたインベント。

 だが馬車一台が全壊しているものの、上空から見た感想としてはそれほど被害があったようには見えない。


 とは言え、別に安堵したわけではない。

 むしろモンスターが暴れまわっている阿鼻叫喚な状態のほうが好ましかった。

 何も考えずモンスター狩りに突入する展開が望ましかった。


 仕方なくインベントは目を細めて状況を分析する。


「なにしてるんだろう。

 別にモンスターがいるわけでもないのに、ここで停滞している理由は……なんだろう?

 馬車一台が大破してるってことは、救護かな?

 そもそも護衛隊とやらは機能しているのか? う~ん、よくわからん」


 上から眺めていても埒が明かない。

 そう思ったインベントは降下していく。


 漆黒アビス装備を身に纏った、どう見ても怪しい男が大地に立ったのだ。


(ふ~む、派手にぶっ壊されているな)


 インベントは大破した馬車に近づいていく。

 恐らく馬と人と思われる死体を発見した。


(即死っぽいな。さっき狩ったモンスターがやったのかな? それとも別のモンスター?)


 まるで探偵のように実況見分を行うインベントだが――


「おい! そこのお前!」


 乱暴な呼びかけに対し、振り向くインベント。

 すると、視線の先には五名が並び立っていた。


 中心には剣を構える女性。

 その左右には両腕に盾を装備した巨躯の男と、小柄に似合わぬ巨大な盾と剣を装備した男。

 更にその左右にはすでに弓を引き、インベントに対しいつでも射れる状態のふたり。


 敵意を剥きだしの五名は、強者の風格を醸し出していた。


 中心のリーダー格と思われる女性が口を開く。


「怪しいやつめ。お前……『星堕ほしおとし』だな!?」


 インベントは鼻で笑い「違う違う」と手を振る。だが警戒は強まる。

 そして五名よりも更に先には、輸送団と思われる人たちを発見した。

 なぜか怯えているように見えてインベントは首を傾げる。


「見た目で人を判断するのは好かんが、どう見ても悪役。

 とりあえず拘束させてもらう」


 インベントは「いやいや」と言い手を動かそうとすると、「動くな!」と言われてしまう。


(めんどくさいな……なんで俺が『星堕ほしおとし』扱いされにゃならんのか。

 クリエさん、連絡しておいてよ。

 クリエさん……クリエさん……あ!)


「あ、俺はクリエさんに言われてここに来たんだけど」


 妙案を思いつき、これで疑いが晴れると思ったインベント。だが――


「誰だ?」


「え? いや、だからクリエさん」


「知らん」


「え!? だって、『宵蛇よいばみ』だよ?

 『宵蛇よいばみ』のクリエさん」


「嘘をつくな! 『宵蛇よいばみ』にそんなやつはいない!」


 インベントは話が通じず心底億劫になってしまう。


(『宵蛇よいばみ』なんじゃないの~? 話が拗れるなあもう。

 こういう回りくどいイベントは要らないんだよねえ)


「もういいや。勝手に探すから」


 ご機嫌斜めになってしまったインベントは、立ち去ろうとするが――


「待て! 逃げるな!」


 眉間に皺を寄せるインベント。


「うるさいな。お前たちなんかに構ってる暇ないんだよ。

 仕事しろ、仕事。護衛隊なんだろ? ちゃんと護衛してろよ」


「なんだと?」


 インベントは大破した馬車を指差す。


「ひとり死んじゃってる。優秀な護衛隊が聞いて呆れるよ」


 煽るインベント。だが相手は表情を崩さない。


「確かに彼には申し訳ないことをした。

 だが特別な事情があったからこそ――」


「言い訳はいいよ。そんなことより助けに行ったら?」


「助けに? なんの話だ?」


 インベントは失笑した。


「バカなんじゃないの。

 アンタたちは輸送団の護衛隊なんでしょ?

 輸送団の人に決まってるじゃん」


 インベントは斜め上を指差す。


「ほら、狼煙が上がってる。

 輸送隊のひとりがはぐれたんでしょ。狼煙のところにいるから助けに行きなよ。

 ま、俺の父さんなんだけどさ、ははは。

 ああそうそう、一緒にアイナって女性がいるから心配はしてないけどさ、失礼なことはしないでよね」


 リーダー格の女性は一呼吸置いて、インベントが指差す方向に視線を移す。

 狼煙を確認し視線を戻した。


「確かに狼煙が上がっている。だがそれを信用しろとでも?」


「一台馬車が暴走してはぐれたことは事実でしょ?

 こんなところで待機してるぐらいなら救助に行くのが普通じゃないの?

 まったく……、あ~そうか。もしかして普通じゃない状況?

 もしかしてここを動けない理由でもあるのかな?」


 リーダー格の女性は押し黙る。

 だが、隣の巨躯の男が首を振ってから話し始めた。


「話し合ってても埒があきませんぜ。

 とっとと鹵獲しちまえばいいんですよ、フーマ副隊長」


 そしてインベント目掛けて飛び出す。

 両手に盾を持っているが軽快に。


 対するインベントは「ぽいっと」と砂袋を投げ、続けて収納空間からナイフを射出。

 砂袋は巨躯の男に到達する前に引き裂かれ、中身が飛び散る。


 粉塵が舞う中、振り払いつつも前進する巨躯の男。だが――


「ぎ、ぎやあああああ! 目が! 目がああ!

 げ、げほ、おえっ! ゲハ、ガハア!」


 両手で顔を覆いのたうち回る男。

 そんな男をインベントは当然心配せず、興味深く眺めていた。


「ふふ、毒けむり玉。大成功だねえ。

 まあ毒じゃなくて、激辛香辛料だけどさ。

 目にも喉にも効果抜群。

 ハハハ、人相手に使ったこと無かったから、良い実験になった。さて――」


 インベントは弓を警戒しつつ、飛び上がった。

 追撃も特になく、インベントは上空へ。


「ハア、面倒だったな。

 う~ん……今からどうしようかな。

 まだなにかある気がするけど、さてさて――ん!?」


 インベントはふと耳に手を当てた。

 そして――


『アナタ、インベントサンデスカ?

 インベントサンデスヨネ? オーイ、シタデス~コッチデス~!』


 念話が頭に流れる。

 それはアイナの念話と違い、クリアな音質では無い。


 先程のリーダー格の女性が手を振っていることに気付く。


「クリエさんのことは知らないのに、俺のことは知ってるの? よくわからん」



 釈然としないインベントだが、とりあえず再度降下することにした。

隊長の名はラゼン。副隊長はフーマ。

取り巻きの名前はゴウケン、マンジ、カブラ(嘘です)

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