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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第十三章 収納空間と極める男編

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手間取る脅威

 大きくても小さくても。

 モンスターはモンスター。

 全て愛おしい存在。


 だがやはり大きいモンスターにはロマンがある。

 そして耐久力が高いため、長く戦える。

 長く――遊べる。


 攻撃力が高いのも素晴らしい。

 まともに一撃喰らえばあの世行き。スリリングでたまらない。



「くんくんくん。

 う~む、なんと芳醇で鮮烈な香り。むはははは」


 インベントは匂いに誘われ森の中を歩いていた。

 強烈なモンスターの香り。


 実際に匂っているわけではないのだが、香りが鼻腔をくすぐり脳に届く感覚と、『モンスターソナー』でモンスターを感じとる感覚が似通っているのだ。


 途中地鳴りがインベントの身体を揺らすが、それはとても些細な事。

 むしろ、『モンスターソナー』が正確に起動していることの証。


 そして発見する。


「おお、当たりだ」


 目を輝かせるインベント。


 全身が真っ黒。

 横たわっている様はまるで巨岩のよう。


(熊じゃないか。

 おお~こりゃあ珍しい)


 熊――ベアタイプモンスター。


 ベアタイプは非情に珍しく、インベントも数えるほどしか遭遇したことはない。

 ただでさえ珍しいのに、以前見たベアタイプよりも二回り近く大きい。


 だがおかしなことに、敵意を向けてこない。

 テリトリーを侵されたモンスターは激昂し、襲いかかってくるべきなのに寝そべったまま。


 仕方なくインベントは、スコップで堀った泥を投げつけ、収納空間を通過させることで加速させ、モンスターの特徴的な目の周辺にぶつけた。

 下瞼、上瞼、そして眼球へ。


 やっと敵意を向けてくれたモンスターに笑顔を向けるインベント。


「クマちゃ~ん、朝だよ~。

 ん~そうだな~……」


 インベントは考える。

 せっかくの大物モンスター。

 ぴったりの名前を考えてあげたいと思ったのだ。


 一部を除き真っ黒な体毛で覆われている。

 だが、目の周りだけ真っ白なのだ。


 そんな特徴的な容姿から着想を得たインベント。


 熊。

 白黒。


「お前は……『黒白熊獣パンダ』だな。

 うん、『黒白熊獣パンダ』にそっくりだよ! あはは」


 インベントは『パンダ』という生物を知らない。

 モンブレでも『パンダ』というモンスターは存在しない。


 だが見た目が白黒の熊型モンスターが通称『パンダ』と呼ばれ、見た目が黄色い熊型モンスターは『プー』と呼ばれていることは知っているインベント。

 その名前の由来は知らないのだ。


 だから、『熊+白黒』だけで『黒白熊獣パンダ』と名付けたインベント。

 本物のパンダを知る者からすれば、全身真っ黒で目の周りだけが白い熊をパンダとは呼ばないのだが……それは些細なこと。


 インベントは挑発の締めとして、熱々のコーヒーが入ったポットを取り出した。


「ほらよ」


 『黒白熊獣パンダ』からすればコーヒーは臭くて黒い液体。

 インベントは正確にコーヒーポットを鼻頭にぶつけた。


 穏やかな『黒白熊獣パンダ』も堪忍袋の緒が切れ、遂に立ち上がる。


「おおお~、これはすごい」


 まるで人間のように立ち上がった『黒白熊獣パンダ』。

 二階建ての建物ほどの高さから生じる威圧感。


 振り上げた前足を思い切り振り下ろす『黒白熊獣パンダ』。

 インベントは迫りくる死を楽しみながら、後方へ飛ぶ。


 激しく大きな地鳴りと、飛び散る大地。

 華麗に回避したインベントだが、風と小石がインベントを襲う。


「痛てて。

 ちゃんと余裕をもって避けないと、こりゃあ危ないぞ~。

 ん? あれ?」


 『黒白熊獣パンダ』は、強烈な一撃を放ち、インベントを睨みつけた後――

 また先程と同じように、大地に伏せてしまった。


「なんだよ……やる気ないな。

 傷ついちゃうな~、傷ついちゃうよ。

 ククク、こうなっては仕方ない。

 ()()()()()を召喚するか」


 インベントは左手を握りしめ、振り払いながら手を開く。

 すると黒煙が舞う。


 そして仰々しく両手を天に掲げた。


「いでよ!

 重力グラビティ装備の進化系!

 重力を制し、闇の力を纏いし伝説の防具!」


 両手を交差させ、これまた両手で大地を叩くと――

 盛大に黒煙が舞う。


 ちなみにこの黒煙、すすであり、タイミングよく収納空間から取り出しただけである。

 ただ、量を間違えたインベントは咳き込んだ。


「ゲホッ!

 い、いでよ!

 漆黒アビスブーツ!!」


 黒煙の中からまるで召喚したかのように現れる漆黒アビスブーツ。

 その名の通り真っ黒なブーツである。


 漆黒アビスブーツは、ドウェイフ工房に特注で造らせた。

 基になった重力グラビティグリーブとコンセプトは似ており、脚部からも収納空間の反発力を利用するための装備だ。


 踵部分とつま先部分には鉄板が仕込まれている。


 また、重力グラビティグリーブは片足10キロ弱の超重量級装備だったが、クロたちと相談した結果、大幅に軽量化しグリーブからブーツの形状へ。



 インベントはドヤ顔で『黒白熊獣パンダ』を見る。


「ククク、これを見たからには生きて返さん。

 震えあがるがいい!」


 ビシっと指差し、啖呵を切るインベント。

 それに対し『黒白熊獣パンダ』はノーリアクション。


 ここからインベントの猛攻が始まる。

 と思いきや――



「ちょっと待ってね」


 インベントは座り、漆黒アビスブーツを履き始めた。

 重力グラビティグリーブほどではないが、かなり重いブーツなので履くのに手間取るインベント。


 またブーツを履いているタイミングは無防備であり、ちらちらと『黒白熊獣パンダ』を見て警戒するインベント。

 啖呵を切ったかと思いきや手間取る様は、なんとも滑稽。


「よし! 準備万端!

 待たせたな!」


 インベントは再度手を交差させ、またも仰々しく両手を大きく広げた。


「『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』――召喚!」


 またもや黒煙を出しながら『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』を装備するインベント。


 インベントは久しぶりの大物にテンションが上がっている。


「ふっふっふ~。

 それじゃ、生まれ変わった俺の双剣術を見せてやろう!

 まずは……『()()()()()』でいく!!」

 

 インベントは両手に持った剣で地面を突く。

 反発力を利用し直上へ。


 『黒白熊獣パンダ』はインベントがまるで鳥のように飛翔したため、目で追う。


「ククク!

 いくぞ!

 闇の力を得た我が必殺剣を――喰らえッッ!!」


 インベントは新装備の漆黒アビスブーツで、跳躍用丸太バウンダーを思いっきり踏み、一気に距離を詰めようとした。


「ふぬう!?」


 だが――

 発生するはずの反発力を得られない。


 跳躍用丸太バウンダーを踏んでいるのに、返ってくるはずの反発力が一切発生せずスカスカしているのだ。


「あれえ? なんでえ!?」


 足をバタバタさせながら落下していくインベント。


 飛び上がったと思えば、そのまま落下していく。

 『黒白熊獣パンダ』は呆れながらその様子を見ていた。


 インベントはその場に留まり、なぜ反発力を得られなかったのか原因追及している。

 『黒白熊獣パンダ』からすれば、「もう帰れよ」なんて思っているのかもしれない。


 だが、「ああ~」と手を叩き――


 「なるほど重さか」とその場でぴょんぴょん跳ねるインベント。


 そして奇怪な生物インベントは――



 「それじゃあ『()()()()』にしよう」と意味深に呟いた。

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