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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第十三章 収納空間と極める男編

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我に秘策アリ

 クエスト名:『ピットに実力を見せよう!』

 期限:五日


**


 唐突な模擬戦の提案に困惑するピット。

 だがインベントはクエストをクリアするために、強引に話を進めていく。


「二刀流と収納空間を掛け合わせた戦い方を見せますね。

 あ、でも準備が必要なんで模擬戦は五日後にしましょう。

 そうだ! 収納空間を使った戦い方を少しお見せしますね~」


 インベントは『縮地』や『加速武器アクセルウエポン』を実演し、丁寧に解説する。

 手の内を見せているのは、ピットとの模擬戦はクエストだからである。

 実力を見せるのが目的なので、隠す必要は無いのだ。


 ピットは思う。


(収納空間を使った戦い方か……。

 これは初見では対処が難しいだろうし、応用もできそうだ。

 兄が認めるのも理解できる。

 だが…………)


 インベントが見せようとしている戦い方の肝は『収納空間』と『二刀流』。

 『収納空間』は良いが、『二刀流』はまだまだ実戦に使えるレベルでは無い。


 ここから五日で爆発的な成長があるとも思えない。

 思えないのだが――


 五日あればなにか起きるのかもしれない。

 良い意味で予想を裏切ってくれるのではないかと思ったピット。


「わかった。五日後だな」


 可能性に賭け、ピットは模擬戦を承諾するのであった。


**


 六日目――


 これまで通りの肉体改造を実施。

 大きな変化は無し。


**


 七日目――


 これまで通りの肉体改造を実施。

 大きな変化は無し。


**


 八日目――

 九日目――


 以下略。



 順調に成長しているインベント。

 ピットの当初の予定通り、二刀流の基礎は身についてきている。

 かなり筋力もついた。


 ここから地道に努力を重ねれば、二刀流をものにする日も来るだろう。

 だが、少なくとも今ではない。


「今日までよく頑張ったな。インベント君」


「ピットさん!

 今日もありがとうございました!」


「それでだな……明日のことなんだが……」


 ピットは模擬戦は中止して、本日同様、肉体改造を提案しようと思っていた。

 だが――


「はは、明日は模擬戦ですね!」


 インベント、自信満々の笑み。

 その笑顔の理由がわからないピット。


「本当にやるのか? 模擬戦?」


「???

 当然じゃないですか。ちゃんと準備してますよ?」


「いや……準備と言うが……」


 ピットからすれば完全なる準備不足である。

 というよりもたった五日間で人間が大きく変わるはずが無いのだ。


「はは、あんまり長時間は無理ですけど、ちゃ~んと実力見せますからね」


 インベントはクエストを達成することしか考えていない。

 そして――自信があるのだ。


 するとインベントはなにかを思い出し、手を叩く。


「あ、ピットさん、言い忘れてました」


「なんだい?」


「俺、()()()()とかできないんで」


 目を丸くするピット。


(手を抜けない?

 なにを言っているんだ?)


 インベントは淡々と話し続ける。


「ピットさんを倒すつもりで戦うから、急所とかも狙っちゃうと思うんですよ。

 いや~模擬戦のことアイナに話したら、本来模擬戦って急所狙わないとか、当たりそうになったら止めたりするらしいですねえ。

 ははは、ロメロさんとの模擬戦は完全に殺しにいってたから知りませんでしたよ」


 インベントの言葉が頭に入ってこないピット。


 インベントとしては、寸止めや急所を外す技術が無いことを忠告するつもりだった。


 だがピットからすれば、胸を貸してやろうと思った相手から『手を抜く』などという気遣いをされているように感じた。

 自然と煽るインベント。


(『月光剣』も舐められたものだな)


 ピットは拳をボキボキと鳴らした。


「ふっ、安心しろインベント君」


「ほ?」


「明日は兄同様、殺すつもりで構わんよ」


「あ、本当ですか! 良かった~。

 それじゃあ、俺、準備があるんで行きますね!」


「――ああ」


 去り行くインベントの背中を眺めながら、ピットはインベントを完膚なきまでに叩き潰すと決めたのだった。



**


 ピットと別れ、インベントはドウェイフ工房に向かい、模擬戦のために頼んでいた特注の木剣を受け取った。


 そして家に戻りアイナに剣を見せた。


「アイナ見て見て~!

 木製版『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』だよ!」


 『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』を持ちインベントがポーズを決める。


 『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』は、『死刑執行人の大剣(エクセキューショナー)』と同様に剣の先端が平らになっている。

 これは反発力を制御しやすくするためである。


 更に柄の先端部分、柄頭が直方体となっており、これまた反発力を制御しやすい工夫が施されていた。

 更に更に、柄も握りやすいように磨いた革を巻き、柄糸を巻いてある。


 木剣なのに、ドウェイフの職人魂が籠った一品なのである。


「なんか作らせてるのは知ってたけど、随分金のかかった木剣だな」


「へへへ、明日は模擬戦だからね」


「模擬戦用の木剣に細工するなんて初めて聞いたけどな」


「まあ、仕方ないよね。

 片手で剣を振るって、こんなに大変だとは知らなかったよ」


 左手で試しに『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』を振るインベント。


「しっかしインベントも大分筋肉ついたよな~。

 やっぱピットさんの教えるの上手いよ。

 でもさ……本当に模擬戦やるのか?」


「やるよ。当たり前じゃん」


「まあさ、地獄の特訓も頑張ってたし、金かかった木剣用意した。

 それでも……二刀流の実践はまだまだ早いんじゃねえの?」


 アイナの見立ては正しい。


 肉体改造し、『死刑執行双剣エクセキューショナーズ』を用意したインベント。

 練習レベルでの二刀流ならばなんとか形になるかもしれない。


 だが二刀流と収納空間を掛け合わせて使うには、やはり握力不足は否めない。

 特に左手は、反発力に到底耐えられないはずなのだ。


 しかし、インベントは不気味な笑みを浮かべた。


「大丈夫だよ。

 今回は……()()()するから」


「は? 前借り?」


 予想外の単語が飛び出したため不審に思うアイナ。


「おいおい、まさかなんかやべーこと企んでねえだろうな?

 クロが悪さしてんじゃねえのか!?」


「ははは。

 ま、今日は忙しいから先に休むね~。

 おやすみ~」


 インベントははぐらかすように場を後にするインベント。


「ぐうう……なにする気なんだよ!

 こんちくしょう!」



**


「ねえ?

 ベンちゃんなにする気なの?」


「私もわからん。

 わからんけど……面白そうだから任せてみようぜ。

 カッカッカ!」

ギアセカンド!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前借り!? 早くも次の展開が楽しみです((o(。>ω<。)o))
[一言] 前借りは「ケンガンアシュラ」の主人公の技にある。ルフィより王馬さんと思うよ。
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