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心の裏側

 インベントがピットから二刀流を習い始めたその日――


「もうやだああ!」


「ほれほれ、がんばれがんばれ~」


 相変らずシロはモンスター狩りに精を出していた。

 だが『インベント君壱号』が装備しているのは片手剣ではなく、いつの間にか双剣に変更されていた。


「そ、双剣は本当に無理だよ!」


「カカ、片手剣と大して変わんねえって」


「全然違う!

 操作感が完全に別ゲーだよこれ!

 そもそも私は遠距離武器が――」


「はいはーい。

 ベン太郎も頑張ってるんだからシロちゃんも頑張りましょうね~。

 あ、好きなクエストやっていいからさ」


「フミちゃんが用意したクエスト全然面白く無いんだけど!

 『おじさんが困っている。ガルル系を1000体倒せ』とか、『お姉さんが泣いている。フンガ系を1000体倒せ』とか、なんで全部1000体なのよ!?」


「あ~ん? 1000体なんていつの間にか終わってるレベルだろ?」


「フミちゃんみたいな廃ゲーマーと一緒にしないで!」


「ほらほら、クエストがはっじまるよ~」


「ぎゃああー!」


**


 双剣を操る『インベント君壱号』の動きを参考に、インベントは二刀流の練習を始めた。

 夢でのイメージを現実で再現しようとしているのだ。


 睡眠学習の効果は抜群である。


「クカカ、想定通り!」


 ま……あのピット(イケメンおじさん)の言う通り、握力不足ってのはしゃ~ないわね。

 回復魔法を使ったチート筋トレ効果で、すぐにムキムキかと思ったけどさすがにそれはないか。

 ま、地道にやってちょーだい。

 しっかりした基盤さえできてれば、後は継続ってね。

 私は私でじっくりやらせてもらうとしますかね」


 クロは目の周辺を優しくマッサージする。

 すると――


「ぎゃあー! また死んじゃったあ!

 ねえフミちゃん! 双剣って攻撃繋がらないんだけどお!

 フミちゃーん?

 ねえねえ、なにしてんの~!?」


 騒がしいシロに対し、クロは溜息を吐いた。


「やれやれ。

 こっちもこっちで地道にやっていくしかないわねえ。

 はいはーい! 今行くー!」



**


『まだ未完成ですけど、二刀流ですよ。

 ハハハ、模擬戦でもしてみますか?』


 インベントの発言にクロは耳を疑った。


(へ?

 なんで……模擬戦?

 実践で使えるレベルじゃないだろうに)


 インベントの二刀流は完全なる発展途上。

 特に利き腕ではない左手の握力不足は顕著。


(模擬戦するったって、二刀流はまだまだ使い物にならんでしょ?

 あれ? いったん二刀流を止める?

 いやいやベン太郎は二刀流を使うって言ってたな。

 それも『高み』を見せるって……ってことは収納空間と連携させるってことだよね?

 にしても、ロクに練習もしてないのにな~にする気なんだ?)


 インベントがなにをピットに見せるのか?

 クロにも想像ができない。


 そしてもう一つ理解不能な点を、シロが指摘する。


「ねえねえフミちゃん」


「んあ?」


「なんかおかしくない? ベンちゃん」


「ああ、そうなんだよな。

 二刀流でなにする気なんだろうな?」


「あ、それもそうなんだけど、そっちじゃなくて」


「ん?」


「なんで……模擬戦やろうなんて言ったんだろ」


「はあ~ん?

 そりゃあ、あれだろ。

 イケおじに自分の実力を見せたくなったんじゃねえか?」


 シロは首を傾げる。

 クロもよくよく考えると自身の発言に違和感を覚え、やはり首を傾げた。


「やっぱり変だよね」


「ああ、確かに変だな」


「ベンちゃんがピットさんに実力を見せたい理由ってなに?」


「まあ~普通に考えたら――

 二刀流教えてもらったお礼?

 師弟関係に対しての感謝?

 俺ツエーを見せつけたい?」


「普通ならまあそうかも。

 でもどれも……ベンちゃんらしくないよね?

 ベンちゃんってあんまり人に興味無いもんね」


 インベントの興味があるもの。


 一にモンスター。

 二にモンスター。

 三から九ぐらいまで無しで十にアイナ。


 例外的に『門』を開いた相手であれば、人型モンスターと認識するため興味を持つ。

 だが、ピットは『門』を開いていない。



 インベントらしくない行動。

 行動原理から外れている。


 その原因は、やはりふたりにあるのだ。



****



 巨大生物に対し、死をも恐れず特攻する。


 モンスターは町を襲ったりするわけではないので、防衛のためではない。

 探してでもモンスターを狩りに行く狂気の集団。


 狂気に満ちた愛すべき世界。

 それが『モンスターブレイカー』。


 ――――だと思っていた。




 約二年ぶりに復活した『モンブレ』の夢。

 初日は、ただただ歓喜したインベント。


 だが翌日から変化に気付いた。

 大きな変化は無いが、これまで見えていなかったものが見えるようになったのだ。


 それは――『クエスト』である。

 『モンブレ』の世界の住人は、猟奇的狩猟民族ではない。


 基本的に依頼を受けて、モンスターを狩りに行っている。

 ゲーム的にはそういう体裁なのだ。


 クエストの存在を知ったインベントは思う。

 『俺もクエスト受けたい!』――と。



 クエスト欲求が高まっていたインベント。

 そんな時――


「理想を実現させるために、私がいなくなってからも努力を続けることだな。

 フフフ、何年後になるかわからんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだ」


 この発言をした際、ピットの顔は夕日に照らされ少し寂しそうに見えた。


 天啓。

 ハッとするインベント。


(ピットさん……俺の実力が見たいんだ!

 これって……『クエスト』じゃーん!) 


 そう解釈したのだ。

 クエストがやりたくて無理やりそう解釈したのだ。


 そしてピットが滞在できるのは後五日間。

 インベントは後五日間で、ピットが満足するぐらいの実力を見せなければならなくなったのだ。




 時限式クエスト――『ピットに実力を見せよう!』。

 開始。

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