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来客

 慣れない片手剣でモンブレをプレイするシロ。


「ああーん! 技が繋がらないー! なんなのー!?」


「クハハ、無駄が多いのう。

 しゃ~ないけど」


「それになんでソロプレイなの!?

 フミちゃんも手伝ってよ! 援護キボンヌ!」


「キボンヌって……もう死語だろ。

 援護なんてダメダメ~。

 ベン太郎は基本ソロプレイだからな。

 シロもソロプレイでお手本になってやらねえと」


「もー!

 あ、あ、ああ!」


 モンスターの攻撃を避けることができず、倒れる『インベント君壱号』。

 シロも後方に倒れ、コントローラーを投げだした。


「もお~! うう~! 弓が使いたい!

 後方からバンバン撃ちたいよう!」


 シロは起き上がり、クロを見る。


「そうだよ、弓だって別にいいじゃん。

 ベンちゃんを弓使いにしようよ!

 遠距離からバンバン撃ちまくって、安全にモンスターを倒すスタイル!

 ね? そうしようよフミちゃん」


 クロは頷く。


「確かに遠距離攻撃を極めるのは悪くねえな。

 空からの攻撃なら相手は近づけない。

 矢も収納空間があるからほぼ無制限。

 威力に関しても私たちがフォローすればかなり強力な攻撃になる」


「そうそう!」


 クロはニッコリ笑う。笑うのだが――


「でもダメ~」


「なんでよ!?」


「理由は色々だな。

 遠距離攻撃のパワーアップも考えてるけど、後回しでいいかなって。

 例えば弓を使うにしても、ベン太郎がある程度しっかり矢を飛ばしてくれれば、後は私たちで威力と軌道を調整してやればいいだろ?

 パワーアップにそこまで時間はかからないんだよ」


 不満な顔のシロ。


「カカカ、どうしてもって言うなら構わねえよ、弓でもボーガンでも大砲でも。

 絶対に敵を近づかせない自信があるんだったら遠距離特化にしてもさ。

 『黒猿クロザル』みたいな相手が現れても、ハチの巣にできる自信があるならだけどな~」


 シロは頬を膨らませた。


「もう! わかった! わかりました!

 片手剣頑張ればいいんでしょ!」


「物分かりがよろしいことで」



 片手剣の特訓に励むシロ。

 少しずつだが上達していくシロ。


 だがこの時――


 シロに訪れる小さな不幸を、シロはまだ知らない。



****


「やっ~ぱりそういうことか」


 剣の修業を終え、家に戻ったインベントとアイナ。

 アイナはインベントが『モンブレ』の動きをベースに剣を振るっていたことに気付いていた。


「昨日から夢が復活してね」


「知ってるっての。

 ま~た奇声をあげやがって。

 ご近所さんがびっくりするから、どうにかしろ」


「はは、どうにかと言われてもなあ。

 そうそう、偶然なんだけど俺と背格好の似た男性が片手剣を使ってたんだよ」


「偶然じゃねえだろそれ」


「あ、やっぱり?

 さすがマスターダーク。

 モデルを用意してくれたんだ~ありがたやありがたや」


 拝むインベント。


「ったく、先に言えっての。

 おいクロ! 先に言えよ!」


 インベントの腹に向けて声を出すアイナ。

 インベントはお腹をさするが、当然反応は無い。


「ま、いいけどさ」


 椅子にどっしりと座るアイナ。


「ねえ、思い付きでやってみたけど……元に戻した方がいいかな?」


「いんや、今のままでいいよ。

 明確にイメージしてるからだろうけど、格段に動きは良くなった。

 だけど、わけわかんねえ動きが多いから、どうにかしろ」


「いや~どうにかと言われても」


「特にあの、なんか左肘を突き出す動きはなんなんだよ?

 肘撃ちでもする気か?」


「あはは、違うよ~。

 あれは盾で押し出す動きだよ」


「盾持ってねえじゃねえか」


「う~ん、そうなんだけど一連の動きなんだよねえ」


 頭を抱えるアイナ。


「よくわかんねえけど……明日からは使える動きを厳選して練習していこうぜ」



 剣の修業は続く。


 インベントはモンブレで見ている剣術――シロが頑張って練習している片手剣を脳裏に焼き付けながら練習に励む。

 アイナはインベントがどんな動きをしたいの汲み取り、アドバイスをしていく。


 劇的ではないものの、インベントの剣術センスからすれば脅威のスピードで成長していく。




****


 修業10日目。


 朝――

 誰かが乱暴にドアを叩いた。


「おい! ポンコツ! いるんだろ! 出てこい!」


 その声の主は、カイルーン森林警備隊総隊長メルペの息子、デグロムに間違いなかった。


「デグロムだな」


「デグ……誰?」


「あ~気にすんな、アタシが行くから」


 アイナがドアを開けると、下唇を噛み、腕を組み、地団駄を踏むデグロムの姿が。

 どこからどう見ても苛立っている。


「遅えよ! このポンコツが!」


「どうしたんだよデグロム、朝っぱらから」


「テメエに客だ。本部まで来い」


「へ? おいおい急だな」


「うっせえ! さっさと用意して来やがれ!

 俺は伝えたからな!」


 踵を返し、舌打ちし、その場を去ろうとするデグロム。


「ちょちょちょ!

 客って誰だよ!」


 デグロムは振り返り、アイナを見た後、舌打ちして視線を宙に泳がせた。


「『宵蛇よいばみ』だよ!」


「え!?」


 デグロムはそのまま消えてしまった。


「よ、『宵蛇よいばみ』って……。

 『宵蛇よいばみ』の誰だよ!? え? まさか全員!?」


 アイナは家の中に入り――


「おい! なんか『宵蛇よいばみ』が来てるらしい!」


「ほ?」


「ちょ、ちょっと本部まで行ってくるわ」


「行ってらっしゃい」


 アイナは「いやお前も……」と言った後――


「もし来てるとすれば……ロメロの旦那か、フラウあたりか?

 もしもロメロの旦那だったら……またインベントに絡んでくるだろうな。

 う~ん……なんかそれはそれでめんどくせえ気がする。

 おっし、インベント!」


「なあに?」


「お前はひとりで特訓してろ。

 いつもの場所でな」


「はいは~い」


**


 アイナは急いで身支度を済ませ森林警備隊本部まで。


 朝の町を駆けるアイナ。


(いや……本当に誰が来てんだ?

 まあ『宵蛇よいばみ』ってイング王国全土を回ってるだろうし、ちょうどカイルーンに寄ったのかも。

 え? 全員集合? それはそれで嫌なんだけど……。

 やっぱインベント連れてくればよかったかも。


 てか『宵蛇よいばみ』が何の用だ?

 あ! そっか! 支援してくれている理由を話しに来たのかもしれねえな。

 そうに違いない!)



 本部に到着したアイナ。

 入り口にはメルペが立っていた。


「おーい! アイナ!」


「あ、総隊長」


「バカモン、遅いぞ」


「え!?

 いやいや、さっきデグロムが呼びに来て、かなり急いで来たんだけど……」


「なんだと!?

 あのバカ息子、昨日のうちに伝えに行けといったのに!

 あ~しょうがない。アイナ、急いで第四会議室に向かいなさい。

 もうお待ちだ」


「りょ、了解っす!」


 第四会議室は本部の奥に位置する。

 アイナは急いで第四会議室前へ。


(第四は最大六名用の部屋だったな。

 てことは『宵蛇よいばみ』全員ってことはなさそうだな。

 だとすればやっぱり……ロメロの旦那か?)


 扉をノックし、「アイナですが」と呼びかけると――

 「ああ、どうぞ」と入室を促す声。


(ん? 旦那の声か?

 似てるような似てないような)


 アイナはゆっくりと扉を開く。

 すると――会議室にひとりの男性が座っていた。


「――あ!」


 アイナはその人物を見て驚いた。


 その人物はロメロ・バトオ――――



「げ、月光剣?」







 ――――の弟であるピット・バトオだった。

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