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幕間 クレイジーチェリーシンドローム

第12部分 職権乱用ハーレム部隊①

の続きのお話です。

 禁断の果実を食べた女の物語。




****


 それはずっと昔の話。


 インベントとラホイルがオイルマン隊に配属された日。

 イルイックの滝周辺で、ラホイルがモンスターに足を切断された日でもある。


 【ギルフェ】持ちが数名集まり、無事ラホイルの足は接合することができた。

 その後の話しである。


**


「あ~あ、本当に……疲れちゃったなあ」


 オイルマン隊の一員であるレノア。


 新人二名が配属された初日――


 予想外に強いモンスターと出会い――


 ラホイルの足が切断され――


 ケルバブ(仲間)が――ケルバブ(恋人)が戦死した。

 色々なことがあった大変な一日。


 ただでさえ大変な一日だが、レノアはラホイルに対し、【ギルフェ】のルーンを使用し続けていた。

 イルイックの滝からアイレドの町に戻り、病院に運び、接合治療が終わるまでずっと。



(やっと……終わった)


 解放された安堵。

 と同時にケルバブを失った悲しみもやってくる。


「あ~あ……あんのバカ」


 病院の片隅で座りながら目を瞑り、休むレノア。

 目には涙が。


「――レノアさん?」


 急に名前を呼ばれて驚くレノア。

 目の前には、不思議そうな顔をしているインベントが立っていた。


「あ、あれえ? インベントじゃない。

 どうしたの? 忘れもの?」


 そう言いながら涙を誤魔化すレノア。


「いやあ、聞き忘れたことがあって」


「ん~?」


「明日って任務あるんですかね?

 ほら、オイルマン隊、色々あったじゃないですか」


 レノアは呆れ顔で笑う。


「も~、任務は無いわよ。

 あ、でも、今日のことを報告をしないといけないんだった。

 明日の朝、本部に集合ね。

 ちなみに前線部隊は基本的に一日働いたら翌日はお休みなのよ。

 聞いてないの?」


「あ~、そうなんだ。

 知らなかったです」


 レノアはインベントの顔が曇ったことに気付いた。


(そっか……ケロっとしてるから心の強い子だと思ってたけど……。

 任務初日からあんなことがあったんだもん、不安だよね)


 レノアは優しい。


 だが全くもって見当違い。

 インベントは毎日任務――モンスターに会えると思っていたのに休みがあることにがっかりしたのだ。


「よ~し、今からレノアお姉さんが色々教えてあげようかな」


「へ? 今から?」


「ふふ、もともと今日は隊のみんなで懇親会をする予定だったの。

 まあ懇親会どころの状況じゃ無くなっちゃたわね。

 軽くつまみながら、どこかでお話しましょう」


 「よ~し」――そう言って立ち上がるレノア。

 だが、思った以上の疲労によろけてしまう。


「大丈夫ですか?」


「あ、はは。ちょっと疲れてるみたい。

 でもまあ……少しぐらいなら」


「疲れてるなら帰ったほうが……」


「だ、大丈夫よ。

 体力には自信があるんだから。

 それにお腹空いちゃったし。

 私、料理苦手なのよ~。

 このまま家に帰ったら。干し肉齧るだけになっちゃう」


「だったら俺が作りましょうか?」


「え?」


「料理。

 大したものは作れませんけど」


「あ~~」


 レノアは考える。


(つまり……私の家で作ってくれるってこと?

 え~っと、それって、私……狙われてる?)


 インベントの提案は、レノアにとってはまさに不意打ち。

 まさかのアプローチに鼓動が高まる。


 レノアはインベントの顔を見る。


(なかなか可愛い顔……。いやいやそうじゃなくて。

 う~ん…………でもそんなグイグイくる子には見えない。

 ってよく考えるのよレノア。相手は15歳の男の子よ。

 単に、疲れている私にご飯を作りましょうかって言ってくれてるだけ。

 優しい子じゃないの。

 そういうやましい気持ちじゃないわよ)


 レノアは唇に手を当てながら――


「それじゃ~お願いしちゃおうかしら。

 私、舌は肥えてるわよ~」


「はは、男の料理なんで大したものはできませんからね」



**


 インベントにやましい気持ちがあったかと言えば、一切無い。

 ただご飯をつくり、お話をするだけ。

 そのつもりだった。


 だが問題はレノアにあった。


 男が女の部屋に上がったのならば、手を出すのが当たり前。

 さっさとキスのひとつでも仕掛けてこい! という考えの持ち主なのだ。



 だがインベントは新人の15歳。

 それも同じ部隊の後輩。

 更に今日出会ったばかり。


(手なんか出しちゃダメダメ。落ち着きなさいレノア)


 レノアは大人の女性。

 理性でエロい本能を完璧に抑え込む。



 しかし、レノアは本当に疲れていた。

 更に、恋人だったケルバブを失い寂しい。


 そして……極めつけは一杯だけと手を付けたお酒。

 疲れ、弱った身体に駆け巡るアルコール。


 レノアの酒癖が悪いことは森林警備隊でも有名。



 夜が更けて、本当に帰ろうとしたインベント。

 だが潤んだ瞳のレノアはインベントにすり寄る。


 更に絡みついて――


 押し倒して――




******


****


**



「……ヤっちまったあ」


 翌朝、気怠さの中で目覚めたレノア。

 インベントはすでに帰宅している。

 いつ帰宅したのかも定かではない。


「あ~も~酔った勢いとは言え……私はなんてことを……。

 い、いや! そもそも女の部屋に転がり込んでくるインベントが悪い!」


 インベントに責任を押し付けようとするが――


「ハアア~、ど~考えても私が悪いですよねえ!

 にゅああああああ! 同じ部隊の新人に手を出してしまったああ!

 バ、バレたらドン引きされちゃうー!

 どれだけ飢えてるのよおおお、私!」


 酒癖が悪く、男癖も悪い。

 それはレノアの友人からすれば周知の事実。


 だが節操無しだとは思われたくないレノア。

 だから――


「……よし! 無かったことにしよう!

 昨日のことは無かったことにしましょう!

 インベントって口が堅そうだし大丈夫!

 一夜の間違い! 今日からは綺麗さっぱり先輩と後輩よ!」


 拳を握り締めるレノア。

 だがその決意は、拳を開いていくと同時に霧散していく。


「……でも、多分インベントからすれば、私が初めての相手よね。

 ま、またしたくなっちゃうよね……だって男の子だもん。

 デートもしたいわよね……。そうに違いないわ。

 多分、ウキウキしながら帰ったと思うもの。

 『人生で初めて彼女ができたー! やっほ~う!』とか言いふらしてるかも!

 ど、どうしましょう!?」


 そわそわし、家の中を歩き回るレノア。


「ま、まずはしっかり話し合った方がいいわね!

 ちゃんと説明して、年の近い女の子と付き合うように諭してあげないと!

 そ、それでも『レノアさんがいいんだ!』なんて言われちゃったら……。

 え~、いや~ん、も、も~う、困ったわねえ」


 レノアはにやける。

 だが、焦りだす。


「やっばーい、本部行かないと!」


 昨日の件――インベントとヤっちまった件。

 ではなく、任務の件を報告しなければならない。


 レノアは急いで身支度を整え、本部へ。


**


 予定よりも早く集合場所へ。

 インベントが来るのを待つレノア。


 そしてインベントがやってきた。

 どんな表情をすべきか迷うレノア。


 恋人面してくれば、塩対応しようと思っていた。

 だが――インベントはまさに平常そのものだった。


(あ、あれ?)


「おはようございます、レノアさん」

「あ、おはよ」


(あ、あっれえ?)


 会話が始まらない。

 インベントが多弁では無いことは理解している。


 それでも、昨日の今日である。


 なにか話したいことがあるはずと思い、レノアはインベントの顔を観察する。

 照れているのかと思いきや、そんな素振りも無い。


(お、おっかしいなあ。

 ポーカーフェイス過ぎる。

 え? まさか昨日のことは無かったことにしましょう……ってこと?

 それはそれで傷つくわね……い、いやいやアンタ15歳の童貞でしょ!?

 なによそのプレイボーイ感!

 ワンナイトラブは引きずらないってか!? んなアホな!)


 モヤモヤする。

 15歳の少年が、なにを考えているのか全く理解できない。


 知りたい。

 でも、なにから話せばいいのかわからない。


**


 本部での報告が終わり、オイルマン隊の活動休止が言い渡された。


 インベントは今後の配属が決まるまで休暇。

 レノアはすでに配属先が決まっていた。


(や、やばい!

 インベントと話すタイミングが無くなる!)


 帰ろうとするインベント。

 咄嗟に呼び止めるレノア。


「インベント!」


 振り返ったインベントは「どうしました?」と言う。


(あ、あれ、な、なんて言えばいいのかしら……。


 昨日は気持ちかった? って、あ、あほか!

 今日は家に来ないの? って違う違う!

 私たちどういう関係? 先輩と後輩だよ!

 昨日はごめんね? ってなにを謝ってるんだ、私は!

 私のこと飽きちゃった? それはイタイ、イタスギル!

 もおー! なんなのよー! その純粋な瞳!)


 そして絞り出した答え――


「ラ、ラホイルのお見舞いでも行ってあげなさい」


 先輩として、当たり障りのない発言しかできなかったのだ。



**


 その後、レノアとインベントはほとんど接点が無いまま時が過ぎていく。

 オイルマン隊はいったん解散になり、インベントは駐屯地勤務へ。


 それでも、レノアはインベントのことが忘れられないでいた。


 だから会話する機会を伺っていた。

 インベントの動向もチェックしていたのだ。



 そしてレノアは駐屯地勤務になった。

 だがどこを探してもインベントはいない。


 それもそのはず、インベントはロメロ隊となりカイルーンの町に向かっていた。




「もおー! なんなのよおおお!!」


 インベントの焦らしプレイは続く。

 続くったら続く。

R18のガイドラインに抵触してないか、結構不安です……。

ま、大丈夫でしょう!

※300話もあるんだ! 1話ぐらい見逃せ運営様!


ちなみに拗らせたレノアは、ショタ好きになってしまいましたとさ。


……ブックマークしてね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] レノアはにやける。  だが、焦りだす。 「やっばーい、本部行かないと!」 若気る【にやける】 男性が女性のようになよなよして色っぽい様子 鎌倉・室町時代に男色を売る若衆を呼んだ言葉…
[一言] こんな序盤に卒業してたとは思わなかったですw もしかしてレノアさんヒロイン化ですか?w
[一言] あー、インベントの脱(略 はレノアだったのか……。すんごい初期じゃないか
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