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愛の三権分立

「どどどどど、どうしよう!?」


 インベントが危機的に落ち込んでいることを知ったシロ。


 アイナは「やれやれ、気付けないもんかねえ」とぼやく。


「ふっふ~ん、アイナっち」


「ん? なんだよクロ」


「ベン太郎が落ちこんでるかどうかなんてわかりゃしないって。

 ベン太郎がこっちに私たちがいることを知らないように、私たちもベン太郎のことは断片的にしかわからんしね~。

 とはいえ、ま~……私は懸念ぐらいはしてたけどな~、カッカッカ」


 シロが「どうして教えてくれなかったの!」と激昂するが――


「あのな~。

 あん時のシロは、『接続を切る』の一点張りだったじゃねえかよ。

 シロは決めたら頑固者だからな~、へっへ。

 さあて、どうすんだ? シロ」


「ど、どうするって……」


「ベン太郎との干渉をバッサリ止めちまったからマズイ状況になってるみたいだぞ?

 ねえ? アイナっち」


「まあな。

 『モンブレ』……というか『モンブレ』とアンタたちはインベントと深く繋がり過ぎてんだよ。

 切っても切れない関係っていうかな。

 なんか……恋人みたいだな、シシシ」


 クロは「恋人……ねえ」とほくそ笑む。


「ど、どうしよう。

 どうしたらいいかな? フミちゃん」


「自分で考えろい。

 というか答えはもう出てるんじゃねえの?」


「答え?」


「ベン太郎は『モンブレ』が無いと寂しくて死んでしまうかもしれない。

 だったら『再接続』するしかねえよな。

 た、だ、し、アイナっちとしては、ベン太郎がおかしくなるのは嫌だってことだ。

 ででで、ベン太郎をおかしくさせちまったのは、だ~れだ?」


 アイナとシロは目を合わせた後、クロを見る。


「そ、私。

 ってことは私が関わらなけりゃ万事解決ってこと」


 シロが悲しい顔でクロを見る。


「はっ。

 別に消えるわけじゃねえっての。

 こっそりすることにするさ。隠居生活万歳」


「で、でも私、またフミちゃんに頼っちゃうかもしれないし……」


「頼るなよ……自立しろ自立」


 クロは「でもまあ」と言いながらアイナを見る。


「今後はアイナっちもいるから大丈夫だろ」


「ん?」


「仮になんかベン太郎に異常が発生したら、アイナっちが止めればいいわけだ」


「へ?」


「外の世界もコッチの世界も知ってるのはアイナっちだけだろ?

 なんかあったらアイナっちが止める。

 シロと私だけじゃあ暴走して失敗しちまうかもしれない。

 だから第三者機関としてアイナっちが頑張ればいいわけだ。

 司法立法行政。

 インベント三権分立!

 弾劾裁判発動!

 ほ~ら解決だ。

 な? シロもそれでいいと思うだろ?」


 シロは嬉しそうに頷く。


「い、いや、後半なに言ってんのかまったくわからねえ!

 それに、なんかアタシの荷が重くねえか?」


「重く無い無い。アイナっちなら大丈夫」


「そうだよ~。

 むしろアイナちゃん以外にいないよ。

 ベンちゃんのために収納空間ココに来ちゃうんだもん」


「だな~、カカカ。

 愛するインベントのために頑張ってもらいましょう」


 アイナは「愛して無え~よ」と呟くが――


「ええ~?」

「ホントにい~?」


 にやにやするシロとクロ。


「な、なんだよふたりして」


「だってな~」

「ねえ~フミちゃん」


「息ぴったりだな……そういや幼馴染だったか。

 ったく、勘繰るな勘繰るな。

 アタシとインベントはそ~いうのじゃねえんだ」


 目を合わせるシロとクロ。

 クロが「ホラ、聞けよ」とシロに発言を促す。


「もお~。

 でもでも~、アイナちゃん~。

 収納空間の中に入るのって、すっごい大変だったでしょ~?

 ベンちゃんのためにすっごいすっごい頑張ってると思うの。

 ど~してそこまでやってあげるのかな~? かな~?」


「ん~……」


「ベンちゃんと、アイナちゃんってすご~く深く繋がっている気がするの。

 ほら、瀕死の危機を一緒に乗り越えたりもしたじゃない?

 『モンブレ』だってふたりのヒミツって感じするし。

 収納空間(この世界)のことはベンちゃん以上にアイナちゃんが知ってるし。

 う~ん、すご~く深い繋がり。

 すご~く深い()()の繋がり……むふむふ」


 アイナは目を細める。


「なんかイキイキしてやがんな~シロ」


「ええ~だってえ~」


「カカカ、シロは性別関係無く恋愛モノが大好物だもんな」


 シロは体をくねらせる。


「ここじゃ、恋バナする相手もいないし、そもそもフミちゃん以外いないし~」


 アイナは大きく溜息を吐いた。


(まったく……。

 ああ、もう、期待の視線がかったるい。

 ま、インベントの夢の件も解決しそうだし……少しぐらい恋バナってやつの話題提供をしてやりましょうかねえ)


「正直……恋愛って感じは無いな。

 別にインベント見てて、かっこいい~とか思わねえし」


「ん~、ドキドキしたりしないの?」


「ん~ドキドキか。

 あ~、ドキドキハラハラすることは多いぞ。

 『え? そんなことすんの!?』みたいな驚きだな」


 シロとクロは小声で話す。


「フミちゃん……これはどうなんでしょうねえ」

「まあドキドキはしてるみたいだぞ。

 吊り橋効果的な感じはあるはずだ。

 本人が恋心に気づいてないだけかもしれん!」

「なるほどー! 鈍感系彼女だね!

 だったら可能性はありそうだね!」


「だ~れが鈍感系だ。

 ハア……盛り上がってるところ悪いんだけどさ。

 そもそも、インベントのヤロ~に恋愛感情なんてもんがあんのかね?」


 シロとクロは唸りだす。


「どう思う? シロ」

「なんか……恋愛とか興味無さそうな感じはあるよね」

「あれじゃね? ベン太郎、モテるかどうかはわかんねえけどさ。

 すっげえニブそうじゃね?」

「あ、わかる。女の子のアピールを完全にスルーしそう!」

「パンツ見てもスルーしそうだしな。

 完全に鈍感系主人公っぽいもんな~。

 鈍感系のクセにハーレムルートにも進まないとか修行僧かよ」

「え~、面白くないよ~」

「こうなったら、今後は手あたり次第にナンパするベン太郎に仕向け――――」


 アイナの視線を感じ、クロは「な~んて冗談だよ、ナハナハ」と誤魔化した。


「ま、そんなワケでアタシとインベントはそういう関係にはならねえんじゃねえの?

 ワリ~な」


 頬を膨らませるシロ。


「でもお! 結局アイナちゃんの気持ちはど~なの?」


「アタシの気持ち?」


「嫌いじゃないんでしょ?

 好きなんじゃないの?

 愛してないの?

 ラブかライクかどっちなのよ!?」


 クロは「言い方、ふっる」と呆れる。

 アイナは笑う。


「ま、嫌いじゃねえよ。

 好きだよ。

 一緒にいて面白いしな」


 シロとクロは歓声をあげ、ハイタッチする。


「あ~もうめんどくせえな。

 インベント好き好き、大好き~。

 これでよござんすか?」


 シロは満面の笑みで頷く。

 クロは笑いを押し殺している。


「もういいだろ。アタシはそろそろ元の世界に帰るよ。

 てかもう夜だったりしないのか?」


 クロは「まだ昼過ぎだと思うぞ」と言う。


「へ~、何時間もここにいたと思ったのにな。

 ああ、時間の流れが違うってやつか。

 おもしれえもんだ」


「名残惜しいけど元の世界に戻ってもらおうかね、シロ」


「そうだね~」


「それじゃ、ポチっとな」


 クロがナニかを押した動作をした後、部屋の中に収納空間に入ってきた時のアイナが現れた。

 グルグル巻きになっている変態アイナである。


 続けて、アイナの五感が無くなっていく。

 この世界に順応しているため、アイナはさほど驚かない。


 元の身体に魂が戻っていくんだと理解した。


「うん……問題無しだな、シロ」


「ふう、良かった」


「それじゃあ外に出すぜ~アイナっち~」


 アイナは先程までのように喋ることはできない。

 念話に切り替える。


『よろしく頼む~』


「了解了解~」


「あ、アイナちゃん。

 えっとね、また……また遊びに来てね」


『遊び……て。

 いいのかよ? なんかバラバラ死体になっちまうんじゃなかったっけ?』


「カカカ、まあその辺は大丈夫なように調整しとくよ」


「うん、フミちゃんに任せれば大丈夫だから」


『そっかそっか。

 あ。また、『アイナの冒険』がやりてえな』


「カカ、わ~ったよ。準備しておく」


『へへへ、そりゃ楽しみだな』


「それじゃあ、アイナちゃん。

 ベンちゃんによろしくね」


『おう~、了解了解』


 現世うつしよ幽世かくりよを越えた奇跡的な出会いは一旦終了となる。

 ――最後、()()()()とともに。



「あ、アイナっち、言い忘れてた」


『ん~? なんだ~?』


「多分なんだけどね~。

 この世界でのアイナっちの発言なんだけどね~」


『ん?』


「多分、ベン太郎にも届いてたと思うんだよ。

 ――――愛の告白も含めて」





『……。

 ……。

 …………?

 …………!?

 ――――――――ぶええ!?』

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