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魔法のランプ

願いを叶えよう。

 アイナはクロの顔を観察しつつ――


「悪態ついてっけどさ、な~んか憎めないんだよな~。

 ひねくれたガキんちょみたいな感じ?

 ひねくれたガキんちょなんて好きじゃねえけどさ。

 アンタたち気付いてないかもしれねえんだけどさ、なんでか知らねえけど感情がわかるんだよな」


 クロは冷静に「ふむ? どういうことだ?」と問うが――

 アイナは一笑し――


「冷静なフリして、結構焦ってんな~。

 なんか心がグルグルザワザワしてっぞ」


 クロは片眉をぴくぴくさせた。

 続けてシロを睨む。


「うおい! どういうことだよ!?」


「え!? え!?」


「なーんでサトラレみたいな能力与えてんだよ!

 計画台無しじゃねえか! こんのポンコツ!」


「し、知らない……よ」


「せーっかく、一件落着で元通りなはずだったのに!

 どうしてこう大事なことを隠してやがんだ!

 むっつり姫子! なんでも報告しろって言ってんだろ!」


「知らないって言ってんじゃん!

 そもそもアイニャーが初めてのお客さんなんだからわかるわけないじゃん!

 それに、むっつりじゃないし!」


「カカカ、むっつり助平なのは間違いないだろ。

 お宝スケベフォルダ、ハッキングしてやろうか!」


 顔が紅潮するシロ。


「バカ!

 バカバカ!

 バーカ! バーカ!

 バカバカバカ!」


 シロは一心不乱にキーボードを連打する。

 すると――


「おわっ!?

 やめろやめろ! チャット欄を『バカ』で埋め尽くすんじゃねえ!

 あ、やば――! 落ちる! ひ、卑怯ひきょ――――」


 慌てるクロだが、数秒後完全に停止してしまった。

 微動だにしないクロ。瞬きさえしない。


「え? ど、どうしたんだ? クロ。

 お、おい、シロ。

 クロが固まっちまったぞ」


「フン。

 むかついたから強制停止フリーズさせた。

 ……大丈夫、数分したら戻ってくるから」


「お、おう、そうか」


 沈黙。

 示し合わせたように、お茶を啜るふたり。


 アイナは、シロ周辺の赤くトゲトゲしたオーラが、ゆっくりと朧げな白いオーラに変わっていく様子を見ていた。


「落ち着いたみたいだな」


 シロは頷いた。


「ホントに感情が見えてるんだね。ちょっと恥ずかしいな」


「まあ、身体の周りにモヤモヤしてんのが見えるだけだ。

 ずっと気付かなかった。

 というか、クロがさっき悪ぶって説明してた時、モヤモヤが妙に優しい感じでな。

 すっげえ変な感じだったから気付いたのかもしれねえな」


 シロは「そっか」と言いスプーンでカップの中をかき混ぜる。


「ちゃんと、私から話すね。

 フミちゃん……クロちゃんは悪くないの。

 そりゃ、最後の方はちょっとエスカレートしちゃったけど……」


「ちょっと……か?」


 シロは首を横に振る。


「ベンちゃんを乗っ取るみたいになっちゃったのも、元はと言えば私が原因だし。

 ねえ、アイニャー……う~ん、やっぱりアイナちゃんにしよっと」


「へへ、どっちでもいいぞ」


「うん。ありがと。

 えっとね、フミちゃんと私は幼馴染なの。

 ず~っと友達だったの」


「あ~そんな感じがするなあ」


「でもね、この世界……というかこの部屋……というか収納空間の中?

 なんて言えば正しいのかわからないけど、始めは私、ひとりだったの」


 アイナは予想外の発言に、自然と「ふぇ?」と声が出た。


「ずっとひとり――まあ不思議と寂しいとかは感じなくて。

 そういうものなのかな~って感じだったの。

 だけど……ベンちゃんが死んじゃいそうになって……」


「死んじゃう?

 いつだ?

 あ、アドリーに背中刺された時か!?」


「あ~背中より少し前かも。

 あの頃は本当に外の情報が無いからなにが起きたのかわからないんだけど……」


 アイナは数秒考えた後――


「アドリーの前ってことは、ロメロの旦那と遊んでる頃か。

 そんでもって死にかけたってなると……。

 あ、わかった! 紅蓮蜥蜴ファイアドレークだ!

 炎を受けて死にかけてたんだ」


「え? そんなことがあったんだ」


「おう。

 いや~確かにあの時はヤバかった。

 幽力の炎を喰らっちまったんだけど、どう手当てしていいのかもわからなくてな。

 数日意識が戻らなかったんだ。

 確かに生死の境を彷徨ってたな」


「うん。

 あの時は本当に危なくて、私ひとりだったら多分死んでた。

 ベンちゃんも、私も。

 あの時、この部屋も無茶苦茶になっちゃったの。

 壁にヒビが入って、モヤみたいなにかが充満してきて。

 どうしていいかわからなくて……何度も『誰か助けて』って祈ってたの。

 そうしたらフミちゃんが現れたの」


「あ、現れた?」


「突然現れて、すっごく驚いたの。

 でもフミちゃんは冷静で、『なにが起きてんだ?』って。

 説明したらすぐ理解してくれて、『アナザー空間にアボイドさせて』みたいな感じで……。

 って言ってもわからないよね。ご、ごめんね。

 とにかくフミちゃんが全部解決してくれたの。

 フミちゃんは意地悪だけど、本当に頼りになるんだよ」


 アイナはフリーズしているクロを眺めながら――


「ま、確かに頼れる感じはあるな」


「えへへ、そうなんだよ。

 フミちゃんって努力を誰かに見せるのが嫌いでね、こっそり準備して、しれ~っと『私、デキますわよ』って感じの子なの」


「ハハ、らしいな~」


「まあ、そんな感じだから、収納空間ココでも色々と頼っちゃって。

 あ、そうそう、ナイフが心臓に刺さっちゃった件。

 あれもフミちゃんのお陰なんだよ」


 シロは楽しそうに語る。


「死にかけた件があったから、フミちゃんには『ベンちゃんが死なないようにして』ってお願いしたの。

 『不老不死とか無理ゲー』って意地悪言われたけど、色々考えてくれて。

 それで、『ITフィールド』っていうのを準備してくれたの」


「あ、あいちい? なんだって?」


「『ITフィールド』。インベントトランスファーフィールドの略なんだって」


 シロは頭と心臓に手を当てた。


「脳と心臓部分を攻撃されると死んじゃうでしょ?

 だから頭と心臓部分にだけ絞って発動する絶対転送領域を作ってくれたの。

 まあフミちゃんは欠陥品だって言ってたけど」


「す、するってえと、今でもインベントの心臓を狙った攻撃は防げちまうのか?」


「ん~多分」


「ほえ~、すっげえな」


 感心するアイナに、シロは嬉しくなる。


「そうなの。フミちゃんは凄いんだよ」


 だがすぐに俯いた顔になる。




「フミちゃんのお陰でどうにか助かったの。

 でも、ベンちゃんって危険に突っ込んでいっちゃうでしょ?

 そっちの世界って強そうなモンスターもいるし、強い人も結構いるみたいだし。

 私……すご~く不安になっちゃって。

 だからフミちゃんにお願いしたの。


 『ベンちゃんを強くして』って」

Absolute Transfer FIELD?

NO! Invent Transfer FIELD!

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