変身
》どゆこと!?
なんで、話しかけてきてんだよ('Д')!?
》わかんないよ・・・
》完全に私たちのことを気付いてる?
どこまで知られてるんだ?
そもそもなにしにここに来たんだよ!?
侵略か!? 制圧か!?
》わかんないってば!!
》ま、攻めてきたって感じじゃねえけどさ~。
コンタクトとってくるなんて想定外もいいとこだぜ
なあなあ、追い出しちまおうぜ
》多分無理だと思うよ。出口はまたベンちゃんに閉じられると思う
》だったら無視すっか
なんでかこっちの声が聞こえてるみたいだし
チャットで話せば気付かれないだろ
( ゜Д゜)名案! やり過ごそう!
》うん
でもでも、ホントなんで来たんだろ?
》知らねえよ
》私たちのこと知ってるのなら、今後も来ちゃうかもしれないよ?
》そんなのセキュリティ強化すればいいだろ
》これ以上強化なんてできないよ!
今日だってまったく気付けなかったんだよ!?
》なんか手があるだろ、イケルイケル
》私、フミちゃんみたいにずる賢く無いから無理!
》じゃ~、どうすんだよ?
居留守し続けるしか・・・ってまさかシロ、会話でもする気か?
》・・・・・・・・ダメかな?(;´∀`)
》まじかよ~
なに企んでるかわかんねえぞ?
こんな場所に来るなんてよっぽどの理由だろ?
マジでなんで来たんだ?
》それは…………わかんない
》やっぱ関わんねえほうがいいって
》でも~アイナちゃん、良い子だよ?
》だからってさあ
》でもでも
》(-_-メ
だー、もうわかったわかった!
シロがリーダーだからな。好きにしろよ
》ありがとう!
》どういたしまして!!
**
収納空間に生物が――アイナが侵入した。
二度目の侵入である。
生物を嫌う収納空間としてはまさかの異常事態。
それもなんと、今回は喋りだした。
収納空間の中では喋ることはできない。
喋る以前に、小指ひとつ動かすことはできない。
理が違う世界。
そんな収納空間の中でアイナが喋る。
否――喋っているように感じたのは、アイナのルーンが【伝】だからだ。
理外の通信手段である。
アイナの念話に対し、少女と思われるふたりが叫びだした。
驚かせるつもりは無かったが、会話できるかもしれない事にアイナはとりあえず安堵した。
(お~話しかけれた~。
話せるかどうかが一番不安だったんだよな~。
しっかしまあ、死んでねえんだけどな。
傍から見たらしゃ~ないか)
『あ、ども~、アイナです~。
死んでませんよ~。な~んかグルグル巻きになってると思うけど、元気いっぱい。
いや……元気いっぱいって感じじゃないか。
え~っと、ちょっとインベントのことで話があってきたんだけど。
あっれえ? ちょっとちょっと~? いますか~?
こっちからは、まったく見えないんで、話し声しか聞こえないんですよね~。
お~い? おいお~い?』
反応が無い。
それでもアイナは話し続ける。
『――まあ、突然押しかけたみたいで申し訳ないんだけど。
ちょ~っとお話しできたら嬉しいんですけどね~?』
すると「あの~」とオドオドした声が返ってくる。
『あ! ハイハイ!? こんちには!』
「こ、こんにちは」
『え、えっと、私、アイナ・プリッツです』
「あ、よく知ってます」
『あ、知ってる? そりゃありがたい。
えっと、なにから話せばいいのかな、ははは』
見えない相手に対し、文字通り距離感が掴めないアイナ。
すると――
見えない相手が小声で呟く。
「――え? なに?
あ、質問リスト? ありがと、フミちゃん。
ゴ、ゴホン。
え~っと、こちらから質問していいですか? アイナさん」
『あ、どうぞどうぞ』
「えっと、『敵対意思はありますか』――ってなに聞かせるのよ! フミちゃん!
え? 一番重要? そ、それはそうかもしれないけど。
聞き方があるでしょ!?
あ、アドリブで? 私がそういうの苦手だって知ってるでしょ!」
アイナはもう一人が裏で糸引いてる――というよりも糸を拗らせていることを感じつつ――
『敵対意思は無いです』
「無いって、フミちゃん。え? 溜息止めてよ!
つ、次ね。
『私たちのことをどこまで知っている』――か教えてください」
『え~っと、正直よく知らないです。
ただ、ふたりが……存在していることは、以前、収納空間に入れられた時に気付いてました。
その時、話し声が聞こえてたのを覚えてるから。
あ~、誰かいるんだな~って』
「き、聞こえてたんだ。
え? あ、次ね。次は五番目の質問ね。
え~っと『YOUは何しに日本』……なにこれ!
えっと、違くて、ここに来た目的を教えてください」
『あ~目的ね。
インベントの件で来ました。
インベントがえ~っとモンブレとかいう夢を見れなくなったんです』
「……え?」
『あいつ、そのせいでおかしくなっちゃって。
まあ元々おかしいんですけど、元気無いっていうか。
だから、ここに来ました。
ここなら……ふたりならどうにかできるんじゃないかと思って』
沈黙――
そして――
「え? 最後にこれを聞け? え、やだ。自分で聞いてよ。
こ、こんな時ばっかりリーダーリーダー言わないで!
も、もう、わ、わかったわよ。
あの~『縛られるのが好きなんですか? 変態なんですか?』――です」
『んあ? …………違う違う! 好きじゃない! 趣味でもない! 変態でもない!
色々収納空間に入るために試した結果、なんかどうしようもないことになっちまっただけ!』
動揺するアイナ。
そんなアイナは「ま、危険では無さそうか」ともう一人の少女と思われる声を聞いた。
直後――全身に電気が走ったかのような感覚を覚えるアイナ。
肉体の感覚が無い状態だったが、急にニョキニョキと身体が生え、全身に神経が――そして血が行き渡っていく。
ほどなくして柔らかな光が瞼に――
生暖かい風を頬に――
五感を取り戻していくアイナ。
(む? 身体が戻ったのかニャ?
鼻頭が痒いニャ……ニャニャニャ?
ニャ!? 痛いニャ!
にゃんだ? 爪が鋭くて、指が短いニャ?
え? ニャ? ニャ?)
瞼を開くアイナ。
様々な情報が飛び込んでくる。
今いる場所、ふたりの少女、簀巻きのアイナ。
だがそんなことよりも驚いたのは――
「にゃ、にゃんだこれ!?
手、手が獣みたいににゃってる!?」
小さいが鋭い爪、黒い体毛、そして――肉球。
そんなアイナを見て、ケタケタと笑う黒のドレスを纏う少女。
「ま、どこからともなく声が聞こえてくるのは怖いからね~。
とりあえず、オトモアバターを用意しておいたわよ~」
そして、「可愛いよお~」と目を輝かせている、純白のドレスを纏う少女。
「フミちゃん、グッジョブ!!
アルルーだあ~。か~わいい~!」
「カカカ、私たちの色に合わせて黒地に白ブチよ~。
アイニャーってところかしら」
状況が飲み込めないアイナ。
巨大なふたりの少女を見上げ「なんだ?」と言うつもりが「にゃんだ?」と言ってしまう。
もちろん少女たちが巨大なわけではない。
アイナ。
マスコットキャラクター、アイニャーに変身。
どちらかというと犬派です(どうでもいい




