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ノルド隊(仮)② 新しいおもちゃ

総合評価が200ポイント超えました。

ありがとうございます!

 ノルドは危険区域を我が物顔で突き進むことができる。

 これは探知能力の高い人間の特権である。


 探知能力が無い人間が危険区域を突き進むことは自殺行為であり、森林警備隊の死傷者の大半がモンスターからの不意打ちである。

 不意を突かれれば人間はあっけなく致命傷を負ってしまうのだ。


 インベントを連れて森林に入ることが多くなったノルドであるが、基本的にはやることは変わらない。


 モンスターを見つけ――殺す。

 それに小さなモンスターであればインベントに任せることが加わっただけ。

 シンプルである。


 ただし一人で倒すのが困難なモンスターもいる。

 危険な気配を感じた場合は、ルートを変更している。



 さて――


 ノルドがモンキータイプのモンスターを見つけ、先制攻撃を仕掛けた。

 ラットタイプや小型のハウンドタイプはインベントに任されるが、モンキータイプは基本的にはノルドが受け持った。

 猿をベースにしたモンスターは、サイズはゴリラ並みでありサイズに見合った攻撃力を誇る。

 一撃で致命傷に至る可能性があるためインベントには任せない。


 モンキータイプはサイズによっては戦闘を避けるが、今回はギリギリ倒せると判断しノルドは攻撃を仕掛けたのだ。


「む!?」


 ノルドの攻撃にギリギリ反応したモンスターは、咄嗟に片腕で防御した。

 ノルドの斬撃はモンスターの体毛に届く前にオーラのようなものに弾かれてしまった。


 ノルドは距離を取らざるを得なかった。


「な、なんですかね!? あれ!」


「……イレギュラーか」


「い、イレギュラー?」


「特殊能力を持ってるタイプだ。お前も遭遇したんだろう?

 光の矢を放つようなタイプだ」


「ああ! なるほど! ユニークタイプですね!」


 インベントは初任務の際にケルバブを絶命させ、ラホイルの足を切断したウルフタイプを思い出した。


「あれは……恐らく【大盾ソーン】だな。幽壁で腕を強化してやがる。

 幽壁は通常の武器攻撃は全部防がれちまうからな……幽力を削って……ちっ。

 長期戦になっちまうな」


「ど、どうするんですか?」


 威嚇してきているモンスターと睨みあいながらノルドは考える。


「普段なら……逃げるな」


「に、逃げる?」


「一対一で勝てる可能性は無くは無いがさすがに危険だ」


 インベントは思う。


(こんな面白い相手を目の前にして……逃げる??)


 物凄~く残念な顔をするインベントを見て、ノルドは頭を掻いた。


(まあ……思ってることは大体わかる……殺したいんだろ?

 チッ……しゃあねえか)


 ノルドは深く集中する。


「俺が……囮役だ」


「え?」


「俺がひきつけてやる。だからお前が……殺せ。できるな?」


 インベントはゾクりとした。

 ノルドと協力してモンスターを殺すのは初めてだからだ。


「もちろんです!」


「だったらさっさと隠れろ」


「はい!」


 インベントは茂みに隠れた。


「さて…………やるか」


 ノルドは上段に剣を構えた。

 と、同時に駆けた。


「ハッ!!」


 モンスターからすれば一瞬で間合いを詰められたかのように感じたであろう。

 どうにか両手を交差し、剣戟を防いだ。


 ノルドは押し斬ろうと試みるがすぐに諦めた。


(硬すぎる。無理だな。剣がもたん)


 ノルドは大きく息を吸った。


不殺ころさず。高速……鈍ら斬り)


 ノルドは再度接近しつつ高速斬撃を叩き込む。

 だが握りを甘くすることで剣はモンスターの防御を滑るように避ける。


(防御しなければ斬って落とす。防御すれば斬り流す。鈍ら斬り。

 アイレドで俺以上の囮役はいないぜ……)


 ノルドの高速斬撃にモンスターは対応できていない。

 ただし絶対的な両腕の防御を破るには、ノルド一人ではかなり無理をしないといけない。


(そろそろだろう? 動かねえように足止めしてやってるんだからよ……)


 ノルドはインベントがどこに行ったのかおおよそ把握している。


 左からなら右に注意を引きつければいいし、逆もまた然り。


 だが今回は……上からだ。

 ロゼとの模擬戦同様、上空からの攻撃――


 模擬戦の際はロゼが相手だったのでかなり加減した。

 それも模擬戦とは違い槍での攻撃。


 絶命させるには十分な攻撃――


れい!!」


「はいいいい!!」


 インベントの攻撃は……見事モンスターの左肩から入り胸部に貫通した。

 そしてインベントはすぐにモンスターから距離をとった。

 ヒットアンドアウェイは叩き込まれているのだ。


「ギアアアアアアァァアア!!!」


 鮮血が舞う。確実に絶命するレベルの傷。

 見事モンスターを倒した――かに思えた。


「ギアア! ギアア!!」


 モンスターは槍を引き抜き、血飛沫が舞ったが傷口を押さえ悶えている。

 だが倒れず、悶えているが顔から殺意は消えていない。


「……傷口が塞がりやがったな」


「え、ええ?」


「幽力で無理やり傷を塞いだってところか?」


「そ、そんなことできるんですか?」


「ーー知らねえよ。だがまあ……血が止まってやがる」


 傷口は体毛で隠れているが血は止まっていた。

 ノルドは判断を誤ったのではないかと思っていた。


(【大盾ソーン】による防御、そんでもって致命傷を防いじまう回復力。

 こいつは確実にBランク以上だな……。逃げの一手だったか……クソ)


 モンスターは大きさや特殊能力イレギュラーの有無でS~Dランクが分けられている。

 Bランクのモンスターは複数部隊で討伐するのが基本となっている。

 ノルドはどうにか討伐できるかと考えたが、逃げるのが正解だったと判断した。


 「逃げるぞ」とインベントに言おうとした際、ノルドはインベントの顔を見た。

 そして直感的に理解してしまった。


 インベントが嬉々としていることに。

 逃げる気なんて毛頭無いことに。


「それじゃあ――もう一回いきましょう」


「あ、おい!」


 インベントはもう一度反発移動リジェクションムーブで飛んだ。


「あのバカ……ちい!」


 インベントを止めそこなう。

 そしてモンスターは怒りに任せノルドに迫ってきている。


「クソ……やるしかねえか!!」


 怒りに任せ両腕を振り回してくるモンスター。

 ノルドは回避しつつ攻撃するタイミングを窺う。


(インベントの空中から突き刺す技は、モンスターを足止めしないと使えねえ。

 もう一回……切り刻んでやる!)


 どうにか攻守交替したいと思い、剣を抜こうとしたときノルドは違和感を覚えた。

 ――何かしてくる。


 野生の勘がノルドに危険信号を鳴らしていた。


「プッ!!」


 モンスターは口に含んでいた何かを吐き出した。


「クッ!」


 ノルドは咄嗟に避けるが、吐き出されたものは血液だった。

 広範囲の血霧にノルドの判断が一手遅れた。


 モンスター渾身の一撃。


 ノルドはバックステップで後退しつつ、剣で攻撃を防いだ。


 ――パキン


 簡単に剣が折れてしまった。


(クソ! ルーンで強化された攻撃は防げねえか!)


 吹き飛ばされつつどうにか体勢を立て直すノルド。


 ノルドは折れた愛剣を眺めつつ、本格的に逃げる算段を始めた。

 ノルドは勿論、インベントも逃げる能力は高い。

 何せ反発移動リジェクションムーブで空を飛べるからだ。


 ノルドがインベントを探し、逃げることを伝えようとした時、ノルドは目を疑った。


「あは」


 インベントが再度槍でモンスターの左肩を貫いていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「あは」は完全に殺人鬼の笑い
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