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分岐点へ①

「ハア? 私が死ぬう?」


「ああ、その通り」


「バカらしい。

 誰が? いつ? どうやって? 私を殺すのよ?

 『雷獣王ライジンガ』はもういない。

 新しいモンスターでも用意してんの? それともまさか、アンタが?」


 インベントはイスクーサを指差した。


「ハッハッハ、私では無いよ。

 というよりも私では君を仕留めきれない気がするな。

 攻撃はあまり得意では無いのでねえ」


「じゃあ誰よ?」


「そこまではわからない。まあ予想はできているが。

 だが、数日――いや三日以内に死ぬ。これは決定事項だ」


「カカ、あほらしい」


「恐らく、重傷を負う。それも今日。

 そして生死の境をさまよって……死ぬ。

 私にはわかるんだよ。インベント君」


 不確かな情報。

 だがイスクーサはインベントの死を確信している。


 イスクーサのやっているのは予知である。

 そしてインベントは絶対当たる予知をできる人物――クリエ・ヘイゼンを知っている。


 イスクーサが同じ能力を有している可能性はゼロではないのだ。


「チッ、テメエも予言者系か?

 ったく何人いやがんのよ、チート系能力者!

 アンタ、【フェオ】だな?」


「ハッハッハ、本当になんでも知っているな。

 その通りだよ」


「カア~、よりにもよって死の予言か! ありえない!

 そんなもん当たるわけねえだろうが!」


 イスクーサは笑う。


「当たるさ。

 【フェオ】は対象が近ければ近いほど未来が見える。

 この距離だ。予言は絶対に外さない。

 ついでに言おうか。

 君は絶対に死ぬ。だが数日以内だ。今日では無い。

 だがね、君の大切な人は――今日死ぬ」


「ンア?」


「見える。見えるよ。

 誰か知らんが、君の大切な人は死ぬし、そして君も消えていく。

 ハハハ、これは面白い。どういう経緯を辿るのか興味が尽きないな」


「ざっけんな。

 だったら、私がこのまま上空に逃げちゃえばどうよ?

 誰かが殺しに来る? クラマか? それとも空飛ぶモンスター?

 あり得ねえんだよ、私が死ぬなんてな」


「ハハッ、好きにするといい。どうぞご自由に。

 いやはや、たくさん話すことができて楽しかった。

 実に有意義な時間だったよ」


 会話を切り上げようとするイスクーサ。


「ヘッ、バカらしい」


 インベントは呆れ顔。

 手櫛で髪を掻き上げる。


 その動きは――殺意を隠すためだ。


(――オマエが死ね!)


 不意打ち。

 回転を加えた徹甲弾をイスクーサの顔面目掛けて発射した。


 だが――


 イスクーサの目線は来ることがわかっていたかのように徹甲弾に。

 続け、徹甲弾を指差した。


 そして、徹甲弾は指に到達する直前のところでピタリと停止した。

 推進力も回転力も全てを失い、地面に落下する徹甲弾。


(――なにしやがった??)


 イスクーサはくつくつと笑ってる。

 先ほどまでは、年相応の落ち着いた雰囲気のイスクーサだが、嘲笑うような表情に変わり、印象がガラリと変わった。


「悪くない攻撃だけど、どうも焦りを感じるね、感じるよ。

 死の予言はそんなにショックだったのかなあ? それは申し訳ないことをしたねえ。

 だからといって腹いせは良くないと思うけどね。フフフ」


「めんどくさ。

 悪の親玉らしくユニークスキル持ちか」


「君が私を殺すのは無理さ。

 私はさあ、勝てる勝負しかしないんだよ。

 いや、負ける勝負はしないというのが正しいかな。

 君の目の前に現れたのだって、負けない自信があったからだよ。

 試してみるかい?」


 両手を広げるイスクーサ。

 それに対しインベントは――


(幽結界持ち。

 そんでもって予言能力。

 さらによくわからねえ能力。

 初見殺しくさいんだよな~。

 ど~考えてもやばい)


 宙に浮くインベント。


「初見で特攻は趣味じゃないのよ」


「ハハハ、賢明だ。

 だがどこに行くのかな?

 大切な仲間は放置していいのかい?」


 見上げているイスクーサに対しインベントは中指を突き立てた。


「うっせえ。

 私に大切な仲間なんていないのよ。

 ソロプレーヤーは孤独を愛しているのよ。

 ま、死の予言なんてま~ったく怖くないけど。

 ぜ~んぜん怖くないけど、一応安全な場所にでも――!?」


 急に白目を剥くインベント。

 そのまま受け身も取らず大地へ倒れこむ。


 さすがにイスクーサも驚いたのか「お、おい?」と声をかける。


 インベントはむくりと起き上がり――


「な、なにすんのよ!?」


 叫ぶインベントに、イスクーサは困惑する。

 「何もしていない」と言おうとするが――


「ああ!? バカバカ、なんでいかなきゃいけないのよ!

 は!? 心配? どーでもいいでしょうよ!」


 ひとり話し始めたインベント。


「ちょ、ちょまて!

 や、やめろやめろ! アクセス権を奪うな!

 ひ、ぎゃははははは、や、やめて、マジで!」


 ひとり――体を捩じったり、理解不能な手の動きをするインベント。


「ぼ、ボスがそこにいるんだから!

 今攻撃されたら死んじゃうわよ!

 落ち着け、シロ! まだ慌てる時間じゃ――ってそこはダメ!

 だああああ! もおおおおー!!」


 インベントは大地を踏んだ。

 次の瞬間、上空に舞い上がる。


「わかったから! 行くから!

 もお!」


 インベントは嵐のように去っていく。

 イスクーサを残して。



「――――なんだったんだあれは?

 二重人格…………か?」



****


 一方――

 死の予言をされているとは寝耳に水のアイナさん。


 後方支援部隊が待つ野営地へと歩いていた。

 宰相秘書官のエウラリアと、皇女であるファティマが縛られている珍道中。


 エウラリアを最前線に歩かせ監視しつつ、アイナはファティマに話しかけた。


「なあなあ、ファティマさんよお」


「どうしました~? アイナさん」


 アイナはファティマのナイフを手に持った。

 ゼナムスを刺し殺そうとしたナイフ。


 高価な一品なので、アイナが預かっているのである。


「な~んでまた、王様を殺そうとしたんだよ?」


「ふふ……。そうですね~。

 ずっと準備はしていました。

 インベントさんが搔き乱してくれたのは千載一遇のチャンスだと思ったんです」


「チャンス?」


「ゼナムスは、あんなのでも王ですからね~。

 中々殺すタイミングも無いもので。あはは~」


「いやいや、そもそもな~んで殺そうと?」


 縛られながらも柔和な表情のファティマから笑みが消える。


「――オセラシアを守るため。


 ゼナムスは本当のクズです。

 あるのは虚栄心と、無駄な石像を造る才能だけ。

 だったら、殺しちゃおうかな〜っと」


「だ、だけど」


「私には兄がいることはお話ししましたっけ?

 ガラム兄さん。

 とても優秀な男ですが、優秀過ぎてゼナムスに嫌われてしまいました。

 僻地に飛ばされています。

 そんな兄は、もうすぐ子を授かります」


「子ども?」


「はい。

 だからゼナムスを殺そうと思ったんです」


「い、いやいや! 繋がってねえよ」


「繋がっています。ゼナムスを殺すならこのタイミングしかありえません。

 アイナさん。なぜゼナムスが王になったのか覚えてますか?」


「そりゃあ……あのルーン、【故郷オセル】だからだろ?」


「その通り。

 この国にとって【故郷オセル】は非常に重要です。

 ゼナムスのようなバカが【故郷オセル】を授かったのは国難と言っていいでしょう。

 然るべき人物にこそ【故郷オセル】は宿るべきなんです。

 そう――【故郷オセル】を継ぐのは兄さんの子が理想的」


「い、いや、王様が死んだからって、その子に継がれるとは――」


「そうですね。ですが可能性は高いです。

 ダイバ王が死去して、直後に産まれたゼナムスが【故郷オセル】を継いだ。

 歴史を漁ってみても、【故郷オセル】が複数人存在した記述はありません。

 誰か一人にしか宿らないルーンなんだとすれば――」


 ファティマのゼナムス殺害計画は、衝動的な思い付きではない。

 国を思う強い意志が背後にはある。


 アイナは息を飲んだ。

 ファティマはにこりと笑う。


「――まあ、失敗しちゃいましたけどね~。

 あはは~、ダメなお姉さんなのです」


「で、でもさ、ホラ」


 アイナはエウラリアを指差し、小声で――


「インベントの言う通りなら、王様もまともになるかもしれないじゃん」


「……そうかもしれませんね」




 ファティマは「――そう上手くいけばいいですが」と誰にも聞こえないぐらい小さく呟いた。

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※バッドエンドへ一直線してる感じですが……

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― 新着の感想 ―
[一言] この話が投稿されるけっこう前から読むのやめてたけど、あまりにも女インベントが長すぎます。久しぶりに読んだのでとりあえず最新話まで読もうかなぁ…と思うのですがあまりにも冗長だと思いました。もう…
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