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ロゼ・サグラメント来襲①

ヒロイン……では無いです。

 インベントとノルドは本日もモンスター狩りに出発しようとしている。

 マクマ隊での任務予定だったのだが、マクマが高熱のために倒れてしまったため、連日ノルドに同行しているのだ。


 だが――


「インベント!!」


「え?」


 怒声に近い声。誰だろうと振り返ると――


「あ、バンカース総隊長!」


 渋い顔のバンカース。

 そして隣には若い少女。

 赤黒く少しウェーブした髪に切れ長の瞳。


(あれ? ……隣にいる子、誰だっけ?)


 インベントは見覚えがある少女だが、誰だったか全く覚えていない。

 インベントは基本的に人間に興味が薄い。

 モンスターであれば特徴などはすぐ覚えるのだが。


「お前……ちょっと来い!」


「は、はあ」


 ノルドは「お前……何やったんだ?」と呆れている。

 インベントは「な、なにもやってないですよ!」と応えた。


「まあいい。今日は一人で行くからな」


「ええ~そんな~」


 踵を返しノルドはこの場を立ち去ろうとする。


「ちょ、ちょっと待った! ノルドさんも来てください!」


「……? 俺も??」


 バンカースはノルドにも用があるみたいだ。


 インベントとノルドは顔を見合わせた。

 お説教タイムがスタートする。



**


「今日……なぜ呼んだかわかるか! インベント!」


 バンカースは語気を強めて言う。

 学校の先生のようである。


「いえ。まったく」


「かあー!! この朴念仁!」


 インベントは本当に心当たりが無いので困ってしまった。


「ノ、ノルドさんはわかりますよね??」


「いや? なんの話だ?」


 ノルドも心当たりが無く、首を傾げた。


「ぐぬぬ! もう! マクマのことですよ!!」


「……マクマ?? なんの話だ??」


 バンカースはしらばっくれていると思い憤慨している。


「ま、マクマのやつ、落ち込んでて、警備隊辞める話になってたんですよ!」


「……?? なんで?」


 ノルドはインベントを利用しマクマに意地悪をした認識はある。

 だが辞める理由は全く理解できなかった。


 インベントはあまりに唐突な話に、ワンテンポ遅れて「えええっ!?」と驚いた。


 仕方なくバンカースは、インベントがモンスターを殺しまくるせいでマクマがノイローゼ気味であることを伝えた。

 バンカースの口調は完全にノルド・インベントが悪人扱いである。


 伝えたのだが……。


「――そういうわけだ!」


「おい……バンカース……総隊長」


 ノルドはバンカースより年上であり、昔の名残で呼び捨てしてしまいそうになるのを堪えた。


「なんですか!?」


「いや……今の話を聞いてあえて言うが、インベントは何も悪くねえだろ」


「え?」


「インベントは何も命令違反も犯してない。

 それともマクマ隊では『モンスターを殺すな』ってルールでもあるのか?」


「い、いや……そんなことは無い……が……」


「新人が積極的にモンスターぶっ殺してるんだぜ? 称賛すべきところなんじゃねえのかよ?」


 バンカースは口を噤んでしまった。


「まあ、俺はマクマが嫌いだからな。

 嫌味の一つや二つは言ったが……それはあいつもだからな。お前も知っているだろう?

 おっとっと、バンカース総隊長さんよう」


「あ~……そりゃあ……まあ」


 ノルドは薄ら笑いを浮かべ――


「そもそも、な~んでコイツをマクマ隊になんかやったんだ?

 今の話を聞いた感じだと、バンカース総隊長がインベントをマクマの所に配属したみたいじゃねえか」


 ノルドはインベントを指差した。


「そ、そりゃあ……チームワークを学んでもらおうと……」


「ハッハッハ、そりゃあ無理ってもんだ。

 マクマのところは、モンスターを殺せないような奴らが手を取り合って頑張ろうって隊だろ?

 コイツはバリバリモンスターを殺したいタイプだ。俺のようにモンスターを恨んでるタイプだからな」


 インベントは別にモンスターを恨んでいないのだが、面倒なのでスルーした。


「もういいよな? これで終わりだ」


「い、いや……!」


 ノルドは溜息を吐いた。


「マクマはあんたのお気に入りだ。だから肩を持ちたいのはわかる。

 だがよ、だからと言ってインベントを悪者にするんじゃねえよ」


 バンカースは狼狽した。図星だったからだ。

 そんなバンカースを見て――


(これじゃあどっちが偉いかわからないなあ……)


 と、インベントは素直にそう思った。

 またノルドは意図していないがインベントを庇う発言に、少しほっこりした。

 

「まあ……そんなことはどうでもいいことだ」


「い、いやどうでもいいことではないですよ! マクマは優秀な男ですからね!」


「それは知ってるよ。あいつを否定する気なんて無い。

 俺とマクマは個人的に仲が悪いだけだ。

 それに、もうそろそろあいつは駐屯地勤務から外れるタイミングだろう?

 丁度いいからインベントを外してやれば全部解決だろうが?」


 バンカースは少し考えて、「あ~……それはそうですね」と言って納得した。


 逆にインベントはいつの間にかマクマ隊から外される流れになっていることに気付き、少し動揺した。

 とはいえ、まあいいかとしか思っていないのだが。


「まあ、これで話は終わりだな。

 ――――だがなんでだろうな? ……そこのガキが俺に殺気を向けてきてるんだが?」


 バンカースが連れてきた少女。

 その少女がノルドを睨みつけている。


「ガキに恨まれる理由は思いつかないんだが?」


「お、おい。ロゼ」


 ロゼと呼ばれる少女は、今にも斬りかかりそうな殺気を出している。


「ん? ロゼ? ロゼってどこかで聞いたような……」


 インベントはロゼという名前に聞き覚えがある。


(そういえば風貌にも見覚えがある……どこだっけ??)


「おいおい、インベント。同期だろうが」


 バンカースの一言でインベントは思い出した。


「ああ! オリエンテーションの時にいた!! たしか……『神童』とか呼ばれてた!」


「――フン」


 ロゼは鼻で笑う。

 インベントと同期――つまり同い年の15歳。

 そんな15歳の少女はインベントのことなど路傍の石扱いだ。


 ノルドはめんどくさそうにしている。


「で、その『神童』とやらがなんの用だ」


「いやあ……申し訳無いんすけど……ちょっと模擬戦がしたいらしく」


「なん……だと?」


 インベントは不思議に思った。

 なぜロゼがノルドに対して模擬戦を申し込んできたのか全く理解できなかったからだ。


 だがノルドは違った。


「まさか……大物狩りの推薦じゃねえだろうな??」


「いや……その通りです」


「おいおい……嘘だろ?」


 ノルドとバンカースが話を進めるが、インベントはちんぷんかんぷんである。


「このガキんちょが、大物狩りのメンバーに推薦されているってのか?」


「デストラーダとビノーが推薦している。後一人でメンバー入りだ」


「……ビノーはともかくデストラーダまでか。ククク……面白い。

 よし、表に出ろ。ガキ」


「ガキではありません。ロゼ・サグラメントですわ」


「ふん」


 ノルドがロゼを挑発し、ロゼは受けて立つ。

 ノルドとロゼは駐屯地の外へと向かっていく。


 インベントはバンカースに事の顛末を聞く。


「あ、あの。どういうことですか? なんで戦うんですか? それに大物狩りって……」


「ああ、インベント。そうだな二人を追いながら話そう」


 バンカースとインベントも後を追う。


「森林警備隊の中には、大物狩りって役割がある」


「なんですか? そのワクワクする単語は」


「ワクワクって……お前なあ。まあいいか。

 大物狩りってのはたまに現れる、大型のモンスターを狩るメンバーだ」


「お、大型モンスター!!」


 インベントは眼を輝かせる。


「普通のモンスターはベースとなるモンスターのニ倍ぐらいのサイズなのはもう知ってるな?」


「はい」


「だがな、年に一回ぐらい更に大きい大型モンスターってのが現れるんだ。

 前回はハウンドタイプだったが……馬以上のデカさだったな」


「う、馬!?」


「ハウンド……つまり野犬は元々が小さいからさほど大きな仕事じゃなかったが……それでも二人死んだ」


 インベントは息をのんだ。


「大物が出たら、すぐさま緊急発令を出して専用のチームを組むんだよ。

 ぶっちゃけ大物相手だと、弱い奴は邪魔になるケースが多い。

 だから精鋭をぶつけるんだ。それが大物狩りメンバー」


「へえ~……それに、あのロゼが選ばれたんですか?」


「う~ん……まあ俺は反対なんだけどな。

 とはいえ推薦されちまったからなあ……。

 ノルドさんが上手いこと……いや……まあそれはいいか」


「??」



 ノルドとロゼは戦うようです。

 続く――

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分のミスを部下のせいにするとは、バンカースはダサいですね。私はマクマみたいな“ありきたり”な奴は大嫌いですわ。
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