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森林警備隊入隊試験①

 インベントは森林警備隊の入隊試験会場までやってきた。

 両親に反対されるかと思いきや、全く反対されなかったことが逆に気がかりではあるものの入隊試験を受けられることが嬉しいのだ。


「おお……混んでいるな」


 入隊試験会場には100人以上の参加者が集まっていた。

 大半は15歳になったばかりの面々だが、昨年落ちて再度入隊試験を受ける人もちらほらといる。


「緊張するなあ……。まあこれだけいれば合格できるかな?」


 インベントは緊張をほぐすため、収納空間に手を入れて荷物の整理をしている。


 人数が多いことで安心しているインベントだが、まるっきり見当違いである。

 森林警備隊はお給金が高く人気の職業であり、倍率は非常に高い。


 父のロイドはそのことを知っていたが、あえてインベントには教えなかった。

 落ちると信じているからだ。


「とにかく申し込もう」


 インベントは受付の列に並んだ。

 他の人は友人と一緒に入隊試験を受けにきていたりしてワイワイしているが、インベントは一人だ。

 だが心細さは感じていなかった。


(早くモンスター狩りたいな~)


 それしか考えていないのだ。


**


 一時間近く並んで、ようやくインベントの番が来た。


「はあ~い、こんにちは」


 受付のお姉さんは気怠そうな雰囲気を纏っているが、非常に端正な顔立ちをしていた。

 可愛いよりは綺麗系と言っていいだろう。


「お、お願いします!」


 インベントは入隊志願書を提出する。

 お姉さんが志願書を受け取る際に、インベントをじっくりと見る。


 そして目をパチクリさせた。


「ん~ん~?

 君って後方支援希望~?」

「え? 違いますよ。前線希望です!(だってモンスター狩りたいし!)」


 迷いのない目にお姉さんは「ふ~ん」と言う。


「あ~そうなの……。あ~、弓が得意とか?

 弓に関しては試験日が明日なんだけどお……」

「いえ! 弓なんて使ったこと無いですね(ボウガンはモンブレの世界ではかなりカッコいいけどね!)」


 受付の女性はフェルネという。

 森林警備隊の一員だが、容姿が整っているので受付を押し付けられ仕方なくやっている。

 そのため、やる気は無く、本当は面倒だと思っているわけだ。


(この子……こんなヒョロヒョロなのになんで入隊試験に来たのかしら~?

 ん~、説明するのめんどくさ~い。いっか、試験にそのまま進めちゃお~。

 どうせバンカースたいちょ~が上手いことやってくれるでしょ)


「それじゃあ~、あっちの部屋に入って試験受けてくださいね~」

「あ! わかりました!」


 インベントは緊張しつつも、奥の部屋へと進んでいく。


(そういえば……試験って何をするんだろうか?

 ペーパーテストかな~?)


**


 森林警備隊、入隊試験会場。

 いつもは訓練場として利用されている開けた空間である。


「うおおおおおーーーー!!」


 身長2メートル近い大男が試験官らしき男に挑みかかっている。


「ははは! 足元がお留守だぞ」


 試験官は剣の鞘で大男の足を払い、躓かせた。


 試験官の名はバンカース・ハイデンノール。

 アイレド森林警備隊の総隊長。つまり森林警備隊のトップの人物だ。


「ほらほら、どうしたどうした?」

「く、クソがああ!!」


 力任せに木剣を振るう大男を簡単にいなしていく。


(ハア……力自慢が来るのは悪くないんだけどよお……。

 どうしてこう……チンピラ崩れみたいなやつが多いのかねえ。

 ただでさえ森林警備隊ってのは素行の悪さが問題になったりするんだ。

 もっとこう……真面目で強い奴はいないもんかねえ)


「オラアア!」


 大男が力一杯振り下ろした攻撃を、バンカースは軽く受け流し、勢い余って大男はすっ転んだ。


「はい、お疲れさん」


 バンカースは呆けている大男に笑いかけ、試験を終了した。


「え~っと、ゴルゲウス君だったね。

 もう少しフットワークを鍛えたほうがいいねえ。

 腕力任せだし……その~なんというかもう少し考えて攻撃してきたほうがいいぞ」

「う、ウス」


 アドバイスをしつつもバンカースはゴルゲウスの評価をしている。


(20名ぐらいは合格にしたいんだけど……今年は微妙だなあ……。

 別格が一人いるのは嬉しいんだが……ゴルゲウス君は……ギリギリアウトってとこかな~。

 いや……一応補欠候補にはしておくか)


「それじゃあ合否は三日後掲示板に貼り出すからね」

「ウス」


 ゴルゲウスは入隊試験を終え、去っていく。


「はい、次の人~」


**


「な、ナニコレ?」


 インベントは狼狽していた。

 入隊試験が模擬戦形式で行われることを知らなかったからだ。


 ちなみにロイドは知っていたが教えていない。(落ちると信じているから)

 更に言うと、受付のフェルネも説明を端折っている。(めんどくさかったから)


(な、なんでモンスターを狩るための森林警備隊で、対人戦をしないといけないの??)


 インベントは混乱していた。

 まあ、そもそも森林警備隊はモンスターを狩るための組織ではない。

 町の周囲を平和を維持することが目的であり、モンスターを狩ることは手段でしかないのだ。


(ど、どうしよう! と、とにかく情報収集しよう!)


 幸い、インベントの順番はまだまだ先だった。

 他の面々も、自身の順番まで武器の準備や模擬戦の見学をしている。


「ね、ねえ」

「あ? なんだお前」


 インベントは自身より小柄で、目つきの悪い少年に声をかけた。


「こ、これって試験なの?」

「あ? 試験に決まってるだろ。

 てか、おめえ試験受けんの?」

「う、うん」

「ヘヘヘ、馬鹿じゃねえの? おめえみたいなヒョロガリが受かるわけねえだろ」


 インベントは煽られているのだが、そんなことはどうでも良かった。


「ど、どうやったら合格するの?

 試験官に勝たないとダメ?」

「ぶはは! 試験官はアイレド森林警備隊の総隊長バンカースさんだぞ?

 勝てるわけねえだろ。しっかりアピールして自分の強さを見せれば合格ってわけよ」

「へええ……そうなんだ!」

「ま、俺様の華麗な戦いを見ていろよ。

 森林警備隊期待のニューホープになるダデドベ様の戦いをな!」

「あ、ありがとう!」


 ダデドベは槍を掲げながら、模擬戦に呼ばれたのでバンカースのほうに向かっていった。



「次は――――君かな?」

「へへ。ダデドベ・ベゲデグです」

「……ダデドベ君ね」

「へへへ、よろしくお願いしまっす」


 ダデドベは笑う。

 バンカースも笑う。


(あ~……この手のタイプは一番嫌いだな。

 自信満々にニヤついちゃってさ、何か策を考えてるってわけか。

 一泡吹かせてやろうってか?)


 中々光る人材を見つけられず、多少フラストレーションが溜まっているバンカース。


(……ま、しっかり教育してやるとするか)


「それじゃ、始め――」


 バンカースの開始の合図を待たず、ダデドベは姿勢を低くし一気に距離を詰めた。


(へへへ! 俺のルーンは【エワズ】!

 スピードなら負けねえ! 先制攻撃で決めるぜ!!)


 自慢のスピードと槍のリーチを活かして足払いを敢行するダデドベ。

 しかし――


「イギィーー!!」


 ダデドベの槍を持っていた手に稲妻が走った。


 バンカースは思い切り槍の柄をぶっ叩いたのだ。


「ほらほら、ちゃんと持たないと手が痺れるだろう?」

「え? あ」

「さあ、かかっておいで」


 その後、ダデドベは自慢のスピードを活かすことなく腰が引けた状態でなんとか戦った。

 勿論、ダデドベは入隊試験に落ちた。


 ちなみにインベントはダデドベの試験を見てもいなかった。

 自身の準備で忙しかったからだ。



(け、剣って重いなー!! か、軽い剣軽い剣!!)


 試験会場には多種多様の練習用武器が置いてある。

 インベントはとりあえず置いてある木剣を手に取ってみるが、重すぎてまともに持つことさえできていなかった。


 インベントは剣の訓練をしたことが無い。

 そもそも武器と言える武器は護身用のナイフを多少練習した程度。


 そして他の入隊志願者に比べ圧倒的に足りないのが、筋力である。

 インベントの肉体は戦うにはあまりにも華奢だった。


 インベントは不安を覚えていた。

 だがそれは周りの力自慢たちと比較してではない。


(やばいな~。モンブレで対人戦って見たこと無いんだよなあ……)


 夢で何度も見たモンブレの世界。

 モンスターブレイカーはモンスターを狩るゲームであり、PVP形式のユーザ対ユーザが無いゲームなのだ。


(う~ん……対人戦ってどうやればいいのかな~。

 まあ、モンスターを狩るために色々準備してきたし、なんとかなるかな?

 とにかく準備を急ごう!)

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― 新着の感想 ―
[一言] (う~ん……対人戦ってどうやればいいのかな~。 まあ、モンスターを狩るために色々準備してきたし、なんとかなるかな?とにかく準備を急ごう!) モンスターを倒すことができるなら、人をモンスター…
[一言] 転生者が、身体を鍛えるでも無く武器を扱える様に鍛えるでも無い雑魚キャラがモンスターを狩りたいって言う設定に無理がある。
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