表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/445

壊れる男女

 ロゼは夜警を完璧にこなした。

 結界の中に侵入してこようとする小動物にすぐさま反応し、触手を使い追い返す。

 侵入者は許さない。技術的には問題ないと確信するロゼ。 


 ただ夜警は非常に神経を使う。長丁場なので幽力もすっからかんになる。

 日が昇るころには精神的にも肉体的にも疲弊してしまう。


 だがぶっ倒れるほどではない。

 この程度で音を上げるほど、ロゼはやわな鍛えられ方をしていないからだ。

 しっかり休息をとればある程度は回復する。


(問題ありませんわ。私はできる子。神童……ロゼ・サグラメント)


 その通り。

 ロゼはできる子なのだ。

 15歳で『宵蛇』に入隊したロゼは伊達じゃない。


 だが――

 ひとつだけ懸念点があった。


 それは――――この夜警がいつまで続くかわからないことだ。


**


 終わりが見えないマラソンほど苦痛なものはない。


 日が昇るころ、夜警を終え、ロゼは眠りにつく。

 初日の朝は、二時間ほど眠り目覚めた。


 ロゼは徹夜明け特有の気怠さを感じつつも、問題なく身体は動くことを確認する。

 幸い(インベントにとっては不幸にも)、モンスターと遭遇することもなく、夜までゆっくりと静養することができる。


 モンスターを狩ることを禁止されているインベントは仕方なく『森の執事』となり、美味しいお茶をロゼに提供した。

 インベントのホスピタリティの高さに驚きつつも、ロゼは幸せなティータイムを過ごすのだった。


**


 二日、三日と時間が過ぎていく。

 身体の違和感は日に日に大きくなっていく。

 唾液か胃液かよくわからない体液が食道を昇ってくるようになった。

 下っ腹にモヤモヤした何かを感じるようになった。

 なぜか右のふくらはぎがじんわり痛くなった。


「……ふう」


 身体が澱んでいく感覚を覚えつつも、ロゼは文句ひとつ言わず任務をこなす。

 弱音なんて吐くことはできない。


 だって私はロゼだもの。


**


 七日目――


 ロゼの目の周りを縁取ったかのようなクマが現れた。

 待てど暮らせど白いボアは現れない。


 モンスターを狩れず暇で暇で仕方ないインベントは、『森のスーパー執事』になっていた。

 心安らぐハーブティー。

 脳みそがとろけるようなヘッドマッサージ。

 そしてボロボロのロゼの身体をどうにか整える、足つぼマッサージ。


 渇ききった大地に、一滴の水を垂らすかのようにロゼの身体に染み渡るインベントのホスピタリティ。

 ギリギリの状態のロゼだが、どうにか自分自身に鞭打って夜警だけはやりきる。


「わたしはろぜ……すごいこ、できるこ……、がんばるこ……」


 いつからかずう~っと同じことをリピートするようになった。


 ロゼの限界はいつ来てもおかしくなかった。




 そしてもう一人。


 『執事』という仮面を被り、どうにか自分自身を偽っている男。

 彼も限界を迎えていた。


「う――うううぅ!」


 いきなり呻きだすインベントを心配し、アイナは「だ、大丈夫か?」と声をかけた。

 インベントにとってルザネア周辺の森は地獄なのだ。


 なにせモンスターがほとんどいない。

 いるにはいるのだが近寄ってこない。

 インベントたち四人が形成する『人のテリトリー』に近寄ってこないのだ。


 夢の中ではモンスターがわんさか登場しているのに、現実ではモンスターと遭遇さえしない。

 モンスターの気配が薄い。

 この森の空気はインベントにとっては毒だった。


 気を紛らわそうにも武器も無く、ロメロとも遊べない。

 インベントのストレスはマックスである。



 そして――

 そんな中――


 一匹の小さな小さなラットタイプモンスター…………なのか、大型のネズミなのかわからない生物が現れた。

 迷い込んでしまったのだ。



 プッチーン。


 突然、インベントの理性が弾け飛んだ。


「いひゅふう、うがああああああ!!」


「お、おい! インベントー!」


 インベントは丸太を踏み、急加速する。

 そしてネズミの前で勢いをすべて殺す。音も無く、インベントはゆっくりと大地に立つ。

 哀れなネズミが気づく間もなく急接近。


「うへ、うひひひえへ」


「チ、チウ?」


 怯えるネズミ。

 よく見れば焦げ茶色の毛並みで、丸々太って可愛らしい。

 イング王国ではペットを飼う文化は無いが、飼いたくなる可愛らしさだ。


 虐めるなんてとんでもない。


「いひゃあ」


 ネズミは急に浮遊感を覚えた。

 いきなり地面が無くなったかのような感覚。


 そしてすぐに押し上げられた。

 フワリと浮くネズミ。


 その高さは――インベントの視線の高さまで。

 インベントの表情は、恍惚感と狂気と愛情が入り混じった表情だった。


 ペチーン――


 インベントは丸太でネズミを地面に叩きつけた。

 できるだけ優しく。おもちゃが壊れないように。


 叩きつけられた後、ボールのように弾むネズミ。ネズミボール。


 次に、弾んだネズミボールを丸太で水平方向にぶっ叩いた。

 ネズミボールは木にめりこむように激突する。

 力加減を間違え、可愛らしかったネズミは、頭蓋が砕けゾンビ化したラットタイプモンスターのようになった。


「ヂ、ヂウゥ……」


「うふふ。いひひ」


 いつの間にかネズミボールの目の前にいるインベント。


 木から剥がれ落ちるネズミボールを今度は頭上にトスする。

 そしてまた吹き飛ばす。



 インベントの死亡遊戯は続く。

 ネズミボールから血液が抜けきり、肉が弾け飛び、皮だけになるまで続くのだった。



****


「おい……ロメロの旦那」


 アイナの呼びかけに首を振るロメロ。


「みなまで言うな」


「い~や言うぞ」


「……どうぞ」


「どうすんだよ~~……この状況」


「う~ん……」


「インベントはおかしくなっちまったし、ロゼの衰弱は明らか。

 んでもって白いボアは現れねえときた」


「ハッハッハ……ハ、ハア」


「……撤退すべきなんじゃねえの?

 本当に白いボアがいるのか知らねえけどさ~」


「いる……いるんだ。いるんだよ。

 絶対にいるんだ。間違いないんだよ。

 ま、まさか……移動した? し、死んだ? そ、そんな馬鹿な……」


「もう撤退でいいな? インベントはまあいいけど、これ以上ロゼは放置できねえよ」



 アイナはロメロに見切りをつけようとした。

 だが――


「ちょ、ちょっと待て。

 仕方ない……最後の切り札を使おう」


「切り札だ~? そんなもんがあるならさっさと使えよ」


「友好的にいきたかったんでな。ま、仕方がない」



 そういってロメロは剣を抜いた。

アーススターノベル大賞だめでした~('ω')


よーしガンバルゾー! うっひょうー!

どーせ出来レースだったんだー! クソッタレエ!


……壊れた作者をこれからもどうぞよろしく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 廃人の森と命名されそう
[一言] ありゃ。面白いけどあんま共感性のない主人公だし、笑える要素もあんまりないしちょっとマイナス気味に見られる方向性かもしれませんねー(勝手な感想
[一言] がんばってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ