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クソバイス

 ルザネアの町に向かう一行。

 ルザネア行きを中止にできなかったアイナは、仕方なく同行している。


 名目上は『ロメロが嘘ついていた場合、全財産をいただく』ため。

 本当はインベントが心配だからだ。


 アイナは馬車の後方に座るインベントと、その隣で一人、語り続けるロゼを見る。

 ロゼは自慢交じりに色々話をしているが、インベントは興味なさそうに「ふ~ん」や「へえ」とだけ相槌を打っている。


(喋りたいお年頃のロゼと、他人に興味ないけど、ただ聞き続けるインベントか……。

 案外いいコンビなのか? ま、もともと同じ隊だもんな~)


「あ、そういえば旦那」


「ん? なんだ?」


「ロゼはノルド隊長が生きてるのって知ってんだよな?」


 ロメロは少し首を傾げ「ノルド……」と呟いた後――


「ああ、ノルドか。はいはい。

 知ってるんじゃないかな。『宵蛇よいばみ』内では共有されているし。

 ただ、まあ~オセラシアにいるんだろ? 会うのは難しいだろうな」


「オセラシアは遠いもんなあ」


「単純に遠いってのもあるが……ま、それはいいか」


 ロメロがなにかはぐらかしたことに気付きつつもアイナはスルーした、


「まいいよ。んで? 結局今からなにしに行くんだよ。旦那」


「ん~? なにって言われても、モンスター観光だぞ」


 アイナはロメロを睨み――


 念話で『わ』という単語を連続でロメロの頭に流し込む。


「うお……頭で響く」


 ロメロは耳を両手で塞いでみるが、念話はルーンの力を使って相手の頭に言葉を届けている。

 耳を塞いでも効果は無い。防御不可の『わ』攻撃。


「わ、わかったわかった。ちゃんと話すから」


「ならよし」


「ハア~。ちゃんと話すが、話せない部分もある。

 それは理解してくれ。俺も一応立場ってもんがあるからな」


「普段から立場をちゃんと理解して行動してほしいもんですけどねえ。

 ま、話せる範囲でいいよ」


 ロメロは「話せる範囲ねえ……」と困った顔をしつつ話し始める。


「さあ~てどこから話したものかな。

 そうだ。ルザネアのことをまず話そうか」


「ん? ルザネアについて?」


「そうだ。世間じゃ『神がいる場所』とか、『英霊が守る場所』な~んて言われている。

 あそこは昔、西方のダエグ帝国が攻めてきた場所なんだ。

 といっても……森に阻まれてなにしに来たかわからん感じで終わってしまったがな。

 まあ色々あった場所ではある。

 だがオカルトちっくなバカげた理由で、あの場所が平和なわけじゃない」


「バカげたってのは言い過ぎな気もするけど……つまり旦那は理由を知ってるんだな」


「もちろん。よ~く知ってる。

 あの場所は本来モンスターが非常によく発生する場所だ。

 カイルーンと同じようにな。だからモンスターが少ないわけでは無い」


「ん? ど、どゆことだ?」


「モンスターが発生しないわけでは無い。だがルザネアの町付近まで到達するモンスターが極端に少ない」


「な、なんで?」


 ロメロは「フフン」と不敵に笑う。


「白いボアがいるからだよ」


「え? そこでその白いボアが出てくんのかよ?」


「そ~ゆうこと。ルザネアの西部には白いボアが居座っている。

 ランク的にはBランクってところだろう。だから他のモンスターは近寄らない。

 そしてそのボアは人間を襲う気が無い」


「ちょ、ちょっと待てよ!

 い、イメージはできたけど、全く理解できないぞ!?」


「話はこれで終わりだ。これ以上は俺から話せん」


「えー!?」


 ロメロは憎たらしく笑みを浮かべた。


「アイナ。クソみたいな俺からアドバイスをやろう」


「んあ? な、なんだよ」


「世の中、理屈でわからないこともあるんだぞ。

 白いボアだって理屈ではわからんだろう。だが事実だ」


 アイナは「むう」と頬を膨らます。

 ロメロはインベントを指差した。


「インベントから話を、ジジイと一緒にじ~っくり聞いてたみたいだけどな。

 別に全否定はしないが、過去が全て現在に繋がるとは限らん。

 人間ってのは過去の延長で全てを選択するわけじゃないんだ。

 理屈を超えて行動することもあるし、急に心変わりすることもある。

 誰かに捻じ曲げられることだってあるしなあ~。

 ま、俺は、一番正しいのは目で見た『今』だと思ってる」


 アイナは「ふん」と鼻を鳴らす。


「つまり、聞いて納得するよりも、見たほうが早いってことさ」


 アイナは舌打ちしつつ――


「クラマさんのやり方も正しかったと思うし、旦那の考えもどっちも正しいと思うよ。

 だ~けどまあ、ロメロの旦那は過去も現在も未来も、ず~~っと変わらずクソったれだよ」


「ハッハッハ! 違いない。

 俺はクソったれさ。だが誰も止められない。それだけだ」


「ったく……かったるい」



****


 ルザネアの町に到着した一行。


「ほわあ~」


 インベントはルザネアの町を見て、少し高揚したものの、すぐにいつものテンションに戻った。


 ルザネアは特殊な町だ。

 モンスターの発生件数が異常に低いため、住民の危機意識が薄い。

 アイレドやカイルーンの住民は夜間は出歩かないが、ルザネアの住民は夜も出歩く。

 そのため、それなりに飲食店がオープンしているのだ。


 インベントは夕暮れでも活気があるルザネアの町を見て、モンブレの拠点となる町を思い出した。

 モンブレの町はいつでも人がたくさんいて賑わっている。

 結果、少しだけテンションが上がる。


 だが――


(この活気も、モンスターがいないからなんだよなあ~)


 そんなことを思い出して、ちょっとブルーになるインベント。



 逆にロメロは上機嫌である。

 なぜなら有名人のロメロも、この町ではそれほど顔が知られていないからだ。


 ルザネアではモンスターがほとんど発生しない。

 つまり『宵蛇よいばみ』がモンスター討伐のためにルザネアに来ることはない。

 そのためルザネア現地の人はロメロの顔をほとんど知らない。


 ルザネアは観光業も盛んなので、ロメロを知る人物が皆無というわけではないが、日が落ち暗くなればロメロだと判断するのはなかなか難しくなる。


 結果、ロメロは変装せずに町を闊歩できる。


「ほらほら! 夜店にいこうじゃないか!」


 宿を決め、荷物を預けた後、ロメロは皆を夜の屋台に連れ出した。

 露店が並び、美味しそうな匂いが立ち込める。


「今日は俺のおごりだ! 好きなだけ買ってこい! 好きなだけ食え~!」


 そう言って大金を三人に手渡した。


 インベントはふらふらと「何買おうかな~」と物色を始める。

 ロゼはインベントに同行し、インベントが購入したものと被らないようにバランスを考えて購入する。

 アイナは近場でさっさと買い物をすませて戻ってきた。


 ロメロはアイナが買ってきたものを適当につまみ、「お? これは美味いな!」と舌鼓を打つ。


「たしかに。酒に合いそうだな~」


「ははは、そうだな! これはどこの店だ?」


 アイナは「あそこの赤いのぼりの店だぜ」と指さした。

 ロメロは「そうかそうか!」と言った後、戻ってきたインベントを捕まえてその店に向かう。


 そして店主に「あるだけくれ!」と買い占めてしまった。


「ろ、ロメロさん。全部食べるの?」


「ハハハ、美味いがさすがに全部は食えない。

 インベント。収納空間に入れておいてくれ」


「ほ? まあ……いいですけど」


「よおし!」




 収納空間の中は、現在スカスカである。

 ロメロとの戦いの後、重力グラビティ装備は森に放置してきたし、武器は使いきってすっからかん。

 武器と言える武器は跳躍用丸太バウンダーとナイフが一本ぐらい。


 ルザネアの町に来るまでに、何度か武器屋に寄ろうとしたがことごとくタイミングを逃してしまっていた。


 ロメロは美味しかった店の商品を何度も買い占める。

 ルザネアの町が眠りにつく頃には、収納空間は食べ物で一杯になった。


「う~~ん……」


 収納空間の使い方が間違っている気がして仕方がないインベントだが、いつもの癖で綺麗に収納空間内を整理して眠りについた。

クソからのアドバイスでクソバイス……。

※タイトルをヤケクソで『クソ』にしたら、なぜかコメント貰えちゃったので引き続きクソみたいなタイトルにしました


明日からは真面目にやります。

ぶ、ブックマーク外さないで( ;∀;)

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― 新着の感想 ―
[一言] モンスターなのに短命じゃないのか...? というか、そのモンスターは倒したらまずいやろがい!
[一言] クソバイス・・ クソでできたバイス(万力)か クソを挟んだバイスかと思ったら違った
[良い点] >収納空間の使い方が間違っている気がして仕方がないインベントだが 収納空間は永久機関も夢じゃない無限の動力機関なのだ! [一言] 感想の返信ありがとうございます。 御負担にならない程度で…
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