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伝説のコマンド

 【太陽ソエイル】を使わされてロメロは少しご機嫌斜め。


「ま、面白い攻撃だ。だが慣れてしまえばどうということはない」


 インベントは徹甲弾を連続で発射――いや連続でぶん殴った。

 甲高い音が森に響き渡る。


 高速で接近する徹甲弾を、ロメロはいとも簡単に避けた。


「ハハハ。あまり避けるのは好きじゃないんだがな。

 馬鹿正直に受け止めると――剣が折れてしまうしな。

 それに――」


 四発目の徹甲弾。

 三発以上の速さの徹甲弾がロメロの顔面目掛けて飛んでくる。

 インベントが徹甲弾を蹴っ飛ばしたのである。


 その徹甲弾をロメロは斬った。


「あまり【太陽ソエイル】を使うのはフェアじゃないだろ? ハハハ」


 不敵に笑うロメロ。

 インベントは表情を変えない。


(これぐらいは……想定内。

 というより、二発目で【太陽ソエイル】を使わせられたのが意外だったかな)


 ロメロは今、非常に浮かれている。

 インベントがどれぐらい本気にさせてくれるか楽しみなのだ。

 その結果、ウォーミングアップでインベントに一本取られてしまった。


 昂り過ぎた心を少し鎮め、ロメロは非常にフラットな状態に戻っている。



 さて――インベントは大きく息を吸う。

 ロメロはただ待っている。


「ここからは――本気ですよ」


 ロメロは舌なめずりをして「ああ!」と応える。


 インベントは舌でリズムを刻み始めた。


 チッチッチッ、チッチッチ――


 高速で振り子運動するメトロノームのように舌打ちするインベント。

 右手の薬指で小刻みに太ももを叩きリズムを刻む。


 チッチッチッ、チッチッチ――


 ロメロはウキウキが止まらない。

 これまでに無いインベントの新しい所作に心ときめく。


(ああ……何が飛び出してくるんだろう~)


 高揚するロメロ。

 【ペオース】というびっくり箱から、何が出てくるのか楽しみなのだ。


 リズムに乗るインベント。

 リズムに合わせて頭の中では次のような呪文を唱えている。


(み、て、うつ! ひ、て、うつ! 

 み、て、うつ! ひ、て、うつ!

 み、て、うつ! ひ、て、うつ!)


 繰り返される意味不明な呪文。

 大した意味のない呪文である。


 右腕を上げて、徹甲弾を出して、撃つ!

 左腕を上げて、徹甲弾を出して、撃つ!


 長いので頭文字をとっただけの呪文。

 この呪文は徹甲弾をリズムに合わせて撃ちまくるための呪文である。

 つまりインベントがやろうとしているのは――力押しである。


(いっっけええ!)


 右手で徹甲弾をぶん殴る。左手で徹甲弾をぶん殴る。

 ただ継続する。

 とにかく徹甲弾をぶん殴りまくり、ロメロ目掛けて飛ばしまくる。


「ほほう!」


 ロメロは避ける。避ける。避ける。


「ハッハッハ! なるほど! 物量作戦か! 面白い面白い! これは新しいな!」


 一発当たれば大ダメージを受けるはずの徹甲弾を雨あられのように殴り飛ばすインベント。


 反発制御リジェクションコントロールは筋力を使わない。

 反発力で自身の身体を強制的に動かしている。

 だからこそ、肉体的にも当然疲れるが、それ以上に脳に負担がかかる。


 収納空間の扱いに長けたインベントであっても、正確な位置に徹甲弾を出し、正確な力で両腕をコントロールするのは至難の業だ。

 気を抜けない連続攻撃。

 

(み、て、うつ! ひ、て、うつ! 

 み、て、うつ! ひ、て、うつ!)


 徹甲弾は絶え間なく殴り飛ばしているが、ロメロには当たらない。

 ロメロには幽結界があるため、避けることも超一流なのだ。


「ハッハッハ! いいな! 怖い怖い!」


 そう言いつつも華麗に避けるロメロ。


 ロメロの背後の森は、けたたましい轟音と共に森林が破壊されていく。

 10キロ近い徹甲弾がバンバン投げ込まれているのだから当然である。

 だがふたりにとってそんなのはどうでもいいことだ。

 環境保全? クソくらえである。



 インベントは脳と身体に無理をさせつつも、攻撃を続ける。

 だが――


(これじゃあ……だめだ!)


 そう思い、一旦攻撃を中止する。


(これじゃあ当たらない。もっとスピード上げないと……。

 それに……撃ったあとに手を元の位置に戻す操作しないとだめだ……)


 『ぶっころスイッチ』がONになっているインベントは、イメージ通り動けている。

 イメージ通りに動けるからこそ、イメージと現実のギャップが見えてきたのだ。


 ブツブツ言い始めるインベント。

 ロメロは楽しそうに見ている。



(徹甲弾は左右両方の分を連続で出そう……。

 そんでもって両腕も連続で上げる……。

 上から徹甲弾二つ……。下から左右両方の手を上げる。

 上、上、下、下……ん? あれ?)


 インベントは思い出す。


 モンブレでもたまに呟いている人がいる呪文。

 「これを唱えるとパワーアップするんだぜ!」なんて言われている伝説の呪文、いやコマンドを思い出すインベント。


「上上下下……左、右、そうか……そういうことか!」


 インベントはニヤニヤしだした。

 脳裏に浮かぶ伝説のコマンドがインベントを動かす。


 嗤うインベント。哂うロメロ。


「上上」


 と呟き、徹甲弾を収納空間から目線の高さに二つ浮かせた。


「下下」


 右腕、左腕の順で、両手が肩の高さまで上がる。


「左!」


 左手で徹甲弾をぶん殴る。


「右!」


 次に右手で徹甲弾をぶん殴る。


「左!」


 次に左手を元あった位置まで戻す。


「右!」


 最後に右手も同様に元あった位置まで戻す。


 徹甲弾が二発、ロメロを襲う。

 これまでと大して変わらぬ攻撃なので難なく避け、首を傾げるロメロ。


 だがインベントは嬉しくてたまらない。


(そうかああ! これが伝説の……『コ〇ミコマンド』!

 あはは~! すごいすごい~!)


 ゲームをやったことがある人なら知っている『コ〇ミコマンド』。

 まあ……モンブレは『コ〇ミ』が制作したゲームでは無いのだけれど。


 とにかく『コ〇ミコマンド』通りやれば、徹甲弾を連続で発射できることを思いついたインベント。

 後は――撃つだけである。


「上上下下左右左右! おほお~! 上上下下左右左右!」


 『コ〇ミコマンド』を呟きながら徹甲弾をぶん殴りまくるインベント。

 発射までの工程は増えたが、明らかに連射速度が上がっている。


 先程以上に撃ち込まれる徹甲弾に、ロメロも驚く。

 連射の間隔に隙がないのだ。


 そしてついに【太陽ソエイル】を使わせる。


「ふ~む……中々厄介だな」


「あははは、上上!」


 手数を増やすことで、ロメロに【太陽ソエイル】を使わせることには成功した。

 追い込んでいることには違いない。だが――


(その攻撃――いつまで続くのかな? まさか無限ではあるまい)


 ロメロの予想通り、インベントが用意した徹甲弾は150発。

 もう50発近く使用してしまった。


 インベントも残弾数は気にしていた。


 ロメロに【太陽ソエイル】を使わせている以上、攻撃としては間違っていないはずなのだ。

 だが攻撃がヒットするかどうかは確信が持てずにいる。

 今後のことを考えるならば徹甲弾はある程度残しておきたい。


 続けるか――それとも一時停止するか。

 迷うインベント。


 だがインベントは救われる。『コ〇ミコマンド』に救われるのだ。



(あれ……『コ〇ミコマンド』って上上下下左右左右だけだっけ?)

カプ〇ン「おいおい! コマンドなら下、R、上、L、Y、B、X、A だろ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] うえうえしたした [一言] w 違いますw
[気になる点] ↑X↓BLYRA だったかな? [一言] 隠しコマンドを何回も入力するのは楽しい
[一言] カカカカカロッとー。
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