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アイナ隊崩壊?

七章『衝突』スタートです。

 アイナ隊。


 ロメロがカイルーンで自由に行動できるように復活させた隊である。


 元々アイナはカイルーン森林警備隊で隊長職だった。

 アイナがアイレドに逃げたため事実上アイナ隊は解散になっていたが、ロメロが自分勝手に復活させたのである。


 アイナ隊はカイルーン森林警備隊に所属するが、隊としての制約はほとんど無い。

 好き勝手に行動していいし、カイルーン森林警備隊の倉庫も利用する許可もでている。

 定例報告なども不要。


 カイルーン森林警備隊のメルペ総隊長が、ロメロの大ファンであるため便宜を図ってくれたのだ。



 元々はロメロがインベントが望む『モンスターをいつでも狩る権利』を提供するために用意した隊である。

 そしてロメロがインベントと遊びたいから用意した隊。


 だが、クラマが現れ、インベントを盗られてしまったロメロ。

 インベントは修業に忙しいし、クラマに色々連れまわされていた。

 中々遊べない。


 結果、不貞腐れカイルーン周辺でさぼったり、惰眠を貪っていた。

 『宵蛇よいばみ』裏隊長であるデリータと会い、サボっていると『宵蛇よいばみ』本隊に戻されてしまうので仕方なくモンスター狩りをしていた。

 やる気などない。


 アイナ隊はロメロがいるからこそ自由が保障されている隊である。

 ロメロがいなくなれば解散の可能性が高い。




 さて――ライノタイプモンスターを討伐後、インベントとアイナはカイルーンに戻ってきた。

 クラマとは別行動だったため、アイナ隊としてカイルーン周辺でモンスター狩りをすることになった。

 今こそ一致団結し、アイナ隊を盛り上げる時!


 だがアイナ隊に異変が起きた。

 四人中三人に異変が起きたのだ。いや一名に関してはいつも変なので異変とは呼べないかもしれないが。




 一人目はもちろんインベントである。


 オセラシアから帰ってきてすぐに、ドウェイフ工房のドウェイフから頼んでいた装備を受け取った。

 受け取ったのは――ガントレットである。ガントレットと言ってもただのガントレットでは無い。

 インベントの要望は、出来るだけ重く、そして防御力の高いガントレット。


 そしてドウェイフは要望通りインベントが動けなくなるぐらい重いガントレットを作製した。

 だが重い分、恐ろしく防御力の高いガントレット。

 指先から肘まで覆われた形状で、威圧感が凄まじい。

 並みの攻撃であればものともしないガントレットが完成したのだ。


 インベントはガントレットらしき塊を見て驚きを隠せなかった。


 ドウェイフは返品されると予想していた。

 なにせ装着すれば腕を上げるのでさえ一苦労。

 使い物にならないはずなのだ。

 あえて無茶苦茶な装備を作ったのだ。


 そんなガントレットを装着し、インベントが発した一言は「名前何にしよう~」だった。


 返品されないことは予想外だった。

 と同時に返品されない気も心のどこかでしていたのだ。

 だから使う気満々のインベントを見て、ドウェイフは驚かなかった。


 どうやって使っているのかはわからないが、インベントは重すぎるグリーブも、鉄柱も使えている。

 そして『陽剣のロメロ』が惜しげもなく金を出している。


 ドウェイフにとってのありえないブツが、インベントの希望通りの品なのだ。

 違和感も三度経験すれば慣れる。ドウェイフもインベントに慣れてきたのだ。


「へっ。坊主が欲しがってたヘンテコな剣と槍ももうすぐできるからよう!」


「やった!」


「装飾は黒をベースでいいんだな?」


「うん! 重力グラビティグリーブも、このガントレットも黒っぽいし。

 やっぱり色は揃えた方がかっこいいでしょ?」


「ま、硬くて重い合金は自然と黒くなっちまうだけなんだけどな。

 わかったぜ。もう少し時間をくれよな」


 こうしてドウェイフも徐々にお金以上の協力者になってくれるのであった。


**


 インベントは重すぎるガントレットを装備してモンスターを狩るようになった。

 ガントレットの名前は、重力グラビティガントレットと名付けた。

 名前の案は色々考えたのだが、やはり名前は統一するのがモンブレっぽいからである。


 両足には重力グラビティグリーブ。

 両手には重力グラビティガントレット。

 両手両足だけでフルプレートメイル並みの重さ。

 『普通』に動けるはずもない。

 無理に動けば筋肉がすぐに悲鳴をあげるだろう。


 だがインベントは『普通』に身体を動かすことを放棄した。


 『普通』と言うのは、例えば前方に進む――つまり歩行する際は、片足を上げ前方に足を踏み出す。次はもう一方の足。

 足を連続で動かすことで前方に進む。


 それに対しインベントは、跳躍用丸太バウンダーを踏んで反発力で移動する。

 『普通』では無い。


 ただ反発力を利用した移動はこれまでにも使ってきた。

 高速移動や飛行する際には反発力を酷使してきたといっていいだろう。

 だが細かい動きの場合は利用してこなかった。


 例えば腕を上げる場合。

 何も装備していない状態なら、意識せずともひょいと腕が上がるだろう。

 だが重力グラビティガントレットを装備している状態では『普通』にやっては腕が上がらない。


 インベントなら、重力グラビティガントレットで跳躍用丸太バウンダーを軽く真下に押せば腕が浮く。

 傍から見れば腕が上がったように見えるだろう。


 続けて肘で跳躍用丸太バウンダーを押せば、腕は前に突き出る。

 パンチの動きを再現できるわけだ。


 つまり『普通』を捨ててもインベントは動くことができる。 


 もちろん簡単にはいかない。

 パンチ一つ繰り出すのだって一苦労であり、ぎこちない動きである。

 モンスター狩りなら様々な動きを求められる。


 結果、ラットタイプモンスターを狩るのでさえ一苦労。


 だが防御力が高くよほど油断しなければ大怪我はしないのは救いだった。

 何度でもチャレンジできる。


 もどかしさはある。

 なにせこれまで簡単にできた動作ができなくなってしまったのだ。

 思い通りに動いてくれないラジコンを操っているような感覚。

 もしくは右利きが左利きに直すような感覚。



 だがそれでもインベントはモンスターを狩り、練習を続ける。

 『普通』を捨てて飛躍するために。



****


 二人目。

 アイナ・プリッツ。


 彼女もまた変わろうとしていた。

 だが……傍から見ているとどう変わろうとしているのか全く見当もつかない。


 ラットタイプやハウンドタイプのような比較的弱いモンスターと一対一で戦うようになった。

 それもじっくりと時間をかけて。


 フラウは遠目でアイナの様子を見ながら心配そうにしている。


(あんな戦い方……危ないっすよ……アイナ隊長)


 モンスターと睨みあい、膠着するアイナ。

 アイナは小柄で非力だ。剣の才能はあったとしても一撃まともに喰らえば致命傷になりかねない。

 そんなアイナがあえてフットワークを捨ててモンスターに挑んでいる。

 自殺行為である。


 フラウは心配して声をかけても――

 「いいんだよ。一人でやる」と言ってきかない。



 傷だらけになりながらもひとりモンスターに立ち向かう。

 アイナにはアイナの考えがある。邪魔できる雰囲気ではないのだ。



 アイナ隊。

 隊長であるアイナ、自分勝手に行動中。


 インベント。自分勝手にモンスター狩り。


 さて――ロメロさんは??




 続く。

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― 新着の感想 ―
[一言] そのうち日常的にインベントリ使って動くことになりそう
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