改造計画成功?
第六章完結です。
インベントは鉄柱を失った。
だが目的であったライノタイプモンスターを狩ることには成功した。
満足感と喪失感で揺れ動くインベント。
だが満足感が勝つ。
(ま、鉄柱はまたドウェイフさんにつくっても~らおっと)
一トン近い鉄柱。
数百の剣を作れるだけの鉄をたった一回の攻撃で失ってしまったインベント。
だが支払いは全てロメロである。
インベントは気にせずお買い物できるのだ。
兎にも角にも今回の件で、インベントは『重さ』の重要性を改めて体感した。
なにせ堅牢なライノタイプモンスターを一撃で屠れたのだ。
まさに一撃必殺の技を覚えたインベント。
(うふ、うふふ、あははははは。
モンブレで誰か偉い人が言ってたな。
『破壊力は、重さ×スピード』だって。
そうか……だからクラマさんは重さをコントロールしろって!)
元々クラマは、スピード偏重だったインベントに重さをコントロールする術を覚えさせようと思った。
それはスピードに頼らずとも戦えるようになれば、身体に無茶をさせなくなると思ったからだ。
つまりスピードをやや落とし、重さでカバーする想定だった。
だがクラマの誤算は、インベントが自重しないことである。
「ギリギリまで重くして……スピードも上げて……。
初速は……反発させれば……連携させれば……。
ブレーキは……いや……うふふ。そうか……エアリアルスタイル……うふふ」
ひとり悦に入るインベント。
不安そうに見つめるクラマと、相変わらず変な奴だと思って見つめるノルド。
そして――
「よし! 帰りましょう! カイルーンに帰りましょう! クラマさん!」
「きゅ、急じゃのう。あ~……ワシちょっとオセラシアで用事がある。先に帰っとけ」
「わかりましたー! あれ? アイナは?」
「アイナはあっちじゃよ」
「は~い!」
インベントは今にも飛び去ってしまいそうだ。
ノルドは「インベント」と呼び止めた。
「なんですか? ノルドさん?」
ノルドは不気味にほほ笑む。
「たまにはサダルパークにも来るといい。
こっちはモンスターの数は少ないが、アイレドにはいないようなモンスターがいるぞ」
「おお~! わかりました~! それじゃあまた!」
そう言ってインベントは飛び去ってしまった。
飛び去るインベントを眺める二人。
「さて……俺はサダルパークに戻ります」
「そうか」
「クラマさんは?」
「ワシは首都まで行ってくる。ちょっと……孫に顔を見せにな」
「そりゃあ結構なことだ」
クラマは頭を振った。
「本当は行きたくないんじゃけどのう……まあ仕方ないわい」
ノルドは不思議に思う。
世間一般では孫に会いたくないじいさんはいない。
だがクラマは特殊な人物である。
(色々あるんだろうな)
ノルドは何も聞かず「それでは」と言ってサダルパークに帰っていった。
クラマも「フウ~」と大きく息を吐いて飛び立った。
**
「アイナ!」
「おわ!? 急に出てくるんじゃねえよ!」
「カイルーンに帰ろう! ドウェイフさんのところにいこう!」
「い、今から!? 夜になっちまうぞ!?」
「大丈夫大丈夫!」
「い、いや……夜に空はさすがに怖ええよ……。
そ、それにモンスターはどうなったんだよ? なんかすげえ地響きもあったし」
「モンスターは倒しちゃったよ。それより早く早く!」
目をキラキラと輝かせているインベント。
(もし……アタシがゴネてもコイツは帰っちまうだろうな。
そんでもってアタシは次にいつ帰れるかわからねえ。
このお馬鹿さんは……アタシを迎えに来たりしない。ぜえ~ったいに!)
インベント航空。
オセラシアとカイルーンを繋ぐ。
出航時期、インベント次第。
一度逃すと二度と乗れない可能性大。
仕方なくインベントの背中におぶられるアイナ。
「そういやクラマさんは?」
「なんか用事があるんだって~」
「ほ~う」
「ふふ~行くよ~!」
飛び立つインベント。
しがみつくアイナ。
『うう~……やっぱり飛び始めは怖いな。ゾクってするぜ』
会話を声から念話に切り替える。
念話であれば飛びながらでもスムーズに会話できる。
「え~そうかな~」
『ま……だいぶ慣れたけどな。
それよりも楽しそうじゃねえか。なんかいいことあったのか?』
「えへへ~! サイって凄いね! 皮が硬いんだよ」
『ほ~』
「それにサイを狩ってるときに色々思いついたんだよね~。えっとねえ――――」
インベントは語る。語り続ける。
アイナは聞く。聞き続ける。
クラマがやっていたようにインベントの話を聞き、理解に努める。
インベントは変わろうとしていた。
もちろん性格は全く変わっていない。
いつまでも変わらずモンスターを狩りたくて仕方ない男。
だがクラマが提案し、練習し、モンスター相手に実演することになった『重さ』。
人間はどれだけ筋肉を鍛えても100キロの剣は持てたとしても振れない。
だがインベントなら収納空間に入れることができる。
多少鍛えたといってもインベントはまだまだ非力である。重いものを振り回す力などない。
ただ落とすだけならいくらでも重いものを落とせる。鉄柱のように。
その結果はライノタイプモンスターが不憫に思えるほどだった。
満足に歩くことができなくなる重力グリーブだが装備することはできる。
そして収納空間の反発力を巧みに利用すれば移動も可能。
蹴り飛ばすことも可能であり、ただの蹴りが必殺の蹴りに変わる。
本来、装備には人それぞれ適正重量がある。
だがインベントは適正重量をバグらせる異質な技能をすでに持っていた。
後は――組み合わせるだけなのだ。
クラマはインベントを誰よりも理解し、インベントに適したアドバイスを行った。
インベントのスタイルに大きく変化を与えたのは間違いない。
だが――クラマが当初想定していた未来予想図とは現時点で大きく異なっている。
そしてここからどう転んでいくのかは、もはやクラマにも想像できなくなっていた。
「やる気がありすぎるのも困りもんじゃのう」
クラマは空を飛びながらインベントを思い描く。
「やる気が無さ過ぎるのも困りもんじゃがのう……ハア~ア」
第六章 空飛ぶ天狗のインベント改造計画 完
いつも読んでいただきありがとうございます!
六章は結構長めになってしまいましたが、七章は恐らく短い予定です。
テンポ良いストーリーにする予定だったんですが、申し訳ないです!
・面白かった
・続きが気になる
そんな方はブックマークと評価をお願いいたします。
※評価は広告の下の☆☆☆☆☆をポチっとするだけです!
毎日投稿がんばってますので、今後ともよろしくお願いいたします!