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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第六章 空飛ぶ天狗のインベント改造計画

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狂った白刃

 ノルドが囮役をやっているその頃――


「無茶するなよ? わかっとるな?」


「は~い」


 インベントは準備万端。


(無茶はしないぞ~。無茶しな~い)


 インベントは究極武神大剣アンリミテッドラグナロクブレードを地面に開いたゲートからゆっくりと取り出した。

 そして軽く収納空間内の砂空間を突いた。


 ふわりと浮くインベント。


「いっきま~す!」


 次は思い切り砂空間を突き、ライノタイプモンスターに向けて発射されるインベント。


 残されたアイナとクラマ。


「ま、ワシも行ってくるわい」


「はい」


 アイナは草原に一人佇みながら――


「アタシ……来る必要無かったんじゃねえの?」


 と呟いた。


**


 ノルドが剣を回している。そんな様子を見て――


(なんか懐かしいな~!)


 インベントは究極武神大剣アンリミテッドラグナロクブレードを持ったまま急接近する。


 そして跳躍用丸太バウンダーを、無茶ではないギリギリの範囲で踏む。

 そもそもどこからが無茶なのかわからないので、どこまで思い切り踏んでいいのかわかっていない。


 とにかく恐ろしい勢いそのままに腹部に剣を突き刺す。


 そして剣はモンスターの腹に――刺さらない。


「え!?」


 インベントはまるでゴム壁を刺したような感触を覚えた。

 そして究極武神大剣アンリミテッドラグナロクブレードは――折れてしまった。


 インベントは知らないが、サイの皮膚は非常に硬い。

 肉食獣の牙や爪でもそう簡単には傷をつけれないぐらいの硬度を誇る。

 ましてやモンスター化したサイ。


 インベントの突きも申し分ない火力だった。

 超高速で超重量級の武器で突いたのだ。普通のモンスターであればひとたまりも無いだろう。


 矛と盾。

 本日は盾の勝利。


 だが、これで諦めるインベントではない。


(硬ああああ~い! すっげえ!)



 モンスターは腹部を突き刺そうとしてきたインベントを視認した。

 草食動物であるサイは、広範囲を見ることができる。

 モンスターは頭を振り、角でインベントを殺そうとする。


 ノルドは「インベント!」と叫ぶが、インベントはいとも簡単に空中に逃げた。

 ノルドは一安心する。


 一安心するのだが――


 インベントは間髪入れずに追撃を行う。


(丸太ドライブ――参式)


 インベントは急降下しつつ、丸太をモンスターの背骨に向けて発射した。

 周囲に鈍い音が響く。


(……あんまり効いてなさそう――だ、ね!)


 落下しつつ、続けざまに重力グラビティグリーブを加速させ、モンスターを蹴った。

 かなりの威力なのだが、インベントはモンスターの体の中でダメージが分散されていくように感じた。


(ふ~む。どうしようかな~)


 これまで戦ってきたモンスターに比べ、ライノタイプモンスターは防御力が異常に高い。

 同じ大型モンスターの紅蓮蜥蜴ファイアドレークも耐久力は高かった。

 だが紅蓮蜥蜴ファイアドレークは防御よりも再生する能力だった。



 大物狩りは本来、森林警備隊の精鋭たちが集まり20~30名のチームで戦う。


 基本戦術はアタッカーとディフェンダーに分かれ、地道に攻撃と防御を繰り返す。

 モンスターは大きければ大きいほど幽力が多く、持久戦になりがちだ。


 少数で大型モンスターを狩るなんて自殺行為なのだ。

 だがインベントにはそんな常識は無い。

 むしろ大型モンスターを少人数で倒すことこそインベントの理想形なのだ。


 なぜならモンブレではパーティーは一組四人までである。

 レイド戦と呼ばれる複数のパーティーで戦う場合でも四組最大16名。

 大人数でモンスターを狩る事のほうがインベントにとっては異質なのだ。


「ひひひ」


 モンスターの攻撃を華麗に避けるインベント。


(図体がデカいからか動きが単調。

 それに――)


 インベントはモンスターの真上まで飛んだ。


(やっぱりね。真上は見えないんだな。探知能力も無いとみて間違いなさそう。

 足は速いけど小回りは利かないみたいだし、アレ(・・)で……仕留めるか)



「インベント」


「ん? クラマさん」


 インベントの元にクラマが近寄ってくる。


「こりゃあ無理じゃ。サイってのはそもそも皮膚が分厚い。

 あんなのぶっ殺そうと思ったら、ロメロでも連れてくるしかないのう。

 やはり――」


 クラマは「誘導するしかない」と言おうとした時。

 インベントの笑顔を見て冷や汗をかいた。


「大丈夫ですよ~。ちゃんと殺せます。無茶もしませんから~」


「お、おい!」


 インベントは自由落下で落ちていく。

 向かった先はモンスターの額だ。


「エアリアルスタイル~! ハハハ~」


 ただ踏むだけでもかなりの威力はある。

 だがこのモンスターにとってはダメージはほとんど無く、挑発にしかならない。

 怒り、暴れるモンスター。


 インベントはモンスターを無視し、ノルドのもとへ向かう。


「ノルドさ~ん」


「お、おい。どうするんだこれ?」


「次で仕留めます。なので足止めお願いします!」


 そう言ってインベントはモンスターの側面に回り込むように飛ぶ。

 モンスターの周囲をグルグルと飛び回り、挑発を続けた。


 モンスターはうっとうしいインベントを殺そうと襲い掛かかる。


 ノルドはインベントの様子を見て「簡単に言いやがって……」と笑い、駆けだした。

 モンスターの狙いはインベントに移っている。

 まずは狙いをノルド自身に戻さなくてはならない。


 ノルドは背後からモンスターに接近し、思い切り足に剣を刺した。

 比較的柔らかそうな部分を刺したが、それでも大して剣は刺さらない。

 ただ注意をノルドに向けることには成功する。


 モンスターは咆哮をあげ、暴れだした。

 たった一発当てれば壊れてしまうような小さな生物なのに、なかなか攻撃が当たらずイライラしている。


「ほお~れ、どうした?」


 ノルドはあえてゆっくりと接近する。


 近づけば近づくだけ危険は増すことはわかっている。

 だがインベントのオーダーは足止めである。

 距離をとればモンスターは突進してくるであろう。走り出してしまったら止めるのは難しい。


 だったら接近してしまえばいい。


(間合いを詰めれば動けねえだろ? ククク)


 ヒラリヒラリと攻撃を躱すノルド。

 ぬるい攻撃であれば反撃も挟む。


「クックック」


 久しく忘れていたモンスターとのりとり。

 野生の勘でモンスターの攻撃タイミングは予期できたとしても、体重差は明らか。

 一撃を喰らえば即アウト。


 それでもノルドは気にしない。

 死んでも構わないと思って毎日モンスター狩りに出掛けていた『狂人くるいど』。

 そして本当に死んだ。死んだはずだった。


 なのに蘇ってしまった。



「ハッハッハッハ! いいぞ、もっとこい! デカブツ!」


 臨死体験を経てノルドは死への恐怖が薄らいでいる。

 一歩間違えたら死ぬ行動でも、躊躇なく実行してくる。


 モンスターからすればたまったものではない。

 いつまでたってもノルドが纏わりついてくるのだ。

 当たったと思った攻撃も寸前のところで避けられる。


 モンスターからすればノルドの攻撃など痛くも痒くもないのだが、不気味極まりない。




 上から眺めるクラマは、手助けしようかと思っていたが、なにもできないでいた。

 あまりに洗練された――いや、とち狂った動きに、手を出せばかえって邪魔になるかもしれないと考えたのだ。


(やれやれ……インベントもたいがいじゃが……ノルドも無茶苦茶じゃわい。

 アイレドって町は……おかしなやつを生み出す呪いでもかかっとるのか?)



 防御や安全を全て放棄し、回避と攻撃のみに全てを注ぎ込んでいるノルドを見て――


「まるで……鞘から抜かれた抜身の刃――『白刃しらは』じゃのう。

 『白刃しらは』が狂喜乱舞しとるようじゃわい」


 と呟いた。



 クラマはノルドが『白刃はくじん』と呼ばれるようになることをまだ知らない。

書き直してたら遅くなりました!

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