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進化の序章

 ドウェイフ工房の店主、ドウェイフはロメロからとんでもない額を渡されていた。

 ドウェイフ工房の一年間の収入以上の金額だ。


 ドウェイフは「こ、こんなに受け取れねえよ!」と受け取りを拒否しようとした。

 だが、「はっはっは、気にするな」と強引に渡されてしまったのだ。


 お金はあるけど金銭感覚ゼロのロメロさん。

 詐欺にあわないか心配になるところだが、ロメロ相手に詐欺を行おうなんて命知らずはいない。


 ドウェイフはお金を受け取った以上、インベントの意味不明な無理難題に応えなくてはならなくなったのだ。

 そして――


「おらよ。一応……できたぜ」


「お、お、お、おおお!」


 20日かけてやっと完成した一つ目のインベント専用装備。

 エアリアルスタイルの要となる装備である、足用防具だ。


「坊主が言ってたみたいに、簡単に脱いだり履いたりするのは無理だったぜ。

 こんな重たい装備、正直縛り上げないと脱げちまう」


「う~~む……それは仕方ないですね……でも……かっこいい!」


「へへ、気に入ってくれたら嬉しいぜ。つくってるときにこれでいいのか何度も自問自答しちまったからな!」


 ドウェイフがつくりあげた足用防具は、ぱっと見るとブーツのような形状だが大部分が比重の重い合金で作られている。

 黒みがかった合金をふんだんに使用しているため、スノボ用のブーツのようにゴツゴツしている。


「足底がいい……この分厚い感じがたまらないなあ……」


 そういってインベントは足用防具に触れる。

 そして思い知る。その重さを。


「お、お、お、重てええ!」


「がっはっは! できるだけ重くなんて言いやがるからよ!

 重たくしてやったぜ! 10キロぐらいかな」


「こ、これは凄い!」


 ドウェイフは頭を掻いた。


「悪ノリでつくっちまったがよ……本当に履くのか? 今からでも遅くねえ。軽くしてやってもいいんだぜ?」


「大丈夫です! とりあえず履いてみます!」


「お、おう、手伝うぜ」


 インベントはドウェイフのレクチャーを受けながら、重すぎる足用装備の装着のし方を教わる。


「要は鉄の靴に鉄のレガースを取り付けた感じだな。

 そうそう、あの覆面のおっさんの要望通りソールはかなり厚くしてあるぞ。

 ――――よしサイズは問題ねえな。

 レガース部分は紐を引っ張って調整してくれや」


「了解です! うはあー!」


 インベントは足に装着された装備を見て歓声をあげた。


専用オリジナル装備……! これほど嬉しいことはない!)


「それじゃあアイナたちに見せてきますねー!」


「お、おう! そういや次に作るのは()()でいいんだよな!?」


「お願いしますー! いやっほーう!」


 ドウェイフ工房から駆けだしていくインベント。

 いや……気持ちだけは駆けだしていた。


「うぎぎぎぎ」


 一歩一歩が遅く、よたよたしている。

 なにせ重さは片足10キロ近い。

 そしてインベントは足の筋力はさほどない。


 そんなインベントを見守るドウェイフ。


(店の床が抜けねえかな……)


 確実にドウェイフ工房の床にダメージを与えつつ、インベントは出ていった。


**


 カイルーンの外れでアイナとクラマはインベントを待っていた。

 地響きと共に現れるインベント。


 新しい靴を買ってもらって嬉しい少年のように笑顔が眩しい。

 アイナは収納空間に入れてくると思っていたら、履いてきたインベントを見て「子どもか……」と嘆いた。


 なんとか辿り着いたインベントは疲労困憊でその場に寝そべった。


 クラマはインベントから専用装備を脱がし、ドウェイフ作の一品を手に取った。

 唸るクラマ。


「これだけの重さ……質感……う~む……ええ品じゃなあ。

 アイナもそう思わんか?」


「い、いや……わかんねえ」


「やはり……イング王国の鍛冶屋は優秀じゃのう。

 オセラシアではこうはいかん。

 そうじゃ! ワシの天狗下駄も鉄製にしてもらおうかのう!」


「ただでさえインベントの無理難題でドウェイフのおっちゃん大変なんだから仕事増やすなよ……」


「う、う~む。残念じゃ」


 そうこうしているうちにインベントは息を整え起き上がった。


「どうですか! かっこいいですよね! 重力グラビティグリーブ!

 モンブレっぽくモンスターの名前を装備名につけてもいいんですけどね~!

 ここはシンプルに重力グラビティグリーブかなあ!」


 インベントが技や武器に変な名前をつけるのは、クラマとアイナが誰よりも理解している。

 華麗にスルーされるインベント。


「ま、あとは使いこなすだけじゃのう。

 ソールも――う~む! ええ仕事しとるわい!

 これなら無茶さえしなければ怪我せんじゃろうて」


「よ~し! 早速やってみますね!」



 インベントは重力グラビティグリーブを装着しなおした。

 片足10キロ弱、両足で20キロ弱。

 直立するとまるで地面に根を張っているかのような感覚を覚えた。


「よお~し」


 インベントは盾を取り出した。

 そして真下に向けて縮地を発動する。

 次の瞬間、ポンと真上に浮き上がるインベント。


 重力グラビティグリーブが完成したらずっとやろうと思っていた動きだ。

 想定通りに浮き上がり笑みを浮かべるインベント。


(ここからだ!)


 足元に丸太の先端を出したインベント。

 丸太を踏んでの跳躍。デリータとの模擬戦で何度も使用した新しい移動方法。


(いくぜえ! エアリアルスタイル! 跳躍! エアレイド!)


 重力グラビティグリーブで丸太をしっかりと踏んだインベント。

 いつも通り反発力が発生する。

 だが反発力は重力グラビティグリーブを履いている分、より強力に。


 インベントは理解していなかった。

 いつも通りに踏む力と、重力グラビティグリーブを装備したインベントが踏んだ際に発生する力は全く違うことを。


 予想以上の拒絶の力。

 想定では足裏から伝わった反発力は、足首を通過し、膝、太もも、そしてインベントの胴体に伝わってインベントを宙に押し上げるはずだった。


 だが、力の伝達に失敗し重力グラビティグリーブがまず吹っ飛んでいく。

 しっかり装着された重力グラビティグリーブはインベントの体を容赦なく空中に放り投げた。


「う、うわあああああああああ!」


 空中を錐揉み回転しながら飛んでいくインベント。


 そんな様子を見てクラマとアイナは冷ややかな目で見ていた。


「前途多難ですね~」


「そうじゃのう~。修業するしかないのう」


 視界不良でどうすることもできず、地面に叩きつけられたインベント。

 重力グラビティグリーブのお陰で、地面には大きな窪みができた。



 晴れ時々曇り。

 ところによってインベント with 『重力グラビティグリーブ』。

楽天で『鉄下駄』を調べたら片足2.5キロのやつがありました。

10キロの靴……歩けるんだろうか……。


こ、広告の下の☆☆☆☆☆から応援よろしくね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 歩けるだけ鍛えられてはいるんだな それにしても(毎度こいつは訳わからんことしてるなあ...)と見守る側になってるアイナのお姉さん力が上昇してる...
[気になる点] 主人公が空飛べて収納空間に入れている時は物の重さ無視出来るなら、爆撃機みたいに戦えば良くないか。 主人公が遠距離戦好きじゃないから、ないか。
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