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【収納空間】を極める男 ~モンスターを狩りたいので誰よりも【収納空間】を使い込んでいたら、色々な事件に巻き込まれてしまう。『俺はモンスターを狩りたいだけなのにぃ!』~  作者: 森たん
第六章 空飛ぶ天狗のインベント改造計画

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インベントとクラマ⑬

「い、インベントが語ってるような夢を見る人が……他にもいる?」


「まあ……『もんぶれ』ほど幻想的で現実離れした世界ではないがのう。

 あんまりインベントを待たせるわけにはいかんから、ざ~っくり話すが……ワシの父じゃ」


「え? クラマさんのお父さん??」


「ワシの父、ダイバ・オセラシア・ハードウェイ。

 後に改名し、ダイバ・オセラシア・ハイテングウ。

 20年前に死んじまったがのう。確かに他の世界の夢をみとった」


「ど、どんな夢を?」


「え~っとなあ……『ヨーカイボッチ』とかいう世界の夢をみとった。

 奇妙な猫のバケモノが出てくる世界だと言っておったのう」


「は、はあ」


「親父はインベントよりはまとも……というか一応オセラシアで一番偉い立場だったからのう。

 『ヨーカイボッチ』の世界の話は、家族か酔った時ぐらいにしか話しはせんかった。

 じゃがワシは何度も『ヨーカイボッチ』の話は聞いたし、親父の妄言ではないと確信しとる」


 ポカンとしているアイナにクラマは微笑みかけた。


「ちなみにのう。ワシの二つ名『星天狗』も『ヨーカイボッチ』が由来じゃ」


「へ?」


「親父がのう、自分自身を『大天狗』と名乗っておってのう。

 『ヨーカイボッチ』には『天狗』っちゅう赤くて高い鼻のバケモノがいるらしい。

 火を噴いたり、風を巻き起こしたりするバケモノ。親父はいたく『天狗』を気にいっとたんじゃ。

 周囲の人間はいきなり『大天狗』と名乗りだし、面をつけるようになった親父に驚いておったがのう。

 だが親父は圧倒的な力があった。そして人望もあったからのう。すぐに『大天狗』は定着したよ。

 ま、ワシは親父の意思を継ごうと思った時にのう、『星天狗』を名乗るようになったわけじゃよ」


 アイナは「はあ」と気の抜けた声で返事した。


「ちなみに、『クラマ』って名は天狗の王様みたいなやつが『クラマ』って言うらしくてな。

 そこから貰ったそうな。へ~んな名前つけられたもんじゃわい。かっかっか!」


「はは、ははは」


「ほ~れ、そろそろ戻るぞい。まだまだ先は長そうじゃからの~」




 それから――


 クラマは孫と歳の近いインベントの話を楽しく聞き続けた。

 クラマからすれば何十年ぶりに夢の話を聞いている状況だ。

 話し手は父親からインベントに変わり、内容は少々……いやかなり幻想的な世界観に変わっているが。


(奇縁じゃのう)


 クラマの父と似ても似つかないインベント。

 だが夢の話を楽しそうに語るインベントと父を重ね合わせ、クラマはノスタルジックな想いに浸っていた。



 アイナは何とも言えない気分で話を聞き続けた。

 なりゆきだ。時の流れに身をまかせた。


(あ~……この話、いつ終わるんだろ……。


 しかしまあ、クラマさんのお父さんも同じような感じだったのか……。

 もしかしたら他にもそんな人がいるのかもしれないんだよなあ。

 まあ……変な夢を見続けるからって誰かに言ったりしないかも。

 変なやつって思われちゃうだろうしな。現に変な奴が目の前にいるし。


 しっかしまあ~~~~~あ、楽しそうに喋ってるよ~、インベントちゃん。

 終わりが見えねえ~……。かったるう~。

 しっかし変な夢見たからって、自分まで変になる必要ないだろ……。

 はあ~あ~、かったるう~)



****


 三日後――


 アイレドの宿。インベントは目を覚ます。

 今日もモンブレの夢を見た。


 インベントは上体を起こしてから再度目を閉じた。

 夢の反芻である。


(ハア~。今日も最高だったなあ。

 セルグレイドスの滑空攻撃はいつ見てもカッコいい。

 だけど! それを踏みつけ回避して頭上から斬り裂く攻撃はもっとカッコいい!!

 そうだった! 練習しなくちゃあ!)


 眠る前は語り足りない気分だったインベントだが、今は修業モードに切り替わっていた。


 アイナとクラマは未だに寝ている。


 話す側と聞く側。

 インベントは元気いっぱいだ。目覚めも素晴らしい最高の気分。


 だが聞く側の二人は疲労困憊だった。

 特に聞き続けることがこれほどの苦行だとアイナは知らなかった。



「アイナ! 朝だよー!」


 同室で眠るアイナを揺するインベント。


「う、うう~」


「起きて起きてー!」


「あ、朝っぱらから女の子を揺するんじゃねえ……。もう聞き疲れた……。寝る」


「お話は終わりだよ! 修業しよう修業!」


「え……お話終わり?」


「エアリアルスタイルを覚えなくっちゃ!」


 アイナは地獄のようなヒアリングタイムが終わることに安堵した。

 「やった、やったあ」と呟くが目を閉じているアイナ。


 揺するインベントに「後五分~」とお決まりのセリフを言うのだった。


**


「そんでどうしたいんじゃ? そのエアリアルスタイルとやらは」


「えっとですねえ! ――」


 エアリアルスタイルを簡単に説明すれば、タイミングよくモンスターを踏むことで踏みつけ跳躍が発動する。

 踏みつけ跳躍は短時間無敵時間が発生し、そこから多彩な攻撃に繋げることができる。


 インベントはアイナとクラマにエアリアルスタイルがいかに素晴らしいか説明する。

 これまでであればインベント以外誰も理解できない話だ。

 だが――



「おいインベント」


「なに? アイナ」


「なんとなくエアリアルスタイルってのはわかったよ。

 いや……わかりたくないんだけど、あれだけ話聞いちまった後だからなんとなくイメージできちゃう。

 かったるいけど、なんとかわかったよ」


 インベントは人生で初めて『モンブレ』の世界を共感された。

 と同時にインベントは背中がムズムズする感覚を覚えた。

 意図せずニヤニヤしてしまうインベント。


 共感されることがこれほど嬉しいことだと、理解が追い付いていないのだ。


「わかったんだけどさ……そもそも無敵時間ってなんだよ」


「……へ?」


「モンスターを踏みつけるのはわかった。だけど無敵時間ってのはなんだよ」


 硬直するインベント。


 無敵時間は、無敵時間中であればどんな攻撃であってもダメージが発生しない時間である。

 基本的には攻撃がすり抜けていくことが多い。使いこなせば非常に強力だ。

 だがもちろん現実的には存在しない時間。ゲームだからこそ存在する時間だ。


「む、無敵時間中は……どんな攻撃でもすり抜けるんだヨ」


「い、いや……どういうことだよ」


「む、無敵時間中は……どんな攻撃でもすり抜けるんだヨ」


「く、繰り返し!? せ、説明になってねえ!」


 アイナは『モンブレ』の世界を多少なりとも理解した。

 理解したからこそ指摘できるようになった。


 これまでは理解できないからこそ無視されていたインベントの言葉が指摘されるようになってしまったのだ。



「ワシも疑問があってのう。

 そもそも踏みつけて高く飛ぶってのがイマイチよくわからん」


「あ、それアタシも思ってました」


「無茶苦茶強く踏めばええのかのう?」


「インベントの足の力じゃ難しく無いですか?」


「う~む……力もそうじゃが、モンスターを踏んで跳躍って無茶苦茶難しいぞ。

 そもそもなんで踏むんじゃ? 攻撃なのか、防御なのか」


「確かにイマイチよくわからないんですよねえ~」



 アイナとクラマが真面目にエアリアルスタイルについて考察している。

 インベントは鼻の穴を大きく広げながら硬直していた。


 インベントは嬉しさと戸惑いが入り交じり、何とも言えない気分に浸っていた。




 エアリアルスタイル…………難航中!

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイナさん、男っぽい口調なのに「女の子」と言う言葉が死ぬほど似合うんだが... 私の都会で薄汚れた語彙では表現できない
[一言] 繰り返し笑った。ヤバい子になってる。元からともいう。
[気になる点] ヨウカイボッチ→妖怪ウォッチですか。
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