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100/444

モンスターオタクは語りたい

100話です! ありがとうございます!

 口喧嘩を繰り広げるロメロとクラマ。

 世間では尊敬されている『星天狗ほしてんぐ』と『陽剣』の醜い争い。


 アイナは残念なモノを見る目で見ていた。

 と同時に、凄いとされている人も、しょせん人であることを悟った。


 なぜか申し訳ない気持ちになったフラウが二人の間に入る。


「……そろそろ本題に入ったらどうっすか?」


 口喧嘩の切れ目でフラウが話しかけた。


「おお~フラウちゃんじゃないか。相変わらず元気そうじゃのう」


「うっす!」


 デレデレするクラマ。

 鋭い眼光はふにゃふにゃになり、孫をみるおじいさんのような柔らかい爺さんになってしまった。


「なんだ、戻ってきたのか」


「隊長が『そろそろインベント君が起きるだろうし、戻ってあげなさい』とのことで戻ったっす」


「ふ~ん、そうか」


 ちなみに現在、『宵蛇よいばみ』本隊がアドリーと遭遇した場所に向かっている。

 現場検証を行っているのだ。

 ロメロも向かうべきなのだが、面白くなさそうなのでフラウに任せたのだ。


「あ、そういえばクラマ様にロゼから伝言っす」


「誰じゃいロゼって」


「新しく『宵蛇よいばみ』に入隊した女の子っすよ」


「ほう!」


「クラマ様に会うことを伝えたら、『是非今度お会いしたいです』とのことっす」


「おお~そうかそうか! いつでも会うぞ~」


 ロメロは「色ボケジジイめ」と呟いた。



 フラウの話を聞いてアイナは笑う。

 インベントとアイナはこそこそ話を始めた。


『ぷふふ、相変わらずだなロゼ』


「ん?」


『どうせ『星天狗』にも取り入ろうって考えだぜ?

 ロゼの出世欲って言うか、向上心には頭が下がるぜ』


「あ~……ロゼらしいね」



 なんのために集合したのかわからない緩い雰囲気。 

 クラマは咳ばらいをした。


「それじゃあのう。色々聞きたいんじゃが……え~っと名前はなんだったかいのう?」


「インベントだ。何度も言ってるだろうがジジイ」


「うるさいのう! インベントな。よし覚えたぞ。

 それでのうインベント」


「はい」


「ワシはお前が倒れているところは見た。

 アドリーとかいう少女にやられたんじゃろうな」


「そうですね」


「その日――八日前じゃったな。

 八日前の出来事を全て話せ。全部だ」


「全て?」


「全てじゃ。朝起きてからの全て」


「え?」


「情報の精査はワシがする。

 インベント。とにかくぜ~んぶ話せ。何時間かかってもいい」


「わ、わかりました」


 インベントは八日前のことを思い出す。


 インベントは興味の無いことや覚える気がないことは全く覚えない。

 だが、記憶力が悪いわけでは無い。

 むしろ普通なら忘れることも多い夢の内容まで記憶しているので、記憶力は良いほうだ。



 そこからインベントは本当に全てを話した。

 起床時間から、朝何を食べ、どのように服を着替えたのか。モーニングルーティーンから事細かく話し始めた。

 そして出発し、上空から『軍隊鼠アーミーラット』を見つけ、ネズミの国に辿り着くまで。

 ネズミの国の様子、そしてアドリーと戦いに関して。


 とにかく全て話した。

 時間にして五時間。フラウは一時間で脱落してしまった。

 ロメロは二時間でうとうとしだした。


 五時間、しっかり聞いていたのはクラマとアイナの二人だけだった。



****


 五時間ぶっ通しで話したインベントはさすがに疲れていた。

 収納空間から水を取り出しゴクゴクと飲む。


「は~疲れた」


「細かくありがとうな。少し考えをまとめるわい」


 そういってインベントの話をメモしていた紙を見る。


「あ~終わったのかジジイ。相変わらず……細かいんだから」


 五時間もかかると思っていなかったロメロが嫌味っぽく言う。


「ちょっと黙っとれ」


「へいへい」


 クラマとしては色々インベントに思うところはあった。


 なにせ空を飛べる少年である。

 空を飛ぶ能力を持つ者にクラマは自分以外で初めて出会う。

 これ以上の共通点は無い。


 それにアドリーと出会うきっかけを作ったのもインベントだ。


 クラマはイング王国とオセラシア自治区の国境周辺を飛び回り不穏な行動をしている誰かを探し続けていた。

 やっと発見したきっかけもインベントがもたらしてくれたのだ。



 だが五時間話を聞いて一番気になった点。

 いやそもそもなぜ五時間もかかったのか?


 それはインベントとアドリーの戦いに関しての時間が半分以上を占めていた。


(この坊主……恐ろしく色々考えて戦っておるわい。

 というかよくわからん言葉もいっぱい出てきたし、なんか嬉しそうに話すし……変な子じゃのう)


 人型モンスターであるアドリーとの戦い。

 長時間の戦闘だったが、インベントは事細かに話した。

 モンスター大好きインベントには殺されかけた戦いでさえ大切な思い出なのだ。


 アドリーの技。それに対するインベントの行動。

 その一つ一つが幸せな記憶。まるで恋人と過ごした時間のように。



 クラマは、話し終えてぼーっと空をみているインベントの顔を見つつ――


「インベント。お前のルーンは【ペオース】だな。 他は?」


「【ペオース】だけですよ」


「なるほどのう……。しかし話を聞いた感じ――」


 クラマはメモをパラパラとめくる。


「武器出し入れはわかるが……空を飛ぶ……高速移動……武器の射出……全部【ペオース】に関係ない力に思えるのう」


「ハッハッハ! 頭の固いジジイだな。

 事実やってのけているんだからそれでいいだろう」


「お前は~~!! どうしてこう原因を探ろうとせんのじゃ!

 【ペオース】が空を飛べるのであれば、数名育成するだけで凄いことになるんじゃぞ!」


「わかってねえな。ジジイ~。

 【ペオース】だから飛べるんじゃない。インベントだから飛べるんだよ」


「またわけのわからんことを……。

 なんでそんなに自信満々なんじゃ!」


「見てみればわかる。

 ――そうだそうだ。見てみるのが一番だ!」


 ロメロは立ち上がった。


「模擬戦してみろよ。ジジイ」


「は?」


「実際に戦ってみるのが一番わかりやすいだろ?

 インベントの実力を見れば、ジジイがいかに頭が固いかわかる。

 インベントはかなり強いぞ~? ジジイじゃあ荷が重いかもしれないな!」


「ふん! 望むところじゃ!

 『星天狗ほしてんぐ』の力を見せてやるわい!」


 そう言ってロメロとクラマは、まるで二人が模擬戦をする勢いで部屋から出ていく。




「……え? 俺が模擬戦するの? いやなんだけど……

 それにもう夕方だよ?」


「てゆーか、退院した日に模擬戦やらせるなんてダメだろ……。

 あの二人バカなんじゃないの……」


「なんか……申し訳ないっす」


 残された三人は、無視するわけにもいかず仕方なく二人を追いかけた。

ここからインベントは、より強く逞しくおかしくなっていきます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 展開すき。。
[良い点] 一章以上におかしくてたまりません サクサク進むし飽きさせないストーリーがたまりません
[気になる点] クラマさんはインベントのモンスター判定に引っかからないのですか? [一言] 100話おめです!
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