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俺様生徒会長は案外過保護で溺愛症

作者: 雪野ゆきの




 この学園には当たり前のことだが、生徒会長がいる。


 成績優秀、容姿端麗、家柄だって由緒正しき名家だ。そんな漫画のキャラみたいな彼だが、性格もそのスペックに負けず劣らず二次元じみている。


 俺様。


 数多くの作品の生徒会長に受け継がれてきた由緒正しき属性を、彼もしっかりと受け継いでいた。

 実際、この学園の生徒の誰もが彼を典型的な俺様だと思っていた……ついこの間までは。



 生徒会長である伊吹雅が校門をくぐると、そのバックには華が舞う……物理的に。


「ほっ、ほっ」

「……空乃、もう花びらを撒くのは止めないか?」


 雅の斜め後ろを歩く少女はざるから花びらを掬って雅の周囲に舞わせている。


「でも雅様、空乃が見てきた二次元の生徒会長達は皆登場シーンに華を背負ってました」

「物理的に背負ってる奴はいないと思うぞ?」

「三次元で何もないところに華を登場させるのは不可能なのです」

「そこをちゃんと分かっていて俺は嬉しいぞ」


 空乃はそこでやっと花びらを撒くのを止めた。校門を通りすぎたからだろうか。


「へぷしゅんっぬ!」


 なんとも特徴的なくしゃみだった。空乃はズズッと鼻水を啜る。

 雅はそんな空乃の鼻にお高いポケットテッシュを当てる。


「ほら、チーンしろ」

「ちーん!」


 雅は使用済みのテッシュを丸めると、ゴミ箱に放り投げた。


「空乃、行くぞ」

「はい!」


 主である雅が従者の面倒を甲斐がいしく見る、その光景はこの学園でそう珍しくもなくなってきた。









「オ゛ウ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛」

「空乃、気持ち悪いのは分かったからもう少し女の子らしくしなさい」

「おえっ☆」

「……」

「ウプッ……オエエエエエエ」


 どうも、主に俵担ぎで回収された空乃です。

 体育の時間に気分が悪くなって雅様に回収されました。申し訳ない。

 ただこの持たれ方はお腹が圧迫されて苦しいのです。お姫様抱っことは言わないからせめて縦抱きして欲しい。


 私が必死に吐き気と格闘しているうちに、保健室に到着したようだ。


「入るぞ」


 何様俺様雅様はノックもせずに保健室の扉を開いた。


「お、いらっしゃ~い」


 保健室の先生は無作法も気にせず優しく迎えてくれた。今日もイケメンですね。


「先生こんにちわ~。お尻から失礼します」

(ゆずりは)さんこんにちは。可愛いおしりだから問題ありませんよ」

「おいセクハラ教師」

「ほんのジョークですよ雅様」


 雅様はベッドの上に私を下ろしてくれた。お腹の圧迫がおさまって一安心。


「杠さんは今日も貧血ですか?」

「はいです。あと一時間で放課後なのでそれまで休ませて下さい」

「いいですよ~」


 先生はもう慣れたものであっさりとベッドを貸してくれた。


「雅様は授業に戻って下さい」

「……分かった。帰りに迎えに来るからそれまで寝てろよ。あと水分もちゃんと取ること」

「りょーかいです」


 雅様は心配そうな顔をしていたが教室に戻って行った。


 先生は一応運動をしてきた私にスポーツドリンクを差し出してきた。


「杠さんは本当に体が弱いですね」

「自慢じゃないですけど私よりも貧弱な人は見たことないのです」

「ほんとに自慢じゃないですね~。ほら、飲んだらさっさと横になってください。君のご主人様にどやされるのは僕なんですから」

「はーい」


 私は横になって首まで掛け布団を被る。

 寝る準備は万端だ。


「さあ先生、子守唄を歌って下さい」

「当保健室ではそのようなサービスは行っておりません」

「なんと。雅様はほぼ毎晩歌ってくれますよ?」

「何やってんですかあの生徒会長は。過剰サービスにも程がありますよ」

「雅様のビブラートは秀逸です」

「それほんとに子守唄ですかね」


 先生と話が盛り上がってきたところでスマホにメッセージが届いた。おしゃべりを止めて中身を確認する。


「あ、雅様からです」


『喋ってないで早く寝ろ』


「……雅様エスパーですかね」

「君あの過保護会長に盗聴機とか仕掛けられてるんじゃないの?」

「まっさかぁ」


 面白い冗談だ。

 そんなわけないと一笑に伏して私は睡眠に入った。









「空乃」

「……はい、みやびさま」


 雅様の美声で私の意識は浮上した。

 まだボンヤリする。


「吐き気は?」

「もうないです。スッキリです」


 雅様は私のおでこやら首筋やらを触ってくる。


「……熱はないな。俺はこれから生徒会室に行くが空乃は先に帰ってるか?」

「いえ雅様っ!私もお伴しますよっ」


 私は起き上がり生徒会室に行く支度をした。

 靴を履くと、雅様にジッと見詰められる。


「……?何ですか?」

「寝癖がついてるぞ。ちょっと頭貸せ」

「レンタル期限は一週間ですよ……アイタッ」


 冗談を言ったら頭を叩かれた。……痛くないけど。

 こういうのって痛くなくても痛って言っちゃう。

 雅様はどこからか取り出した櫛で私の髪の毛を綺麗にしてくれた。自分でやるよりも上手い。

 先生はそんな私達を微笑まし気に見守っている。


「君達仲良いね~」

「でしょう。一つ屋根の下に住んでますからね!」

「進んで誤解を招くんじゃない。第一、伊吹家に何人住んでると思ってるんだ」


 ジョークなのに。

 雅様はともかく、先生は割とゲスなのでこういう冗談は大好きだ。今もニヤニヤしている。イケメンが台無しだ。

 それはさておき、もう保健室に居座る理由もないのでそろそろ退室しよう。


「じゃー先生、近いうちにまた来ると思います」

「普通はそんな頻繁に来るもんでもないんですけどねぇ。準備して待ってますよ」


 先生に手を振って私達は保健室を後にした。









「こんにちは~」


 挨拶をしながら入室すると、そこには雅様以外の生徒会メンバーが集まっていた。


「おや、皆さんお揃いですか。珍しいですね」

「今日は会議だからな」

「ほうほう」


 雅様が私の疑問に答えてくれた。

 取り敢えず私達も皆さんが座っているソファーに腰掛ける。


「会議の議題は何なのですか?」

「今年のカリキュラムについてだ」

「そうなのですか。あ、お茶いれますね。皆さんも要りますか?」


 そう問い掛けると四人全員が頷き返してきた。今日は皆さん従者を連れて来ていないらしい。それで誰にも飲み物がなかったのだろう。

 誰かしらの従者がいれば雅様の仕事が終わるまで遊んでくれるのに……。


 私は慣れた手つきで紅茶を準備する。小さい頃から雅様のお茶は私が入れていたので得意なのだ。

 五人分を配膳し終わると、私は雅様の隣に戻った。ふう。


「空乃、まだ本調子じゃないだろ。寝てていいぞ」


 そう言って雅様は自分の太ももを叩いている。膝枕をしてくれるってことだろう。


「流石に会議中に寝るのはどうなんです?」

「問題ない。病人に文句を言う程コイツらの器は小さくないだろう」

「当たり前です」


 副会長が雅様の言葉を肯定した。他のみんなも頷いている。

 じゃあいいか。


「じゃあお言葉に甘えて寝かせて貰います」

「ああ」


 遠慮なく雅様の太ももに頭を乗せると、雅様は常備してある私専用のブランケットを掛けてくれた。イケメン。

 まだ若干体調の悪かった私はすぐに眠りに入った。



「すぴすぴ……」

「寝たな……。よし、会議を始めるぞ。今日の議題は水泳の授業を廃止するか否かだ、そして結論は廃止する。これで会議は終了だ」

「会長それもう会議じゃねぇっす。決定事項の発表っす」


 迅速に会議を終わらせにかかった雅を会計が止める。


「なんだ、何か文句があるのか」

「今んとこ文句しかないっすから。とりあえず水泳の授業を廃止したい理由を説明してよ会長」

「はぁ、仕方がない。端的に言えば理由は空ちゃんのためだ」


 空乃の呼び方を変えた雅に昔馴染みの役員達は『ああ、いつものか……』とこの後の展開を察する。


「空ちゃんは陸上での体育だって満足に受けられないのに水中なんて行ける筈ないだろ。だが皆が楽しんで泳いでいるのを一人ポツンと見学するなんて空ちゃんが不憫過ぎる。そしてもし仮に授業を受けることができても空ちゃんの水着姿を衆目に晒すなんて俺が許さんから水泳の授業は廃止する」

「……まぁ、言い分は分かりました。というか容易に予想できましたね」


 副会長は一つため息を落とす。

 雅が昔から一つ下の従者を、目に入れても痛くない程可愛がっていたのはここにいるメンバー全員が知っている。よって今更大した衝撃はない。


「てかお前ら飲みもんくらい自分で用意しとけよ。気遣いやさんの空ちゃんがお前らの分を気にしないわけねぇだろ」

「……それはごめん。空乃の入れる紅茶はおいしいからつい……ね」

「空ちゃんの手をわずらわせていいのは俺だけなんだよ」

「相変わらず溺愛してるなぁ。どうせ盗聴も続けてるんでしょ?」


 呆れ半分で問い掛けたのは書記だ。次いで庶務も発言する。


「雅がイヤホンしてると聞いてるのは音楽じゃないんだろうな……って考えて背中に寒気が走る……」

「最近はワイヤレスがあるから授業中にしててもバレにくいな」

「全く悪びれないな」


 清々しい程罪の意識がない雅に役員達は引き気味だ。

 だが雅が盗聴を始めた中学生の時から知っていて何もしないのだからある意味彼らも同罪だと言えるだろう。


「GPSだけで満足しておけばいいのに」

「GPSじゃ空ちゃんの体調面までは分からないからな」


 あくまで盗聴を正当化する雅。

 普段は状況に応じて譲ることもある雅だが、空乃のことに関しては頑として譲歩しない。


「お前らの可愛くない従者と違って空ちゃんはか弱いんだよ」

「俺らの従者男だし」


 冷静なツッコミが返ってきた。


「逆に異性の従者がいる方が珍しいんですよ」

「う~ん、それだがな。最近分家のやつらが俺に新しい従者をたてようとしてる節があるんだよな」

「わあ、何て命知らずな」


 会計がまだ見ぬ分家を憐れんだ。


「新しい従者なんて見繕って空ちゃんが嫉妬したらどうする。ストレスは大敵だぞ」

「そこっすか会長。流石っすね」

「第一、空ちゃんは体が弱いだけで能力はどこの従者にも劣らないというのに。ウチの子が一番だ」


 雅は自慢気に言い切る。そして右手が空乃の頭を撫でるのを止められていない。


「本家……雅の両親は何て言ってるの?」

「ウチの両親は俺と同じく空ちゃん溺愛だから。密かに分家に怒り狂ってる」

「それはまた……」


 そこで、空乃がうっすらと目を開いた。


「起きたか空乃」

「……」


 空乃はまだ寝惚けているのか雅の声に応答しない。


「空乃?」


 雅が再び呼び掛けると空乃の瞳が潤む。


「……みやびさまぁ。そらのは捨てられるんですかぁ?」

「え?」

「ううっ、あたらしい従者をたてるって……雅さまのご両親が怒り狂ってるてぇ」


 遂に空乃が涙を溢し始めた。

 どうやら断片的に聞こえてきた話を勝手に解釈したらしい。


「うえええええ」

「あー、よしよし。すまんな、俺達はもう帰る。理事長にその書類を出しておいてくれ」


 それだけ言い残すと雅は空乃を抱いて帰ってしまった。


「野良になるのはいやですうう」

「はいはい、安心しろお前は野良じゃなくて室内飼いだ」



「あれで取り繕えていると思っている雅はある意味病気ですね」

「同意」


 二人を見送ると、副会長は雅の残した書類に目を通す。


「水泳の授業廃止についての書類……完璧に作られてる……」

「最初っから俺らの意見聞く気なかったんだね~。空乃関係では割といつものことだけど」

「はぁ……」


 副会長は理事長に書類を出しに行く為に席を立った。





 




 送迎の車の中で、雅は空乃を宥める。


「よしよし、誰もお前を捨てないぞ」

「ん゛ん゛ん゛~!」


 ぐずる空乃。

 ニヤケそうになるのを必死に抑えている雅。


 だが、空乃は伊吹家に到着した瞬間、急に冷静さを取り戻した。


「雅様、空乃は昼間に寝過ぎたのでちょっとお散歩に行ってきます」

「ん、一人で行くのか?」

「はい!」

「タイムリミットは二時間だ。二時間して帰って来なかったら迎えに行くからな」

「大丈夫です! 雅様のお手はわずらわせません!」


 行き先を言っていないのにどうやって迎えに来るのかを疑問に思わない空乃はある意味雅に慣れ過ぎている。


「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい」



 空乃を見送った雅はスマホを取り出す。


「俺だ。今すぐ空ちゃんの後を追って護衛しとけ。……ああ、いつも通り気付かれないようにだ。俺は空ちゃんの観察日記を書いてるから……あ? お前今キモッて言ったか? …………切りやがった」


 雅は独り呟く。


「ふむ、嫉妬する空ちゃんも可愛いな」













 空乃が向かったのは伊吹の分家だった。


 コンコンコンコンコンコンコン


「ごめんくださ〜い。杠空乃ですー。開けてくださーい」


 門の中からの返事はない。


「……」


 コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!!!!


「ホラーか!!」


 勢いよく中から人が出てきた。


「おじゃましますね〜」

「あ!?」


 空乃はてってってっと門の隙間から屋敷に入っていった。




 ガラッと空乃が障子を開けると、そこには分家の当主達と従者候補達が集まっていた。皆、突然現れた空乃に驚きを見せる。


 空乃は適当な場所を見つけるとペタンと正座をした。


「皆様ごきげんよう。何やら分家の方々の集まりのようですが、なぜ杠の家だけ呼ばれていないのでしょう」


 空乃はあくまで笑顔を崩さずに続ける。


「まさかまさか、雅様の従者を変更する……なんて話し合いではないですよね?」


 そう言って空乃がそれぞれの顔を見渡すと、分家の当主達は当然だ、と怒りの表情を浮かべるのに対して従者候補の子息達は顔を青ざめさせて俯いている。


「だったら何が悪い!」

「五年前に正式な選定試験で空乃が雅様の従者だと決めましたよね」

「五年も前のことだろう。今なら家の息子の方が従者として優秀かもしれん!!」

「当の兄さま方は嫌そうですけど」


 嫌だという気持ちを表すように子息達が集まっている一帯にはどんよりととした重い空気が漂っていた。それに当主達は慌てる。




「大丈夫だ銀次! お前ならできる! あのクソガキのお守りはお前にピッタリだ!!」

「そうだぞ奏! あの変態ストーカー野郎からかわいいかわいい空ちゃんを救おうという気概がお前にはないのか!!!」

「アイツの魔の手から空ちゃんを解放するんだ!!」


 そうして次々に当主達は自分の息子に発破をかける。


「おじさま方、気遣ってくれるのは嬉しいのですが私は自分の意思で雅様につかえているのです」

「空乃は奴が何をしてるのか知らないからそんなことが言えるのだ」

「そうだぞ。流されに流されて気がついたら永久就職まっしぐらだ!」

「空ちゃんの両親が海外に行っているのだから俺らで空ちゃんを守らなくては!!」


 空乃が何を言っても昔から当主達は空乃を雅から離すことしか考えていない。

 まあそれは何年経っても果たされていないのだが……。


「親父達はわかってない。空乃を押し退けて従者なんかになったら俺達半年後には息してないぞ」

「イビられ続けて気づいたら行方不明になってるんだ」

「俺らだって空乃はかわいいけどそれよりも自分の身の方がかわいい」


 長年の経験から子息達の雅のイメージは酷いもんだ。

 それでもまだ当主達は諦めない。


「今からもう一度従者選定試験をしよう!! それならば従者が代わる正当な理由もできる!」

「空乃は二時間以内に帰れって言われてるので無理なのです」


「その通りだ」


 ガラッと障子が開いて雅が現れた。


「雅様!」

「残念だが空乃、既に二時間経った。これから暫く一人で外出はなしだ」

「あらま」

「あらまじゃないよ空ちゃん! もっと抵抗して!? このままじゃ軟禁まっしぐらだよ!!」

「人聞きの悪いジジイだ」

「なんだと変態ストーカー」


 雅と当主達がバチバチ睨み合う。


 それから暫くの間言い合いは続いた。




「……くぁぁ」


 空乃が眠そうに一つあくびをした。

 それだけで言い合いはストップする。


「空乃がお寝むの時間だ。もう連れて帰るぞ」

「さっさと寝かせてやれ。話し合いはまた後日だ」

「うむ」

「そうだな」


 先程の剣幕が幻だったかのようにあっさりと引く当主達と雅。


「あくびだけであの人達を落ち着かせる空乃すげぇ」

「俺らがやったらぶちギレられんのにな」


 ヒソヒソと呟く声を無視し、空乃を抱き上げて悠然と歩いていく雅。



「空乃、もう寝てていいぞ。今日は疲れただろう」

「んんっ……みやびさまの、手をわずらわせるわけには……」

「もう目が開いてないやつが何を言ってんだ」


 そう雅が言うと空乃はコテンと眠りに入った。








「出せ」

「はい」


 車に乗り込むと、雅は空乃の頭を自分の膝にのせて寝かせた。


 気が抜けると、雅は空乃が自分といたいがために動いたことが嬉しくてニヤけるのを抑えられなかった。

 実際、空乃は病弱なこと以外従者としてはとても優秀だ。生徒会の仕事も当主としての仕事も大いに雅の役にたっている。

 つまり、雅が空乃を溺愛していることを除いても従者を代えるメリットはない。おそらく雅が認めない限り従者の交代はなしえないだろう。

 なので雅は早々にそのことを頭から追い出し空乃の頭を撫でることに集中する。


「うむ、今日も髪がサラサラだな。やはりシャンプーを変えて正解だ」

「雅様、俺ドン引きしてます」

「お前は黙って運転してろ」


 運転手は慣れているとはいえやはり引いてしまうのを抑えられなかった。

 雅はふと空乃を撫でる手を止めると、真剣な顔で何かを考え始めた。この失礼な運転手をクビにでもするのだろうか。


「……やはり今日のことは空ちゃん観察日記に書いておくべきだな」


 そう独りでに呟くと、どこからか分厚いノートを取りだし無駄に綺麗な字で記入していく。


 雅はふと、当主の一人が永久就職だと空乃に言っていたことを思い出した。

 もちろんその時もしっかりと盗聴していたのだ。


(空ちゃんが俺のところに永久就職するのはあたりまえだろう)


 むしろそのために空乃を従者においたのだ。


 気がつくと最後のページまで文字が埋まっていた。


「ふむ……また新しいノートを買わないとな」




「雅様、やはりその愛し方にはドン引きです」










読了ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 雅くん怖っ!!溺愛してるのはいいんだけど、やりすぎじゃね?というか分家筋の人たちも空乃ちゃんを溺愛しとる(笑)子供たち可哀想、半年どころか1日ももたないんじゃない? 運転手さんの最後の一言に…
[良い点] 溺愛がいい感じでニヤけてしまいました(笑) [一言] 最高でした(*´∀`*)これで1日頑張れそうです♪ 感謝です!!
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