第一章都市伝説 赤紙
「いやいやいや、なんでわざわざ子供から交換して貰ったものを消してるんだ!!?あんた!鬼か!!」
「百合虎くん・・・敬語が剥がれてるよ。」
人吉は思わずに声を荒げてしまった。
知らない年上の人に対する礼儀として使っていた敬語が剥がれてしまうほどだ。
会って間もないが、黒助がそのような事をする人間には見えなったゆえに動揺してしまったのだ。
「ザン、同じもの回収出来そう?」
「出来るけど・・・数多いよ?」
「人が多く集まっているところから頼む。」
「分かった。」
黒助の指示を貰った斬は何処かに駆け出して行った。
「さて、百合虎くん、今時間はあるかい?」
人吉に真剣な表情を向ける黒助。
「事情を説明しながら、一緒に探して欲しいものがある。」
その真剣な顔に人吉は断る事は出来なかった。
「はぁぁぁあぁぁ!!!!?爆弾!!!?」
「百合虎くん、声大きい!」
一瞬皆がこちらを注目するが、何処かの若者がふざけている会話に聞こえたのかすぐに何もなかったように各々の行動に戻る。
「最近、ニュースになっているでしょ?無差別のテロ事件が各地で発生しているって。」
「そういや・・・聞きますね・・・確か、その首謀しているのは・・・」
超能力者犯罪組織のアカカラス。
裏社会では珍しくない過激派の組織組織の名だ。
世間から忌み嫌われた能力者が集まり、目的は特になく世間への不満をテロを起こす事によって晴らしている。組織が表に接触する事が少ないゆえに警察なども彼らの足取りを掴むのに苦労しているという。
「それとその赤紙なんの関係が・・・?」
「まぁ、経緯は省くのだけれど・・・恐らくテロの中心にいるのは変化の能力者なんだろうね。それも色の。そして、赤の紙を爆弾と変化させ、人が多く集まるこの公園と隣の遊園地にバラまいたんだろうね。」
人吉は初めて聞く能力に驚きながらも聞き返した。
「じゃあ、この赤紙の爆弾バラまかれているんですか!!?その話が本当ならやばくないか!!?」
「だから、ザンに先に行ってもらった。ザンの能力は万能型だから、赤紙の能力の痕跡を辿って人が多いところを中心に探してもらってる。出来れば、当事者まで辿り着けば良いけど・・・難しいだろうね。
」
「・・・暁霞さんでしたっけ?貴方は何かの能力ないんですか?」
人吉は気がついた。
そこまで能力者やその能力を詳しくしているようだが、本人はどうなのだろうか。
「残念なことに君やザンみたいな能力はないよ。あるのは・・・」
黒助が何かを言いかけたところで、大きな爆発音が聞こえた。場所はそう離れていない。
「なっ・・・!!」
黒助の言うとおりに本当に爆弾が仕掛けられていた。
「でも・・・一斉に爆発という訳ではなさそうだね・・・。」
「なんでそう思うんだ・・・っておい!!?」
人吉の視線の先で黒助は花壇の影から先ほど見たのと同じ赤紙を手に取っていた。
「時間差か・・・能力者の合図次第なのか・・・。」
「見ても分からないのなら、さっさとそれを離しやがれぇぇぇ!!!」
黒助の手から赤紙を奪い取り、人吉は自分の能力で天高くに飛ばす。
程よい高さまで飛ばされた赤紙は空の上で爆発した。
「本当に爆発した・・・。」
「おぉ・・・お見事。」
人吉がやっとその赤紙が爆弾だという事実を目撃した横で、黒助は冷静だった。
「あんたなぁぁ!!」
人吉は思わず、黒助の胸倉を掴む。
「一歩間違えたら、あんたごと爆発してたんだぞ!!?」
目の前にいるこの男は、ただのバカなのか、死にたがりなのか。
「でも、そんな君もいつ爆発するかも分からない物をわざわざ僕から奪い取ったんだね。まだ知り合って間もないのに。それはどうしてかな。」
「!!」
黒助は動じる事なく、人吉の目を見る。
その目は全てを見通し、何事もこの人の前では隠せられない。
「恐らく、ザンが人が多く集中しているところは回収したはずだよ。君も手伝ってくれるのなら、まだ爆発してないエリアの避難と爆弾の処理を頼みたい。」
胸倉に掴まれた手をゆっくりと解かせ、黒助は人吉に頼んだ。
「あんたは・・・?」
「僕は・・・」
黒助は爆発したエリアの方に視線を移し、
「僕にしか出来ない事をするよ。」
「おい!!?」
人がまだ爆発してないこちら側に避難している中、その流れを逆流し、爆発が起きた中心に黒助は向かう。