表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カワミドリ  作者: 向井
第一章 都市伝説
6/63

第一章都市伝説 関係

互いに名前だけの自己紹介をし、人吉は久々の食事にありつけた。


ザンが買ってきてくれたのは、公園内にでも屋台でもあったのだろうシンプルな焼きそばだった。


口の中で広がるソースの味、たまに当たる小さい肉の切れ端。


うんまい・・・。空腹も相まって、人吉はそのチープな味を噛み締めていた。


腹に物が入り、落ち着いたところで人吉は向かい側に座る二人を見た。


焼きそばにがっつき、口の周りをソース塗れにする斬とゆっくり食べながら時折斬の口周りを拭いたりする黒助。


アホ毛を揺らしながら美味しそうに焼きそばを頬張る斬を黒助は優しく微笑みながら見守っていた。


その二人が家族のように人吉は感じていた。


年の離れた兄弟か、優男の見かけをして相当若くに父親になった親子かと最初は思っていたが、二人は違う名字を名乗っていた。


あと、考えられる可能性は・・・斬が力の強い超能力者という事から権力者の護衛。


超能力者は世間から嫌わているが、一部の権力者は好んで護衛に雇っている話をよく聞く。何せ、その身一つで軍すら制圧出来るほどの力を持つ。武器を装備した一般の護衛よりも遥かに頼りになる。


ただし、超能力者側は雇い主に逆らわないよう電流が流れる拘束具をつけている。


そうでもしなければ、超能力者など危険な人物をそばに置けるはずもない。ゆえにその関係は護衛というよりも奴隷にも近い。


だが・・・人吉は目の前の二人がそのような関係には見えない。



「どうしたの?百合虎くん。こっちをまじまじ見てきて。」


「あ、いや、すみません!」



もうこの際だ、思い切って聞いてしまおうと人吉は自分の疑問をぶつけた。



「つかぬことをお聞きしますが・・・お二人はどんな関係で・・・?」



黒助と斬は顔を見合わせ、



「保護者とその対象?」


「ザンが保護者だよね?」


「いや、ザンはその対象で僕が保護者だよ。」


「違うもん!!ザンがクロを護るからザンが保護者だよ!」


「えっと、物理的じゃなくて・・・なんて言えば良いんだろう・・・。」



二人はどっちが保護者か討論になり始めた。



「ザンがクロのボディーガードだって、蒼一郎(そういちろう)が言ってたもん!!だから、ザンはクロの保護者で傍にいなきゃなの!」


「じゃあ、ザンは(そう)にそう言われなければ僕の傍にいてくれないの?」


「ううん!誰になんと言われても、ザンはクロの傍にいる!!」


「うーーーんと・・・ということで・・・仲間?」


「いや、疑問形でこちらに返答してもらっても・・・。」



人吉の質問に対して、かなり曖昧な答えを黒助は返した。


ただ分かった事は、黒助は斬の扱いに長けており、黒助の方が保護者の立場、そして斬がとても黒助に懐いている事だ。



「今日もね、クロとお出かけなんだよ!良いでしょ!!」



つい先ほどまで、人吉に殺気を向けていた斬だったが、黒助の話でキラキラと目を輝かせながら話しかけるようになった。



「そうなんだ、良かったな。」



人吉は心の中で斬を羨ましくなった。きっと、周りは黒助のように優しい人達に囲まれ育ったのだろう。


世間では超能力者の子はそんな環境で育つ事は少ない。力を持つ事で周りから怖がられ虐げられ、家族からも見捨てられる者も多い。


人吉自身も家族には恵まれたものの、周りはそうではなかった。


だから・・・この斬という少年が羨ましい。人というものはない物ねだりだ。



「百合虎くん・・・?」


「あ、いえ・・・何もない。」



油断するとうっかり涙をこぼしそうになる。そこはさすがにみっともない。




「あ、さっきのお兄ちゃん!!」



誰かに指さされたように感じ、人吉は声の方に視線を向ける。


そこに立っていたのは、さきほどのベンチに座っていた時に下に潜り込んできた子供だった。


お陰で缶をまるまる零したのだ、正直もう関わりたくない。



「見てみてー。お兄ちゃんのところのベンチで拾った赤い綺麗な紙、そのあと色んなところで見つけたんだよ!」



自慢するように子供はその小さな手に何枚もの赤い紙を持っていた。


何処かのチラシなだと人吉は思っていたが、何も書かれていないただただ普通の赤いチリ紙だ。


誰かがパーティーにでも使うものを風で飛ばされたのか、今人気のお菓子の包装紙なのか、人吉には分からなかった。


だが、



「ねぇねぇ、お兄ちゃん。それ、僕の持っているものと交換してくれない?」



黒助は席から立ち上がり、子供の前で膝をついて視線を合わせていた。



「えーーー、なんでー?」


「お兄ちゃんの持っている紙が綺麗でね、欲しくて。どうかな?」



人吉には黒助の行動の意味が良く分からない。どう見ても、ゴミのようなものだ。子供からすれば、魅力的で面白いかもしれないが。



「いやだ・・・せっかく集めたのに・・・。」


「うーーーーん・・・どうしよう・・・。」



そんな黒助の様子を見た斬はポケットに手を突っ込み、



「じゃあ、これと交換してよ。」



斬はその手をそのまま子供に差し出した。



「すごーい!なんかキラキラしてるカード!」



人吉はそっと斬の手の中を覗く。


いや、メンコって・・・お前はいくつだよ!何で持ち歩いているんだ!?とも思ったが、人吉はぐっと堪えた。



「これとなら交換良いよー!」


「お兄ちゃん、ありがとうね。ザンも。助かったよ。」


「クロの役に立つのはザンの役目だもん。」



そして、無事、黒助の求めていた子供の持っていた赤紙を入手することが出来た。


タイミングよく、子供の親も現れその場で別れた。



「で・・・何であんなもの欲しかったんですか?」



大人しくの交換を見守っていたが、何一つ人吉は理解出来てなかった。


人吉は黒助の顔を覗くと、先ほどの柔和な笑顔を張り付けたような顔はなく・・・


不安げにその赤紙を見つめ、



「・・・ザン。」


「あいよ。」



それを斬に手渡し、斬は何も聞かずにその赤紙を手の内で消滅させた。




え?





「えぇぇぇえぇぇぇ!!!!!!?」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ