第一章都市伝説 出会い
ひんやりと頭が気持ちよく冷えて気持ちが良い。
でこに誰かの温もりが感じたと思ったら、優しい温かみが降り注ぐように全身に伝うように感じた。
そっと目を開けたら、そこに手のひらを自分のでこに当てていた先ほどの青年がいた。
「あ、気がついた?身体の具合は大丈夫かい?」
人吉は辺りを見渡す。先ほどの場所ではないが、同じ公園内なのは間違いないだろう。
隣の遊園地の観覧車が見え、食事スペースなのだろう、木製のロングテーブルと椅子が並べられており、家族連れなどがお弁当を広げていた。
人吉はその長椅子に寝かさていた。ご丁寧に氷にタオルを何重かに巻いた簡易な氷枕も用意されている。
「さすがにあの場で処置するには目立ち過ぎるからね。だから、こちらに運ばせてもらったよ、お互いのために。」
人差し指を口元に当て、柔和に笑う青年。
その様子からして、人吉が超能力者だというのはバレているだろう。
「す、すみません!!わざとではないんです・・・!!」
「大丈夫だよ、すぐに起きれた事だし。それよりも・・・」
青年は申し訳なさそうに、
「うちの子が申し訳ない事をした。僕の事になると加減を知らないもので・・・。今はお使いに行かせているのだけれど、もし宜しければ・・・。」
ぐぅぅぅ・・・。
人吉の腹が自己主張をし出した。
気を失った時にも鳴っていたのだろうか、青年は全て承知の上で笑顔で返した。
「お昼、一緒に食べないかい?診たところ、外傷はなく、倒れた原因が空腹のようにも感じられたので。今、ザン・・・あの子に弁当を買い直させていて、貴方の分も頼んでいる。お詫びにどう?」
空腹の上、所持金もない人吉には願ってもない有難い申し出だ。
だが、すぐに返答する事は出来なかった。
恐らく・・・というよりも確実に自分のせいで弁当を落とし買い直しさせてしまい申し訳ない気持ちで一杯なのもそうだが、青年の後ろから殺気にも似たオーラを感じたのだった。
「あ、ザン、お帰り。」
「クロ・・・こいつに弁当なんて必要ない!こいつ、クロをいじめた!」
両手に新しくお店で買ってきたのであろう弁当の入った袋を持ち、人吉を睨みつけていた。
「あ、でもちゃんと三人分買ってきてくれたんだね。ありがとうね、ザン。」
「それはクロが三人分欲しいって言ったから!一個はお土産にすれば良い!こいつの分はない!」
ザンという少年が不満を零し、喚き散らしても青年は柔和な物腰で対応していた。
弁当を受け取りお茶とセットで並べた。もちろん人吉の前にも。
「助かったよ、ザン。本当に頼りになるね。」
「だから・・・うぅ・・・。ま、クロのためだったら何でも出来るからね!」
人吉に散々文句を垂らしていた少年だったが、青年に褒められ、不満を垂らす事がどうでも良くなった。
よほど青年に褒められるのが嬉しいのか、態度は一転してご機嫌そのものになった。
能力で胸元を絞められた挙句に、ずっと睨みつけられそうになるかもしれないと、人吉は半分トラウマを刻み込まれそうになったが、その様子を見て安堵した。そして、その好意に甘える事にした。
それが二人との・・・青年暁霞黒助と少年鏡智斬との出会いだった。