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カワミドリ  作者: 向井
第一章 都市伝説
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第一章都市伝説 能力者

それからカップルや子供連れの家族の姿が頻繁に行き交う。


やはり、遊園地が隣接されているせいなのだろう。


公園も随分賑やかになったが、そちらの方がもっとだろう。


人吉は手にある缶をゴミ箱に捨てたくとも、離れている隙に座る場所が取られるのを心配していた。


そして、人吉は缶を"浮かした"。そして、また手元に戻す。


周りから見れば、普通に缶を投げて遊んでいるように見えるだろう。


だが、これは"超能力"を使っている。


そう・・・人吉は世間で言う"超能力者"だ。


この世界じゃあ、力に強弱あるものの少なからず存在する。


力の弱い能力者もいるが、強い者は戦争の戦況すらひっくり返せるらしい。


ゆえに圧倒的に力を持たない一般の人は超能力者を怖がり、良く思っていない。


そのため、人目のある所では力は使わないようにしているが、バレなければ大丈夫。


わざわざ席を立って、缶を捨て行くのが面倒になった人吉は力を使う事にした。


人吉の力は単純なもので、物を操作したら浮かしたりする事が出来る。一般的にサイコキネシスというのだろう。


腕をわざと大きく振りかぶって、缶を操りゴミ箱に放り込むのだ。


本来なら野球経験や運がなければゴミ箱に入ったりはしないだろうが、缶を操れば楽勝だ。腕を大きく振りかぶっていれば、周りには超能力だと分からないだろう。


人吉は座った状態で腕を大きく振りかぶって、缶を投げた。かなり高く上がった様子を見るからに、本来はノーコンなのであろう。そこで能力を使い缶を自然にゴミ箱に向かって落下させる。


だが、人吉はこのやり方をするべきではなかった。


素直に席を立ち、ゴミ箱に直接捨てに行くべきだったのである。


缶はゴミ箱に向かって飛んで行ったが、タイミング悪くその前を通り過ぎようとした人影があった。


その缶はゴミ箱に入ることなく、鈍い音を立てながらその人影の頭にぶつかり、そして静かに倒れた。



や、やっちまったぁぁ!!!



「す、すみません!!大丈夫ですか!!?」



思わず駆け寄る。普通に投げた缶なら痛い程度で済むかもしれない。


だが、能力で操ったもので、それなりに加速してゴミ箱に突っ込む予定の缶だ。威力がそれなりにあったはず。



「・・・。」



思ってた以上の威力だったようで、その人は気を失っていた。


自分より年はそう離れていない青年だった。サラサラとした黒髪に清潔そうな服装を着ている。


両手にお茶や弁当の入ったビニール袋を握っていた、"二人分"の。



「あ、あ・・・クロ・・・。」



すぐ近くで十ほどの少年がブルブル震えながら、青年を見ていた。クロというのは、この青年の名前なのだろう。



「だ、大丈夫だよ!見たところ、怪我してないから少し横になれば・・・。」



実際、流血もしてない。少し頭を強く打って気を失っただけだろう。少し打ったところを冷やせば問題はないはずだ。


青年への対処を施していたところで、人吉は自身の首が圧迫されているような感覚に陥った。



「かっ・・・!?」



気づいた時には遅かった。



「なんだ!!?なんだ!?」


「ひ、人が浮いてる!!?」



周りの人も異変に気付いたらしい。


人吉は今、何者かによって胸倉を掴まれ、宙高く持ち上げられていた。


だが、誰も自分の胸倉など掴んでいない、つまりは・・・これは"超能力"・・・!!


自分の能力はそれほど弱くない。だというのに、力を使っても振りほどけない。


それほどに力の強い超能力者が近くに・・・目的はなんだ・・・!?


裏社会にいたせいか、何かあればついそう考えてしまう。


無差別か、それともこの青年が裏組織の重要人物なのか。



「クロをいじめるな・・・。」



だが、人吉の考えは全てハズレだったらしい。


青年の連れていた少年がこちらに手を向け、



「クロをいじめた奴は許さない!!」



その叫び声と共に胸倉を掴む力が強まった。


まさか、この少年の超能力なのか。


だが、この状況は非常にまずい。色々まずい。


自分がやられている状況もそうなのだが、昼間っからこんな人の多いところで堂々とバレるように能力を使うのは。ただでさえ、超能力者は世間から良く思われていない。これで問題でも起こせばなおの事だ。


だが、少年はそこまで知らないのか、連れの青年を傷つけられた怒りで後先の事を考えられなくなっているのか、能力を使うのを止める気配はない。


さすがにこれはまずい・・・。


だんだん意識が遠のいてきた。このままだと本当に・・・


人吉が死を覚悟した時だった。



「ザン・・・!」



その声が聞こえたと同時に人吉の胸倉を掴んでいた力がなくなった。


それと同時に新鮮な空気を吸い込み、空気の美味しさに感動しながら人吉は・・・




その場で意識を失ったのである。









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