第一章都市伝説 とある場所にて
カツカツと靴音が響く。
藍色のポニーテールにきっちりとスーツを着こなした男が何処かの廊下を力強く踏みしめながら早足で歩いていた。
その表情は険しく、歯軋りをし明らかに苛ついているのが窺える。
「落ち着いてください!」
男の後ろを懸命についていく部下らしきオレンジ髪の男が男を宥める。
部下に目をやることもせず、その歩を緩めるどころか速度をあげた。
そして、ある扉前で歩を止めた。
バンッと男はノックもせずに扉を勢い良く開けた。
扉の先には生活感のある部屋があった。
ベッドと本棚、何かの書類のようなものが散乱とした机。
恐らく、誰かが住んでいる部屋だろう・・・が今は誰もいない。
「ありゃりゃ・・・やっぱりいませんでしたね・・・貴方も予想していたのでは?・・・で、どうします?」
部下の男は笑いを堪えながら、男に指示を仰ぐ。
だが、男からの返答はなかった。
男は何かを我慢するように、全身を震わせていた。
そして、地獄の底から出るような声で
「すぐに・・・人員を用意しろ・・・何としてでも探し出して捕まえろ・・・!!」
「今後、逃げ出す事のないよう・・・きっちり絞ってやる・・・。」
「は、はい・・・!!すぐに!!」
部下の男は男から逃げるように飛び出した。
「あー、怖い怖い・・・でも、まぁ・・・」
部下の男は誰かの顔を脳で思い浮かべ、哀れんだ。
「お気の毒に」