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監視カメラは見た!

作者: 灯宮義流

 俺は監視カメラ。

 いつだってみんなを監視しているけど。

 本当は見守ってるって言い直して欲しいと思ってる。


 深夜は、とっても暇か大変な事態が起きるかのどっちかだ。

 コンビニの監視カメラっていうのは、いつもそういう微妙な位置に立たされている。辛いがそれが仕事だ。

 今日はバイトのカナコさん(21)が担当だ。

 結構好みだけど、まあ監視カメラな俺には儚くも叶わぬ恋である。

 そんな日、やたら下が薄着な男が店に現れた。

 このクソ寒いのになんで薄着してるんだろうと思ったら、ソイツはジャケットをいきなり脱いだ。下は素っ裸だった。

 そして、又の間をこれ見よがしに強調しはじめた。

 うわあ。

 俺は気持ち悪さに萎えて目を閉じた。

 いや、ここで逃げていてはいけない。なんとかしなくては……カナコさん(21)が危ない。

 そうだ、ちゃんと録画すれば警察がきっと捕まえてくれる。

 そうすれば、きっとカナコさん(21)の不快感に耐えた努力も報われるだろう。

 俺は、勇気を出して目を開けた。

 うわあ。

 目を閉じた。


 翌日。

 少し身体を直してもらった俺は元気一杯。今日も頑張るぞ!

 しかし、朝からよく人がくる……。

 学生が多いのはわかるが、なんでこんな時間にコンビニにくるんだ? という奴がいる。

 特に、今こうして朝っぱらから文句をタラタラ垂れているジジイ、これがムカツク。

 ああ、どうして俺は首の動くタイプに作ってもらえなかったんだろう? ツバがかかろうものなら許さないぞ。

 イライラしていると、ジジイが俺を向いてなんか指さしてきた。

 おいおい、テメエの指垢なんざみたくねえよ。

「こんなものに金を使っておきながら、どうして客のサービスに金を使えないんだ! このクズめ!」

「いや、こちらは店を守るために……」

「客の快適さを守れなくてどうすんだよ! 金儲けのことしか考えてないからそんなことがいえんだよ。お前バカか? バカか?」

 あー、うざったいな、このクソジジイ!

 そろそろウザクなってきた俺は、丁度真上にジジイがいたので、自分を固定していた金具をそっと外した。

 パカン。

 シュルシュルシュル、ゴチーン!

 コードが延びきったうえにぶつかったおかげで、俺も体中相当痛かった。

 でも、ジジイもこれでようやく静かになった。

 ふう、これでこのコンビニもまた落ち着いてくれるな。

 俺はそう安心したら、ついつい眠気に負けて深い眠りに落ちてしまった。


 そのまた翌日。

 取り付けなおしてもらって、ついでに汚い血も拭き取ってもらった俺は今日も元気一杯。

 朝は雨のためか客も少なく、とっても幸先の良いスタートだ。

 結局、なんかコンビニの端末が詰まったという以外に問題はなく、至って平和。

 しかも午後からはカナコさん(21)がバイトでやってくる。これを喜ばずにいられるものか。

 そして、午後の人がやってきた。予定通りカナコさん(21)もいる。

 俺の仕事もこれではかどるってもんだ……と思ったら、問題が起きた。

 そこら中にピアスをつけた金髪の男が、ナンパを始めやがったのだ!

「ヘーイ、今夜暇?」

 ちょっと古い文句がまたムカツク。

 クソ、俺のカナコさん(21)があんな男にたぶらかされたらダメだ。

「コ、ココココココラ!」

「あん?」

 俺は勇気を出して、声をあげた。

「そそそそそっ、そっその子は僕が先に好きになった人だ。お前みたいなのには渡さないぞ!」

「何ビビってんのお前? 怖いのイヤならいっそ黙らしてあげようか?」

 と、拳をポキポキさせながら、僕の方へと男がやってきた。

 まずい、壊される……!

 誰か助けて……。

「えいっ」

 ボカッ!

 男は、カナコさん(21)に背後から殴られて、白目をむいて気絶した。

 ざまあみろ、このクソボケバカアホハナクソマヌケゴミカス男めが。ハハ、ハハハハハ。

「監視カメラさん……」

 カ、カナコさん(21)がこっちを見ている。なんか目が虚ろだ。

「さっきの言葉、本当ですか?」

 俺は、自分の身体がスパークしてるのを感じた。ああ、何か返さなきゃ、えっと、えっと。

「ほ、ほほほほほほほほ、本当でちゅ!」

 噛んでしまった……。

「まあ、可愛いプロポーズね」

 カナコさん(21)が微笑みながら、脚立で僕のところまであがってきた。

 そして、僕に熱いキスを……。


 ハッ。

 時刻は五時。

 夢だったのか……せっかくカナコさん(21)と話せたのに。

 なんて、監視カメラが話せるわけないんだけどね。

 それにしてもイカンイカン、また居眠りしてしまった。これじゃ監視カメラ失格だよね、もっとしっかりしないと。

「どうだね? 石橋くん」

「ダメっすね、一応つきましたけど、こうしょっちゅう消えちゃうんじゃ、寿命かもしれないっすよ」

 店長と石橋フリーターが何か話している。

「金はかかるけど仕方ない。香夏子くんの事件の時もこれのせいで犯人逃しちまったからな。変えよう」

「じゃあ、とりあえず今からでも外しておきますね。今日は自分達の目で注意するってことで」

 あれ? どうして俺を外すんだよ。

 さっき取り付けなおしてもらったばっかりだろ。

 おい、やめろよ、やめろって。

 お前等は俺がいないと何も出来ないくせに、おい、何すんだ。コラやめろ。

 プチン。


 俺は監視カメラ。

 いつだってみんなを見守っていた。

 今は、同胞の悲鳴しか聞こえない

 この島は地獄だ。


ジャンルが結局その他になってしまう。あと監視カメラの構造知らないで書いてしまったのが反省点。見切り発車はよくないけど、リアル構造を考えると話を根本から変えないといけないところもあるので。

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― 新着の感想 ―
[一言] 様々な視点でこれまでのものを書けるとは素晴らしい ごはんライス先生の小説と合わせて楽しませていただきました ちなみに私も「ちいさなしま」というタイトルで短編を書いたのですがそちらも先生の方…
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