勇者はかっこいいほうがいいだろう!?
流血表現など一切ありません。
変な爺さんに恭しくお辞儀され、俺は今、偉そうに座っている。どうせならかわいい子がよかったな~とか思いながらそいつの話を聞いていると、意外な言葉が耳に流れ込んできた。
「あなた様には、この世界を救っていただきます」
「……はあ!? 」
さっき、俺はいきなり知らない場所にいて驚いた。この時間ならいつもは高校の教室にいるはずなのに。それで戸惑っていたらこの爺さんが現れて、ここは別の世界で俺は召喚されたとかわけわかんないこと言い出して、今に至る。
「ちょっと待て。最初から説明してくれ! 」
「はあ……」
爺さんはうなずき、説明を始めた。
「こちらの世界ではあなた様は悪魔と呼ばれていて、とても強い力を持っていると聞いています」
「いやいや……(悪魔なのはどう見てもお前らの方だろ!!)」
俺は爺さんを頭のてっぺんからつま先まで眺め、心の中でつっこみを入れた。角と尻尾をはやして全身真っ黒の服なんて、人間界だったら悪魔のイメージそのものだぞ。
しかし、聞こえてないため説明は続く。
「先ほども言いました通り、こちらはあなた様の世界とは別の場所にございます」
「それは聞いた。それより、その口調どうにかしてくんねえ? 意味がわかりづれえわ」
自慢ではないが、俺の通っている高校は県でも一、二を争う不良校。難しいことなんてさっぱりだ。
「…………わかった。ここはあんたの住んでた世界とは別の場所にあるんだ。つまり、異世界。ここはみんな仲良く……とか特別そういうのでもないが、平凡に平和に治められてきた」
口調結構かわったなあ、おい!?
「だが、それがときどき壊されることがあるんだ。天使と呼ばれるやつらに。それを、悪魔と呼ばれ最強とされるあんたに倒してほしい」
やっぱりお前らが悪魔なんじゃねえの?
「そうかい」
「理解が速くて助かる。本当はもっと混乱されるかと思っていた」
バカだからな。混乱とかする前に自分の状況がよくわかってねえだけかも知れないぜ。
「で、なんで俺なんだ? ほかにも同じようなやつがたくさんいただろうに」
「ルーレットで決めた」
適当だな!? 世界の平和を賭けるやつを適当に決めていいのか!?
「……あっそ。説明は終わり? 俺はまず何をすればいいの。終わったら返してくれるんだろうな? さっさと帰りたいんだ」
「終わったら帰れます。まず、装備を選んでもらいます。そして、天使のボスがいるところまで行きます。地道にレベル上げとかはなし。いきなりで全然おーけい」
ぐっじょぶしているが、本当に大丈夫なのか、それ?
とりあえず俺は武器庫に連れて行かれ、装備を見た。
「これにする」
「おや、本当によろしいのですか? それ、私の記憶によると、効果もない弱小の武器なのですが……」
確かに、弱小だった。
「いやここの武器庫がおかしいんだよ!! ふつう質素なのが弱くて、派手なのが強いだろ!? かっこいいだろ!? なのになんで逆なんだよ」
そう、ここの武器は全て、見た目と強さが真逆だった。
「ええ……強いものこそ質素でかっこいいではないですか」
「これお前の趣味かよ!? 」
「それだとすぐにお亡くなりになられるかと……」
「いい、いい! これで行く」
「そうですか……いってらっしゃいませ」
完敗でした。
俺は確かに、天使のうじゃうじゃいる城に入ったんだ! 途端に目の前が真っ暗になって、気が付いたら武器庫に……。
「何がどうなってんの!? 」
「蘇生しました」
有能だな!?
「やはり、装備はこちらの方がいいかと……」
爺さんはすっごく質素で、もはやボロボロで着たらいろんなところが見えてしまうんじゃないかと思えるほどの布きれを差し出してきた。
「あーはいはい、わかったよ。これ着ないと、また同じことになるんだろ? 」
「おや、学習がはやいようで」
爺さんはにやりと笑った。こいつ……俺が馬鹿だってこと、気づいてやがる!!
俺は差し出された装備を着けて出発した。
圧勝だった。
俺は確かに天使がいる城に入ったんだ。今度はやられまいと思って必死に走っていたら一瞬でてっぺんまで着いていて、襲いかかってきた天使に驚いて手を振ったら持ってた剣がたまたま当たって死んだ。
それがボスだったらしくて、気が付いたらまたこっちに戻ってきてたんだ。
「いったいなんなんだよ!? 」
「呼び戻しました」
有能だな!?
「無事世界が救われたので、お望み通り、元の世界に返そうかと思います」
「つか最初からあんたが行ったほうが早かったんじゃねーの」
「無理です」
「なぜ」
「武器をつくる職人が、全て悪魔用に作ってしまったので」
なんてことだ!?
「まあいい。さっさと返してくれ」
「では、この魔法陣の上に立ってください。あ、そうそう。安心してください」
「何が? 」
「あなたの勇姿はしっかりと銅像にして国の中心に置かせてもらいますよ。その装備のまま」
ああ……終わった、俺の人生。こんなダサい恰好のままだなんて……。
「あ、それと」
「今度はなんだ」
「あなた、学習は早いので、まじめにやったらおそらく県一、二を争うトップ校に行けますよ」
「……余計なお世話だ」
その時、足元が光った。
と、思ったら次の瞬間には、高校の教室に戻ってきていた。
「ん? なんか外が騒がしいな……」
窓の外を見てみると、さっきの爺さんのような恰好をしたやつらがうじゃうじゃいた。中には、生徒を襲っている奴まで。
「やっぱり悪魔じゃねえか!? 」
こんにちは、桜騎です! 今回は初の異世界が舞台となった小説でした。といっても異世界っぽくないですよね……。昨日ふと思いついたので書いてみたかったのです!
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!