合流
「ユリリアート!?」
ユリリアート?
振り向くとニールとそっくりな鹿の群れに、それぞれ騎乗した人が見える。
言うまでもなく俺たちを襲ってきた連中だ。
「タバサ!?」
軍人さんも振り返り、先頭の偉そうな金髪の男に並ぶ、薄茶色の髪の少女に呼び返す。
タバサと呼ばれた少女が一騎飛び出すと並走してくる。
「大丈夫!? 怪我はッ……してないみたいね?」
「ええ、平気よ。後ろの少年が命の恩人なの」
そうつげると「ちッ、人知れず点数を稼がれたか……」とボソッとこぼすタバサ。
「それで? なんで人間のクソガキがここにいるのよ?」
「そうだ、なんなんだね?そこの矮小は少年は。黒髪とは、あのボンクラどもと一緒じゃないか」
と、しんそこ嫌そうに因縁をつけられる。とくに男。
「スターク殿。タバサ。彼は命の恩人です。悪態は控えてほしい」
軍人さん咎めれる。
「い、いや違うんだ。なぁ、タバサ君?」
「え、えぇ。そ、そうですよ。別にクソガキなんて思ってませんよ……」
キョドりだす両名。
思ってたどころか言ってたじゃねぇか!
「ごめんなさいね。二人とも仲がいいんだけど、いつもこんな感じなの」
と、あきれながらいう。なんだか心労を抱えている様だ。
「「なかよくない!!」」
と、両者否定するが、息はあっている。
はぁ、とため息を吐き居直る男。
名前はおぼえてやんない。が軍人さんへ話しかける。
「大河を登っているということは霊峰方面へ?」
「そうです。少年から事情を聞き、それが妥当かと」
「この状況下だ、退避できる場所は限られるし当然か……」
「はい。あれら死霊は荒神の力だとオーガから言質をとっています。オーガ自身も荒神に追われている様です」
「過ぎたるは及ばざるがごとし、か。上空から樹海を見ていたが、幾十万を超える数が大挙しているようだ。麒麟による退避も難しくなりそうだな……」
険しい表情になる。
「オーガはあれら死霊に対し手立てがあると、接触した際に聞いています」
「手立て? それと死霊とは?」
「はい。死霊とオーガは呼称していました。アンデットにはない未知の能力を持つので区別していいかと。手立てはスイという巫女が霊装を扱えると」
「なるほどな。やつらが霊装を……。戦略級規模の霊障を道中確認したが、その死霊とやらの大軍は健在だった……。使えんなッ」
「そうなんだよ!ユリア! 茨が広範囲に群生して死霊を呑み込んでいたんだよ。近くに魔法の粒子も確認できたからオーガが撤退してるんだと思う」
「茨が……?」
茨かぁ。
「たぶん、赤髪の人の仕業だな……」
じゃぁ、スイとう少女の、あの黒布はまだ使えてない……?
ともかくオーガ達の状況はよくないらしい。
あ、そうだ。これ使えないかな?
龍の切り身。
不老不死がなんちゃらとかいってたっけ。
「あの~、軍人さん。まだあのオーガ達もそう遠くに行ってないと思いますしコレ、使えませんかね?」
「……これは?」
「龍の肉です」
「はぁ!? こんな時に法螺をふくきかね?」
「そうだぞ、クs…少年!」
相手にしても話進まないので無視する。
反応的にどうい物なのかは知っているらしい。
「見せてくれる?」
「えぇ」
カバンから赤い風呂敷包みを取り出し、包みを解くと木箱を開ける。
「これかね?」
「普通のお肉ですけど……」
なんだかんだで覗き込んでくる二人。
「つかえませんか?」
「……」
黙考する軍人さん。
「……使える、かもしれません」
「この肉片がかね? 」
「少年が嘘ついてるかもしれないよ?」
と、訝し気に軍人さんを咎める。
「……ニール、いえ。疲弊した麒麟での行軍にも限界があります。灰が後方に迫りつつあり、炎に他の退路を断たれています。やがては……」
「たしかに…な。我々も無理な顕現で麒麟の玉角を失っている。休憩を挟んだところで角が復元されるわではないからな。追い込まれているのも事実だが、その肉片にたよるべきか否か……」
男もタバサという少女も表情は険しい。
後ろの部下らしい人達も黙って決断を待っている。
「そのスイという少女を屠れば、オーガは霊装を扱える者を一人失い弱体化をはかれもする、が……」
すると、バカ貴族がとひどく冷たい視線で零す。
軍人さんが感情をころした視線を向ける。
そこへ、タバサがここぞとばかりに、
「スターク様が役に立たないのはわかりました! 私が引き受けましょうッ!」
「ナッ!君!? わたしはハーグルムントの国益を優先した場合の……!」
「じゃぁ、ユリリアートの役には立てないってことですよね? 愛に生きられないのなら男じゃありませんね!ただのオスです!」
「ぐぬぬ……」
と、下唇を噛む。
「では私がッ♪」
いうだけ言って呷ったのにニコニコ顔で手を伸ばすと、男に捕まれる。
「ここはッ!わたしが引き受けよう」
「ハーマルグント軍人としてですか?」
「男としてだ!」
バチバチ、火花が散る。
タバサという少女に強引に切り身をひったくられ。
しぶしぶだった二人が包みを取り合いなりながらオーガ達の下へ向かう。
部下の人たちも、やれやれだぜ。みたいな感じだ。
勢いで行っちゃたけど、オーガの誰に渡すのかわかってるんだろうか……。
「軍人さんは行かなくていいんです?」
「特に…なにもいわれたなかったしね。みんなが何でまとまっているのか、たまに分からなくなるわ」
「……」
思い出したように幾人かの人が向こうの方でUターンしてくる。
ちゃんとスイとい少女に届くことを願っておこう。
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