圧倒的上位存在VS強者
なんとか書けましたm(__)m
このままでは負ける。
何とかこの状況を打破できないものか……
「ふざけるなぁ!!!!」
「!?」
「この声は……」
「…光城君?」
そうそうに脱落した劉軌が目を覚ましたようだ。
「俺は、勇者だぞ。俺が一番強いんだ!!……さっきは油断したが、お前ら程度のザコなんて、俺が本気を出せば塵芥同然なんだ!!……『ブレイブ・モード』起動!!」
何だかよく分からない事を言い出したかと思うと、何らかのスキルを発動し、劉軌が黄色いオーラの様な物を纏った。
「俺がッ!最強なんだぁああああ!!!!!!」
刹那、劉軌が剣を振って少し光ったかと思うと……大地が大きく切り裂かれていた。
「……マジで?」
隣で広が驚愕の声を上げている。
これには俺も驚きだ。
「全員下がれぇええ!!!」
「劉軌が暴れ始めたぞおおお!!!!」
そんな声があちこちから聞こえ、皆が前線から少しずつ下がっていく。
「皆さんも、もう少し下がった方がいいですよ」
「遠藤か。なぁ、あれって何なんだ?」
「これが僕たちが劉軌君を連れてきた理由ですよ。何だかんだ言って、僕たちの中で一番強かったのが劉軌君なので、連れてこない訳にはいかなかったんですよ」
マジか……
そんな事を言っている間にも、アイツは一人で暴れている。
「あのブレイブ・モードは最近劉軌君が習得した物で、魔力をかなり使いますが、あの状態の時は文字通りあらゆる能力が底上げされるんですよ」
そんな遠藤の言葉を聞いて、俺は劉軌の方を見る。
そこで、俺はあることに気付いた。
「……劉軌囲まれてるよ?」
「え?あっ……これは……皆さん、申し訳ないですが、直ぐに戦えるようにして下さい。ブレイブ・モードが終わります。吉田君!皆に指示を!!」
「任せろ!!」
なんだなんだ?どういう事だろう。
「囲めば勝てるとでも思ったのか?……こざかしい、纏めてぶっ殺してやる。『ブレイブ・バースト』ッ!!」
劉軌が叫んだその瞬間、そこを中心に爆発が起きた。
ドゴォォオオオン!!!!!
「うわッ」
「くっ…」
吹き飛ばされそうになるほどの大爆発だ。
少しでも気を抜いたら後ろに向かって飛んでしまいそうだ。
「……収まった?」
「みたいだな……凄い威力だ」
「光城君、倒れてない?」
「あ、ホントだ」
ダメージを追っているわけではなさそうだが、爆発の中心地で劉軌は倒れている。
あの感じは魔力切れだろう。
恐らく、あのブレイブ・バーストとやらは、相当な魔力を使うのではないだろうか?
その分威力はとんでもないみたいだが。
辺りを見てみると、劉軌を囲んでいた魔の者達のほとんどが消えている。
あの爆発で消し炭になったんだろう。
何だかもう、いろいろと予想外だ。
「今です!!敵は分散しています!!それぞれで各個撃破してください!!劉軌君の回収もお願いします!!」
遠藤が皆に指示を出す。
「俺たちも行こう。今がチャンスだ」
「了解!」
俺たち四人も戦闘を再開する。
相手の数が減ったことにより、こちらの回復が追い付くようになったため、段々とこちらのペースに変わっていった。
このままなら勝てる。
そんな時だった。
また、新たに事態は動き出した。
「なんだ?」
「撤退…していく?」
どこかからそんな声が聞こえた。
数が減った魔の者達は次々とこちらから離れるように動き始めたのだ。
「いや、まて……様子がおかしいぞ」
「奴ら、一か所に集まっているのか?」
突然すべての場所で戦闘が止み、魔の者達は一か所に集結していた。
”イア……イア…”
”…イア……イア”
魔の者達は手や触手の様な物を空に伸ばしながら声を上げている。
「奴ら、何をする気だ?」
「全員!警戒を怠らないでください!!」
遠藤が全員に指示を出す。
「ッ!?真宙君!!今すぐアイツらを吹き飛ばして!!早くッ!!」
「わ、分かった!!」
安田さんから焦ったように指示をだされ、俺は急いで行動に移す。
安田さんがこんな言い方をしたのは初めてだ。
多分、何かに気付いたのだろう。
「『転移』」
俺は転移で皆の前に移動する。
「吹き飛べ……」
俺は手を前に突き出す……そして、
カッ!!!……………
この場所から音が消える。
大きすぎる衝撃と共に、視界内のすべてを認識できなくなる。
………ォォォオオン…………
「……みんな、大丈夫?」
後ろを確認しながら、俺は皆に尋ねる。
「……僕の頭は、おかしくなってしまったんでしょうか?」
「遠藤、ほれ」
「イタタッ……夢では、無いみたいですね」
「俺の目には、目の前が荒野の如く大地が剥げているように見えてるんだけど、遠藤はどうだ?」
「……僕も同じです」
殆どの人が立ち尽くしている。
「真宙!」
「広!」
「お疲れ様、やっぱりとんでもない威力だな」
「あはは、この威力は久々に撃ったよ」
「前回魔の者と戦った時よりも威力が上がってないか?」
「ふふん、あの時よりもさらに沢山の空気を更に強い力で圧縮できるようになったからね。時間をかければ、もっと強いのが撃てるよ?」
「……核融合とか始めそうだな」
「なにそれこわい」
俺たちがそんな話をしていると、吉田遠藤ペアが近づいて来る。
「これ逢沢がやったのか、ヤベェな」
「こちらの最高戦力の劉軌君でも、これには勝てませんね。前の遠征の衝撃はこれでしたか」
「ま、あの時はこれをやっても魔の者は死ななかったけどね」
「飛んで戻ってきたよな。グチャグチャになりながら」
「こわッ!?魔の者ヤベェな」
「ヤバいのは吉田君の語彙力ですよ。これは、勝ったと見ていいんでしょうか?」
「いいんじゃねえか?これで生きてるなんてことは無いだろ?」
俺たちがそんな話をしていると、安田さんがこちらに走ってきた。
「おかしいの。魔の者達は消し飛んだはずなのに、魔力の収束が収まってない」
「「え?」」
「魔力の収束、ですか?」
「うん、私は魔力感知のスキルを持ってるから分かるんだけど、さっき魔の者が一か所に集まってた時、いきなりその場所に魔力が集まり始めたから、真宙君に攻撃してもらったの。でも……」
「それが消えていないって事か?」
「それどころか……まだ魔力は収束し続けてる。どんどん大きくなっていってる……」
「……なぁ、もしかして結構まずい?」
「どうでしょうね……何が起こるかは不明ですが……一つ確実なのは、こちらにとって、いい事は起こらないという事でしょうか」
魔力の収束……一体どうすればいいんだ。
「え、魔力が…」
「安田さん?」
「集まっていた魔力が、減っていってる……違う!どこかに吸い込まれてるッ!!」
安田さんを見ると、頬に汗が垂れている。
魔力感知を持たないため分からないが、そうとう異常な事が起きているようだ。
「今すぐここから撤退を「もう遅いよ」ッ!?」
遠藤の言葉を安田さんが否定する。
「みんな、気を付けて。何か出てくる」
「出て……くる?」
安田さんの言葉に、遠藤が疑問を口にした瞬間、それは起きた。
突如、空間に黒い穴が開き、それは次第に大きくなっていく。
俺たちはいっせいにその『黒い穴』から離れた。
誰の指示でもない。
生物としての本能が、『そこに居たら死ぬぞ』と言ってきたのだ。
やがて、先ほどまで俺たちが居た場所は黒い穴に覆われ、更に広がっていく。
そして、黒い穴は停止した。
かと思ったその時、
『ヤツ』は現れた。
”オオオォォォォ………”
這い上がるように、何かを求めるように、そいつは穴から現れた。
見ているのに理解できない。
『ヤツ』を見た印象はそんな感じだ。
形容しがたき何か、それが『ヤツ』だ。
手や、足の様な物があるように見える。
でも、どれがどれだか分からない。
這っているようにも見えるし、歩いているようにも見える。
顔はあるのだろうか?少なくとも、それらしいものは見えない。
一つだけ、分かることがあるとすれば、『ヤツ』は、今まで戦ってきたどれとも比べられない程に強いという事。
戦いになるのかさえ、分からない。
それ程までに、かけ離れた存在。
目の前にいる筈なのに、近づけないのではと思わせるほどに遠く感じる。
逃げる、という選択肢さえ出てこない。
口を開こうとも思わなかった。
ただ、それから目を離せず、瞬きもせずに見ている事しか出来なかった。
しかし、その認識は大きく覆されることになった。
誰もが思わぬ形で。
「なんだ、大きな音が聞こえたと思って来てみたら……随分と醜い化け物だな。これも魔の者なのか」
聞いたことのない声が聞こえる。
クラスメイトの誰でもない。
その『人』はいきなり現れた。
「君たちは下がって……いや、無理か。まぁ大人しくしていてくれ。後は俺が何とかする……『アクセラレーション』」
男がそう言った瞬間……魔の者は細切れになった。
同時に、自分を縛っていた何かが消えた。
「え?」
「一体、何が……」
「君ら、大丈夫だったか?ここで、魔の者を戦っていたんだろう?結構な数が居たらしいし、流石は勇者っていった所か?まだ召喚されたばかりだと聞いてたんだけど、勇者ってのは召喚される前から強いのか?」
男はそんな事を言いながら近づいて来る。
いつの間にか抜いていた剣を鞘に戻しながら。
「貴方は一体?それに、どうしてアイツの前で動けたんですか?」
広が男に尋ねる。
「なんであれの前で動けたか。逆に、何で君たちは動けなかったのかから説明しようか。ま、単純にあれがそういう能力を持っていたのさ。自分よりも弱い奴に精神的な圧力をかける能力をね。ようは、俺があの魔の者よりも強かったって話さ。だから俺は何も感じなかったし、動きが阻害されることもなかった。で、俺が誰かって話だが……」
男は、俺と広、安田さんと井村さんを見てこういった。
「君らと同じ、冒険者さ」




