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前兆

時間が空いたので書きました。

今週中にもう一話書きたいなぁ・・・

 俺たちは今、冒険者ギルドにいる。

 まだ朝だ、この時間帯にギルドにいるのは珍しい事だ。

 いつもなら真っ先にダンジョンに向かって攻略を進めているのだが、昨日、手に入った魔物の素材を売りに来た際にこの時間にギルドに来るように呼び出されたのだ。


 午前中は大体ギルドが込み合っている時間なのだが、少し早めの時間だったためすんなりと受付に向かうことが出来た。

 受付に行くと、名前とギルドカードを確認したうえで別室に案内された。

 呼び出された時は特に詳しい説明がなかったため、いきなり別室に案内されて驚いたが素直に部屋に向かう。


 案内された部屋に入ると、そこは会議室のような場所だった。

 部屋の真ん中に長テーブルがあり、その一番奥に強そうなおじさんが座っている。

 この部屋にいるのは奥にいるおじさんだけじゃない。

 長テーブルの椅子に何人か座っている。

 しかも、この街のギルドの大物ばかりだ。

 流石に、三か月もこの街にいるので顔位は知っている。


 部屋に入って扉を閉めると、奥のおっさんから声をかけられる。


 「よく来てくれた。君たちは初めましてだね。私はこのギルドのギルドマスターをしている、『ディアス』という者だ、よろしく頼む。そろそろ呼び出したメンバーが揃うはずだから、空いている椅子に座って待っていてくれ」


 奥のおっさんはギルドマスターだった。

 おっさんとか声に出さないでよかった・・・。

 軽く自己紹介をしてから、適当な椅子に座る。


 「・・・なぁ、真宙」


 広から話しかけられる。


 「どうしたの?」


 出来るだけ小声で答える。


 「なんか・・・俺たち場違いじゃないか?」


 「・・・そうだね。ここに居る人たちはこの支部の看板みたいな人達ばかり。まぁ、考えてもわからないし、今は大人しく待っておこうよ」


 「そうだな・・・」


 正直本当に謎だ。

 ここに居る人たちはBランクやAランクだけ、俺たちはまだCランク、それも依頼なんてほとんど受けていないため、ギルドに対してほとんど貢献していない。

 本当になんで呼び出されたんだろう。


 少しすると、人が数人入ってくる。

 その様子を見て、ギルドマスターが口を開く。


 「・・・では・・時間も押しているし会議を始めようと思う」


 「ちょっと待ってくれ」


 部屋にいた一人が声を上げる。


 「会議を始める前に質問したいことがある。いいか?」


 「ああ、構わない」


 男の発言にギルドマスターは了承する。


 「今回の会議がどんな内容なのかは知らないが・・・そこに四人、知らない顔がある。しかもかなり若い。まず、その四人を紹介してほしい」


 「ふむ・・・確かにその通りだな。・・・そこにいる四人は、大体三か月前にこのギルドに来た新入りだ。ランクはCだ」


 「Cランクだと!この会議が開かれたってことはなんか問題があったんだろ!?実力不足じゃないのか!?」


 その男の言葉は、俺たちが他と比べてランクが低い事を馬鹿にしている物ではなく、俺たちを心配しての言葉に聞こえた。

 ていうかこの会議、なにか問題が起こったら開けれる奴なのかよ・・・面倒なのに呼ばれたな・・。


 「・・・そうだな。この会議は、本来低ランクの冒険者では手に負えない問題が起こった際に開かれるものであり、そして・・・実際に問題を解決するための場だ」


 「じゃあなんで・・」


 「その四人に、この会議に参加するだけの力があるからだ」


 「!?」


 !?

 マジで!?どこでそうなった!?

 しかも今のギルドマスターの発言で、部屋にいる全員がこっち向いてる・・・すごく気まずい・・・。


 「それは本当なのか?」


 それは当然の疑問だろう。

 発言が許されるのなら、こっちが聞きたい。


 「実力があるのは間違いない。実力があるにも関わらず、この四人のランクが低い理由は、依頼を殆ど受けてくれないからだ」


 「確かに依頼を受けないとランクは上がりにくい。しかし、それだと実力もわからないんじゃないのか?」


 「そうだな。確かにそれだけじゃわからない。しかし、この四人はこの街に来て、たったの三か月でこの街のダンジョンを六十階層以上も攻略しているぞ?それも毎日のようにだ。その辺りの階層になってくると、Bランクの中でもベテランレベルじゃないとほぼ毎日の周回は難しい」


 ・・・確かに、今の俺たちは六十八階まで攻略している。

 あそこ、Bランクベテランクラスだったのか・・・。


 「六十階層以上を・・・ほぼ毎日・・・・?」


 今の話の真偽でも話し会っているのか、周りの人と話始める冒険者たち。

 ・・・・なんだかすごく帰りたい。

 しかも、今どさくさに紛れてドⅯって言ったの誰だよ、違うし、聞こえてるよ・・・。


 「ほら、静かにしろ。時間が時間も押しているといっているだろう。一応聞くが、この四人が参加するのに異論がある奴はいるか?」


 ・・・・・


 誰も声を上げない。

 異論はないという事だろうか。

 誰か反論しろよ!こっちはもう帰りたい気持ちでいっぱいだよ!


 「では、異論がない様だから、会議を始めようと思う。今回は南の森の魔物についてだ」


 南の森?・・・・もしかして試験をやったところかな?


 「最近、森の中から魔物が出てきてしまい、街道を移動していた商人などに被害が相次いでいる。本来なら、魔物の数を減らせばそれで解決するのだが、今回は魔物の数が増えすぎているわけではないようなのだ」


 「なぜ、そうだと?」


 冒険者の一人が質問する。


 「すでに何人かの冒険者に森の調査に向かわせた。その時にわかったことなのだが、どうやら魔物たちは、何かに追いやられているようだ。本来、森の奥で生息しているはずの魔物までも森の浅い場所での目撃が相次ぎ、森の浅い場所を狩場にしていた冒険者たちにも怪我人が出ている」


 「森の中だけならまだしも、街道の辺りまで森の魔物が出てきてるのはまずくないか?」


 「あぁ、非常にまずい。これ以上被害が広がれば、この街の物流に大きな影響が出てしまいかねない。だから、今回はこのメンバーで事に当たってもらう」


 「・・・・報酬は?」


 「最低でも・・・・一人金貨30枚。それぞれの活躍に合わせて報酬を上乗せする・・・で、どうだ?」


 ギルドマスターの今の発言で、それぞれが話し合ったり、思案したりしている。

 こちらもみんなで話し合う。


 「さて、どうしようか?俺は断るべきだと思う」


 俺は皆の意見を聞きながら自分の意見を言う。


 「どうして?」


 井村さんが質問してくる。


 「まず、第一に・・・俺たちは今、お金に困っていない。それに、俺たちは冒険者になってから一年どころか半年も経っていない。仮に、ギルドマスターのいう通り実力が十分だとしても、経験や、それ以外にもいろいろ足りないと思う。ここに居るベテランの人たちについて行くのは厳しいと思う」


 「私も、概ね同じ考えだよ」


 安田さんが俺に同意する。


 「そうだよな。俺も、流石にまだ早いと思う」


 広も同じようだ。


 「じゃあ・・・受けないってことでいいかな?」


 「「「異議なし」」」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そうして、俺たちはギルドを出た。


 今思えば・・・この時、この仕事を断って正解だったのかもしれない。

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