誘拐と出会いと・中編
ギリギリ一週間以内に間に合った!
間に合った!
がちゃ・・・・
「階段・・・か」
扉を開けるとすぐに、上に続いている階段にでた。
特に物音はしないので、俺は扉を閉めて上に上がることにする。
階段を上がりきる前に、俺は少し顔を出して辺りを見回す。
・・・誰もいないようだ。
警戒しながら階段を上りきる。
ここはただの部屋のようだ。
さっきの部屋へ行くための用途いがいに何もなさそう。
また扉があるのでそこを開けることにする。
もちろん聞き耳をたてて警戒する。
・・・音が聞こえる・・・ていうかこれ、この扉の両脇に入るっぽいぞ・・。
どうしよう・・・・賭けにでてみるか。
俺が使える念動魔法は、直接見えてなくても範囲内であれば物を動かすことが出来る。
まぁ見えていない場合、そこに何があるかわからないから動かしようがないんだが・・・が、それはあくまで物の場合。
俺は扉の向こう側の範囲内の空気を念動魔法でつかんで固定する。
ガキッ・・・ガチッ・・・
何かが床に落ちる音がする。
少しすると物音がしなくなったので俺は扉を開ける。
「・・・・よし、成功か」
扉の横に二人の男が倒れている。
何故かというと、この二人は窒息したのだ。
俺が空気を固定したせいで、この二人は呼吸が出来なくなったのだ。
だがこれも、そこまで強いわけではない。
これはあくまでも空気を固定するものであって、空間は固定できない。
そのため、生き物の周りの空気を固定してもその生き物は動けてしまうのだ。
この二人が暴れて、俺の念動魔法の範囲から出てしまったら、普通に呼吸が出来てしまう。
ゆえにこれは賭けだったのだ。
この二人はおそらく、いきなり呼吸が出来なくなったせいでパニックになり、まともな判断が出来ずにそのまま窒息してしまったのだろう。
本当にうまくいってよかった。
ちなみに、これには他にも利点があり、声があげられなくなるのだ。
声は空気の振動なので、空気が動かなければ音は聞こえない。
もう一つ言うと、先ほど聞こえた音は物が落ちた際に床に響いた音であり、空気の振動の音ではないのだ。
念のために、この二人の脈を確認する・・・・・死んでる。
・・・殺して大丈夫だったかな・・・。
個人的には気絶で済むと思ってたんだが・・・・まぁ死んでしまったものはしょうがない、先を急ごう。
といっても・・・どっちに進めばいいんだろう・・・。
扉を出てすぐ廊下だったのだが、そもそもここがどこでどんな建物なのか、何も情報がないためどっちに行けばいいのかわからない。
「・・・右だ」
とりあえず右に行ってみることにした。
ここは廊下なので少し進むたびに扉があるのだが、念のため扉は開けずに聞き耳をたててなかの様子を伺っておく。
うしろから来られたらたまったもんじゃないからね。
周囲を警戒しながら進んでいく。
・・・がちゃ
「あ」
「え?」
少し先の扉から人が出てきた。
「・・・」
「・・・」ダッ・・・!
うわっ走ってきた!
俺は急いで武器を持つ。
「なに!?」
いきなり何もないところから、そこそこの大きさの武器が出てきて驚いたようだが、男は止まらずに腰に刺さった剣を抜いてそのまま切りかかってくる。
キィィン!
お互いがぶつかり合った瞬間に、俺は倉庫にストックしておいた魔法を男に飛ばす。
「ぐほっ!!」
男は倒れてそのまま動かなくなる。
そして俺は、今来た道を全力で走っていく。
後ろから「敵襲!!」と聞こえる。
先ほどの男と同じ部屋にいたのだろう。
まずい事になってきた・・・。
「やっぱ俺、隠密とかそういうの向いてないんだろうなぁ・・」
とりあえずひたすら走る。
もちろん身体強化も使っている。
さて、これからどうしようか・・・何も考えずに出てくるべきじゃなかったな。
・・・今更後悔してもおそいか。
いくつかの道を適当に曲がっていくと、一つの扉がありこの道は終わっていた。
止まるわけにもいかないので、衝撃波で破壊して扉を通る。
扉の先は・・・どうやらエントランスのようだ。
大きな扉があり、その脇にある窓からは外が見える。
が・・・エントランスの真ん中あたりに、一人の男が経っている。
その男が口を開く。
「・・・お前が、襲撃者か?随分可愛らしい襲撃者だな」
「・・・来たくて来たわけじゃないんだけどね」
「なるほど・・・攫われたのが逃げ出したのか」
「外に出たいんだけど、通してもらえないかな?」
「はっはっは!そりゃダメだな!外で女子供攫ってんのばらされちゃ困るんでな。ここを通すくらいなら・・・殺す」
どうやら逃がしてくれる気はない様だ。
「残念だけど、ここで死ぬ気はないかな」
「ほおう、そうか。じゃあ諦めるか?」
「いや、あんたを倒して堂々と出ていくよ」
「ハッ、あまり賢い選択とは言えねぇな?」
「言ってろ」
俺は先手必勝とばかりに男に衝撃波を放つ。
ドゴォン!!
「うお!」
あいつ避けやがた!
予備動作なしの衝撃波を初見で避けるって・・・
「ちっ・・・妙な真似を」
男は今のでスイッチが入ってしまったらしい。
俺は衝撃波を放ちながらエントランスを走り回る。
それを男は追いかけてくる。
「オラァ!!」
男が振った剣から斬撃が飛んでくる。
「マジか!」
俺は驚きながらも何とか避ける。
しかし・・
「追いついたぞ!!」
俺が斬撃を避ける隙に一気に追いつかれてしまった。
「ハッ!」
そのまま男が切りかかってくる。
俺はすかさず念動魔法で男の剣を止める。
「なに!?・・オラァ!」
男は剣を止められたまま蹴とばしてきた。
俺は避けられずに直撃し、そのまま転がる。
「カハッ!」
うっ・・・痛てぇ・・・。
「はぁ、手間取らせやがって。見ろ、お前が暴れたせいであちこち穴だらけだ」
周りを見ると、確かに穴だらけでボロボロだ。
穴から外が見える場所もある。
全然きが付かなかった。
・・・気が付かなかった・・・か。
何をしているにしても、常に周りを見るようにと学んだはずなんだけどなぁ。
特に、ダンジョンなんかでは、いつ、どこから、何が来るかわからない。
だから、たとえ戦闘中でも周囲は常に把握できるように訓練したはずだった。
・・・それだけ追い詰められていたという事か。
「わかったか?お前がこの惨状に気付く余裕がなかった時点で、もう勝負は終わってたんだよ」
「・・・・どうやら、そうみたいだね。で?私は捕まるの?」
「いや、ここまで暴れやがったんだ。ここの連中はどうだか知らんが、俺は用心棒として雇われてる身なんでね。お前は俺が殺さないと面目がたたねぇんだわ」
「そっか・・・殺すのか」
「あぁ、殺すよ。その実力も、容姿も、殺すには惜しいと思うがね」
「はっ、こんな時に褒められてもね」
「くっくっく、だろうな」
「まぁでも・・・殺されるくらいなら、生きている間くらいは全力であらが「真宙!!!」!?」
壊れた壁から射しこむ夕日が、皮肉にも神秘的に見える。
そんな景色の中で、外から現れた俺の親友。
今にも殺されそうで・・・殺されるくらいなら・・・そんな覚悟を決めていた今の俺には、なんだかその姿に、不覚にも・・・・トキめいてしまった。
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ご指摘なども、何かありましたら参考にいたしますのでよろしくお願いします。
これからも頑張ります!




