誘拐と出会いと・前編
また投稿間隔が空いてしまって申し訳ない・・・。
「ハァ・・・やらかしたぁ・・・」
俺は今、ある建物の檻の中にいる。
俺たちはいつも通りダンジョンの攻略をしながらレベルを上げて、その際に手に入った魔物の素材を売って生活していた。
今日はダンジョン攻略は休みにして、消耗品の買い出しをしていたのだが、帰りに近道をしようと思って裏道を通った時に・・・攫われたのだ。
この街に来てからそこそこ経っている。
レベル上げも順調だったし、この街にも慣れていたので完全に油断していたのだ。
そこそこ戦えるようになったが、俺たちはまだこの世界に来て一年も経っていない。
まだまだ自分たちよりも強い奴がいて当然なのだ。
まぁ、運が悪かったというのもあるだろうが・・・。
さて、どうしたものか・・・・おそらく数日待てばみんなが助けに来てくれるだろうが・・・これは希望的観測すぎるかな?
せめて、俺が攫われていることに出来るだけ早く気が付いてくれればいいんだが・・。
そして周りだが・・・俺意外にも結構人がいる。
殆どが女性、男もいるが皆子供だ。
女性も若い人ばかりだな・・・。
攫われた対象から見るに人身売買か?
部屋はそこそこ広い。
檻はいくつかに分かれている。
だが窓はなく、かなり空気がこもっていてあまり清潔感はない。
しかし、これだけの人数をどうやって攫ってきたのだろうか・・・軽く見渡しただけでも五十人はいそうだ。
これだけの人数を攫ったのなら噂にくらいはなっていそうだが・・・少なくとも俺は聞いたことはない。
攫われた人たちを見ると、絶望していたり諦めていたりといった表情をしているが、やつれている感じはない。
これだけの人数にちゃんと食料を与えているのか?・・・いや、ないな。
これだと食料だけでもかなりの出費になるはず・・・まだ、ほとんどが攫われて間もないとみるべきか・・。
でも、これだけの人数を短期間で攫ったらさすがに目立つよな。
ここまでの規模でやってしまったら街だって無視するはずがない。
・・・どうやって街を出るのかは知らないが、大規模な調査が行われる前に・・・つまり短期間で街を出るはずだ。
・・・ん?それってヤバくね・・・・?
え?どうしよう・・・。
最悪、自分一人が逃げられるようにするべきか・・・ここにいる全員助ける余裕なんてないしなぁ。
さて・・・まずは何をしようか・・・。
~~~side.広~~~~~~~~~~~
「・・・・おそいな」
真宙が帰ってこない。
おかしいな・・・いつも寄り道もしないで帰ってくるのに。
「まぁ、こんな日もあるか」
~~~side.真宙~~~~~~~~~~~
さて、まずは何をしようか。
幸い、手荷物は何も失っていない。
全部、亜空間倉庫に突っ込んでいるからな。
食料なども、丁度買い出しに行った帰りなので暫く困ることはない。
「・・・あの・・・・大丈夫ですか?」
「ん?」
いきなり話しかけられて、俺は振り返る。
「えっと・・・特に体調は問題ないけど・・・君は?」
「あ・・えっと、いきなりごめんなさい。私、カイネっていいます」
「はあ・・・それで、どうしていきなり?」
「い、いえ・・あなたが目を覚ましてから、部屋を見渡したり考え事をしていたようなので、気になって・・・」
あぁ・・・思ったより目立ってたかな?
今後はもう少し目立たないようにしよう。
「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
「い、いえ・・・あの・・あなたは、不安じゃ・・・怖くはないんですか・・・?」
「・・・・不安だよ、でも・・・怖くはないかな」
「どうして・・・ですか?」
「外に・・・仲間がいるんだ。私がいなくなったって気づいたら、きっと探してくれる。まぁ、いざとなったら自分で何とかするけどね」
「・・・あの「ガチャガチャ!!
部屋の扉から音がした。
誰かが入ってくる。
「あ~、めんどくせぇなぁ、見張りとかよぉ」
「まぁそう言うなよ。今日で最後なんだしよ」
・・・今日で最後?
「つーか、これだけ女がいて一人も手ぇ出すなとかひどくね?」
「この仕事終わったらそこそこの量の報酬もらえんだから、それで娼館に行けばいいだろ?」
「そうなんだけどよぉ」
見張りか・・・このまま大人しくしているか、それとも何か・・・。
ん?あいつのズボンに入ってるちらっと見えるのって・・・もしかして鍵か?
・・・あの位置なら念動魔法も届きそうだな。
だが、とってどうする?
とった後どうすればいい・・・仮にこの檻から出たとしても、それを見たほかに捕まってる人たちが騒ぎだしたら収集が付かなくなる・・・。
かと言って、全員を連れて脱出なんて出来るはずもない。
・・・あれ?もしかして、これ詰んでる?
~~~side.広~~~~~~~~~~~
「・・・なんだろう、すごく不安になってきた・・・・やっぱり探しに行こう」
俺は部屋を出て、一先ず安田さんたちがいる隣の部屋に向かう。
トントン、
「二人ともちょっといいかな?」
少しして扉が開く。
「あれ、広君。どうかしたの?」
「あぁ、ちょっと真宙が帰ってこなくてな。これから探しに行こうと思って」
「だったら私たちも行くよ?」
「いや、もしかしたら戻ってくるかもしれないから、二人はここで待っていてくれ」
「・・・わかった」
「じゃあ、行ってくるよ」
俺は宿を出て、いつも買い出しに行く店がある方に向かった。
~~~side.真宙~~~~~~~~~~~
・・・待てよ、ここにいる奴ら全員眠らせてしまえばいいんじゃないか?
確かピッタリな魔法があったはず。
この部屋の広さなら全部入りそうだな・・・。
「『エリアスリープヒール』」
この前のランクアップ試験で使ったやつの範囲版だ。
これで少し待てば、眠気に耐えられなくて皆眠るはず。
・・・・・・・・・・・・
・・・そろそろだろうか。
この魔法は一度眠ってしまえばかなり深く眠ってしまいなかなか起きない。
目が覚めると万全の状態になってしまうデメリットを除けば、こんな時でも使える魔法だ。
見張りの一人を念動魔法で軽く揺らしてみる。
・・・・起きない・・な。
・・・大丈夫そうだ。
俺は見張りのポケットの中にある鍵らしきものを自分の方に引き寄せる。
「・・・ふう、うまくいったな。後はこの鍵がここの檻の物であることを祈っておこう」
ガチャガチャガチャ・・・カチッ
鍵穴が見えない状態だったので少し手間取ったが、無事に開けることが出来た。
鍵は・・・・見張りのポケットに戻しておこう。
さて、まずはこの部屋から出たいんだが・・・扉が閉まっていて、何があるかわからないな。
とりあえず聞き耳を立てる・・・・・特に音はしないな。
・・・すごく緊張してきたな・・・。
一先ずここを出よう。




