004話 シト転生①
目が覚めるとそこは、不可思議な空間であった。
周りは視界を遮るものはなく、寧ろ、地面すらない。
かといって、落下している訳でもない。
周囲を見ても、青空でもなければ、もやがかっている訳でもない。
認識=理解することが出来ていない感じだ。
曖昧な夢の中って表現がまだ近い方であろう。
そもそも、こんな状態なので、目が覚めたという表現そのものが何か間違っている感じだ。
なんというか、自分の体がそこに在るのか無いのかすら曖昧である。
試しに手を動かしてみると、確かに動くのだが、動かしているという感じより、
動いたという結果が発生したという感じがする。
というかそもそも五感的な感覚がほぼ無い。
(なんなんだいったい?そして、ここはどこだ?)
と呟いたつもりなのだが声が出た感じはしない。
声もでないということは、助けを求めることも困難という事なので、これは本格的にやばいと思ったところに。
『ここはどこか、か。随分と余裕のある言葉だ。』
と、声というより直接頭に響くような感じの音が聞こえてきた。
なんだと思い、混乱しつつもキョロキョロと周りを見渡していると、
『先程から目の前にいるのだが、いや、今の君では知覚できないか、しばし待ってくれ』
またもや声がして、しばらくすると、突然目の前が大きくひかり、目の前に服も髪も白い少年(?)が現れた。
『やあ、初めまして。上坂省吾君。先ほどの疑問の一つに答えよう。ここは時と空間の狭間の退避所さ』
(時と空間の狭間の退避所?なんだか長ったらしい名前だな。そもそもなんで俺はここにいるんだ?)
『うん?慣れが早いね。』
(そら、こちとら腐ってもオタクなんでね。こういうよくわからん事態もどこかで観たこともあるさ。流石に体験するのは初めてだが)
『ああ、なるほどね。確かに、君の所属していた世界のオタクというものには、そういう知識のようなものがあるかもね。それでは、その質問に答えよう。』
そこで、彼は少し真顔になって、
『君は死んだのさ』
と質問の答えのようで、そうでもないようなことを言い始めた。
(???死んだ?つまりここは天国か何かか?)
『いいや、時と空間の狭間の退避所だよ。もっとも、その名称は僕が決めたんだけどね。』
(いや、自分で決めたんかい)
思わずツッコんでしまった。
『というか、正式名称のようなものが、もっと長いのから、短いのまであって、世界毎にバラバラだからね。だから、僕が比較的意味のわかりやすく命名したのさ。』
(あーそうですかい。それは良かったね。)
なんだか、話をそらされている気がする。
『うーん。実はそうなんだよね。ぶっちゃけこれからの対応が面倒臭くて、話をそらしてるんだよね。』
うわ、こいつ、ぶっちゃけた。そして、心を読んでる!!
『あはは、いい驚きぶりだね。じゃあ本題の君がどうして死んで、なぜここにいるか、そしてこれからどうなるのかという話をはじめようか。』
と、居住まいを正して、また真顔で話し始めた。
『さて、君がなぜ死んでここに来たかかだが、平行世界間時空間湾曲現象に巻き込まれたことによって、肉体が粉微塵になったんだよ。それで、その君の魂を僕がここに引っ張って来たのさ。』
何だ、その漢字ばっかりの名前は?言葉通りなら、平行世界があって、そこが原因で空間と時間がなんかネジ曲がったって感じか?というか俺は魂だけの存在になっているってわけかい。
『理解が早くて助かるよ。もう少し詳しく説明するとね、君の住んでいた世界とかなり近いある平行世界は、少しだけ科学力が発達しているんだ。
その世界は、ごく短距離だけど、空間同士をつなぐことを成功していてね。その発展で、長距離をつなげる実験をしたんだけど、その制御に失敗して、一瞬だけど、一時的にそのエネルギーが空間だけじゃなくて時間までも歪めた上に、自分達の世界ではなくて、君の世界のちょうど君の歩いていた箇所にヒットしたのさ。
ほら、覚えているかい?君が最後にみた黒い物体の様なものが、その歪みだよ。』
ああ、あれか。というか、なんてはた迷惑な平行世界だ。でも技術的には可能なのか。
というか、巻き込まれただけで粉微塵になると?
『そらなるよ。空間移動するだけでも、きちんと制御しなきゃ強烈な負荷が掛かるんだから。
負荷というか、修正力による超重力が近いけどね。おまけに時間まで重なっちゃえば、人間ごときひとたまりもないよ。超重力に追加で時間軸に引き伸ばされて生きていられる生物なんかいないんじゃない?
というか、思考じゃなくて、喋ろうとして、読み取るの面倒なんだから』
(そうですかい。というか、そんな感じで、相当運が悪く死んだ俺の魂を拾い上げたアンタは何者で?)
『そう言えば、自己紹介が、まだだったね。僕は*?%$@_/<という名前だよ。といっても君たちじゃ発音がわからないか。
その顔を見れば判るよ。
うーん。そうだな。君たちの言語に近づければ、[神様]かな。役割的に細かくいうとクロノスとかカオスとかそんな感じ。時間と空間を管理というか見守ってる。』
(神様ですか。というかそんな存在が何で死んだ俺なんかに構うんですかい?よくわからんが、神様って基本的に人とか生物には関わらないじゃないか?)
『んー。その解釈はやや語弊があるなぁ。神様にも色々あるし、それぞれ仕事の範疇ってのがあるからね。君の世界の神様達は基本的に放任主義なんだよ。それで方向修正が必要な時だけ、少し手助けするって感じなんだ。
まー最も、それも平行世界によっては違う場合もあるし、一概には言えないけどね。。』
とニコニコと答える彼は、おそらく困ったら手助けしてくれるようなタイプなんだろうなと、直感的だが思った。
『うんうん。その解釈は嬉しいな。何でも好意的なのは良いことだよ。
今仕事の話が出たから、ついでに自分の仕事のことを話すね。
簡単に言うと、僕の仕事はね、空間とか時間の軸で迷った人を元の世界に戻してあげる事なんだ。』
(あー。ようやく合点がいった。つまり、俺を元の世界に戻してくれる前の世間話をしてくれてるって訳かい?)
『残念だけど、不正解だよ。ここまで全問正解だったのに残念だねー。』
短いですが、キリが良いのでここで投稿。
題名考えるのが大変。
△5 20171023 シト転生の4部を合体統合化