003話 始まり~ある男の一日③~
そんなこんなでもう夕方近く。時刻はもう16時に差し掛かっている。
因みに、昼の後の講義は、一つ空き時間があったため、図書室で寝ていた。快適であった。
今日は、一人での帰宅である。
いつもだと、ユウキや他の友人と帰ったり、バイトに向かうのだが、
幸か不幸か、本日はバイトもなく、皆他の講義などがあり、一度観たとはいえ、続きの気になる身としては早く帰べきだと判断した。
「しかし、もうすぐ研究室見学か。どこにしようかな。あんまりどこも興味がわかないんだよな。」
などと一人で呟いても、レスポンスはない。寂しい。
「大体、どこを見ても所詮は、おもちゃに毛が生えたレベルだしな。今の科学力だとそんなレベルなのはわかるけどね。」
やはり、ソコが彼の中でネックであった。
どんなに現代科学が進歩していても所詮は、ラインにあるロボットアームか、おもちゃの様な二足歩行するものしか無いのが実情だった。
巨大ロボットなど夢のまた夢である。
「一オタクとしては、妄想だけで我慢しますかね~。ん?」
ブツブツと独り言をほざいていた章悟が、住宅地の角を曲がったとき、何かよくわからないものが目に飛び込んだ。
「何だ?あれ?」
それは、奇妙な穴であった。
現代社会において穴が道にある事自体は、さして問題では無いだろう。
道路工事もあるだろうし、道の劣化で陥没することだって昨今ではありうる。
しかし、その穴は、彼の目線程の高さに空いていた。
「これは、あれかな。よくファンタジーにある、ゲート的なやつかな?これをくぐれば異世界とか、違う所に行ける的な。まさかね。」
そう言って彼は、警戒しながらも観察するために、その穴に少しづつ近づいて行った。
近づいて行くとその詳細がわかってきた。
それは、その穴は、空間に空いていた。
大きさは、大体頭から胸が入る程であり、裏に回っても空間に固定されたように同じ箇所が空いていた。
穴の周囲は景色がゆがんでおり、穴の中は、黒とも白とも何色とも形容しがたい、奇妙な色が絶えず変化していた。
「見るからに怪しげだな。かと言ってマジックとかトリックでもないし。誰かが中から出てくれば、詳細が判るかもしれないが。というか危険なものじゃないか?さっきから冷や汗がでて、第六感がビンビンしている気がする」
そう言いながら、確かめずにはいられないのは、理系の性なのだろう。
近くにある植え込みから、気づかれにくい程度の木の枝をおり(犯罪である)、そっと近づけ、穴に入れようとした。
と、次の瞬間。
「な!!うあぁぁぁぁ」
穴が突如として大きくなり、章悟はあっという間に飲み込まれ、その次の瞬間には、穴は消えていた。
残ったのは、ただの静寂。
そうして、彼、上坂章悟は死亡した。
2話から、連続投稿です。
ここで、プロローグ終了です。(2017年02月20日)
↑冷静に考えたら、まだまだ本編が始まってなかった。
という訳でプロローグは続行でした。