032話 開幕『武闘祭』inプエナ村 ②
「皆さん、盛り上がってますか~?」
俺らが、選手控え場で待っているとこんな声が聞こえてきた。
おぉぉぉ!!
「いい感じでテンション上がってますね。間もなく武闘祭が開催されまーす。
司会は私、隣のマイルの街から派遣されてきました、シエラでーす。
普段は冒険者ギルドで受付とかやってまーす。ち・な・みに、・・・彼氏募集中でーす」
うぉぉぉぉぉぉぉ!!
野太い声が響き渡る。
なんか別の方向で盛り上がっているな。
「この武闘祭は、マイルの街の冒険者ギルド全面バックアップで運営されていまーす。
いやー、プエナ村の皆さんには日頃から、お世話になってますからね。
こういう時にこそ恩を売らなきゃとうちのギルマスもうるさいんですよ。
しかし、凄いですねー。
一週間前に事前打ち合わせした時には、もっとこじんまりした舞台程度しかなかったのに、
今日来てみたら、こんなりっぱな闘技場みたいな会場が出来上がってるし。
オマケにこのマジックアイテム。
どんな仕組みかは分かりませんが、普通に話してるだけで会場全体に声が広がるなんて。
流石、元宮廷魔術師ジーナ・クインドーシャの本拠地の村って感じですね。
是非とも商品化して欲しいものです。いったいどんな仕組みなのか。
そんなこともきっと解説してくれるでしょう。
さぁ紹介です。
本日の解説は、泣く子も黙るドラゴスレイヤー、元宮廷魔術師で大陸最強の魔法使いとも名高い皆さんご存知ジーナ・クインドーシャさんでーす」
うわぁぁぁぁぁぁ!
大盛り上がりである。
「シエラ、もう少しまともな紹介はできないのかね」
「これが性分なんで許してください!
さて、ずばり尋ねますが、この会場結構本格的ですが、一体どんな風に用意したんですか?」
「いや、この会場その他もろもろに関しては、私は殆ど手を出していないよ。
これら全て今回戦う新人達が作ったものさね」
「なんと、これは驚きです。
ジーナさんが作ったのならと納得してたのが根底から覆された感じです。
しかし、流石といった所です。前情報でも期待の新人達と聞いています。
正直、これを見せられただけでも、十分どこか働き口がありそうな感じです。」
そりゃそうだ。
この会場やマイクにスピーカー、売り子の道具等々俺たち5人の合作だからな。
まぁ主に俺の前の世界の再現に近いが。
会場のイメージは、コロッセオとかの円形闘技場。
大体の設計図は俺がイメージ図を描いて、俺とアリスの莫大な魔力で生成、リッカの魔法薬で補強して開催期間分を持たせた。
座席シートや道具等は、ミリア指導の下に準備設置することで快適な観覧を提供。
更に、マイクとスピーカーは、フォリオと一緒に以前作ったなんちゃってトランシーバー(コップ形状に魔法陣を仕込んで音を別の場所で出せる様にした)を応用したものである。
会場の安全性に関しては、ジーナ師匠に見てもらったので安心である。
むしろ気合を入れすぎたサイズの会場になってしまった。
もうちょっと準備期間があれば、もっと面白いものを作れたかもしれないが、少ない準備期間ではこんなもんだろう。
「いやいや、私にいわせりゃまだまだ甘いさね。こんな作り方は、資源の無駄遣いだよ。
この会場は魔法で作って、魔法薬で維持、声に関しては、魔法陣を使用して音を飛ばしてる感じだ。
確かに、なかなかいい出来だが、一人前の魔法使いならこれらを一人で作りながら、維持させないといけないね。
まだまだ少なくともこういう細かい作業に関しては、修行が足りないね。」
「これは手厳しい。
正直それができる魔法使いがこの世界に何人いるか疑問です。
しかし、会場が作れたからと言ってそれがイコール戦えるという訳ではないでしょう。
彼らがこれからどう活躍するかはさておき、今日はあくまで『武闘祭』です。
会場も設備も素晴らしいですが、是非ともこちらの方でも期待したい所であります。
さてさて、観客の皆様を待たせてもしょうがないし、早速入場してもらいましょう。
まずはチャレンジャーサイドです」
司会に促され、俺らは入場することとなった。
入場しながら、マイクパフォーマンスは続く。
「本日、挑戦するのは、この五人。
まずは、トップバッター。実は、この村一番の金持ちかもしれない薬屋の長女、リッカ・クメディ。
キュートなネコミミが愛らしい雑貨屋の長女、ミリア・トランド。
手先の器用な武器屋の次男、フォリオ・マニス。
最強の魔法使いの孫、アリス・クインドーシャ。
そして最後に実力は未知数、異世界より来た、ショウ・カミサカだ~。
本日の対戦もこの順で行われま~す。
いや~今年は非常に特殊なメンバーがそろいましたね。
全員前評判も好評です。きっと素晴らしい才能を見せてくれるでしょう。
なお、オッズに関しては、受付をご覧くださいね。もう間もなく締め切りますよ~。」
・・・いつの間にか、賭けの対象になっていたようだ。
まぁ盛り上がるに越したことはない。
しかし、人数が多いな。
村にこんなに人がいた記憶がない。
多分、隣街やら冒険者やらがそれなりに集まっているのだろう。
よく見ると、ちらほら復興の手伝いで見かけた人たちがみられる。
「なお、事前にお話した様に皆さんに賭けて頂いた金額の一部は彼らの旅立ちの資金となります。
まぁ少額ですし、気兼ねなく楽しんでくださいね。
さて、それでは続いて、本日の対戦者の入場だ~。
Aランク冒険者の面目躍如となるか、帰ってきた村長の悪息子、トム、トム・ハイヤーだー」
中々凄い紹介で出てきたトムさんであったが、いつもの訓練の軽装と違って今日は、金属製の防具や小物入れが付いたベルトの様なものも装備している。
いつもの飄々とした雰囲気がかなり薄い。
本気モードといった所か。
ちょっと気を引き締めていかねば。
「本日の祭りの主役はこの六名です。
皆さん、盛り上げていきましょう。
それでは、ここで開幕の挨拶をパッソ村長よりお願いします」
ここで、舞台脇に控えていた村長も上がってきた。
「え~、皆さん、本日はお集り頂きありがとうございます。
今年もこの村から五名の若者が巣立つこととなりました。
皆さんご承知の様に、この祭りは彼らを送り出す為に催されたものです。
さて、これから戦う皆さん。
これから先、君たちがどんな道を歩むか分からないが、大なり小なり生きていくのに戦う技術は必要となる。
更に勉強を積むのもよし、家業を継ぐもよし、或いは冒険者となって世界を渡り歩いてもよい。
しかし、どの様に生きていくにしても山、川、海、平野、あらゆるところにモンスターや魔獣等の脅威は存在する。
近年は特に増えてきている傾向にあるようだ。
今日までの修行や勉強は、最低限生きていくための技術や知恵を君たちに身に付けさせる意図もある。
本日戦う君たちはこれまでの修行の成果を存分に発揮すると同時に、是非とも今日この日をそして今まで学んだことを忘れないようにしてほしい。
但し、無茶をして本番の試験に支障が出ないようにしなさい。
むろん、我々も細心の注意を払ったつもりだがね。
そして、トム。大人げないなんて事は言わない。
存分に本気で戦って彼らに、本当の強さというものを見せてあげなさい。
さて、私からの言葉は以上だ。
長くなってもしょうがない。
では!
これより、プエナ村武闘祭開幕である!!」
ワァァァ!!
かくして武闘祭が始まった。
ようやく投稿できました。
まずは遅れてしまって大変申し訳ございません。
こんな全く進まない小説を読んでくださり、ありがとうございます。
活動報告やTwitterとかでもちらちら書いてましたが、少々私生活で問題があり、文章を書く気力が全く浮かばずここまで遅くなってしまいました。
因みに、本話ですが、7月の中旬ごろ8割方書いて放置したのを推敲してupしました。
事件が一応収束したのが、7月頭で、このころは無理やり書こうとしていたのですが、力尽きました。
ようやく、人並みの生活ができる程に回復してきましたが、正直まだ引きずっている部分がかなりあります。
本当7~8月にかけてが、一番地獄で、朝家を出る→夕帰る寝るを繰り返すだけに近い生活でした。
ゲームとかもやったりしてたのですが、やっても全然面白くない様な精神状態で正直もはや義務的或いは、惰性的ににやっていた状態でした。
で、なんでこんなところにこんな事を載せているかといいますと、
その事件の原因に来週末もう一度対峙しないといけなくなったからです。
まぁ自分からそういう方向にもっていった部分もありますが・・・。
状況によっては、また更新が更に伸びる可能性があると思い、upしつつ書かせていただきました。
どちらに転んでも活動報告かTwitterあたりでなにか書くと思います。
それまでゆるりとお待ちくださると嬉しいです。




