012話 幕間1~side アリス~②
山散策は概ね順調だった。
山登りと言っても、精々街から少し見える範囲でかつ、道が少し整備された所だった。
そうやって登りながら、食べられる野草やキノコ使える薬草の採取、育ち過ぎた木の伐採や薪になる木の枝の伐採をするので、登るのは非常にゆっくりだった。
こういうことは、2ヶ月に1度程行っているそうだ。
村では、野菜の栽培や酪農も行っているし、街とのやり取りもしていて、
そんなに貧しい訳ではないそうだが、それでも行っているそうだ。
なんでも、山で取れる薬草は街ではいい値段になるとのことで、村の資金の一部にもなっているらしい。
そして、この栽培や酪農、薬草の売買等で技術支援をしたのが、うちのおばあちゃんで、
何でもこの村の出身らしい。
そう一緒に登ったお姉さん達が教えてくれた。
かくいう私は、薬草採取をメインで行っている。
おばあちゃんに叩きこまれた、知識がこんな所で生かされるとは。
というか、前の家の花壇にいっぱい生えてた気もする。
更に良く見ていると、他にも使えそうな草もある。
毒消しになるものや、魔力の回復を助けるもの、草だけでなく、他の薬効がありそうなキノコもあった。
お姉さん達もそのことは知らないようだった。
話し合った結果、今回はいくつかのサンプルを持って行っておばあちゃんと今後を相談する事になった。
おばあちゃんはこのために、私を行かせたのかもしれない。
きっと自分が登るのが面倒だったのだろう。
後で文句を言おう。
そんなことをしていると、すぐにお昼になった。
お昼のご飯は、すぐ近くのパン屋さんのものだった。
思ったより美味しかった。
今度また食べたいな。
午後は、薬草採取の傍ら、トムさん達のお手伝いをする事になった。
トムさん達男の人たちは、護衛兼、荷物持ち、伐採担当と力仕事がメインだった。
私は、トムさん達に頼まれて、魔法で枝落としをやることになった。
「そよ風よ、我が手に集いて刃となせ『ウィンド・カッター』」
ズババッ
私が放った魔法で幾つかの枝が切り落とされた。
「へぇ。ジーナ婆さんが言うだけのことはある。確かに制御しているじゃないか」
トムさんが褒めてくれた。
「でも、内緒にしてくださいね。おばあちゃん、私に魔法は使うなってうるさいんだから」
「分かってるって。大丈夫、少し位使ったてばれないって。それより、きちんと使えるってみんなに見せた方がみんなも安心だし、俺らも楽だし、いいことづくめさ。」
そう言ってトムさんは、爽やかに笑った。
こうやってちょっとだけ、魔法を使いながらトムさんと話をした。
なんでも、トムさんはちょっと前まで、剣士の学校にいたらしい。
それを卒業して、今は騎士になるか、冒険者になるか、村を次ぐか検討中って言ってた。
道理でムキムキなわけだ。
みんなも信頼しているみたいだし、きっといい人何だと思う。
ちょっとカッコいいし。
そんな感じで、みんなと交流しながら、散策をしていたら、夕方になってきた。
我ながら結構打ち解けた気がする。
みんなで、一旦少し山が開けた所に集合した。
「よし、じゃあみんな集まったな。各自荷物も分担できたし、ぼちぼち降りようか」
ミーナお姉さん指揮の元で、山を下る事になった。
みんなと話していてようやくわかったけど、ミーナお姉さんは、若い女の人のリーダー的な事をしているらしい。
かっこいい。私も大きくなったら、あんな感じになりたい。
そう思いながら、私も降りようとしたら、なんだか突然、山の上の方向から何かを感じた。
「?」
目を閉じて集中すると、ようやく分かった。
これは、『魔力』だ。
なんだか、分からないけど魔力を放出したものが、ゆっくりとこちらに向かっている。
おばあちゃんから聞いたことがある。
山とか草むらとかには、魔物や魔獣が生息しているって。
今回の旅では幸運にも出会わなかったけど。
しかも魔力を感じるってことは、多分強い魔物で、こっちに襲い掛かってくるかもしれない。
みんなが危ない。
そう思った私は、魔力を集中させ始めた。
これは、おばあちゃんの言う『緊急事態』だ。
どんな魔法を唱えるか、威力はどれ位と考えたところに、トムさん達がやってきた。
どうやら、一人遅れた私を心配したらしい。
「どうした?早くいくよ」
「近くになにかいる。なんか魔力を発してる。危険かも」
「何!?解った。みんな警戒してくれ、女の人らはすぐに下りて。」
かくして、男4人+ミーナお姉さんと私を除いて、足早に下に下りていった。
念のため、応援も呼ぶそうだ。
皆、腰から下げていた剣やら斧やらを構えた。
私はすぐに魔法を使える様に警戒していた。
そうして、しばらくすると少し遠くの茂みからガサガサと音が聞こえてきた。
皆の緊張が更に高まった。
ガサガサ、ガサッ
と音がして何かが草むらから出てきた。
なんと、それは、子供だった。
透き通る様な金髪で、歳は私と同じ位だった。
服はボロボロで所々、赤い血がついており、どこか顔色も悪そうだった。
そして、驚いている私達の方にふらふらと歩いてきて、
『※※※※※※※助かった※※※※※※※ダメ』
とよくわからない言葉を喋って倒れた。
危なかった。
もっと強い魔力を感じたら、全力で魔法を放つ所だった。
その子は、どうやら気絶したようだった。
どうしようもなかったので、とりあえず村長の家に連れて行く事になった。
これが、彼と私の出会いであった。
~side アリス end~
勢いで書いてしまった。
幕間の扱いにもう少し慣れたい。




