011話 幕間1~side アリス~①
プエナ村に来て一週間がたった。
おばあちゃんと一緒の旅は、楽しかった。
普段色々厳しいおばあちゃんと色々話ができた。
思ったより、仲良くなれた気がする。
お父さんもお母さんも遠くに行っちゃったけど、おばあちゃんが居てくれるならなんとかなりそう。
前居た大きな家では、あまり外にださせてくれなかったから、
また今度もそうなるかもって不安だったけど、おばあちゃんに聞いてみたら、
「家が片付いたら、みんなに紹介する。それまでは我慢しな。
そのあとは、教えをしっかり守るなら、自由にしなさい。」
って言ってくれた。
いつもは、厳しいけどやっぱり、おばあちゃんは優しい。
村についたら、いっぱいの掃除が待っていた。
新しい家は、すこし小さくて、誰も使っていない感じだった。
物語に出てくる魔法使いの家って感じがして、ちょっと不気味だった。
前の家では、使用人の人がいて色々やってくれたけど、今はシャイナさん一人しかいない。
なので、必要な部分は自分もやる必要があった。
面倒だったので、魔法を使ってズルしようとしたら、おばあちゃんにバレて怒られた。
訂正、こんな所に来てもやっぱり、おばあちゃんはおばあちゃんだった。
昨日は、近所の家の人が何人か家に来て、おばあちゃんと一緒に話をした。
いっぱいいて顔と名前が一致しないけど、隣の家のミーナお姉さんだけは、印象的で覚えた。
お隣うんぬんというより、新婚でのろけられたのが印象的だった。
一緒に来た、夫のダミアンさんとかって人は、正直あんまり覚えていない。
なんか腰が低くて、芯がなくてナヨナヨした感じだった。
ミーナお姉さんは綺麗だったけど、なんだか不釣り合いな気もした。
私の理想は、もっとガッチリして、堂々とした人だ。
そして、少なくとも私より強く無いと話にならない。
・・・今まで、あんまり同年代と会ったことは無いのだけど。
そんなことを考えていたら、おばあちゃんが私を呼んだ。
「アリス。
今ミーナちゃんから聞いたんだけど、明日は若い衆で山に山菜とか薪を取りに行くそうだ。
折角の機会だ、アンタも行っておいで。」
「え、いいの?」
「ああ、いいよ。村長にはあたしから言っておく。ただし、いつもどおり約束だ。
自分が危険だって感じるまでは、魔法を使うんじゃないよ、いいね。」
「うん、分かった」
こうして、明日はようやく外に出れるようになった。
朝の鐘が2つなった頃(10時頃)、私はミーナお姉さんに連れられて家から少し離れた広場にいた。
広場には20人程の人がいた。
男の人が5人で、他が女の人だった。
大体みんなミーナお姉さんと同じ位の歳って感じだった。
「何だ、私らが一番最後か。
じゃあみんな注目。
早速いつもどおり行こうと思うんだが、その前に、紹介しておく。
この娘は、アリスって言う。私の家の隣に越してきて、あのジーナ婆さんの孫だ。
今日は、この娘も一緒に行く。
さあ、自己紹介しな。」
「あ、えっと。
アリス・クインドーシャです。一週間前に引っ越ししてきました。よろしくお願いします。」
教えられたように軽く礼をした。
周りからこれからよろしくとか、そうかあのジーナ婆さんのとか、かわいいとか色々聞こえてきた。
私が可愛いのは当然として、それなりに好意的な感じだった。
しかし、誰かがボソッと「あれ、あの青い髪の色って『魔力異常症』じゃない?」と言った。
その途端、周りの雰囲気が一変した。
ざわざわといつもどおりの面倒な雰囲気が漂ってきた。
鬱陶しい。
これが続くようなら、いっそみんな吹き飛ばしてやろうとか物騒なことが頭に一瞬よぎったタイミングで、
ミーナお姉さんが話を始めた。
「あー、やっぱそうなるか。
はい、ちょっと注目。
オッケー、静かになったね。
そう言う面倒な声が上がった時に読んでくれってジーナ婆さんから手紙を預かっている。
今から読むから、聞いてくれ。」
そういっておばあちゃんからの手紙を出して、読みはじめた。
「『ペリナ村の若者の皆さん。お久しぶりです。ジーナです。
皆さんもお気づきの様に、私の孫は『魔力異常症』です。
あなた方もご存知の様に、普通の人より多くの魔力を持ち、使用する魔法は人より何倍もの威力となります。
しかし、彼女は幼少より、私が鍛え上げたことで、魔法をきちんとコントロールして使用できる様になっております。
また、彼女が首につけているネックレスは発動する魔法を少なくするものとなっております。
そのため、よほど、彼女を怒らせたり、驚かせたりしないかぎりは、危険はありません。
これは元宮廷魔術師の私が、保証致します。
皆様の中にこの娘と近くに住むのに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。
しかし、彼女をココに住まわせる事に関しては、村長のパッソと念入りに相談したうえで
村長のご厚意もあり、決めさせていただいています。
必要があれば、私が責任を取る所存です。
どうか皆様、この娘と仲良くしてください。』
だ、そうだ。どうする?みんな?」
みんな、頭をひねり出した。
そりゃそうだろう。
こんなこと打ち明けられても困るだけである。
「あ、すまん。
まだ続きがあった、ちょっと聞いてくれ。
『PS.
彼女を怒らせた場合は、家が少し吹き飛ぶ程度ですむけど、私を怒らせる場合は、
村と周囲の山が簡単に吹き飛ぶことをゆめゆめ忘れないように。』
だってさ」
しばしの静寂。
その後、皆から笑いが起きた。
「あはっはっはは。なるほどな、確かにどっちが危険かって考えたら、比べるまでもないってことか。
これは、ジーナ婆さんらしい。
オッケー、まぁここは一つ脅されておこうじゃないか。
婆さんには多大な借りがあることだしね。
みんなもそれでいいかな?
うん。良さそうだね。
確認も取れたことだし、親睦会兼、山散策と洒落込もうじゃないか。
おっとその前に、僕の名前はトムだ。村長の息子だよ。よろしくね。
アリスちゃん。」
なんかちょっとムキムキのかっこいい男の人が、握手を求めてきた。
「あ、はい。よろしくお願いします。」
訳の分からない、手紙でみんな引くかと思ったけど驚いた。
なんだかおばあちゃんは、この村にすごい影響力をもっているみたいだ。
かくして私達は、山の散策兼、物資調達に行くこととなった。
幕間は1話の予定が、いつの間にか2話になっていた。
無駄が多い。
早めに幕間2を作ります。
△7 村の名称統一




