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毒師  作者: にや
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毒師─Cl2C=NOH─

車は二回右折をして、ビル群一つ挟んだ大通りを戻っていた。景色は大して変わらない。どこまでも続くコンクリート。

先程より厚みを増した雲が見下ろす。切れ間から降り指す光はどこか神々しさすらある。

信号が赤から青に切り替わると、慣性が体を揺すった。

暫くエンジン音に揉まれていると、突如木々に彩られた建物が現れた。森を切り取って貼り付けたかのような、違和感。その間からのぞく白い建物には古びた赤十字が誇らしげに掲げられていた。

「輝夜、少し隠れてろ」

「隠れたら通り抜けられる警備って節穴じゃねぇかよ……っと」

シートの下に作られたスペースに身を滑り込ませる。埃っぽい。

「僕は顔パスだから節穴でいいんだよ」

「権威の横暴だな」

「酷い」

少しして、後部座席の路成が窓を開けた音がした。一言、二言、それだけ交わすとまた窓が閉まる。夜叉斗の態度は(人の声に耳を塞いでいることを除けば)あまりにも自然だ。路成なんかは貧乏ゆすりに緊張と動揺が伺える。やはり、あのアホ毛は油断ならない。

特に話し声がしなくなったので、俺は勝手に転がり出た。やはり何も言われなかった。ただ、路成にため息をつかれた。

やたらキキキと鳴る地下の駐車場に、車は収まった。

「ここから先は国家機密が出歩いてても大丈夫だ」

「つまりそういう病院なんだよな?」

無言の首肯。なるほど。そりゃ、贅沢で誇らしげ、さらに顔パスが効くような施設な訳だ。『無かったことにされた』事故の患者なんかを専門に受け入れる施設なのだろう。全く、平和な面して恐ろしい国家だ。

ドアを閉めた夜叉斗は、早足で歩きながら路成に問う。

「路成、今何時?」

「オペまで6分」

「そう」

別人のように凛々しい、高潔な目をして院内を実家のように迷わず歩いていく。右へ、左へ。上へ。また左へ。

廊下の一番奥、そこに「手術中」の赤文字が光る部屋があった。それと、放置された器具や手術着の一式がある。

「アシスタントは?」

「いたらマトモに手術なんかできないよ」

それもそうだ。アシスタントに一々気絶していたら何時間かかることか。オペのせいで(医者が)死ぬなんてことがあれは不謹慎を通り越して酒の肴になってしまう。というか患者も死ぬ。

夜叉斗は、厚い扉で、小部屋を閉ざした。

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