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芝生にて_その1

 芝生でリズにスリスリされた直後。


「ご主人様は好きな方や、お付き合いされている方はいらっしゃいますか」

 スリスリを中断したリズはどこか張り詰めた表情のまま、その返事を待つ……。


「日本での俺はリズのご主人様じゃないよ。それと俺に好きな人はいないし、付き合っている相手もいない」


 リズの頭は主従関係を否定されて繋がりが消えたけど、恋人はいないから希望はあるとで一気にゴチャゴチャになった。


「リズこそ、異世界よりもキレイになって恋人はいないのか」


「わ、私は……、ご主人様に全てを捧げましたから……、もしお嫌でなければ……」

 リズの声は段々力なく消えていく。


 俺はリズの頭をゆっくりとなでてやる。


 リズは目を細めて幸せな笑顔に変わった。




 リズの耳はネコ耳から人間の耳になっていた。

 異世界の迷宮は人知を超えた力を持っているようだ。


 そもそも人を地球から異世界に移動させたり、異世界から地球に移動させたりできる時点で、すでに超えていたか……。


 人間の耳は申し訳ないです。といった感じで可愛らしくくっ付いている。


「きゃ」


 やっぱりリズは耳が弱いようだ……。今まで頭をなでられて幸せモードだったのに、急に顔を真っ赤にして、痴漢にあったような……? あれ? これってセクハラじゃない?


「ご、ごめん。リズ、その今のリズは俺の恋人でもないのに……その……」


 俺は異世界に3週間ほどいたが、リズとはわずか4日ほどしか一緒にいない。


 それなのに、遠慮なしに触って失敗した……。


「いえ、私の方こそ変な声を出してしまって、ど、どうぞ、え~っと触って下さい」


 今度は耳を差し出してくるリズ……。長い髪に隠れていたうなじが妙に色っぽい。


 どうしよう……。本当にこんなキレイになったリズの耳を触っていいのだろうか……?


「それじゃ……、触るぞ」


「は、はい」


 すごい柔らかくて温かい。ネコ耳と比べると毛がないから手に張り付いてくる感触がたまらない。


「ご、ご主人様、そんなにやさし……、もうゆるして……」


 俺は慌てて手を離した。リズは限界を超えてしまったのか、くたっと俺の胸に沈む。


「す、すまん。あまりにも気持ちよかったから……、つい……」


 リズが胸から俺の方に視線を向けて。


「私の方こそ……、人に触られたことがなかったので……、ご主人様が気持ちいいなら良かったです。ネコ耳じゃなくて淋しくないですか」


「俺も女性の耳を触ったのは初めてだから……」


 何か妙に疲れる……。


 リズは逆に嬉しそうだ。


「女性の耳を触ったことなかったのに、私の耳は触りたいと思っちゃったんですね。ご主人様お願いがあります」


「な、なんだ」


「ここは日本なので、奴隷制度はないです。またご主人様の奴隷になることは諦めます」


 リズは深呼吸をして。


「私を恋人にしてくれませんか……」


 俺でいいのだろうか……? 確かに俺に会いにわざわざ異世界からくれたんだろうが……。


 どうやって返事をしたものか……。


 俺が無言でいたせいかリズの表情が諦めに変わっていく……。


「と、突然すみませんでした、ご主人様の都合も考えないで……。さっきのは忘れて下さい。異世界からノコノコ追いかけてきて、ご主人様に会えて、触れただけで満足です。もう二度と……」


 俺はリズの唇と唇で塞いだ。


 リズはビックリして目を見開いた後に、すぐに離れた。


「ご主人様ダメです。私たちは恋人同士ではありません」


「俺は異世界のリズも今のリズもどちらも好きだ。俺は何も持たない平凡な人だが、それでもいいのか」


「はい。ご主人様がいいのです。あの……。さっきの続きをしてもいいでしょうか」


 俺たちはもう一度キスをした。

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