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超能力者の魔法大戦  作者: 姫浴衣
7/13

桜嶺祭



 ゴールデンウィークは校内で様々な部活が、魔法の知識に乏しい一年生を上級生が特別補習をしたり、実践魔法のレクチャーをしたりして強化合宿を行っている。

 大きな部になると、校外の施設に宿泊してサバイバル訓練を取り入れたりと、実にバラエティに富んだ連休を過ごす。

 魔族の暗躍とか世界の危機とか、そんなものは国家警察とか国際魔法軍――世界有数の魔道士集団、国境の区別なく世界平和の為に活動する非営利団体――に任せて、青春を謳歌することになった魔法大戦部。

 決して現実逃避をした訳ではなく、勇貴の推理も含めて佐伯優の父――四百年続く佐伯流精霊魔術黄銅派の頭首――に報告した。

 佐伯の父に秘密裏に動いて貰っている間、「学生の身分でできる事など何も無い」と言われてしまったのでは、やはり出来る事など何もないので、お言葉に甘えて年度最初のイベントを楽しませてもらっている。

 何故か飲食物の屋台が校舎の中庭にびっしり並び、いつでも焼きたてのフランクフルトやアツアツのたこ焼きが食べられる状況は、まさしく祭りの前夜祭と言った賑わいを見せている。

 今日はゴールデンウィークの初日だが、このペースで毎日食べ歩きをしていたら体重が気になる。と言いながらも買い食いを止めない湊と、げんなりした表情でその後ろを付いて歩く勇貴は、一先ず校内の警邏中と言うことになっている。

「いやホント屋台って便利よね。朝ご飯が学校で食べられるのだから」

 口の周りをソースで汚したまま、後ろにいる勇貴のことを振り向きもしないで、湊は現代社会の飽食さを満悦している。

「いや寝坊して朝飯抜いたからって食い過ぎじゃないんですかね? 仮にも警邏中だよ? 俺たち」

 とか言いながら、湊にたこ焼きのお裾分けを貰って食べてしまった勇貴も実はサボりの同罪なのだ。

 て言うかソースが濃すぎて、たこ焼き一つで胸焼けを起こしている。

 朝は食が細い勇貴は、豪快に食って回る湊を特に羨ましくなさそうに見た。

「警邏と言ってもやってることはいつもと変わらないじゃない。事件が起こるのを待って、それに立ち向かっていけばいいのよ」

 やっと勇貴の方を向いて喋ってくれた湊は、自信満々に言い放った。

 実際に湊は、自信につながる魔法技術を、この三週間で十分に身に着けている。

「でもお前の魔法スタイルは呪文詠唱だろ? そんなに口の中に物つめ込んで咄嗟に詠唱できるのかよ」

「でひるはよ(出来るわよ)」

「ほら出来てない」

 たこ焼きを二個一気に口の中に入れて、リスの様にほっぺたを膨らまして喋る湊はやっぱり発音が出来なかった。

「わはひほはほうはほんはひはわひゃはい」

「もう何言ってるか分かんない」

 勇貴は解読を諦めてため息を吐いた。

 そんな中庭の隅で、杉松李音が綿あめ片手に走り回っていたので、早くもこの部の未来すら諦めてしまいそうになった。

 それでも、実際に実戦を見た佐伯、日向、湊の三人だけで、校内のトップ争いが出来るのだろうと確信していた。

 杉松、『筑紫さん』の二名が加われば、敵は居ないんじゃない? と言うのが部長の佐伯の見解でもある。

「ちょっとあなたたち! そんなところで反属性の魔法実験をしないでくださる?」

 中庭から校舎へと続く石階段の上で、魔法戦争部の千堂七海が声を荒げていた。

 あなたたちと呼ばれた集団は、校舎の渡り廊下の真下で魔法をぶつけ合っていた。

 相反する属性の同威力、同効果、同魔力、の魔法をぶつけると起こる現象――純魔力形成――の実験をしていたらしい。

 純魔力形成は大変危険な実験で、失敗すると使用した魔力以上の暴走が起こる。

「わたくしは、風紀委員会権限に於いて、その魔導実験の中止を命じます」

 千堂に即時解散を求められたヤンキー風の生徒たちは、舌打ちをしながら散っていった。

『まあ唯一の敵と言ったら、千堂さん率いる魔法戦争部じゃない?』

 と佐伯は以前に語っていた。

 魔法戦争部とは、魔法大戦部と時を同じくして発足した部活で、部の目的も全く同じものを掲げている。

 風紀委員会とは、最高学年の最高魔力保持者が生徒会長を務めるのに対して、次点の人間が務める組織と役割である。

 生徒会と風紀委員が学校側から与えられている権限はほとんど同じ。

 常にライバル関係である部活と、同じくライバル関係にある佐伯と千堂。

 部でも委員でも、両方で常に佐伯に負け続けている千堂は、今年は秘策を用意しているとの噂だ。

「あら、魔法大戦部のお二方。ごきげんよう。訓練はよろしいの? こんな所で買い食いなんて、今年はわたくし達に勝利を譲って下さるのかしら?」

 階段下にいた勇貴たちに気付き、千堂は腰に手を当てて胸をそらして言った。

 胸にある二つの膨らみが少し揺れて、聞こえるはずもない擬音が勇貴の頭の中に聞こえた気がした。

「はひよ、ほっひはっへふあふあひへふはへははい」

 新たに焼きそばとりんご飴を口に含みながら、湊は千堂に反論した。

「だから湊、何言ってるか分からないって、多分失礼なことを言ってるんだと思うけど」

 湊の性格上、こんなことを言われて言い返さないことはないし、初対面の相手でもいきなり毒づいてくることも分かりきっている勇貴は、千堂の顔色を窺いながら湊を諭した。

「あら、私は主力メンバーに部を任せて、頼りない生徒会に変わって風紀を正すと言う使命を全うしているのよ」

「ずずずずず。はほうはいへんふはっへ、ほへーひんふほひはんあひゃんほひへはふ。……ずずずずず。ほへひ、はらはへあふひひへふはへひゃはひはへん」

「だから湊、焼きそばを啜りながら先輩と会話するのは失礼なんだって」

「もしかして夜な夜な秘密の特訓でもしているのかしら? 食べ歩きじゃないなら何だっていうのかしら?」

「ほふひへふ」

「だから湊、飲み込んでからじゃないと伝わ……ってる!?」

 勇貴は二人の間で会話が成立していることに初めて気づき、戦慄を覚えた。

「……っくん。秘密の特訓ってわけではないけれど、秘密の何かはしているわ」

 焼きそばを完食して口が空いたので、遂に湊の肉声が千堂に届いた。

「ふうん。どっちにしても! 今年こそは、佐伯になんか負けないんだからね!!」

 出来の悪い捨て台詞のようなものを吐いて、千堂は立ち去ってしまった。

 よほど彼との因縁が深いのか、それとも一年に生意気な口のきき方をされたのが悔しかったのか、最後は若干涙目になっていた。

「あの人も、なんか面白いね」

「そう? なんか生き急いでるようにしか思えないけど」

 二人はそれぞれ感想を言いながら、今度はチョコバナナの屋台の列に並んだ。



結局食べ歩きでゴールデンウィークが終わってしまった。



 そんなこんなでゴールデンウィーク最終日、五月の頭だというのに初夏を思わせるほど暖かい桜嶺祭の当日。校内は熱気に包まれていた。

 学校の敷地の地下。敷地全体の地下を丸々ぶち抜いて魔法で補強された膨大な空間に、全校生徒が集結している。

 柱ひとつないこの空間は、学校のパンフレットによると、都内にある有名な、プロ野球の試合でメインに使われるドームの三倍の広さがあるらしい。

 ここはドームと言うよりは、水泳競技場のような作りになっていて、上層にある観客席――パンフレットによると約八万人収容可能――が、西側と東側に二列、楕円形に南北に延びていて、その下層に広いフロアがある。

 生徒たちが居るのは上層部分の一階席。部活ごとにまとまって着席している。

 これから開会式が行われる模様だ。

 北側に大きなスクリーン――光属性の魔法で粒子に色を付け、映像を映し出す装置――が設置されていて、それが点灯した。

 そこに映っているのは、この学園の校長――入学式にも現れた男性――だった。

 生徒たちはスクリーンを見上げ、校長の言葉を待った。

「諸君、栄えある桜嶺祭の開催、おめでとう。開催に先立って挨拶をしているのだが、私が諸君らに伝えることは、毎年変わりない」

 一度言葉を切って、校長は小悪党のような笑みを浮かべ、

「さぁ諸君、殺し合いを始めてくれ」

 と言い放ってスクリーンの映像が消えた。

『うおおおおおぉぉぉぉぉ!!』

 校長の言葉に入学式の時の様な静寂はなく、全校生徒たちが絶叫し、会場中が震えた。

 一年生も、入学式からひと月が経ち、覚えたての魔法で校内殺し合い合戦に参加したくて仕方がない。と言った風にヒートアップしていった。

『さあ、やってまいりました! 桜光学園、第七十四回、桜・嶺・祭! 今年も司会進行は我々魔法通信部、アナウンサーの戸斧戸春(とおのこはる)が務めさせていただきまぅす!』

 会場中に響き渡る音量で司会役を名乗った女生徒は、一人乗りのゴンドラのようなものに乗って浮いていた。会場の二階席部分より少し高い位置で西側と東側を交互に見つつ、フロアの中央を南北に移動しながら、オーバーなアクションで続けた。

『今年の桜嶺祭はなんと歴代最多の部活数が参加しています! なので早速トーナメント一回戦をやってしまいましょう! 今年のトーナメント表はー、これだー!』

 ジャン! と言う効果音と共に巨大スクリーンに現れたトーナメント表。字が小さすぎて細部まで見えない。

『おっと、細かすぎて見えないかー。なので、今からプリント版を配りますのでそれを見てくださいまし!』

 それに合わせてプリントが配られた。しかし「報道係」と書かれた腕章を付けた生徒数名が、客席回りながらプリントを配り歩いているので、勇貴たち魔法大戦部の手元まで届くのはかなり時間がかかりそうだ。

『みんな自分の対戦相手は確認したかな? 時間もない事だし、サクッと始めちゃうよー!』

 全てのプリントが行き渡っていないのに、戸斧は司会を進める。

 セリフ終わりに指をパチンと鳴らすと、下層フロアでは、音を立てて仕切りのような物がせり上がってきた。

 大きなフロアを四つに区切って壁となり、それぞれの区画には別々の障害物が現れた。

 樹木が生えている森林ステージ、岩石が積み上がっている鉱山ステージ、氷柱が立ち並んでいる凍土ステージ、数か所の足場を残して床が喪失されている奈落ステージの四タイプ。

『これが今年の障害物になります! 改めて、ルールを説明するよ! なので一年生の皆はよく聞いてね!』

 戸斧は、どこへともなくウインクを送ってから説明を開始した。

『ルールは簡単! 各部、六人一チームを作って、あ、六人より少なくても大丈夫だよ! なので精鋭を選りすぐんでね! 武器の持ち込み、使用は厳禁! でも魔法具だったら使っても良いから強力な魔法を使えるように準備してね! 参加者は専用の魔法繊維を織り込んだウェアを着て戦闘してもらいます! ウェアが一定ダメージ以上を負ったら、消えてなくなります!』

 説明と同時に巨大スクリーンに簡単なアニメーションが流れて、説明の補足をしている。

 女の子が魔法を受けて、ウェアを失いキャーと叫んでいるイラスト。

 会場中がざわめきだした。特に女子の悲鳴が聞こえる。

「なにそれ! 聞いてない!」

「今年から仕様が変わったのか! うっひょー!!」

 と様々な怒声と歓声が聞こえたが、

『なんてのはウソに決まってますよ! 個人的には裸の男子がくんずほぐれずしているのが見たいんですけどねー』

 とドッキリを告白した。ついでに自分の趣味も告白してしまったが、本人に隠す意図なんて無いようだ。

 先程までの怒声と歓声は、安堵と絶望に切り替わった。

 そんなことはお構いなしに、戸斧は説明を続ける。

『一定のダメージを負ったらウェアから魔法信号弾が飛び出ます! 毎年一緒でつまらないですねー。 なので信号弾が出てしまった生徒さんはそこで試合終了――死、です(DEATH)。そうなったら速やかにステージの外に出てください。勝敗は、リーダーに設定されている人の信号弾が飛び出たら負け、つまりリーダーを倒したら勝ち、です! なので誰をリーダーにするか、と考えるところから戦略が変わってきますね!』

(なるほど)

 勇貴は桜嶺祭当日にして、初めてルールを理解した。ゴールデンウィークで肌の脂身を増やすことに終始していた湊を何とか止めようと必死だったので、桜嶺祭に関することは予備知識程度の事しか知らなかった。

 このルールは比較的分かりやすくて良いな、とも思った。魔法で大技を披露しろ、とかであれば、勇貴に勝ち目はなかったであろう。

(となると、各ステージの障害物を有効に使う戦術が俺の主流になるかな。戦場に自チームと敵チームしかいないのなら、一対一に持ち込むことも簡単だろうし)

 勇貴が自分の中で戦略を組み立てていると、

『今年はとにかく参加チームが多いんですよねー。 なので、校長に相談してルールをちょっと変えちゃいました!』

 戸斧はまたもウインクをこちらに――明らかに、実行委員を兼ねる生徒会である魔法大戦部の方に向けて――ひとつ送り、

『一気に四チームが一つのステージで戦争してもらいます!』

 と爆弾発言を投下した。

 会場は驚きに包まれたが、このルール改定は割と皆に気に入られたらしい。

 強豪部の猛者たちは、サバイバルゲームとか大好きなのだ。

「嘘だろ……」

 そんな会場の熱気に包まれながら、一人テンションが下がっていく勇貴。

「一気に何人もに囲まれたら死ぬじゃん。特にあの奈落ステージ」

 勇貴は奈落ステージに目を向けて絶望していった。足場と思われる円形の、四~五メートル程の太さの柱が八か所あるだけで、身を隠せそうな障害物など一切ない。

 足場である柱が多少床からせり上がってるだけで、その下にポッカリと空いた深淵は、地下にあるこの競技場のさらに奥深くまで広がっているようだ。

「どうか奈落ステージには当たりませんように、奈落ステージには当たりませんように……」

 勇貴は恐怖に煽られて、ついに祈りだした。

『なので、生徒会が作成したトーナメント表をすこーしだけ弄らせていただきました!』

 勇貴が祈っていると、トーナメント表が配られた。確認すると、確かに四チームでのサバイバル戦になっている。生徒会が作成した表に手を加えた程度のもので、部の配置などは変わっていなかった。

「してやられたねー。それなら初めから言ってくれれば、トーナメント表の作成なんて面倒な仕事をしなくても済んだのに」

 と勇貴の後ろから佐伯が呟いた。桜嶺祭を乗っ取られたことより、面倒を回避したかったと思っているあたり神経が図太い。

 魔法大戦部の位置はDブロック。一回戦はシード権を得ていたのだが、四チーム戦になったので、一回戦から駆り出されることになっていた。

 対戦相手は、魔法射撃部、魔導飛行部、魔法忍術部だ。

「ぜ、全部遠距離系の魔法が得意なところじゃないか」

 トーナメント表を作っていた時は意識していなかったが、今考えるとなんと偏った組み合わせだったのだろう。

『そろそろ、プリント皆貰ったかな? なのでトーナメント表の見方を説明しちゃうよ! トーナメント表にアルファベットが振ってあります。A、B、C、Dの四つね。この四ブロックがそのまま戦場になります! さぁて、気になる戦場はこちら!』

 巨大スクリーンが四分割された映像を映し出した。それぞれ森林、鉱山、凍土、奈落ステージが映っている。

 パンパカパーン! と言う効果音と共に、映像の上にそれぞれA、B、C、Dの文字が現れた。

 奈落ブロックの映像の上に、Dの文字が光る。

「俺の祈りがぁぁぁぁ!!」

「どうしたんだい、市浜くん!?」

 いきなり叫んだ勇貴と、それに驚いた佐伯。

 勇貴の祈りは通じず、絶望の深淵へと落とされた。きっと多分、戦闘になったらこんな感じで奈落の底に落ちていくんだと思う。

『これで私からの説明は終わりです! なので、早速一回戦第一試合を、すぐにでも始めたいと思いまぅす! なので第一試合のチームは準備をしてください! 十五分後に競技が開始されます!』

 そう言うと、戸斧はゴンドラに乗って巨大スクリーンの裏側へ飛んで行ってしまった。

「さあ、市浜くん。いつまでも頭を抱えてないで行くよ。僕たちは第一試合だからね」

 佐伯は勇貴の肩を優しく叩いて言った。

 勇貴はしぶしぶ立ち上がり、項垂れながら佐伯の後を付いていく。

「あのステージ、勇貴には不利ね。私から離れないで」

 いきなり後ろから声を掛けられた。勇貴が振り向くと、いつもより一割ほど顔の丸い湊の姿があった。

「……肥った?」

「……肥ってないわよ」

 目をそらしながら小声で嘘を吐いた湊。

「肥ったよね?」

「燃やすわよ?」

 追及を続けた勇貴の目を見て湊は、今度ははっきりと言った。

(燃やされたくねー。どさくさに紛れて競技中に燃やされたくねー)

 勇貴は目をそらしながら、一連の会話をなかったことにした。

 下層フロアへと降りる階段の途中で日向と合流し、魔法ウェアに着替えるために一度男女別れてロッカーに寄った。

「佐伯さん、『筑紫さん』って方はまた来ないんですか?」

 着替えながら勇貴は、幽霊部員について佐伯に尋ねた。

「あれ? まだ会ってなかったっけ?」

「まだ一度も」

「そうか。今度ちゃんと紹介しなきゃダメだなー。筑紫は兼部の方で今年も部員が集まらなかったから、今年の桜嶺祭も一人で参加するってさ。夏の選抜決定戦には出るから安心してていいよ」

「そうなんですか。じゃあ、うちは五人で競技するんですか?」

「そうだよー」

 いきなり、人数のハンディキャップを抱えていることを聞かされた。

 一人足りないだけでなく、魔法を使えない人間がチームにいるので、更に厳しい戦いになるだろうが、佐伯はそんなことはお構いなしに、

「まぁ、日向さんと横川さんだけで一次予選はゴリ押し出来ると思うよー」

 と自分のチームメイトを評価した。

 着替えが終わり、ロッカーの外で女子達を待った。数分と遅れず全員集まり、召集場所へと向かった。

 もう第一試合に出るほとんどの部が集合していた。

「おせーじゃねぇか」

 その中に、既に杉松が待機しており、戦闘準備を整え息巻いていた。

「李音が早すぎるんだよ。ちゃんと開会式出てないだろ」

「お前にしては真面目なこと言うじゃねぇか。でも桜嶺祭のメインは開会式じゃなくて競技だろ?」

「……だからってサボって良い理由にはならないだろ」

 佐伯が呆れるように呟いたとき、召集場所にあるベルが鳴った。

『ジャジャーン! お待たせしました! みんなのアイドル、戸斧ちゃんだよ☆ 一回戦に出るみんな、準備は良い?』

 鳴っているベルよりも大きい音量で召集所内に放送された音声は、壁に設置されたモニターから流れいきているようだった。

 その後、モニターの映像が映り、戸斧が姿を現した。

『いるねいるね。みんな準備万端だね! という訳で早速試合を始めたいんだけど、リーダーはもう決めてくれたかな?』

 勇貴はそういえば、と言う様な反応を見せて思い出した。

『リーダーになる人は、ウェアのエンブレムの裏に付いているボタンを押してね!』

 着ているウェアの左胸の辺りに、校章を模したエンブレムが付けられていた。

 勇貴はその裏側を確認すると、小さな突起を見つけた。これがボタンなのだろう。

「うちは佐伯さんがリーダーですよね?」

 勇貴は部長である佐伯に確認した。

「まぁ、必ずしも僕でなければならない理由はないけどね。市浜くん、やっても良いよ」

「いえ、俺には無理ですよ」

 勇貴は苦笑いで答えるしかなかった。

「じゃあ仕方ないな。今回は様子見と言うことで僕がやるよ」

 結構本気でガッカリしながら佐伯はそう言うと、自分のエンブレムのボタンを押した。

『全チームリーダーの確認をしました! それでは! 第一試合を始めます! 選手は所定の位置に集合してください!』

 そう言って戸斧を映していたモニターは消えた。

 森林、鉱山、凍土のステージで戦う十二組のチームは、それぞれ徒歩で各ステージに向かった。

 奈落ステージへの移動手段は浮遊ポートなので、勇貴たちはその上に乗って待機する。

「おう、緊張してんのか?」

 杉松が、腕で勇貴の首を絞めながら話し掛けた。

「してまふ」

 思いのほか首が締まって上手く喋れない。

「一年はうちら上級生の戦いを見てな。心配することはなにもないさ」

 笑みを浮かべながら、しかし目つきは真剣な眼差しで、杉松は勇貴を励ました。

「珍しく良い事言うじゃん」

「うるせ」

 からかった佐伯と、照れ隠しに突っ慳貪に勇貴の首から腕を放しながら言った杉松。

 そんな二人の姿を見て、勇貴は自然と緊張が和らいだことを自覚した。

 そうしていると、浮遊ポートの下部に装着されている魔法石が輝いて、浮遊ポートは浮上しだした。

 ゆっくりと召集所を出て競技場に入ると、歓声が聞こえた。八千人収容可能の空間に、全校生徒合わせて五百数十名しかいないので少しくぐもって聞こえているが、これだけの衆人環視の中に晒されていると思うだけでも、勇貴は緊張を思い出してしまった。

 しかし周りを見てみると。全員が平然としていた。

 佐伯と杉松は三回目の桜嶺祭。最後の桜嶺祭でもある。この大会に思うところは幾らかあるのだろうか。凛として立つ二人からは楽しそうな表情しか窺えない。

 日向は占い魔法に使うカード――タロットカードのようなもの――を何枚か取り出して、俯いて凝視している。常に無表情の日向からは何の感情も読み取れなかったが、耳が少し赤いようだ。

 そして湊。四月からの授業で覚えてきた魔法を試したくて試したくて仕方がないようだ。

 肥っているけど。

 勇貴は、せめてそんなチームメイトの横に立つのに相応しい表情を作ろうと、胸を張り、笑顔を見せようとしたが完全に引き攣っている。

 やがて、浮遊ポートは奈落ステージに到着した。第一試合の各部活は、奈落ステージの四隅の足場でそれぞれ待機している。

 魔法大戦部の位置から見て、左が魔導飛行部、正面が魔法射撃部、右が魔法忍術部の配置になった。

 奈落ステージは端から端まで遮るものが完全にないため良く見える。

『さぁ、一回戦第一試合に出場する、全十六チームが出そろいました! みんな戦闘準備は良いかな!? 後六十秒で始まるよー!』

 上空で、またもゴンドラに乗った戸斧が他のステージを行き来しながら、実況を始めた。

 その声に、慌てて準備を始める奈落ステージの面々。

 魔法大戦部では特に準備が必要な魔法を使う人間はいなかった。が、

 魔法射撃部は腕の二倍程ある長さのライフルを用意し、

 魔導飛行部は骨だけの翼の様な装置を装着し、

 魔法忍術部は黒ずくめのジャパニーズニンジャの服を着ている。

「ちょぉっと! みんなスゲーもん持ち出してますけど! 武器! 羽! 忍者!」

 勇貴は、対戦相手の持参物に難癖をつけた。

「落ち着いて落ち着いて、ライフルは魔法弾を飛ばす道具だし、あの翼は空中戦を得意とする飛行部の魔法具だし、あの忍者は……、なんだろうね?」

 どうどうと勇貴を御しながら説明を加えた佐伯だったが、最後は首を傾げて呟いた。

「きっと形から入る主義なのよ」

 湊がどうでもいい解説をし、

「魔法ウェアの被ダメ判定に誤差は出ないのかな? でも確かにルールでは防具の使用は禁止されてなかったし……」

 佐伯は真剣に考えた。どうやら生徒会が設定していたルールの抜け穴を突いたらしい。

「もっと確認してよぉぉぉおおお!!」

 と勇貴は頭を抱えながら、心の中で絶叫した。でも声に出ちゃったかもしれない。

「まあまあ、来年の課題にしておきなよ」

 と勇貴を励ました佐伯だが、ポイントが少しばかりズレている。

『さぁ、準備も整いましたね! 試合開始のカウントダウンが始まります! 十! 九! 八!』

 取り乱している魔法大戦部をよそに、試合が始まってしまう。

『七! 六! 五! 四! 三! 二! 一!』

 会場中が一緒になってカウントダウンをして、

『ゼロ!!』

 スタートの号令とともに、カン、と言う分かりやすい音が聞こえた。

 入場時とは打って変わって、会場を響かせる歓声が沸いた。その騒音で勇貴は我に返る。

(と、とりあえず一回戦。湊は傍を離れるなって言ってたな)

 と完全に他力本願な考えを持つ勇貴。実際、一対一で戦闘になれば即刻離脱することになるのだろうが。

 杉松、日向、湊は、それぞれ魔法射撃部、魔法飛行部、魔法忍術部の方を向いて警戒している。

 まず最初に動きがあったのは魔法射撃部だ。ライフルをこちら側にまっすぐ構え、既に発砲を開始している。

 しかし、こちら側に被弾している様子はない。何らかのトラブルか、杉松が防衛しているのか、或いは狙いの誤差を修正しているのか。

 そのすぐ後に、魔導飛行部と魔法忍術部が同時に動いた。

 魔導飛行部は、骨組みの翼に光の膜を張って上空へ舞い上がると、魔法忍術部も大きな凧に乗ってそれぞれ飛び上がった。

 その直後、魔導飛行部と魔法忍術部の計十二名は、奈落の底から噴き出した突風に煽られバランスを崩した。

 ゆらゆらと制御を失って、三々五々に散って「あーれー」と叫びながら奈落の底に消えていく。

「…………」

「…………」

『…………』

 会場中が静まり返った。

 遠くで、他のステージで起きているのであろう爆発音だけが、虚しく響く。

『えー……。魔導飛行部、魔法忍術部、リーダーが倒されたので脱落です』

 戸斧が、伝達事項を告げるようなトーンで実況した。

 それぞれ相対する気概でいた湊と日向も、腑に落ちない様な、呆気に取られた様な表情で、口を開けたまま事の顛末を見送っていた。

「ラッキー。戦わずして二チーム落ちてくれたよー」

 佐伯が指を鳴らして喜んだが、

「え? もっと派手にドンパチやったりする大会じゃないんですか?」

 勇貴は、こんなのは想像していた桜嶺祭じゃない。と言わんばかりの疑問を投げつけた。

「まあ今年は魔法通信部にジャックされた桜嶺祭だからねー。全ての責任は向こうが被ってくれるよ」

 と、ケタケタ笑いながら答えになっていない答えを返した。

 緊張感が一気に消えた勇貴だったが、不意に杉松が右手を振り回した。

「おー。当てるようになってきたじゃねぇか」

 杉松がまた右手を振りながら、楽しそうに言った。

「……? あ、魔法射撃部の事を忘れてた」

 佐伯が本気で言っていたのが少し心配だったが、勇貴はそちらの方を見遣った。

 魔法射撃部は、奈落から吹き上げる風に対応を示しつつあるらしい。

 やっと一人が、魔法大戦部の面々に当たるような射撃に成功した。

 しかしそれも、杉松の右腕の一振りで消えてしまう。

「あー。魔法弾に雷属性と鋼属性を複合したね。磁力と重力を含ませて、風に飛ばないようにしたんだ。やっぱりスゴイなー彼女は。僕には複合魔法は出来ないから」

 佐伯が解説をした。雷属性と鋼属性は精霊混成四属性(混成属性)の属性である。

 精霊魔法の属性は十あり、精霊純正四属性(純正属性)は火水風地、混成属性は純正属性の相反しない、隣り合った属性の混成で、雷鋼氷木を指す。

 習得の難易度は、純正属性より混成属性の方が難しい。そして属性の複合の難易度はさらに上だ。

 魔法射撃部の部長、菱山陽向(ひのやまひなた)は佐伯と同級生。三年にもなるとA組の生徒は皆、魔法センスの鬼みたいになるらしい。

 このような高等魔法を使えない他の魔法射撃部のメンバーは、最早攻撃を諦めている。

「だけどその分威力は落ちるよね。李音でも彼女の銃撃を防げる位だもん」

「うるせ。うちもまだ本気は出してないっての!」

 杉松は左右に腕を振るいながら、不服そうに声を荒げた。

 勇貴は杉松が何をしているのか注意深く見てみた。

 杉松の右手首に巻かれたブレスレッドから鎖のようなものが伸びている。それが杉松の動きに合わせて振られることで、魔法弾を弾いているらしかった。

「だって李音、すぐには本気出せないでしょ」

 佐伯はここぞとばかりに杉松をからかった。菱山の射撃制度が上がってきていて、杉松は余裕を失い始めている。

「今、溜めてるから、待ってろ!」

 二言三言の間に、七発の魔法弾を鎖で弾いている。菱山の猛攻に少々焦りを感じた湊が、

「私も攻勢に出た方が良いかしら?」

 と佐伯に尋ねたが、

「あーいいや。とりあえず李音に任せておいて。李音が()られたらお願いするから」

 やんわりと断られてしまった。

「分かりました」

 そう言われて出しゃばる程湊は子どもではない。先輩の戦闘を見て勉強させてもらう気持ちに切り替えて待機した。

(そう言えば、杉松先輩の魔法、見たことなかったな)

 勇貴は、魔法大戦部の面々――「筑紫さん」除く――の魔法は既に一度以上見たことがあったが、杉松の魔法は今回初めて見る。

(鎖で魔法を弾くだけではないだろうし、「今溜めてる」って言葉は、魔法の儀式でもしていたのか?)

 憶測を深める勇貴だが、魔法とは無限の法則を持つものなので、実際に見るまでは答えなんて出せるものではない。

「よっし! イケる!」

 遂には即席の盾のように鎖を体の前で回転させて、魔法弾を防いでいた杉松の準備が整ったようだ。

 そのまま鎖の盾を回しながら、

循環(サーキュレーション)、オン」

 と唱えた。

 すると、杉松の胸のあたりが輝きだした。正しくはペンダントの一つが。

 回していた鎖をウェアの中に収納して、杉松は魔法射撃部に向けて走り出す。

 奈落から吹き付ける風を物ともせず、一足飛びで足場を渡っていく。

 近づいてくる杉松を見て焦ったのか、既に射撃を辞めていた魔法銃撃部の面々は、掠りもしない弾を杉松に向けて乱射した。

 しかし菱山だけは長身ライフルを棄て、小銃を二丁懐から取り出して迎撃態勢を取った。

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 杉松は雄叫びをあげて最後の足場から飛んで、魔法射撃部の陣取る足場にたどり着いた。

 着地の隙を狙って菱山は二丁の拳銃で杉松を狙った。しかし着地と同時に転がり込んでそれを回避した杉松は、そのまま数回転して、近くにいた眼鏡をかけた男子生徒の元まで転がっていった。

 起き上がり様に男子生徒の腹を拳で突く。魔法繊維で出来たウェアは、物理衝撃もある程度緩和したが、一定ダメージを受けたと判定されて、死を意味する信号弾が飛び出した。

 杉松は倒した敵に目もくれずに次の敵を探した。近くに居たそばかすの目立つ女子生徒と目が合い、女子生徒は恐怖に引き攣った表情を浮かべた。

 お粗末にも長身ライフルで杉松を狙って魔法弾を撃つが、極度の緊張とライフルの重量で魔法弾はあらぬ方向に飛んで行く。

 杉松はその女子生徒に向かって走り出し、拳を振り上げる。

 拳が女子生徒に届く直前、杉松と女子生徒の間に割って入ってきたスポーツ刈りの男子生徒に、杉松の攻撃はガードされた。

 そばかすの女子生徒はその場でへたり込んでしまった。

 男子生徒はライフルを盾に杉松の拳を防いでいる。

 風属性の使い手である杉松は、体に薄く纏わせている風の膜に魔力を込めて弾いた。

 その勢いに押され、大きく両腕を上に持ち上げられた男子生徒は、そのまま仰向けに倒れ込んでいき……、杉松は、そのすぐ後ろにいた菱山と目が合った。

 菱山の持つ二丁の銃口はこちらに向けられていた。



循環(サーキュレーション)、オン」

 そう言って駆け出して行った杉松の後ろ姿を、魔法大戦部の四人は見送ることになった。

「杉松先輩はどんな魔法を使うんですか?」

 湊が佐伯に尋ねていたので、勇貴は聞き耳を立てる。

「李音は魔力レベルは低いんだ。だからああやって、他人の魔力を魔法具に吸収させて、一時的に自分のものにして魔法を使うんだ。だから準備に時間がかかるのが難点だね。まあそれだけじゃないんだけど、いずれにしてもすぐには魔法が使えない奴なんだ」

 佐伯が昔から知っている杉松の戦い方の説明をした。続けて説明を加える。

「基本的には風属性を使うんだけど、吸収した魔法の属性も使えたりするね。今回の相手の魔法弾は、属性効果付与程度の力しか込められていなかったから、多分使えないかな」

「他人の魔力を吸収して、蓄える方法があるんですか!?」

 勇貴は驚いて佐伯に尋ねた。

(もしそんな方法があるなら、俺も……)

 魔力レベルゼロで、魔法の使えない勇貴には、それこそ喉から手が出るほど欲しい技術だ。

「でも一時的みたいだよ。長くて数分とかじゃないかな?」

 佐伯は、勇貴の想いには気付かずに淡々とした声で言った。

(でも蓄魔力の可能性が無いわけじゃないことは杉松先輩が証明している。あとは研究を重ねていけば……)

「あ……」

 唐突に日向が叫んだ。叫びと言っても元々声が小さいので、呟いたようにしか聞こえない。

 日向は杉松の行った先を見ていた。勇貴も視線をそちらに向けると、倒れかけている男を挟んで杉松と菱山が向き合っている。



 菱山陽向は迷うことなく引き金を引いた。

 ここまで杉松に陣地に踏み込まれているので、この一撃で決めなければ魔法射撃部に勝ち目はない。

 最高速度で射出するために火属性、最高威力で叩き込むために鋼属性、必中させるために雷属性を複合させた。

 三つの属性を複合させる荒業を難なくこなす菱山は、自分の魔法の能力と射撃の腕を、過信でも慢心でもなく理解していた。

 この二撃で杉松を倒し、次に学校最強魔法使いの佐伯の鼻を明かしてやろうと画策していた菱山は、杉松がこれを避けることは想定していなかった。

 だから、杉松がいきなり消えて魔法弾を回避した時は、状況の把握が出来なかった。

 二発の魔法弾は、虚しく空を切る。

 菱山は杉松の行方を探そうと、左右を見遣ったが、彼女の姿は見当たらない。

 ふわ、とつむじ風が舞い上がって、菱山の前髪を揺らす。

(風?)

 杉松は風属性魔法の使い手。下から舞ってきた風。

「上か!」

 菱山が上空を確認すると、真上十数メートルの位置に杉松が居た。

 髪の毛が燃えるような緋色に変化しているが、それ以外は数瞬前と変わらない。

スカイダイビングをしているようなうつ伏せの状態で、こちらに両手を翳していた。

 両の手には圧縮された風の球が一つずつ。

 菱山は右手の銃を持ち上げて杉松を狙おうとしたが、間に合わない。

魔風双神砲(ツイン・ウインドネス)!」

 杉松の両手から放たれた風弾は、高速で菱山の足元に衝突した。

 圧縮されていた風が、爆風となって解き放たれる。

 菱山と、その周囲に居た魔法射撃部は全員吹き飛ばされた。

『――――!!』

 悲鳴さえもかき消して撒き散らされた爆風は、勇貴たちの元にも届いてきた。

 魔法大戦部の四人は、風を避けるために腕で顔を覆って風がやむのを待った。

 風が止み、視線を前に向けると、髪の色が戻った杉松が一人立っているだけで、後には誰も居なかった。

『奈落ステージ、試合終了ー!』

 不意に戸斧戸春の実況が聞こえた。いや、状況に応じてあちこちのステージで実況していたのだが、戦闘中のステージにはシャットアウトされていたようだ。

 戸斧の実況を機に、会場の歓声も勇貴たちに届いてきた。

『一回戦第一試合! 最速勝ち上がりを決めたのは、やはり! 魔法大戦部だー!』

 最速、と言うことは、他のステージではまだ戦闘が続いているらしい。

「やぁ、どうも、どうも」

 佐伯は完成に応えるように周囲に手を振っている。

「もう終わりなんてつまんないわ。でも初戦は何事も無くて助かったわね」

 湊が独り言ちて、後半は勇貴に話しかけてきた。湊の後ろには、観衆に晒されて顔を赤くしている日向が隠れていた。

「まぁ何もしなさすぎたけどね」

 勇貴は逆に申し訳ない、と言った表情で、小声で返した。

 他のステージで動きがあったのか、既に観客の視線はスクリーンを向いている。

 試合終了を受けて、入場時に乗ってきた浮遊ポートが再び飛んできた。

 それに乗って、杉松を迎えに行くと、召集所とは逆の方向に飛んで行った。






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