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超能力者の魔法大戦  作者: 姫浴衣
12/13

異世界のゲート


 勇貴と別れて、杉松と日向と合流した佐伯は、杉松の傷が癒えていることに安堵した。

 癒えているどころか、元気いっぱいだったので、すぐさまこれまでの顛末を話して、勇貴の援護に向かうべく、三人は上空に浮かぶ巨大な魔法陣を目指して走り出した。

 草原に付いたとき、湊が倒れていくところを目撃した。

「ォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

 勇貴が雄たけびを上げて男を殴り飛ばしたのを見て三人は唖然としたが、その場に残された湊を救護すべく駆け寄った。

 佐伯が大地の精霊の力を集め、その魔力を使って日向が治癒魔法をかけた。

 水属性と地属性の精霊の力を複合して、蘇生魔法とすら呼べる強度になった治癒魔法は、湊の意識を回復させるのに時間はかからなかった。

 遠くで断末魔の様な悲鳴が聞こえたと思ったら、勇貴が空を飛んで戻ってきた。






15


「ゲートを開いた魔族は!?」

 勇貴の超能力を先に知っていた佐伯は、その姿を見て驚きもせず、勇貴が着地するのも待たずに聞いた。

「倒しました。 湊は!?」

 勇貴は、佐伯を一瞥もせず、地に降り立って湊の元に駆け寄った。

 杉松と日向は、勇貴のその動作――空を飛んできた――に驚きを隠せなかった。

「横川さんは無事だよ。日向さんが治療した」

 口を開けたまま、何も言えなかった日向に変わって、佐伯が答える。

「勇貴、」

 湊が勇貴の名前を呼んだ。

血色も良く、傷跡も残っていない湊の姿を見て、勇貴は安堵した。

「それより、魔族は倒したんだよね?」

 佐伯が再度確認する。

「はい」

「それならなぜゲートが閉じていない!?」

「え?」

 勇貴は空を見遣る。煌々と輝く魔法陣が、今もなお魔族を排出していた。

「確かに、あいつは倒しました!」

 ゲートの開ける魔族――アガーテを倒せば事件が終わると思っていた勇貴は、再び緊張した面持ちで言った。

「もしかすると、魔法陣が発動すれば、術者の魔力供給が必要のない型の、魔法かもしれません」

 日向が、魔法陣を分析して言った。しかし、

「いや、もしかすると、魔界の空間魔力を使って、ゲートを開き続けているのかも……」

 湊が日向の意見を否定した。これには勇貴も同意見で、

「そうかもしれない。でもそうなると、ゲートを閉じる方法は……」

「ある」

 勇貴の発言に被せて、佐伯が言った。

「昔、佐伯流精霊魔術の創始者の生きていた時代。魔族との戦争があって、開いたゲートを閉じたと言う文献を読んだことがある」

「なら、早くゲートを閉じようぜ! 方法は!?」

 杉松が佐伯を急かした。

「心の通った四人がそれぞれ火、水、風、地の四つの属性の魔法を魔法陣に注げば、ゲートは閉じる、と書かれていた。でも、」

 一度言葉を区切り、躊躇いながら、

「魔族がゲートを超えている間は、閉じることが出来ないんだ。ゲートの行き来が無い状態を作り出さなきゃ……」

 佐伯は苦虫を噛み潰したような表情で語った。

 つまり、ゲートを閉じるには、魔族の進出が止むのを待つか、

「魔族をゲートの内に封じ込めていれば良いんですね?」

 勇貴は、二つの選択肢の内の一つを選んだ。

「俺が、この能力(ちから)で魔族をゲートに押し込めます。その内に、皆はゲートを閉じてください」

「待ってくれ! そんなことをしたら」

「そんなことをしたら、あなたが帰って来れなくなる!」

 佐伯と、湊の悲痛な叫びが交錯する。

 そう。この方法を選んだら、魔界で魔族を抑える勇貴は、ゲートの向こうに取り残されてしまうということ。

「今はそれしか方法が無いんだ! 湊!」

 勇貴は湊を怒鳴りつけた。

「でも、でも!」

 湊は涙を流しながら、言葉に出来ない駄々をこねた。

 しかし、勇貴の気持ちは決まっている。他の選択肢は選ばない。

 湊の肩に手を置いて、優しい声で勇貴は、

「頼むよ、湊」

 と願った。

 すすり泣き、俯いていた湊は、その暖かい手から全ての想いを受け取り、コクリ、と一度だけ頷いた。

「ありがとう」

 勇貴はそれだけ残し、空を見据えて飛び上がった。

 次々と襲い掛かってくる魔族の群れを一殴りで消滅させ、魔法陣の元までたどり着く。

 魔法陣に蓋をするようなイメージで魔族を押さえつけようとしたが、やはりゲート全域までカバーしきれない。

 勇貴は地上の湊たちを一瞥し、優しい笑みを浮かべてゲートの中に入り込んだ。

「一匹残らず、ここは通さない!」

 勇貴の死闘が始まる。ゲートを超えようと迫ってくる魔族を、その拳で次々と屠る。

 後ろでゲートが閉じていく。ゆっくりと、確実に、ゲートはその面積を小さくしていった。

 魔族も人間界の潤沢な魔力を手に入れようと、必死の抵抗を見せた。しかし、勇貴の想いに勝てるものなどいない。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 自分を奮い立たせるような、あるいは、子供が駄々を捏ねている様な悲壮な叫びが響く。爆発的な力の奔流を受けて、魔族は全て消え去った。

 やがて、

 光が閉ざされる。

 ゲートが完全に閉じた。

 暗闇の中――人間界と魔界との狭間の空間に――、勇貴は一人だけ取り残された。

 もう、ゲートが開くことは、ない。




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