ウラミ
これは結果シリーズ第二弾です。
第一弾の「隠蔽の輪廻」を見ていただけるとより楽しめます。
登場人物
読み仮名紹介(読みにくいという事なので)
阿山 宕 (あやま すぎる)
今作の主人公
掬 優羽 (むすび ゆう)
今作のヒロイン?
有楽堅 穂蛆 (うらかた ほうじ)
情報通の宕の友人
ではお楽しみください。
1・憂鬱な朝
五月二十日(日)
携帯の目覚ましの音で目が覚めた、時計を見ると九時をさしていた。
俺は目を覚ますために洗面台で顔を洗っていると三歳下の弟、文二が来た。
「だらしねぇなー、もちっとオシャレとかに気を使えよ」
俺はタオルで顔を拭きながら
「うるせぇ」
文二は洗濯機に入っていた俺の服を取り出して
「なんだよこれ、書かれている英語、文法おかしいし、それに」
文二は俺の顔を指差して
「なんだその顔、もちょっとシャキっとしろっての」
俺は髪を整えながら
「お前も似たような顔だろうが」
「そうだとしてもなんだそのはねてるかどうかわかんないような髪」
俺は文二の硬そうな髪を指差して言った
「お前も同じじゃねぇか」
「これは固めてんだよ」
そう言って文二は派手なパーカーを着ながら玄関に向かった。
「どっか行くのか?」
俺は顔だけ出して聞いた。
「ああ、愛する人の所にいってくらぁ、兄貴も早く作れよ」
そう言って文二は出て行った。
「生意気な」
そういって歯ブラシを取る、鏡の自分の顔が見えた。
はねているかどうかわからない髪、微妙に一般より細い目、パッとしない顔だ。
俺は溜息をついた。
「憂鬱だ」
この顔のせいじゃ無い、この憂鬱が始まったのは数日前、金曜日だった。
2・憂鬱の種
中間テストがやっと終わった 五月十八日の金曜日、その事件は起きた。
金曜日俺が学校に登校すると穂蛆が駆け寄って来た。
「また噂だよ」
「またか、事件とかじゃねぇだろうな」
穂蛆は間を置いて
「残念、今回も事件だね」
穂蛆は更に間を置いて
「またやるかい? 推理」
俺は溜息をついて
「だろうなぁ、てか嬉しそうだな」
「そう見える?」
「ああ、嬉しそうだ」
穂蛆は大げさな動きをしながら
「宕は推理が楽しくないのかい?」
俺は少し考えて
「もう少しのんびり出来たら、楽しいだろうな」
穂蛆は苦笑いで
「全くだ、のんびりしたらもっと楽しくなりそうだ」
俺は自分の席に座って
「で、どんな噂なんだ?」
「まあ、簡単な話さ、学校の数箇所にたくさんの実が置かれていたって話」
俺は水筒のお茶を飲んで
「それ、事件か?」
穂蛆は止まることなく続けた。
「事件性はそこじゃあないんだよ、その実が最初に見つかったのは三日前、これで三度目なんだよ」
「それは事件じゃなくてイタズラじゃねぇか?」
「何言ってんのさ、これについて聞かれたよ、掬さんに」
俺は大きく溜息をついて言った。
「そりゃあ事件だ」
3・消された花
月曜日俺達はばらまかれた実を見に行った。
実を少し見て穂蛆が口を開いた
「これは三連木の実だね」
「三連木? 何か来たことあるような」
「三連木ってのはね、過去三年の生徒会が卒業記念で埋めた木の事だよ」
「そうだったか、三連木って確か運動場の端だっけか」
「そうだよ」
「じゃあ放課後行くか」
穂蛆は溜息をついた
「それは無理だよ」
「なんでだよ」
「忘れたのかい、今は準備期間だよ」
「あ、そうか」
準備期間というのは体育祭の準備に当てられる日でその期間は多くの決まりがある。
穂蛆はメモ帳を開いて自慢げに決まりを話し始めた。
体育祭準備期間規則
・大きな荷物等が移動して危険なため部活動を禁止とする。
・準備等で放課後学校に残る場合生徒会に申請すること
・体育の授業はすべて保健となる
・運動場の使用を禁止とする(準備は可)
それを聞いて俺は
「なんかきついな、そこまで制限するか?」
穂蛆はまた溜息をついて
「去年不正があったからね」
「そうなのか?」
「部活対抗リレー、部活のプライドがぶつかり合う戦いだからね、不正があったんだよ」
去年の体育祭で不正があったらしいが今回の事件とは関係なさそうなのでスルーさせてもらう。
「どうすっかなー」
「僕が見てくるよ」
「お前が? またコネでも使う気か?」
穂蛆は少し弱々しい笑顔で
「さすがにそこまでの乱用はしないよ」
「じゃあどうすんだよ」
「生徒会の手伝いを頼まれていてね、ついでに見てくるよ」
「じゃあ頼んだ」
「頼まれましたっと」
翌日、教室に入ると机で穂蛆が何か考えていた、俺は穂蛆に近づいて
「どうした」
「ああ、宕、実は」
穂蛆が三連木を見に行くと一番新しいもの、去年の生徒会が植えた木がおられていたらしい
俺は溜息をついて
「事件が増えた」
穂蛆は笑顔で
「いいじゃないか、手がかりも見つけた」
「手がかり?」
穂蛆は一枚の少し厚い紙を出して
「ああ、名札を見つけたよ、発行日は一ヶ月前だ」
「名札!? 事件終わったじゃねぇか」
「それがこの前の雨でインクのほとんどが落ちていてね」
確かに名前は見えなかった、かろうじて見えたのが{ニ}という文字だけだった。
俺は穂蛆に名札を返して
「二が付く名前のやつが犯人の可能性が高いな」
「普通に考えればそうだろうね、しかも体育祭準備員だろうね」
「なんでだよ、準備期間前に倒されていたかもしれないだろ」
穂蛆は驚いた様子で
「あ、ああ、そういう考えもあるね」
「お前らしくないな」
そういうと穂蛆は思い出したような仕草で
「いや、大丈夫だよ」
「ん?」
「確か準備期間に大清掃があったはずだよ、そこで発見されてないんだ、準備期間で間違えないよ」
確かに準備期間始まりの日に大清掃があった。
「でもその時に切ったってのは」
「それは難しいね、あの木を切るほどの時間は無かったはずだよ」
そう言われればそうだ、大清掃は約十分、ばれずに木を切るのは難しい。
「ならどうやってアリバイをとるかだな」
4・手がかりの実
その日の昼休み、俺は図書室に行った、受付にいたクラスメイトに近づいた。
「庄さんいる?」
「庄さん? ああ副部長か、ちょっと待ってて」
しばらくして図書部のスペースから庄さんが出てきた。
庄さんは爽やかな笑顔で
「ああ、宕君か、どうしたんだ? また事件関連かい」
「はい、そこで少しお願いがありまして」
「なんだい」
「ちょっと事件関連で放課後の調査が必要になりまして、図書部の手伝いという形で参加させてもらえませんか」
庄さんは少し考えて
「いいけど二つ条件がある」
「なんですか」
「手伝いの名目なんだ、簡単な仕事はしてもらうよ」
「はい、でもうひとつは」
「今回の事件を記事にさせてもらえないかな」
俺は少し考えて
「いいですけど犯人も俺も全員匿名でお願いします」
「わかった、じゃあ放課後にここに来てくれ」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げて図書室を出た。
放課後俺は約束通り図書室に行った、穂蛆は学年の代理があるらしい。
「こんにちはー」
いきなり俺の目の前に紙の束が突きつけられた。
庄さんは笑顔で言った
「早速手伝いよろしく」
手伝いはいたってシンプル、手書きの原稿とパソコンを使ってコピーした物の比較、間違えさがしだった。
約30分後今日の分の仕事を終わらし捜査、しかし何も見つからなかった、そして翌日の放課後。
「穂蛆、今日はどうだ」
「ごめん、今日も友達が休んでてさ、一人で頼むよ」
そんなわけで今日も俺は一人で図書室に入った。
入ると庄さんが近づいてきた。
「宕君か、昨日は何か見つかったかい?」
俺は首を横に振った
「なんにも見つかりません、誰が残っているかさえも分かってませんし」
「そう言うと思っていた、今日はこの資料を頼む」
そう言うと庄さんは笑顔で{居残り生徒一覧表}と書いてある資料を差し出して出て行った。
「ありがとうございます」
そう言って俺は作業に入った。
居残り生徒一覧表
・クラス
1年 栄山祐 天笠友希 川崎龍寺 晴咲桜 田中次郎
2年 有正光太郎 浦井久美 有馬浩二 佐々木二花 新島前和
3年 浜崎阿由 秋野楓 老荘麗華 佐藤優 奏多未来
・部活
図書 上地汐里 心礎庄 前川篤 阿山宕
家庭科 西条縫 東山甲斐 間宮新太 掬優羽
新聞 片津正 神谷茂 加咲豪介
そこまで読んで俺は固まった。
「掬……」
優羽と言い終わる前に図書室の扉が開いた。
「すいませーん、心礎さんいますかー」
入ってきたのは優羽だった、部員の一人が答えた。
「副部長ならさっき出かけたよ」
「そうなんですか、分かりました……」
そのまま帰るかと思っていたが優羽は俺の方向に近づいてきた。
「宕じゃーん、何してんの?」
「手伝いだ、じゃますんな」
「なんだ、手伝い……ちょっとそれ見せて」
優羽は俺が見ていた資料を指差した。
「ダメだ、これは図書部のなんだよ」
「ケチ」
「ケチでけっこう」
「じゃあさ、漢字の二が付く人だけ教えて」
「それも……」
ダメだ、と言いかけて俺は気づいた、俺は優羽の方向を向いて
「なんで漢字の二なんだよ」
「ん?ちょっと事件を調べててね、証拠の品が見つかったから」
「証拠の品?」
「うん、名札なんだけどね、ほとんど文字が消えてたの」
「そうか、でもダメだ」
そう言うと優羽は得意気な顔で
「もういいよ、有馬浩二さんと」
「お前いつの間に」
いつの間にかメモを初めていた優羽の手が止まった
「佐々木……なんて読むの?」
「ん?」
俺は佐々木二花と言う文字を見て気づいた、しかし真顔をなんとか保って。
「ああ、これは訂正だな、正しくは三花だ」
「じゃあ候補から外さないと、じゃね」
そう言って優羽は手を振って出て行った、俺は溜息をついた後に作業に取り掛かった。
その日、俺は犯人候補の有馬浩二のアリバイを確かめずに帰った。
5・表見
翌日の登校時、俺は優羽を見つけて話しかけた
「昨日はどうだった?」
「ダメだった、完全にアリバイがあったー」
優羽の残念そうな顔が笑顔に変わって
「宕も興味出てきた?」
俺は首を横に振って
「いや、なんとなくだ」
「なんだ、面白くない」
そういう会話をしているうちに学校についた
「じゃあな」
「うん、興味がわいたらいつでも言ってねー」
「絶対ない、てかお前の興味がなくなれ」
そう言って俺は学校に入った。
放課後俺は図書部にて仕事を終わらして廊下に出た。
「やあ、待っていたよ宕」
穂蛆が廊下に立っていた。
「ああ、手伝いはもういいのか?」
「大丈夫だよ、もう復帰したみたいだ、どこに行くの?」
「犯人の追求だな」
穂蛆は不思議そうな顔をして
「証拠無しで?」
「それを見つけるんだよ、ちょうど協力がいるんだよ」
「?」
「証拠を見つけに行く」
俺は新聞部の協力を得て去年の新聞をすべて見尽くした、俺達は生徒会の活動について書かれた記事をすべてコピーしてもらった。
新聞部を出ると穂蛆が質問してきた。
「なんで生徒会活動について調べたんだい?」
「俺は犯人が去年の生徒会に恨みを持っていると思っている、三連木は生徒会の残したものだからな」
「確かにその可能性は高いね、じゃあこの中から有馬浩二さん関係の物を探すんだね」
「ん?犯人は有馬浩二じゃないぞ?」
「でも二がつくのは一人だけじゃあ」
「それな、漢字の二じゃないんだよ、カタカナのニだ」
「はぁ?」
そんな簡単な……と穂蛆が驚いているのを見て俺は少し笑った。
その後名前にニがついてアリバイのない新島前和を追い詰めた。
「証拠は以上です」
新島は少し黙った後に容疑を認めた。
下校時、穂蛆が笑顔で
「やったね宕、今回も解決したよ」
俺は首を横に振った
「いや、この事件はまだ終わっていない」
俺は少しカッコつけて言った。
6・ちゅうかん
俺がそう言うと穂蛆は予想どうりの反論をしてきた。
「終わったじゃん、動機は生徒会活動で取り締まられた恨みだよ」
「そっちじゃない、根本の話だ、実をばらまいた犯人を見つけていない」
「わすれてた……」
穂蛆の顔が驚きと動揺の顔となったのを俺は初めて見た。
翌日の放課後、俺と穂蛆は図書室に向かっていた、あの居残り生徒の一覧を見せてもらう為だ。
「すまん、トイレ行ってくる、先に行っててくれ」
そう言って俺はトイレに行き用を足した、トイレと出た瞬間図書室の方向から声が聞こえた。
「大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
図書室の前で穂蛆が女子生徒に手を差し出していた、扉の前でぶつかってしまったようだ。
穂蛆は少し先に落ちていた本を拾った、恐らく女子生徒の物なのだろう、本を拾った穂蛆は少し本を見つめて言った。
「これ、面白いよね」
女子生徒は本を受け取って
「はい、とてもおもしろいです」
「ところでその本の{中}は読んだのかい?」
女子生徒は目をまん丸にして
「中、ですか?」
穂蛆はいつもの砕けた顔で
「この本は{上、中、下}があるんだよ」
「そうなんですか、借りられていたんですね」
穂蛆は少し考えて
「その本どの本棚から借りたんだい?」
「確か神話だったと思います」
「ああ、やっぱりね」
女子生徒は首を傾げて
「どういう事ですか?」
穂蛆はいつもの自慢げな笑顔で
「この本は今週のイチオシに選ばれてるからね、イチオシのコーナーにあるはずだよ」
「そうだったんですか、ありがとうございます」
そう言って女子生徒は図書室に入って行った、俺は穂蛆に近づいて
「知り合いか?」
「え? ああ宕か、知らないよ」
「お前人見知り全然ないんだな」
穂蛆はウインクして
「だから情報があつまるのさ」
俺はウインクをスルーして
「そういやさっきの本神話とか言ってたけどお前神話なんて読むのか?」
「ああ、あれは{ライト神話}っていう本で様々な神話をアレンジした軽々読める神話短編集だよ」
「中はよく忘れられるのか?」
穂蛆は首を横に振った
「いや、あとがきに書いてあるからあんまり忘れられないよ」
「なるほど、俺もこんどよんでみるか」
穂蛆は少し驚いた顔で
「宕って小説とか読むっけ?」
「ああ、最近は読んでなかったけどよく読まされてたからな」
穂蛆は首をかしげて
「読まされた?」
「ああ、優羽にな、推理小説をたくさん読まされた」
穂蛆は少し笑って
「昔から振り回されていたんだね」
俺は少しむっとして
「昔からってなんだよ」
穂蛆はいたずらな顔で
「いまだって振り回されているじゃないか、掬さん関係で推理をしている」
「優羽に振り回されているわけじゃない」
穂蛆は意味深な顔になって
「そういうことにしておくよ」
「なんだよその顔は」
「なんでもないさ」
「てかお前は表情がコロコロ変わるな」
「そうかもね」
「とりあえず振り回されてないからな」
そう言って俺は庄さんのところに行った。
7・テガカリノミ
「おい穂蛆、どうしたんだよ」
俺がそう呼ぶと
「わかったよ、今行く」
穂蛆はそう言って持っていた本を置いてこっちに小走りで来ようとした、しかし
「おっと」
穂蛆はいきなり立ち止まってポケットから携帯を取り出して
(先に行って)
という合図を出してきた、俺は指でOKのサインを出して再び歩き出した。
「ああ、特別に許すよ、ちょっと待ってて」
庄さんはすぐに承諾してくれ、資料を持ってきた。
「それにしてもまた事件でも起きてるのかい?」
「え?」
{知らないんですか}そう言おうとして気づいた、まだほとんどの人は実が散乱していたとしか認識していないはずだ。
「実が散乱していた事関連です」
俺がそう言うと庄さんは少し考える素振りを見せて
「実が散乱していた? そんなことあったっけ?」
「え? 噂になってるはずですけど」
「知らないな、もしかしたら一年生間での噂かもしれないな、はいこれだろ」
「ありがとうございます」
庄さんから資料を受け取って図書室を出た。
「ごめん宕、用事ができた、先に帰るよ」
「ああ、わかった」
そう言って俺は穂蛆と別れてから気づいた
「ダメじゃん」
俺はまだ調べることがあったのだ、一気に効率が落ちてしまった。
「仕方ないか」
俺は一人で情報を集めることにした、時間が無かった、そろそろ優羽が事件に深入りしてくる頃だろう。
俺は何気なしにポケットに手を突っ込んだ、すると何か柔らかいものが指先に当たった、取り出してみるとあの実、散乱していた三連木の実が出てきた。
「まだあったのか、シミとかついてねぇよな」
そう言って実を見ているといきなり声をかけられた
「それは学園樹の実だね」
びっくりして振り返ると細い目と視線が重なった、俺はテンションを落として
「なんだ、お前か」
「冷たいねー」
そう言って俺に近づいてきたのは、限りなく細い目に穏やかな表情、放課後限定で着ている花柄の膝まである服の右ポケットには温度計、左には湿度計、そういう変な格好をしている女、
クラスメイトで植物研究部の{植杉 井久}だ。
「で、なんだって? がくえんじゅ?」
そう聞くと植杉は目を輝かせて(ほとんど見えないが)顔を近づけて
「そう、この学校のグラウンドの端にある学校設立記念として植えられた大きな木、それが学園樹だよ」
植杉の勢いに押されつつ俺は話を戻した
「この実は三連木のものじゃねぇのか?」
植杉はさらにテンションを上げて
「そう!三連木もまた同じ、学園樹と同じ木なのだ、よく知っていたね、植物研究部に入らない?」
俺は苦笑いで
「遠慮するわ」
「まあ文化祭の時に一回覗いてよ、最高のおもてなしをするから」
そう言って植杉は内ポケット上から二番目から数枚の紙を差し出してきた、どんだけポケットあんだよ。
「なんだこれ」
書いてあったのは{フラワーカフェ割引券}
「文化祭の時に部活で出店するカフェの割引券だよ」
「もう文化祭の準備か」
「後一ヶ月半ぐらいだからね」
そう、この学校は体育祭の一ヶ月半後すぐに文化祭をはじめるのだ、これには理由があるがそれはまた今度にしておく。
俺は浮かんだ疑問をぶつけてみた
「てかカフェ?」
「そうよ、主にハーブ等を使ったティーを用意してる」
「なるほど、もらっておくよ」
そう言うと植杉は更に数枚紙を俺に押し付けて
「じゃあ何人か、穂蛆君とかに渡しといてね」
そう言って走っていった。
「何がしたかったんだ……いや宣伝か」
俺は券を財布にしまって気づいた。
「これは本当に三連木の物なのか?」
確実な手がかりが資料だけになってしまった。
6、5話「彼らの関係」
「とりあえず振り回されてないからな」
そう言って宕は図書室の奥、図書部の部室の方向に進んでいった。
付いていこうとするとある本が目に入った、僕はその本を持ち上げた。
{ライト星座}
さっきのライトシリーズの物だ
僕は宕を見て思った
(ふたご座、かな)
ふたご座、その本にあったのはお互い気づかないうちにお互いを引き立てあっていた双子の話だった、今の宕と掬さんはそういう関係なのかもしれない。
「おい穂蛆、どうしたんだよ」
宕がよんでいる、早く行かなきゃ
「わかったよ、今行く」
本を置いて僕は誰にも聞こえないような声でつぶやいた
「確かに振り回されてはいないよ、宕」
その時僕の携帯電話が鳴った
8・裏をとれ!
「御香 魅吉、出涸 筈市、津大 愛花、駒独 成、甘利 実都……」
俺は貸してもらった資料{居残り生徒一覧表}の大雑把に見た部分と{放課後生徒外出表}を隅々まで読んだ。
「外出したのは、甘利 実都、津大愛花、上地汐里、阿山宕、心礎庄、御香魅吉か、理由はっと」
俺はそれぞれの外出理由を見た。
「まず一緒にいた俺と心礎さんは消してっと、後は」
・甘利実都 買い出し ・津大愛花 場所確認 ・上地汐里 買い出し ・御香魅吉 一時帰宅
「アリバイを調べなくちゃいけないな」
俺は新聞部の名目で取材(アリバイ調査)を全員に申し出た、もちろん心礎さんの許可はとってある。
翌日全員が快く承諾してくれて二日に分けた取材が始まった。
一日目 昼休み
ロングストレートの冷たい目をした女、最初の調査相手、一年の甘利実都の第一印象はそんな感じだった。
「取材だったかしら?それとも……」
甘利は用意した紅茶を一口飲んで鋭い目つきで言った
「何か別の目的でもあるのかしら?」
「なっ」
俺は少し動揺してしまった、彼女の目つきは鬼も泣くような目つきだった、俺は一回咳払いをして
「その通りです、わかっているなら話は早いです、早めに言います」
あなたが買い出しに行ったという証言をしてくれる方はいますか、そう言おうとしたが甘利がしゃべるなと言わんばかりに右手を突き出してきた。
「いやよ、お断りします、あなたみたいな平凡な人は好みじゃないの」
「は?」
いきなりの展開に俺はアホのような声を出してしまった。
「お断りします?好みじゃない?……」
俺が唖然としていると甘利は前髪をいじりながら言った
「正直ここの学校の男子のレベルは低いわ、誰とも付き合う気は無いって友人たちにも言っといてくれるかしら?こんなことで時間を取られるのは嫌なの」
俺は矛盾に気づいて吹き出すのをこらえて言った
「あの……俺はある事件のアリバイについて調べたいだけなんですが」
「えっ!?」
俺がそう言った瞬間甘利は顔を真っ赤にして
「そ、そんなのわかっていたわよ、でも…その…」
ゲームとかで言ったら萌えとかいうやつなんだろうか、いや、現実だよ厄介すぎる、つまり甘利は俺に告白されると勘違いをしていただけなのである、まったく迷惑な話だ。
「じゃあ聞きます、先日校内に実が散乱していたのは知っていますか?」
「実?何かしらそれ」
甘利はいつの間にか立ち直って真顔で答えた。
「じゃあ質問を変えます、あなたはこの日の放課後買い出しに行きましたね」
俺は資料を指差して言った
「ええ、そうよ」
「じゃあそれを証明出来る人はいますか?」
「証明……ね、たしかメガネをかけた生徒……多分二年生ね、その方が同じコンビニにいたはずよ」
「そうですか、ありがとうございました」
一日目 放課後
上地汐里は男か女かわからないような容姿をした人だった、二年生のようだ。
「で、取材ってなにかな」
「先日校内に……」
俺は甘利にしたのと同じ質問を上地さんにもした、結果は簡単だった。
甘利が同じコンビニにいたと言っていたのがこの上地さん、実の事件なんて知らない、そんな感じだ、ご丁寧にレシートまで出してくれた、違和感のない時間だ。
一日目が終わった時点で犯人は二分の一となった。
9・裏を掴め!
「どうも、いきなりすいません、津大さん」
「いえ、私が力になれるのなら」
二日目、一人目のアリバイ探し相手は 津大愛花、大人しそうな見た目の人だった、なんだか見覚えがある気がするが同級生だったら仕方ないのかもしれない。
「では津大さん」
話そうとしたが津大さんが小さく手をあげた
「あのぉ」
「なんですか?」
「力になるとは言いましたけど、何するんですか?」
……この人は俺の話を聞いていたのだろうか、連れ出す前にちゃんと事件関連のアリバイ調査と言っていたのだが。
俺はもう一度説明をして本題に入った。
「先日校内に実が散乱していたのを知っていますか?」
「実、ですか? そんなことあったんですか?」
俺は事件の事を大まかに話して昨日の二人と同じ質問をした。
「体育祭の場所確認だったそうですが、それを証明出来る人はいますか?」
津大さんは少し考えて口を開いた。
「あの時は確かうら……」
「うら?」
俺が疑問口調でそう言うと、津大さんは少し困った様子を見せて話を続けた
「えと、その、えーと……有楽堅さん…でしたっけ? そのような苗字の人、同級生がいたはずです」
「穂蛆が? 手伝いかなんかだったのか? いや、でも資料にはいなかったけどな…間違いないかい?」
「はい、でも外出届けは出してないと思いますよ」
「え? なんで?」
「私が幅を計測しようとして苦戦していた所を有楽堅さんが上、多分二階の窓から声をかけてくれて、その後少しだけ手伝ってもらったんです」
「なるほど、その時に穂蛆……有楽堅の苗字を聞いたのか」
「はい、私ってどうも物覚えが悪くて……」
「有楽堅は津大さんの名前知ってる?」
「えーと、苗字は言いましたので忘れてなければ苗字は知っていると思います」
「分かりました、まあ有楽堅は記憶力がすごいので忘れてないと思いますよ、今日はありがとうございます」
そう、穂蛆はとても記憶力がいいのだ、フルネームならまだしも苗字だけなら穂蛆が間違える、忘れる事はまず無いと言っていいだろう。
「い、いえいえ、こちらこそ」
何がこちらこそなのかはわからないが津大さんは一礼して教室を出て行った。
「あれ?これって」
しかしさっきまで津大さんが座っていた机にカバンが置いてあった、中から本がはみ出している、俺は何気なくその本の題名を見た。
「なになに…{ライト神話 中}か………ああ!」
津大さんに見覚えがあった理由が分かった、図書室で穂蛆にぶつかったあの女子生徒だ。
「なるほどな」
俺が納得して本をカバンに戻すと津大さんが遠慮がちに教室に入ってきた。
「忘れ物しちゃいました」
そう言ってバックを持って津大さんは教室を出て行った。
「…またかよ」
床の上には津大さんの手鏡が忘れられていた、おそらくバックから落ちたのだろう、しばらく待っても帰ってこなかったので一応俺はそれを拾っておいた。
二人目、上地汐里さんのアリバイは完璧だった。
「私は買い物に出たんだけど、先生と一緒だったわ」
後に図書部から見せてもらったほかの資料でその言葉は本当だとわかった。
その日の放課後、俺は穂蛆と帰っていた。
「アリバイはどうだった?」
「それよりなんで今日もお前はいなかったんだ」
穂蛆は一瞬目を丸くして、少し考えた後に手を叩いた。
「ああ、言って無かったっけ? 体育祭の準備の代理期間にあったことを代わっていた友達に教えてたのさ」
「言ってなかった」
「そりゃ面目ない、でどうだったの?」
「全員アリバイ有りだな」
穂蛆は残念そうな顔をして
「残念だったね、どうしようか」
「四人ともアリバイありかぁ……そうだ」
俺はカバンの外ポケットから手鏡を出した。
「これ愛花さんのなんだけどさ、俺クラスしらねぇから渡しといてもらっていいか?」
「いいよ、明日渡しとくね、じゃあまた明日」
「おう、またな」
穂蛆と別れた後、周りに優羽がいないことを確認して
(穂蛆と一緒かその後に優羽によく会うからだ)
俺は呟いた。
「おそらく犯人は……あいつだ」
10・双方の協力者
翌日の昼休み、俺は庄さんと話をしていた。
「……で、お願いします」
「うん、津大さんか、わかった」
そう言って俺は図書室を出た。
「よう、穂蛆」
「ん? ああ宕か、先に食べちゃったよ」
「ああ、俺は学食だったから」
「そうだったんだ」
「おう、それよりもな」
俺は穂蛆の前の席に座った。
「犯人の情報はなんかあるか?」
穂蛆は首を横に振った。
「いや、新しい情報はないね」
「そうか……そうだ、あやかさんに渡しといてくれたか?」
「……? ああ、津大さんか、あやかじゃなくて、あいかだよ」
「ああ、そうだったか」
「そうだよ、ちゃんと渡しておいたよ」
「ん、ありがとさん」
「いや、いいけどさ、そろそろ行かない?」
「? どこにだ?」
「次は移動教室だよ? そろそろ行かないと」
「ああ、そうだな」
時間経過・放課後
「宕、今日は残るの?」
俺は首を横に振った。
「いや、今日は帰るわ、そうだ穂蛆」
「なんだい?」
「明日の放課後空いてるか?」
「ああ、空いてるよ」
「じゃあちょっと空けといてくれ」
「何をするんだい?」
「犯人が分かりそうなんだ、解決をする」
穂蛆は少し驚いた顔をして
「自信たっぷりだね、宕」
「まあな、じゃあ明日よろしく」
「ああ、わかったよ」
穂蛆と別れて俺は一枚の紙を取り出した。
「これは、賭けで行くしかないな、暗記すっか」
「すーぎーるー」
後ろを振り向くと優羽が走ってきた。
「ああ、お前か」
「なんか頂戴」
「なんかってなんだよ」
「推理資料」
「ねえよ」
「なんだ、面白くない」
「俺も面白くない」
「推理は」
「面白くない」
「やったことないくせに」
「ああ……でもわかる」
「なんで?推理かな?」
「違う、そういやもうすぐ体育祭だけど運動部には入らないのか?」
「うーん、運動は好きだけどねー、運動部はパスかな、宕は?」
「もちろんパスだ」
「じゃあ文化系は?」
「考えてる、優羽はどうなんだ?」
「今度の文化祭で決めるかな、宕は有楽堅君と回るの?」
「まだ考えてないけど、多分そうだな、そうだ」
そう言って俺は財布を取り出した。
「何? ジュースでもおごってくれるの?」
「んなわけあるか、ほれ、これやる」
俺は植杉からもらった割引券を取り出した。
「植物研究部がカフェすんだってよ、なんかいっぱいもらったからやるわ」
「貰うけど……いいの? もらった物なんでしょ?」
「いや、たくさんあげるから宣伝ついでに配ってくれって言われた」
「なるほど、じゃあありがたくもらっておくね、じゃあね」
「ああ」
分かれ道を曲がろうとした優羽は振り向いて言った
「何かあったら私に言ってね」
「お前に相談する事なんてない」
そう言うと優羽はイタズラな笑みを浮かべて言った。
「私にわからない事はないわ」
「どこの探偵だ」
「ここの探偵よ、私に隠し事なんて通用しないんだから」
「はいはい、わかったから、じゃあな」
「信用してないでしょー!」
優羽の不満そうな声を背に受けながら角を曲がった後、俺は呟いた。
「隠し事は通用しない、か……通用してるんだけどな」
翌日の放課後、俺は穂蛆と教室にいた。
「で、犯人がわかったって本当かい?」
「いや、少しいい間違えた」
「どういうことだい?」
「犯人を知る者を見つけたんだ」
「確かに犯人を見つけたも同然だね、でも聞き出せるかな?」
「ああ、聞き出してみせるさ」
俺は時計を見た、そろそろ五時だ、俺は穂蛆の方を向いて言った。
「穂蛆、犯人を教えてくれ」
11・裏見
穂蛆は苦笑いで
「犯人? 僕はそれを聞きに来たんだよ?」
俺は真顔で
「とぼけるな、今回の事件の協力者、有楽堅穂蛆」
穂蛆は少し間を置いて口を開いた。
「もちろん証拠はあるんだろうね」
「ああ、あるさ」
「じゃあ聞こうか」
俺は机に座って話を始めた。
「まず一つ目、最初の手がかりとなったあの実、あれは三連木の物じゃない、学園樹の物だった、三連木の実はあっただろうけどあの実だけは違ったようだな」
穂蛆は手を顔に当てて
「あっちゃー、こりゃ僕の失敗だね、情報不足だったよ」
「じゃあ二つ目、あの事件、実がばらまかれた事さえも俺と優羽以外は誰も知らなかった、噂になんてなっていなかった」
「それは聞く人がまずかったのかもね」
「なら三つ目、お前は津大愛花と関わりを持っているな」
「ああ、少し助けてあげたんだ」
俺は穂蛆の目を見つめて言った。
「それだけか?」
「それだけだよ」
「嘘だろ?」
「じゃあ根拠を話してもらおうか」
「ああ、そのつもりだ」
俺は穂蛆の目を真顔で見たまま。
「根拠一つ目、お前は図書室で津大さんに言ったよな、{中はよんだのかい}ってな」
「ああ」
「その言葉は津大さんが近日中に上を読んでないと出ない言葉じゃねぇか?」
「そうとは限らない、ただ僕のオススメが中だった、だから読んでいるか確かめたかった」
「根拠二つ目、津大さんはお前に苗字しか教えてないと言っていた、しかしお前は津大さんの名前を知っていたな」
「……宕の取り調べの後に聞いたんだよ」
ついに穂蛆がボロを出した、俺はここぞとばかりに声の大きさを上げた。
「何故聞いたんだ? それこそ何か関わりがあったんじゃないか?」
「……それはね、宕」
穂蛆が何か言い訳をしようとした瞬間、こらえきれなかったのだろう、ついに津大さんが教室に入ってきた。
「犯人は私です、穂蛆さんを利用しただけです」
穂蛆は驚いた顔で津大の方を見た。
「津大さん!? 何でここに」
「だって号外の新聞にこんなことが」
津大さんが取り出した新聞部の号外にはこのような題名が書かれていた。
{実をばらまいた犯人、ついに発覚か!?}
そこには犯人を問い詰める場所と時間、そして犯人のイニシャル、穂蛆のHが書かれていた。
穂蛆は俺の方を向いて
「宕、君の仕業だね」
俺は頷いた、俺は庄さんに頼んで新聞の偽物を作ってもらい、津大さんのロッカーに入れておいたのだ。
「でも……」
津大さんが俺の方を向いた。
「実をばらまいた事がそんなに悪いことですか? 理由も知っているんですよね、確かに学校内を汚したことは認めます、でも……」
俺は静かな口調で答えた。
「すみません、悪いから捜査をしたんじゃありません、俺にも色々と理由があるんです」
「理由って……」
聞こうとした津大さんを穂蛆が制する
「それは聞かないであげてほしいな、宕の言ってることは本心だよ、親友である僕が保証するよ」
それを聞いて津大さんは引き下がった。
「じゃあ穂蛆、優羽にだけでいいからこの事を伝えといてもらえるか?」
穂蛆は伺うように津大さんを見た、津大さんは頷いた。
「わかったよ、宕」
そういう事で今回の事件は少なくとも俺の中では終了した。
12・二人より一人
「で、どうだった?」
俺は庄さんに匿名で事件の真相を話した(新聞のネタを提供する約束で号外を書いてもらった)
犯人は元生徒会長に恨みを持っていたこと、
実をばらまいたのは違う人だったこと、その人は生徒会に世話になっていて犯人を見つけ出したかった事。
庄さんに言ったのはそこまでだった、この先は匿名じゃ話せない、津大さんには匿名ということで許可を得ている。
完全な真相はこうだ。
津大は犯人を何かしらでおびき出そうとした、そこで何日か実をばらまいて注目を集めた後、その場所にあの名札を置いておびき寄せようとした。
しかし実をばらまこうとしていた津大さんを穂蛆が見つけた、不審に思った穂蛆は事情を聞いて言った「それじゃあ難しいね、いい方法がある」
いい方法、それが俺に推理させることだったのだ。
図書室を出て家の方向に足を運んだ、しばらく歩いていると穂蛆が隣に来た。
俺は少し怒った口調で
「なんで普通に協力してくれって言わなかったんだ、お前の頼みなら聞いていた」
穂蛆は少し黙って言った
「ごめん、僕は速く解決したかったんだ」
「俺に黙ってるのと解決の速さにどういう関係があるんだよ」
穂蛆は苦笑いで
「一人より二人、事件は様々な視点から見たほうが速い、僕は掬さんにも期待していたんだよ」
「なるほど、優羽は俺とは違う視点で物を見るからな、あいつのほうが速い時もあるだろうな」
穂蛆は頭を下げて
「ほんとうにごめん、掬さんまで巻き込んじゃって」
「なんで俺に謝る、どうせ優羽のやつは楽しんでいたんだろうさ」
「そう言ってくれると助かるよ、じゃあね」
数日後の下校時、穂蛆と別れ一人で帰っていた。
後ろからの気配を感じた俺は咄嗟に横に避けた、さっきまで俺がいた場所に「やー!」と言う声とラリアットが飛んできた。
「その手にはのらんぞ」
「ばれたかー」
そう言って舌を出したのは優羽だった、優羽は自然に俺の横に並んで話し始めた。
「また事件が解決されてさー」
優羽は不満そうだ。
「知ってる、穂蛆から聞いた」
「情報早いね」
「穂蛆の情報だ」
「有楽堅君ってすごいね」
「ああ、確かにすごいな」
優羽は俺の顔を見て言った。
「有楽堅君も入れて推理しない? 三人で」
「パスだ、推理なんてめんどくさい」
「ふーん」
優羽が意味ありげに俺を見てくる
「なんだよ、気持ち悪い」
「なんにも」
「おしえろよ」
「自分の胸に手を当てて聞いてみれば? じゃね」
そう言って優羽は自分の家へと走り去っていった。
「……俺なんか言ったっけ?」
少なくとも恋愛アニメのような鈍感なセリフは吐いていないはずだ。
一人残された俺は呟いて青になった信号を渡った。
「ウラミ」終
to be continued