第二章 ゲームの法則 第二十九話 人生ゲーム技術:性格・感情・欲の三界制御
人生ゲームとは、単なる比喩ではない。宇宙の生成原理そのものが、 “主体が環境に反応し、境界で判断し、外界へ行動する”という三界構造でできている。人間の人生もまた、宇宙の縮図であり、内界の情報管理、境界の判断装置、外界の行動結果が 絶えず循環し、自己の運命を生成し続ける。つまり、人生ゲーム技術とは、 宇宙の生成法則を人間の生存戦略に翻訳したものなのだ。
第二十九話 人生ゲーム技術:性格・感情・欲の三界制御
人は、人生という巨大な盤上に立たされている。その盤は、幼年期・青年期・熟年期・老年期の四界が折り重なり、それぞれの界で、性格・感情・欲が異なる形で姿を現す。だが、ほとんどの者は、自分がどの界に立っているかを知らない。ただ流され、ただ反応し、ただ悩む。 その迷いを断ち切るために、人生は“ゲーム”として理解されるべきなのだ。
義鷹は、アキラを、自分に住む主体の“情報管理人さん”にした。彼は、家業の投資を学ぶために、特務員だった祖父・光政からメディア情報と頭脳の記憶回路の使い方を伝授された。歴史上、有名な政治家、軍人、哲学者、科学者、宗教家、企業家などの伝記を読んだ。数千の職務運営に関する基本知識を蓄積することを求められた。この情報は、認知戦の要素と言える。
彼は、主人公が生きた時代背景を環境とする人間行動に着目した。その人物の経歴、性格、宗教観、思想、業績評価、名言などから、他人の人事評価データを蓄積した。彼が指導者になった場合に、自分の基準で有能な人材を自在に配置する人事訓練だった。
義鷹:「君の理論は、個人の内界防衛戦に使える」彼は、その理由を上げた。
現代人は、SNSなどの通信技術やAIを使った“認知戦技術”の進化により、 “情報に操られる時代”を生きているからだとした。
義鷹は、少年の頃から情報を自己判断して行動する自律心を持っていた。自分が創造した内界が、大人の言い分で侵略・調略されるのが大嫌いだった。
彼は、物事の好奇心に誘われて、大人への反抗攻撃を試してみた。その意味では、自分勝手な我が儘な少年だった。他人の言うことを鵜呑みにせず、自分に備わっている遺伝的な商人の情報価値を評価して行動したからだ。
その個性は、特異だった。彼は、学校社会では、教師たちの“なぜ”のない物事を暗記する教え方に反抗した。誰も、それは認知戦だと教えなかった。彼は、自分の内界に侵入する境界や外界の攻撃に対して、自分勝手な発言による防御行動がいけない規律を学んだ。自由に振る舞うことで掃除罰などを受けた。
アキラ:「そうだよ。いつの時代でも、内界の悩みは、消えることがない。人は、相手の尊厳を認めず、力で服従させる習性を持つからだ」
彼は、古代人から現代人まで続く悩みの原因の多くは、“自然の法則”が原因だとした。自分の置かれている社会環境の“弱肉強食構造”と“過度な競争文化”から生まれてきたことが分るとした。人間の文化は、“富を奪う”、“暴力を用いる”、“価値観を強制する”ことから“人間対立構造文化”を生み出してきたと主張した。これでは、 “個々人間”、“個人組織間”、“組織同士間”の三界で必ず争いの葛藤が起きる。
義鷹:「なぜ、人は、争うと断言できるのだ」
内界住人たちに対して解答を求めた。アキラが意見をまとめた。
アキラ:「今の指導者の頭脳は、“アナログ、デジタル時代の産物”であっても内界は、伝統的な弱肉強食仕様になって、人間同士の葛藤を生み出す装置だからだ」
彼は、弱肉強食構造の指導者頭脳では、平和な未来社会を創造できないとした。だが、その人物の未来行動予測が出来る者に対して、金融経済の投資収益機会を提供してくれるとした。 “投資家人生ゲーム”をして富を得たい者は、実体経済と金融経済の仕組みを知ることが前提条件だと主張した。
未来予測で投資収益を得るには、自律精神を持ち、AIを使いこなす脳力が要るとした。それには、現人類の考えるAI機能のブラックボックスを知ることが重要だとした。また、公開情報を鵜呑みにはできないとした。
アキラ:「社会生活をすると、自然人は社会的人間になる。その社会から刷り込まれた“幻影情報”に支配される。このレベルに留まる人間は、黒田一族の指導者になれない」
彼は、自律心のない人は、いつの時代でも欲求制御するのが困難だとした。 “マズローの欲求五段階説”、“マレーの欲求理論”、“プルチックの感情の輪”を使い、自分の性格、感情、欲の三界を征する困難さを説明した。
アキラ:「人間は、衣食住医教の基本的欲求が満たされると、社会的立場が産む欲求の悩みで、悩み続けることになる。つまり、欲求は高次へと成長する。自分で“性格感情欲”を制御できないと、ストレスに悩まされ続けることになる」
義鷹:「あぁ、そうだな。欲求は、制御しないかぎり、限界がない」
彼は、いつの時代でも、 “欲”を適切に扱えない者は、欲に溺れて“未来力の流れ”に抗う、無用な行動を選択することになるとした。この結果、淘汰される存在になると説明した。
アキラ:「僕は、二十一世紀は、人間と機械との戦争による“旧人類滅亡時代”
になると見ている」
彼は、 “性格感情欲の価値観”の視点から“弱肉強食主義人”を旧人類とし、 “共存共栄主義人”を新人類とし、その狭間にいる人を境界人と定義した。
彼は、現在の三大国の絶対権力者は、“性格感情欲”を世界平和のために軍事力行使を制御できるタイプではないし、我欲行動をためらうタイプでもないと断言した。三大核大国の核戦争の事由があれば、核兵器使用を試してみるタイプだとした。現在の核兵器保有環境は、核兵器戦ができるように十二分に整備されているとした。後は、その切掛けを待つだけだと主張した。
義鷹:「そうだな」冷静に世界政治指導者の“内界健全性”を“妄執”の度数でみていた。
妄執とは、自分の思い込みや偏見に固執して、自分を束縛する行為をいう。三大核大国の最高政治権力者は、核軍事力を背景に強権行動することがある。
彼らは、二十世紀の“朝鮮戦争”や“キューバ危機”の時には “性格感情欲”を制御して核戦争になることを自制してきた。彼らの内界力は、外界の世界政治に“正”と“負”と“均衡”の三つの力をもたらすことができる立場にいる。
義鷹:「君は、現在、この三大国の政治指導者たちの“内界制御力”をどうみているのか?」
彼は、人間同士の戦争や内乱や闘争が一万年以上も地球上で続いているのは、政治指導者たちが、創造主の“弱肉強食の生態系計画”に疑問を持つことなく、素直に従って行動しているからだと考える。
アキラ:「現在の三大核大国の指導者は、我欲の妄執度が高い。自己顕示欲と好戦的な気質に支配されている症状がある。敵対者との利害調整よりも、力で排除する行動を優先する態度が見える」
義鷹は、政治指導者たちは、創造主が創作した“生物物語”の中で登場する主役を演ずる人物とする。彼らは、自分の“性格感情欲”の価値観に沿って創造主から善役と悪役のどちらかを選択して、その役を演じさせられる。彼らには、戦争指導者となり、戦争犠牲者を出しても、国家間の戦争勝者は、 “英雄”や“正義”の人の評価を得る“ご褒美制度”が存在する。
これに対して敗者の戦争指導者は、 “人の道”に外れた“不義”や“悪役”の罪を着せられる。人間社会には、弱肉強食主義の価値観でも、勝者が優遇される事実がある。
義鷹:「僕は、共存共栄精神を持つニッチ国人ならば、世界。平和に貢献できる時代になっていると思うのだが・・・。君は、ニッチ国人の指導者は、どうすれば、世界の競争社会の葛藤をどうすれば緩和できると思うか?」
彼は、人間社会は、 “創造者が与えた欲望の悪戯”に嵌った社会だとする。この罠が仕掛けられている社会では、欲望を制御できないと永遠に闘争の構図が展開することになるとした。
アキラ:「僕は、有徳人の富豪投資家ならば、 “共存共栄精神”を“政軍経社倫教の統一行動理念”にして特定地域に理想郷を創造できると思う」
義鷹:「君は、創造主が生物に設定した“弱肉強食の掟”から発生する欲求と葛藤の問題をどう解決するのか?」
アキラ:「誰も他人の葛藤問題を解決できないよ。生涯を使って自分で解決する問題だからだ。だけど、富と生活の問題が解決できれば、欲求数を減らすことにより、葛藤数を減らせる」
彼は、島国国家は、工夫をすれば、ニッチ国の江戸時代のように二百年以上も他国を侵略する必要がないとした。
アキラ:「まず、我々は、密かに世界の人が住んでいない未開拓地に商業で成り立つ新人類用の未来都市計画を作ることから始めるとよい。そこで、ホモサピエンス種の知能を新人類種の知能に進化させる」
彼は、自給自足経済と共存共栄主義精神と防衛力の三つの力を文化力に転換して保持できれば、平和な生活を維持する条件が揃うとした。しかし、欲の制御技術を会得できる人材は、少数派だとした。このため、新人類がホモサピエンス種社会で生きるには、新人類種であることの迫害を受けないようにすることだとした。
義鷹:「そうだな。ホモサピエンス種が住まない未開拓地なら先住民との摩擦は少ない。争いの根源を減らす作戦か。ところで、君は、二十一世紀の核戦争が起きる確率をどうみているの?」
アキラ:「僕は、核戦争が起こるかどうかの確率数字で議論するのは無意味だと思う。武器は、使うためにあり、その保有者が必要と思えば使うと考えて、対応策を講じることを選択する。核戦争の準備があるのに、それに対応しない考え方には、賛成できない」
義鷹:「じゃ、君は、核戦争のシナリオをどう見ているの?」
アキラ:「核兵器は、今のところ核兵器保有大国間の一定の核戦争抑止力効果を持つ。だけど好戦的な独裁者が、戦争で非核保有国に使用すると核兵器拡散条件が揃う。こうなると、核使用の歯止めが利かない」
義鷹:「全面核戦争のシナリオは?」
アキラ:「核兵器使用の脅威で、世界が同盟や連合関係で敵側、味方側、中間側の三分割された時だ。核兵器が使われる第三次世界大戦となったときだ」
義鷹:「北半球第三次世界大戦で核兵器使用されると、君は、どのようなことが起きると想定しているのか?」
アキラ:「北半球の人口百万人以上の大都市は、核攻撃対象になる。大都市は、物流が止まると食糧資源が乏しいので、”生存困難地域”になる」
彼は、世界核兵器保有数が増加した場合、核兵器保有国の大都市エリアを第三次世界大戦の核使用時の“核被害エリア”とした。彼は、その地域の不動産価値は変わらなくても、黒田一族は、その地域の不動産投資を控え、保有を最小限にすべきと助言した。
義鷹:「君は、北半球で第三次世界大戦による全面核戦争が起きたら、核戦争後にどんな世界が生まれると予測しているの?」
彼は、前提条件を指定した。北半球全面核戦争を権威主義同盟と民主主義連合との戦いとした。大都市攻撃パターンで考えることを要請した。核保有国九か国が約一万発の核兵器を使用するとした。人類は、大都市破壊と核汚染被害と世界物流崩壊による物資不足の二次被害を受けて、北半球交戦国の政府機能は、崩壊すると想定した。
アキラ:「僕は、北半球では、核戦争後、平地に住む生き残った住人は、生活資源を巡り生存闘争をするので、大半が死滅するとみている」
彼は、自給自足の高地に住む住民は、侵略者に対する防衛力を持っていれば生き残る確率は高いとみている。だが、結局、南半球にある非交戦国の国民が生き残ることになる。ホモサピエンス種は、性格感情欲を制御できる新人類にならない限り、同一種の戦争と平和の日々を繰り返すことになるとした。
彼は、世界物流の崩壊によりエネルギー、水、食糧、資源、製品の製造能力があり、それらの自給自足率の高い国が大国の地位を獲得するとした。中東の水不足問題のある国は、核戦争に巻き込まれなかったとしても、自国で海水の水処理問題などを解決できない限り、で住めない土地となるとした。大国は、南アメ地域ではブラ国、アフリカ地域では、南アフ国、オセア地区ではオウ国が主役になると予測した。
義鷹:「そうか。君の新人類は、どう定義するの?」
アキラ:「欲求と葛藤をマネジメントできる人を新人類としたらではどうか?」
彼は、ホモサピエンス指導者は、人間の欲求と葛藤の精神問題を一万年以上も平和的に解決できていない事実を指摘した。現在、創造主は、人類に核兵器を与えて、悪役指導者を用いて、いつでも、人類を核兵器使用で滅ばせる方向にあるとした。彼は、ホモサピエンス種は、知恵を与えられたとしても、その用い方を誤る“性格感情欲”の“創造主の罠”が仕掛けられているとした。
アキラ:「僕は、 “創造主の罠”を回避できない者と定義した。創造主は、あらゆる同種間の問題に対して、ホモサピエンスには、妥協、譲歩、先延ばし、協調、競争、闘争、戦争、絶滅などの選択肢を与えている。その結果、現在時点では、なんとか核兵器不使用が維持されているとした」
彼は、心理学者マレー“欲求リスト”を参考にすると、絶対権力者の社会的欲求には、野心、威信、地位防御、力の行使、他者の損傷を与える欲求があるので、核兵器大国同士の直接戦争になると、核兵器が使われない保障はないとした。
核大国の核兵器不使用の議論は、過去の使用例の状況と精神異常の絶対権力者の視点で検証を行うべきと意見を述べた。
人生ゲームを理解する者は、自分の性格・感情・欲の三界を“敵”ではなく“素材”として扱える。それらを制御できる者は、 他者の言葉や社会の幻想に飲み込まれず、自分の人生の盤面を自分で設計できる。だが、制御できない者は、他者の言葉、社会の価値観、時代の流れに翻弄され、 自分の人生を他人に委ねてしまう。人生ゲーム技術とは、 自分の人生の支配権を取り戻すための“内界の武術”である。
(第三十話 心の貸借対照表:性格・感情・欲の財務諸表へ続く)
二十一世紀の人類は、もはや“知識量”ではなく“内界の制御力”で階層が分かれる時代に入った。AIが外界の情報処理を担い、人間は内界の処理を担う。この役割分担が成立した瞬間、人生ゲーム技術は、新人類の必修科目となる。内界を守り、境界を鍛え、外界に飲まれない者だけが、未来文明の“共存共栄モデル”を創造できる。
人生ゲーム技術とは、未来文明の指導者が身につけるべき“心のOS”であり、そのOSを持つ者だけが、争いの文明から共存の文明へと人類を導くことができる。




