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最強の大魔法士、TSしてのんびり魔法書店の看板娘になります  作者: 冬葉月
魔物と隠し事編

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第21話 おらー!

 エウロから手紙がきた翌朝、起きて最低限の身支度だけして、エウロから送られてきた風の魔法書を使い、王都へと飛んでいった。文字通り、飛んで。風の魔法で飛んだことは初めてじゃないが、年を取ってからは体に負荷がかかることを嫌い、避けていた。よって20年ぶりくらいの体験になるのだが、久々だと風を切る感覚がなかなか気持ちよかった。


 念のため、飛行用の魔法書とは別に、身体強化の魔法書を、魔法書店の棚から引き抜いて持ってきた。目的は何かあったときの護身用、選んだ理由は応用範囲の広さと魔力消費が少なく、長時間使えるためである。使った場合は商品をお買い上げとなってしまうが、必要経費ということにしてやろう。


 着陸したのは、王都の外門のすぐそば。王都の中まで飛んで行くこともできるだろうが、あまり好まれた行為ではない。お金があるからと言って東京のど真ん中に自家用ジェットで着陸することが異常であるように、魔法を使えるからといっていつ何時に何をやっても良い訳ではないのだ。


 王都は城塞都市であり、よく想像されている中世ヨーロッパの姿そのものである。そのため、外門にある検問所的なものを通らなければならない。特段、検査が厳しいことはないが、たま~に非常事態が起こったりすると何か身分を示せるものの提示だったり、場合によっては門そのものが閉じられて、限られた人間以外はシャットアウトしてしまうこともある。


 さて、今日はといえば……中に入る人が、たくさん並んでいた。うん、平時ではない。何かあったのは間違いないが、何があったのかはわからない。


 周りで面倒だと話している人たちの会話を横から盗み聞きしたが、彼らも同様に何が起こったのかを知らないようだ。ただ、昨日あたりから急に検査が厳しくなったという話らしい。


 エウロの件と、関係がありそうだ、非常に。……このまま、入れないことを理由に帰ってしまおうかな。そもそも今度こそスローライフが目的だったような気がするのだが、やっていることはジジイになるまでとなってからと何ら変わっていない。


 まあ、ここで帰れたら、昔っから苦労してないだろうな。我ながら難儀な性格だ。どうにも好奇心に勝てない。別にトラブルに首を突っ込みたいわけではないのだが、何かあったのなら何があったのか知りたいし、何かするべきならば何かをせずにはいられない。体が変わっても性格が変わらないのだから、本当に困ったモノだ。


 ともかく、このまま一般の人と一緒に並んでいては文字通り日が暮れてしまうので、あまり褒められた事ではないが、身分を盾に通してもらおう。私が先に入れば、この事態が解決する……かもしれないし、許してくれ。


 すっと並ぶ列を飛ばし、一番前まで移動する。一番前では門番と、服装荷物から判断して冒険者がもめていた。おおかた、門番に入場を拒否されて、入れろ入れろとせがんでいるのだろう。


 冒険者は動きやすい軽装で、明らかに体格が良い。ボディービルダーのように太くはないが、体がしまっていて、無駄な脂肪は絶対にない。腰には使い込まれた木剣を携えていて、新人冒険者というわけではなさそうだ。顔は若そうで、そこらに切り傷がいくつか残っている、荒っぽそうな青年だ。


 完全に横入りになってしまうが……心の中で謝りつつ、門番に向かって話しかけた。


「すまん、急用なのだ、王都へ入れてくれ」

「はぁ……」


 門番は私の声に、うんざりしてため息をついた。私みたいな面倒なやつらが、今までにいっぱい来ていたに違いない。


「嬢ちゃん、何はともあれ列を飛ばしちゃいけないよ」

「それに関しては非常に申し訳ないが、ルミエール様の代理で来ているのだ。通してくれ」


 と、ルミエールの魔法印を見せ、それからエウロの手紙を見せた。ルミエールの魔法印だけでも身分証明書には十分なのだが、急用であることをアピールするために、手紙も一緒に。中身にはたいしたことが書かれていないので、赤の他人に見せても大丈夫である。


 門番は最初、手紙と魔法印を見せても、顔すら向けずにしっしっと手で追い払うだけだったが、薄目でちらっと見た後、目を見開いた。そして、これぞまさにと言ったほど綺麗な二度見をして、絶句する。


 まあ、それくらいの効力はある。大魔法士二人分の物品を同時に見るなど、普通の人間は一生でもあるかないかだろうから。


「な、急用なのだ。通してもらっていいか?」

「は、はい、もちろんです」


 門番は、こんな女の子が……と呟いて、驚きを隠せない様子だった。


 最終的に門番は意識を取り戻して、私に敬意の目を向けて、通っても良いと許可を出してくれた。よし、面倒ごとなく行けそうだ。まさに最初の関門は乗り越えた。あとはエウロの話しだいだなぁ~。あんまり深刻じゃないと良いが……


「おい、待てよ!」


 と、鋭い声が空気を貫いた。


 声の主は──隣で私と門番の様子をじっと見ていた、例の冒険者である。先ほどから静かにしていたので、あれ、私は見逃してくれるのか、と思っていたが、違ったようだ。怒りをこらえていただけらしい。


「そのガキだけ特別扱いか? どういうつもりだよ?」

「まだ文句を言うのか……お前は……。隣にいたなら見ただろう? 大魔法士・大魔導士の方々の命で動いているのならば、最優先である」

「い~や、俺は認めないね。大魔法士だろうが大魔導士だろうが、直接戦ったことないヤツは信用しない主義なんだ」


 いや、お前が信用するしないは私の知ったところではないが。口に出したいが、私が睨まれては困るのでしばし黙っておく。


「なにより、このガキ自体の身分はなんなんだ? ルミエールの代理とか言ってたが、そのはんこに手紙は本当に本物なのか?」

「お前は知らないかもしれないが、リブロにおいてルミエール様の魔法印は、学校で習うくらいのものだぞ? まして、エウロ様の署名付きの手紙となれば──」

「だから騙されてるんじゃねぇかって言ってんだよ。偽造だったらどうすんだ?」


 残念、何も口に出さずとも、私は睨まれてしまう運命だった。嫌なのだが? そんな運命。


 それに、指摘自体はもっともだ。どうしてこういう荒っぽいヤツに限って妙に頭がキレるんだ。その上、怒りっぽいという意味でもキレやすい。まさにキレッキレ。


 しかし、偽造かもね、と言われてもこちらは正真正銘の本物である。好き勝手疑ってもらって構わないが、この冒険者の許可が必要な訳ではないのだ。すでに門番の許可は得てるし、無視して先に進ませてもらおう。


「待てよ、ガキ。そいつが許しても、俺が許さないぜ」

「お前の許可は必要ないだろう? それと、私はルーチェだ。せめて名前で呼べ」

「ルーチェだな。俺はコルポで一番強くなる、予定の剣士──フェデール。俺を抜かして先に行くなら、俺に勝ってからにしろ」


 フェデールと名乗った冒険者は、腰の剣を抜き、私に戦えと促す。まあ、剣と言っても木剣なのだが。


 なるほど、冒険者であるコイツは、リブロと対の国──剣の国、コルポから来たのか。どうりで大魔法士の存在に畏れることがないし、やたらと野蛮チックな感じなのか。納得納得。魔法の国リブロが性格の悪いインテリの集まりなら、剣の国コルポは脳筋集団のスパルタみたいな感じであるので、非常に納得である。あまりにも例えが悪いが。


 ちなみに、私はこいつの名前に心当たりはない。一番強くなる予定といいつつ、実は本当に一番強い……なんてこともないはずだ。かつて出会った剣聖には覚えがあるが、だいたい老齢になっている。


 対して、フェデールは明らかに若い。剣聖が若返ったという話は聞いたことがないし、単純に若いだけの人間だろう。世間はもう世代交代か……時代の流れは怖いものだ。


「貴様! ここで剣を抜くとは!」


 見かねた門番が止めに入ろうとしたが、私が止めた。


 どうせ、私が無理矢理王都に入ろうとしたら、コイツも無理矢理止めてくるに違いない。門番に頼りたいところだが、あいにく私の目では、門番よりフェデールのほうが上である。フェデールと戦って勝てば良いなら、おそらくそっちのほうが早いだろう。私なら適度に手加減もできるし、ケガ人も出ない。今はこんな姿でも、過去は剣聖たちとやり合ったことがあるのだ。そう簡単に負けはしないさ。


「別に、戦うのは構わないぞ。それで満足するならばな」

「やっぱりな。ただのロリガキにしては強者の匂いがしたんだ」

「ロリガキって呼び方は普通にやめろ。ルーチェだ」


 ロリなのかガキなのかどっちなんだ。


「ただ、私は魔力がゼロでな。魔法使いなのだが、魔法書がなければ、実力を示せんのだ。まさか武器すら持たない少女をボコして喜ぶ趣味はないだろう?」

「もちろんだ。俺は剣士だからな。魔法書くらい好きに使えばいい。小細工しようと、弱いやつには負けねぇからな」


 と、わざとらしく説明しつつ、少し距離を取る。魔法使いと剣士、ド密着で戦闘を始めたら、あまりに不利すぎるので。


「よし、じゃあ私がはじめって言ったら勝負開始な。ハイはじめ」

「適当なやつだな……まあ好きにかかって来いよ」


 相手との距離は大体三歩。勝てるな、十分だ。すでに算段もたっている。


 まず、身体強化の魔法書を使って、動きの速さを上げる。本来ならじっくり相手の動きをうかがうべきだが、こっちはそうゆっくり勝負する気はないのだ。トラウマを植え付けるつもりはないが、サクッと終わらせてもらおう。


 で、一歩目、加速して、踏み込み、そこそこの勢いでつっこむ。身体強化はこの魔法書で出せるマックスの6割程度。この時点で、一般人ならばもう反応が間に合わないのだが、さすが一番強くなる予定と名乗るだけはあって、目で追うだけに留まらず、反射的に防御の型を取っている。


 つっこむ私の体をはじき返すように木剣を動かすが、当然その動きは私も捕らえている。


 二歩目、踏み込んでさらに加速──すると見せかけて、あえて身体強化の魔法をオフにする。すると、本来加速するはずだった体はむしろ勢いを失って減速、本来いるべきはずの位置から大きく手前に。


 フェデールはこれを予想していなかったために、人一人の激突を弾くつもりで振った剣はわずかに私の前を空ぶった。プラン通りである。


 それを確認して、もう一度魔法書を発動、身体強化して、三歩目を思いっきり踏み込んだ。すでに剣を振り終えた後であり、ガードもはれず隙だらけだ。この状態ならば剣の強者でも、後ろに飛んで下がるので精一杯である。


 逃さぬよう、10割、全力の身体強化でもう一度踏み込んだ。このままタックルしてやってもいいが、ケガをさせるのは本意ではない。わざとフェデールの横に向かって加速し、すれ違いざまに首トンしてすり抜けた。


 地面に手をつき、体をぐるっと一回転して勢いをころして着地、振り返ってフェデールの様子をうかがえば、膝をついて地面に倒れていく。


 うん、計画通り。私の勝ちだ。久々にまともな対人戦をしたが、なんとかなったな。むしろ、体が若返った分、近接戦に関してはジジイの頃よりキレが増しているかもしれない。今だと戦う女の子って感じで見栄えも良いだろうし、良いことづくしである。


 これは、剣士相手に近接戦を挑むときの常套手段である。まともに挑んでは勝ち目がないので、どんなときも魔法を活用して、不意を突くことを忘れない。動きも反応も悪くないが、おそらく魔法使いとの戦闘経験が浅いな。こればかりは、明らかに経験の差だ。いずれ経験を積んだ後に、もう一度勝負してみたいところだ。


 まあ、コルポの人間とまた会う機会があるとは思えないが。私、リブロから出る気ないし、なんだったら極力イゾラから出たくないし。あくまでのんびりとやっていきたいので。


 さて、そろそろ行かなければ。


「じゃ、門番よ、そいつ頼んだ。私は急ぐからな」


 と、またも驚愕し、口が開いたままになっている門番にフェデールの身柄を任せ、私はエウロの元に向かうため、王都に入場した。全く、無駄な時間を取ってしまった。さすがに急がないと。


 ていうか、何しに来てたんだ、あいつ……。




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